2006年度公務労協情報 64 2006年9月4日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院に対する質問状に総裁が回答−9/4
−依然として誠意のない形式的見解に終始−

 公務員連絡会は、本年の人事院勧告が行われた8月8日、正式に人事院総裁宛の質問状(資料)を提出し文書による回答を求めていたが、人事院は本日、その質問状に対して下記の通り回答を示した。
 しかし、その回答内容は、例えば、質問(1)で何故一方的に総裁見解を反故にしたのかの説明を求めていることに対して直接回答していないことなどに見られるとおり、われわれに対して損なわれた信頼関係を回復しようとする真摯な態度はみられず、あいかわらず誠意のない形式的な見解に終始しており、まったく納得性がないものと言わざるを得ない。
 公務員連絡会は、現在政府に対して要求書を提出し、本年の給与改定について改めてわれわれと十分交渉・協議を行うよう求め、取り組みを進めている。その閣議決定等の時期は、自民党の総裁選挙もあり不透明だが、給与法改正法案は臨時国会に提出されるものと思われることから、国会段階では勧告・報告内容の問題点を質すとともに、この質問状に対する回答なども活用し、人事院の誠意のない姿勢を厳しく追及することとしている。


質問状に関する人事院総裁の回答

2006年9月4日

質問事項(1)
 なぜ昨年の総裁見解を一方的に反故にして見直しに向けた検討を開始したのか、どのように情勢が変化したのかについて納得いく説明をされたい。
 また、このようなことが行われる限り相互の信頼関係に基づく交渉・協議は成り立たないと考えるが、貴院はわれわれとの交渉・協議関係(信義則)をどのように考えているのか、見解を示されたい。
【人事院の回答】
 民間賃金準拠により公務員の給与水準を決定するための官民給与の比較方法については、民間企業の給与を適正に反映する方法として適切かどうか、情勢の変化に応じ常にその妥当性を検証する必要がある。
 今般、人事院は、従来の比較方法について、昨年来の国会における議論や閣議決定による人事院に対する検討要請など各方面の意見、要請等を踏まえれば、労働基本権制約の代償機能を担う中立・第三者機関として改めてその妥当性について検証を行うことが重要な責務であると考え、検討を進めてきたところである。
 人事院は、従来から勧告に当たって、職員団体の意見を十分聴きながら検討を行っており、今後ともこの姿勢を堅持してまいりたい。

質問事項(2)
 歴史的・社会的な仕組みとして成立している現行の比較対象企業規模を、人事院が一方的に変更しうるとする根拠は何か、また、何故比較企業規模を50人以上とすることが妥当と考えるのかについて、納得いく説明をされたい。
【人事院の回答】
 人事院勧告における官民給与の比較方法については、人事院が中立・第三者機関として責任をもって判断すべき事項である。
 本年の勧告においては、比較対象となる企業規模を100人以上から50人以上に改めるなどの見直しを行っているが、この見直しは、官民給与の精確な比較を実現し、民間給与をより適正に公務の給与に反映させるために行ったものであり、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間賃金準拠方式の下で、民間企業従業員の給与をより広く把握し、反映させることができたものと考えている。

質問事項(3)
 今回の措置は、明らかに政治の圧力に屈して官民比較の基本的な枠組みに関わる見直しを行ったものであり、それは労働基本権制約の代償機能や中立・第三者機関としての立場と役割を放棄したものと考えられるが、貴院はこの点についてどのように考えているか、見解を示されたい。
【人事院の回答】
 今回の官民給与の比較方法の見直しは、(1)についてで述べたような基本的な考えに立って、学識経験者による研究会や各界有識者による給与懇話会を設置してその意見を聴くとともに、各府省の人事当局や職員団体の意見も聴きながら慎重に検討を進め、労働基本権制約の代償機能を担う中立・第三者機関として責任をもって判断したものである。

質問事項(4)
 今回の官民比較方法の見直しによって公務員給与に対する国民的コンセンサスは得られると考えているのか、またその根拠は何かについて見解を示されたい。
【人事院の回答】
 (2)についてでも述べたとおり、今回の官民給与の比較方法の見直しにより、官民給与の精確な比較を実現し、民間給与をより適正に公務の給与に反映させることができたものと考えている。


資料−公務員連絡会の人事院への質問状

2006年8月8日

人事院総裁
 谷 公士 殿

公務員労働組合連絡会
議 長 丸 山 建 藏


質 問 状


 わたしどもは、貴職が比較対象企業規模を含む官民比較方法の見直しの検討を開始して以降、その理由について十分納得のいく説明を行うよう求め続けてきました。しかし貴職は、これに十分応えることなく、8月8日には比較対象企業規模を50人に拡大することなどの官民比較方法の見直しを行った上で、月例給・特別給の改定を見送る報告を行いました。わたしどもは、この措置を受け入れられないとの見解をすでに表明していますが、貴職が十分な説明責任を果たさないまま見直しを強行したことについても強い怒りを覚えています。
 以上のことから、下記事項について、わたしどもが十分納得いく明確な見解を文書にて示して頂くよう要請します。



(1)なぜ昨年の総裁見解を一方的に反故にして見直しに向けた検討を開始したのか、どのように情勢が変化したのかについて納得いく説明をされたい。また、このようなことが行われる限り相互の信頼関係に基づく交渉・協議は成り立たないと考えるが、貴院はわれわれとの交渉・協議関係(信義則)をどのように考えているのか、見解を示されたい。

(2)歴史的・社会的な仕組みとして成立している現行の比較対象企業規模を、人事院が一方的に変更しうるとする根拠は何か、また、何故比較企業規模を50人以上とすることが妥当と考えるのかについて、納得いく説明をされたい。

(3)今回の措置は、明らかに政治の圧力に屈して官民比較の基本的な枠組みに関わる見直しを行ったものであり、それは労働基本権制約の代償機能や中立・第3者機関としての立場と役割を放棄したものと考えられるが、貴院はこの点についてどのように考えているか、見解を示されたい。

(4)今回の官民比較方法の見直しによって公務員給与に対する国民的コンセンサスは得られると考えているのか、またその根拠は何かについて見解を示されたい。

以上