公務員連絡会は2日午後、2006秋季闘争中央行動を実施し、決起集会や総務省人事・恩給局長や自治行政局公務員部長との交渉を繰り広げた。
安倍新政権のもとで政府は引き続き公務員の総人件費削減政策を継続する意向を示しており、給与勧告の取扱いも予断を許さない状況となっている。また、地公の確定闘争を巡っては、財政危機を理由とした地公賃金の引き下げや地場賃金比較への政府の圧力が高まる情勢にある。この行動は、こうした秋季闘争を巡る厳しい情勢を踏まえ、@企業規模見直し反対の立場から十分に交渉・協議することA育児の短時間勤務制を早期に実施することB地公賃金の引き下げと格差拡大に反対し確定闘争を前進させることなど、去る8月9日に提出した政府への要求の実現を求めて開かれたもの。
午後1時30分から、社会文化会館ホールで開かれた決起集会には、1千人の仲間が参加し、政府の総人件費削減に抗して闘う意志を固め合った。
決起集会の冒頭主催者を代表して挨拶にたった丸山議長は、「安倍政権になったからといって政権の枠組みや政策の中身が変わったわけではない。われわれは、引き続き総人件費削減政策に反対し、格差是正と国民生活の安心・安全を支える公共サービスの確立を求め闘い抜くことが重要だ。人勧の取扱いなどについても、政府としっかり話し合い、方針を決めていくよう求めていかなければならない」と、安倍政権のもとでも引き続き公務員給与を巡る情勢は厳しいことを踏まえ、闘いを進めていくことを訴えた。つづいて、山本事務局長が基調提起に立ち、安倍新政権の動向を警戒しつつ要求実現の闘いを進め、一段と厳しい情勢にある地公確定闘争を公務員連絡会全体で闘い抜く、との方針を提起した。
構成組織決意表明には国公総連・木村全財務書記次長、国交職組・竹林委員長、自治労・田中書記次長、日教組・荘司副委員長が登壇し、総人件費削減政策に対決し秋闘を闘い抜く、と力強く決意を述べた。
集会を終えた参加者は、総務省前に移動し、「政府の総人件費削減政策反対」「公務員給与を改善せよ」「地公賃金引き下げと格差拡大反対」「育児の短時間勤務を早期に実現せよ」と、シュプレヒコールを上げ、交渉を支援する行動を繰り広げた。
この日行った書記長クラスによる総務省人事・恩給局長との交渉の経過は以下の通り。
<総務省人事・恩給局長交渉の経過>
総務省戸谷人事・恩給局長との交渉は、14時15分から行われ、公務員連絡会からは書記長クラス交渉委員が出席した。
冒頭、山本事務局長が「人事院勧告等の取扱いに対する要求書を提出し、交渉を積み上げてきたが、今日段階での考え方を示していただきたい」と回答を求めたのに対し、戸谷局長は、「8月9日に要求書をいただき、9月12日に皆様のご意見を伺ったところであるが、本日は、現時点でお話しできることを申し上げたい」として次の通り答えた。
(1) 給与関係
国家公務員の給与については、労働基本権制約の代償措置の基本である人事院勧告制度が定められ、人事院は専門・第三者機関としてその時々の経済・雇用情勢等を踏まえて勧告を行っており、政府としては同制度が実効を上げるよう最大限の努力をしなければならないと考えている。
本年度の国家公務員の給与改定についても、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国の財政状況、民間の経済情勢等、国政全般との関連を考慮しつつ、誠意を持って検討を進め、本年度の給与改定等についてできるだけ早く結論を得たいと思っているが、内閣の交替があったので給与関係閣僚に説明をした上で決定をしていただく必要がある。その上で、法案を作成し、臨時国会においてご審議いただくよう準備してまいりたい。
いずれにしても検討に当たっては、皆様方の意見も十分にお聞きしてまいりたいのでよろしくお願いしたい。
(2) 意見の申出関係
人事院からの意見の申出を踏まえ、意見の申出の対象外となっている防衛庁職員等の特別職などの取扱いについての検討を進めるなど、必要な法律案の作成に向け、鋭意作業を進めてまいりたい。
なお、特別職の取扱いの検討や法制面からの内容の精査には、新たな試みが入っているので一定の時間を要すると考えている。
(3) 労働基本権関係
行政改革推進本部に設置された専門調査会においては、今後のの公務と公務員の在り方に関する国民意識等を十分に踏まえつつ、労働基本権を含む労使関係の在り方について、幅広い観点から検討がなされるものと承知している。総務省としては、公務員制度を所管する立場から、必要な協力を行ってまいりたい。
(4) 配置転換関係
配置転換等を円滑に進めるためには、職員団体の理解と協力が必要であり、国家公務員雇用調整本部において、職員団体と十分に意見交換が行われているものと考えている。雇用調整本部と一体となって実務を行うことにしており、総務省としても、円滑に配置転換等が実施されるよう、積極的に取り組んでまいりたい。
回答に対し、連絡会側は次の通り局長の見解を質した。
(1) 本年の人勧の最大の焦点は、人事院が比較企業規模を政府の要請に応えて一方的に変えたことだ。中立性や労働基本権制約の代償性を大きく傷つけたものであり、とうてい納得できない。人事院の説明では、比較方法を変えなければ月例給で1.1%、一時金で0.05月の引上げとなっていた。これに沿った改善を行うよう、われわれは使用者としての政府に要求しており、引き続き要求実現を求める。「人勧尊重」ということは、勧告通り実施する考え方であり、新たに値切ることなどは検討していないと受け止めていいか。
(2) 政府として官民給与の比較方法の見直しを要請したのは、給与を下げるためではなく、国民の理解を得るためであるとの説明が昨年来行われてきた。政府は、今回の人事院の官民比較方法の見直しで国民の理解を得られるものと考えているのか。
(3) 育児のための短時間勤務制度等については、一刻も早く法案を提出すべきと考えているが、作業状況と法案提出のメドはいつと考えているか。
(4) 専門調査会で検討している労働基本権の問題について、与党の有力政治家が行政改革の制約になっているから付与するというような話をしているが、違うのではないか。基本権はILOの勧告もあり、公務員に当然に保障される権利であるが、今、それが求められているのは、公務の効率的遂行や良質なサービスの提供ができるような労使関係に改革する必要があるからだ。専門調査会では、速やかに基本的方向性を取りまとめて、具体的な制度設計の議論に入っていけるよう、事務方としての協力をお願いしたい。
(5) マスコミで、天下り問題などについて「新たな公務員人事の方向性について」と題する中馬前行革担当大臣のプランが報道されているが、どういう性格のものか。現行制度を所掌する総務省としてどう考え、どう対応するのか。天下り問題等については、われわれも行革推進事務局と議論してきた経緯があるし、公務員制度改革の中で整合性のある改革にしていく必要があるのではないか。
(6) 配置転換については、これからが重要だ。具体的な話になってきたとき、ミスマッチとなり退職せざるを得ないということが生じることを危惧している。引き続き、雇用問題が派生しないよう努力をお願いしたい。実際に職場が暗くなったということや、応募者がいなかったポストもあったので、来年以降に向けて課題の整理をお願いしたい。
これらの質問、要請に対し、戸谷局長は次の通り見解を示した。
(1) 官民給与比較方法の見直しについての人事院に対する要請は、人事院における具体的検討を前提としたものであり、人事院においては、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」、「給与懇話会」の報告書等の内容を踏まえ、職員団体等の意見も聞いた上で、中立・第三者機関として責任を持って判断されたものと認識している。したがって、今言えることは、そうした人事院勧告を尊重するということである。現段階では、給与関係閣僚に説明を行っているところであり、事務ベースでは「人勧尊重」の考えであるが決定するのは給与関係閣僚会議である。
(2) 去年と今年で比較方法が変わったことについては、皆さんを含めていろいろな議論が行われてきた結果である。総務省としては、一方では公務員の勤務条件向上、他方で国民の信頼を得るという責任があり、引き続き、国民の理解を得る努力をしないといけないと考えている。
(3) 育児短時間勤務制度等について、今、作業としては勧告の対象外である防衛庁、特別職の問題、また新しい法制として、一つの官職を二人の職員が占めるという並立任用があり、実施する方向でそれをきちんと詰めておく必要がある。作業の物理的問題で臨時国会は困難であり、次期通常国会への提案をメドに作業を進めている。自己啓発等休業制度も同様のスケジュールである。
(4) 基本権の問題は、この間、われわれもいろいろ議論してきたが、いかに公務が国民の期待に応えていくかという点から議論すべきと思う。専門調査会の議論には総務省の立場で協力して参りたい。
(5) 中馬前行革担当大臣のプランは内閣官房の中の議論であるが、総務省の所管に関係してくれば対応するということになる。
(6) 配置転換については、円滑に実施できるよう実務に取り組んでおり、いろいろ選択できるよう様々な職種の提供などに努力してきたところであり、ご理解願いたい。
以上の議論を踏まえ、最後に、山本事務局長が「公務員が厳しい状況に置かれていることは承知しているが、われわれの要求を受け止めていただいて毅然と対応していただきたい」と強く要望し、人事・恩給局長交渉を終えた。
<公務員部長交渉の経過>
公務員連絡会地公部会(以下地公部会)は、10月2日午後3時から、総務省公務員部長交渉を実施した。交渉には、書記長クラス交渉委員が臨み、総務省からは、上田公務員部長、松永公務員課長、稲山給与能率推進室長、山越定員給与調査官などが対応した。
冒頭、地公部会構成組織を代表して、日教組中村書記長が、「人事院勧告の取り扱い等に関する閣議決定がまもなく行われると思う。閣議決定が行われれば、地方公務員の給与改定に関わる事務次官通知が出されることになるが、本日は、給与改定通知について質したい。昨年の次官通知においては、地方公務員の給与改定、給与構造見直しに関し、国に準拠した対応が求められたところである。地方公務員の給与のあり方に関する研究会報告書(以下地公給与研究会報告書)が本年3月に出され、『国公準拠を刷新』する考え方が示され、政府において骨太2006が閣議決定されるなど、今年は新しい状況があると認識している。こうしたことから、公務員連絡会としては、6月20日以降、公務員部と交渉・協議を行ってきたところである。本年の事務次官通知においては、本年及び本年以降の地方公務員の給与改定・給与制度のあり方について示されるものと考えている。これから給与改定を迎える自治体の労使にとって重要な通知であるので、公務員部長から通知内容について日程を含めて考え方を示して頂きたい」と述べた。引き続き、自治労金田書記長が、地方公務員の給与改定に関わる事務次官通知に関わる以下の課題について、総務省としての見解を質した。
(1) 「国公準拠の刷新」が言われているが、事務次官通知でどのような内容が示されるのか。それは、8月23日の給能室長通知や8月31日の事務次官通知内容以外のものを含むのかどうか。
(2) 地方公務員の給与について、国公準拠を刷新する必要があるとしても、公民較差のみによる給与決定を求めるべきでなく、地公法第24条3項の趣旨に基づき、国、公民較差その他の事情を踏まえて人事委員会が主体的に判断して勧告すべきであると考えるが、総務省としての見解について説明いただきたい。
(3) 一時金についても、人事委員会が説明責任を果たす中で主体的に判断し勧告すべきであると考えるが、総務省としての見解について説明いただきたい。
(4) 広域異動手当の扱いをどうするか。
これに対し、上田公務員部長は、次の通り、総務省の考え方を説明した。
(1) 「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」の報告書で提言された「国公準拠の考え方の刷新」は、地方公務員法第24条第3項の「均衡の原則」は妥当であるとした上で、従来の制度・水準両面についての画一的な国公準拠ではなく、給与水準についてはより地域の民間給与の水準を重視して「均衡の原則」を適用するというものと理解している。
予定している事務次官通知では、このような提言に沿った考え方に基づき、これまで「国に準じ適切に対処すること」として給与改定を要請してきた点について、より地域の民間給与とのバランスを重視して給与改定を行うよう要請することを考えている。これらの内容については、8月23日の給与能率推進室長通知および8月31日の事務次官通知で示した趣旨と同じである。なお、地方公務員の給与改定に関わる事務次官通知は、給与に関する国の取扱いの閣議決定を受けて発出するが、現時点で日程については決定していない。
(2) 地方公務員の給与決定にあたっては、地方公務員法第24条第3項に基づいて行うことは言うまでもないが、人事委員会勧告に対する信頼を確保し、地方公務員給与に対する国民・住民の納得と支持を得ていくためにも、地域の民間給与の状況をより一層的確に反映してくことが重要であると認識している。このため、人事委員会勧告においては、公民給与の精確な比較及び公民較差を適切に反映した勧告を行うことが基本と考えており、去る8月23日に公民較差算定に係るガイドライン通知(給与能率推進室長通知)を発出し、各人事委員会に対して、その徹底を図ったところである。総務省としては、それぞれの団体において適切な給与改定が行われるよう、引き続き各地方公共団体に対し必要な助言等を行っていく考えである。
(3) 期末・勤勉手当についても、より精確な公民比較とその勧告への適切な反映が行われる必要があるものと認識している。特に期末・勤勉手当の支給月数については、人事委員会の調査結果による地域の民間給与の支給月数と異なる勧告がなされていることについて、昨今様々な場において批判を招いているところであり、去る7月7日に閣議決定された基本方針2006においても、支給月数の地域格差の反映が個別項目に盛り込まれたところである。総務省としては、各地方公共団体に対し、期末・勤勉手当について、単純に国の改定を踏襲することで地域の民間企業の支給月数を上回ることのないよう、適切な改定に向けた取組を要請していく考えである。
(4) 広域異動手当は、国家公務員において、「民間においては、広域的に転勤のある企業(他県に支店を有する企業)の従業員の賃金水準が地域の平均的な民間企業の従業員の賃金水準に比べて高い実態にあることを考慮し、公務において広域異動を行う職員の給与水準を調整するため」に支給することとされている手当である。この手当は、都道府県を超えて広域的に転勤のある企業の賃金水準を考慮して措置するものであり、地方公共団体への導入は、制度趣旨から基本的になじまないものであると認識している。したがって、広域異動手当の地方公共団体への導入は行わないこととし、地方自治法第204条第2項への追加は行わないことを予定している。部内の中でも、議論を重ねてきたところであるが、広域異動手当の制度の趣旨や給与を取り巻く情勢等を踏まえ、今回の決定に至ったところである。
こうした回答に対して、地公部会側より、次の通り総務省の考え方を質した。
(1) 地公給与研究会報告書で示されている「国公準拠の刷新」に関しては、地方公務員の給与改定に関わる事務次官通知の中では、8月23日の給能室長通知や8月31日の事務次官通知内容の趣旨と同じとのことであるが、「国公準拠の刷新」という言葉だけを見ると、ある時点でもって一斉に制度が見直されるのではという理解もありうると思うが、これまでの「国公準拠」との相違点について説明願いたい。
(2) 地方公務員の給与水準について、国公準拠を相対化するとしても、公民較差のみにより決定するべきではない。地公法24条3項に基づく給与水準の決定については、地公給与研究会報告書においても指摘されている。地域における民間事業所の給与水準だけではなく、地公法24条3項(生計費、他の自治体の職員ならびに民間事業の従事者の給与、その他の事情)の趣旨に基づき、人事委員会が主体的に判断して勧告すべきである。この認識に関わって、これまで公務員連絡会地公部会として「標準的給与」の設定を求めてきたところである。また、「国公準拠の刷新」にともなって、給与改定の扱いに関わる表現はどのように変わるのか。さらに、今年の公民較差でマイナスが出たとしても、給与構造見直しの経過期間中であり、見直しの進展で較差は吸収されていくものであると考えるが、総務省としてどのように考えているのか。
(3) 繰り返しになるが、一時金について、直ちに「民間の支給月数を上回らないように」と転換することも現実的でなく、人事委員会が説明責任を果たす中で主体的に判断し勧告すべきであると考える。あわせて、当該人事委員会の主体的な判断による決定事項については尊重するよう要請する。
(4) 広域異動手当を運用していく中で、今後の取扱いについては引き続き検討していく必要があるのではないか。広域異動手当を導入しないのであれば、相当分については公民較差に反映されることになる。この点について、総務省としてどのように考えているか。
これらに対して、総務省側は、次の通り回答した。
(1) ご指摘の点については、3月の地公給与研究会報告書で考え方が示されて以来、様々な場で地方公共団体に説明をしてきており、今回の事務次官通知によって、一斉に制度が見直されるということにはならない。総務省としても、同報告書における要請事項を踏まえ対応していきたいと考えている。
(2) 地方公務員法第24条第3項「均衡の原則」の趣旨については依然として妥当との認識を持っている。地方公務員法第24条第3項「均衡の原則」の適用については、これまでは各地方公共団体に対して、国公準拠の考えに重点をおいて助言等を行ってきたところである。しかし、今後は「国公準拠の刷新」の趣旨を踏まえた措置を講じるよう助言等を行っていくことになる。
給与改定の扱いに関わる表現については、地方公共団体に対して、国の扱いを基本として、地域民間給与水準の反映がはかられるよう求める内容になる予定である。
世間から地方公務員の給与は厳しい目で見られており、給与構造見直しの経過期間中における公民較差でマイナスが出た場合の取扱いについては、住民から職員の給与決定にあたって不信感を持たれないよう、きちんとした対応が必要であると考えている。
(3) 期末・勤勉手当の支給月数が民間水準と異なることについて、人事委員会が、住民に対して説明責任を果たすことは難しいのではないか。
(4) 広域異動手当の制度の趣旨や給与を取り巻く情勢等を踏まえれば、新たに手当を新設することはできないと判断した。今後の取扱いについては、将来何らかの動きがあった場合については、必要な判断が求められる場合もあるものと認識している。
最後に、給与改定については、労使関係を踏まえた自治体の主体的決定ができるよう総務省の対応を求めるとともに、給与をめぐる個別の課題については、今後とも意見交換を行うことを確認し、この日の交渉を終えた。
以上