2007年度公務労協情報 16 2007年2月19日
公務公共サービス労働組合協議会

公務労協が総理大臣宛の要求書、申入れを提出−2/16
−春季要求の実現と労働基本権、雇用・ワークルールの確立を求める−

 公務労協は、16日、安倍総理大臣宛の公務労協統一の「2007年賃金・労働条件等に関する要求書」、及び労働者全体の課題となっている雇用のあり方等の見直しに関わる「労働基本権確立と雇用・ワークルール等に関する申入れ」を行った。公務労協の岩ア労働条件専門委員長、山本事務局長ほかが、要求書等を内閣府官房副長官補付酒光参事官に提出し、安倍総理大臣に伝えるよう申し入れた。
 要求書及び申入れの内容は別紙1、2の通り。


(別紙1)

2007年2月16日


内閣総理大臣
 安 倍 晋 三 殿

公務公共サービス労働組合協議会
議 長 岡 部 謙 治



2007年賃金・労働条件等に関する要求書


 日本経済は、大企業を中心に好調な業績が続いているものの、それが中小企業や勤労者の所得に一向に波及しない状態が続いています。また、格差と二極化が極限まで進行し、「ワーキングプア」といわれる働く貧困層が増大し、地域社会はまさに崩壊の危機にあります。2007春季生活闘争においては、こうした格差を是正するため、ベアを含む賃金改善と非典型労働者の「均等待遇」原則に基づく処遇改善、そしてワークルールの確立などが求められています。
 公務員を巡っては、政府が進める総人件費削減政策のもとで引き続き雇用確保が重要課題であることはいうまでもありません。賃金・労働条件に関わっては、民間相場を正確に反映した給与の改善はもとより、公務内の格差是正に向け、非常勤職員等の雇用や処遇を抜本改善することが重要課題となっています。
 以上のことから、公務・公共部門労働者の賃金・労働条件等に関わって、下記事項を要求しますので、その実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。




1.総人件費削減と雇用確保について
 国家公務員の定員削減計画に基づく2年度目の配置転換が本人の希望に基づくものとなるよう、公務労協と十分交渉・協議、合意すること。また、官民競争入札の実施に伴う雇用問題についても政府全体として責任体制を確立し、雇用・労働条件を確保すること。

2.官民比較方法と賃金水準の改善等について
(1) 2007年度の公務・公共部門労働者の賃金改定にあたっては、官民比較の対象企業規模を100人とし、賃金水準を改善すること。
(2) 公務員給与に対する社会的な合意を実現するため、政労トップ会談を実施すること。

3.労働時間等について
(1) 公務・公共部門労働者のワーク・ライフ・バランスを回復し、雇用創出・多様就労型のワークシェアリングを実現するため、@年間実総労働時間1,800時間への短縮A本格的な短時間勤務制度の実現、などを図ること。
2007年度については、@所定内勤務時間の短縮A厳格な勤務時間管理と実効ある超過勤務縮減策、などを実現すること。そのため、超過勤務手当の全額支給を実現するとともに、当面、割増率を30%以上、休日(週休日及び国民の祝日等)については40%以上とすること。
(2) 育児のための短時間勤務制度導入の育児休業改正法案、自己啓発等の休業制度実現のための法案の早期成立を図ること。

4.男女平等について
(1) 公務・公共部門における男女共同参画促進に向け、あらたな女性の採用・登用拡大の指針に基づく取組みを進めるとともに、取得率の数値目標等を明確にした育児休業・育児のための短時間勤務の男性取得促進、次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」を着実に実施するよう指導すること。
(2) 民間の育児休業給付の引上げに対応し、それに遅れることなく公務における育児休業手当金を50%に引き上げるため、共済組合法を改正すること。

5.天下りの規制強化と高齢再任用制度について
(1) 天下りを自由化するための事前規制撤廃などの検討を直ちに止め、規制強化と在職期間の長期化のための複線型人事制度を整備すること。
(2) 民間における高齢者雇用継続制度の導入を踏まえ、定員の弾力的な取扱いを含め高齢者再任用制度の定着と拡大に取り組み、雇用と年金の接続を図ること。

6.退職手当について
 退職給付に関する人事院の調査結果と見解を尊重し、新たな年金の仕組みにおいて現行支給水準が確保されることを前提に、退職手当の現行支給水準を維持すること。

7.労働基本権確立を含む公務員制度改革について
(1) 行政改革推進本部のもとに設置された「専門調査会」の審議において、労働基本権を確立し、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を実現するための報告を早期に取りまとめるよう要請すること。また、ILO第151号条約(公務の団結権保護及び雇用条件決定のための手続に関する条約)を早期に批准すること。
(2) 公務員制度改革にあたっては、次期通常国会への法案提出を前提とせず、2004年12月の閣議決定に基づき、公務労協と十分交渉・協議し、合意に基づいて施策の検討を行うこと。

8.非常勤職員等の労働条件の改善など格差解消に向けた要求
(1) 非常勤・パート職員等の雇用・身分等の差別的取扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。
(2)「均等待遇」の原則に基づき、非常勤・パート職員等の処遇を抜本的に改善すること。
(3) 国・地方自治体に雇用される労働者の最低賃金を高卒初任給並みに引き上げること。
(4) 国・地方自治体が民間事業者等に業務を委託したり、入札等を行う場合には社会的な公正労働基準の遵守を必要条件とすること。


(別紙2)

2007年2月16日

内閣総理大臣
 安 倍 晋 三 殿

公務公共サービス労働組合協議会
議 長 岡 部 謙 治


労働基本権確立と雇用・ワークルール等に関する申入れ


 貴職におかれましては、日頃より労働組合に対しご理解を賜り敬意を表します。
 さて、政府は雇用とワークルールに関する包括的な見直しを進め、労働基準法をはじめとした多くの労働関係法律の改定を進めています。
 事態の帰趨が公務関係労働者の労働諸条件に重大な影響を与えることは申すまでもありません。
 そもそも雇用とワークルールは、民間雇用労働者に止まらず私たち公務員労働者自身にも関わる課題であり、すべての雇用労働者の問題であるとともに、日本社会と文化のありようを根底において規定するものであります。
 かつて賃金労働者は、使用者の一方的な支配の下におかれていました。世界の労働運動は筆舌に尽くしがたい血と汗を代償として、フィラデルフィア宣言に「労働は商品ではない」と労働の尊厳を高らかに謳い、中核的国際基準を幾多の国際条約として確立しました。1997年、ILO総会は、進行するグローバル経済下で、新たな宣言を全員一致で採択しました。こうした歴史的に形成されてきた「労働」に対する考え方は極めて貴重な財産であり、これを逆戻りさせることは許されません。
 つきましては、下記の事項についてご理解頂き、その実現に尽力されますよう申し入れます。


一、ILO勧告を踏まえ、国際労働基準を満たした公務労働関係を確立すること。
一、労働関係施策の立案・決定については「政・労・使」三者構成の原則を確立・強化すること。
一、日本版ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入は行わないこと。
一、すべての雇用労働者が雇用形態・就労形態、性差等にかかわらず「同一価値労働同一賃金」の原則に基づき処遇されるよう、関係法律を改正すること。
一、ILO88号条約に違反するハローワークの民営化を行わないこと、また、市場化テストの対象から外すこと。
一、派遣労働者の派遣期間を延長する労働者派遣法改正を行わないこと。
一、地域最低賃金額が生活保護基準額を上回るよう改善すること、また産業別最賃制度を堅持すること。

以上