2007年度公務労協情報 19 2007年2月23日
公務公共サービス労働組合協議会

"より良い公務と公共サービスをめざす国民対話集会"開催−2/22
−公務・公共サービスを担う労働者・労働組合の役割を討論−

 公務労協は、22日18時から、東京・総評会館内で「より良い公務と公共サービスをめざす国民対話集会」を連合の後援で開催し、公務・公共サービスを担う労働者・労働組合の役割について、国民の声として各界代表から公務・公共サービスに対する真摯な批判を聞いて真剣な論議を交わした。
 この対話集会は、行政や公務関係の労働組合に対する国民からの批判を率直に受け止めることにより、「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」を当事者だけの運動にとどめることなく、多くの国民の理解と共感を得た幅広い取り組みにしていくため開いたもので、構成組織組合員をはじめ、連合民間組合などから250名余が参加した。
 集会の冒頭、岡部謙治公務労協議長が「今、我が国は市場経済優先で格差が拡大している。この格差を解消するとともに、人間らしい労働を実現し、それが生活の安定に繋がるような社会をつくらなければならない。そのための架け橋が公共サービスである。受ける側と提供する側が参加していくことが重要であり、受け手の声をより反映できるものに改革していかなければならない。地方でも対話集会を開催し、公共サービス憲章制定を求める請願署名運動を進めていく。本日はその一歩である」とあいさつし、評論家(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長)の樋口恵子氏をコーディネーターとしてパネルディスカッションに移った。パネラーには、各界代表として青山彰久読売新聞解説部次長、加藤さゆり全国地域婦人団体連絡協議会事務局長、小出幸男JAM会長(連合副会長)が、公務労協から岡部議長(自治労委員長)、森越康雄副議長(日教組委員長)、福田精一副議長(国公連合委員長)、山本幸司事務局長が登壇した。
 各パネラーからは、次の通り率直な見解が示された。
<現在の公務、公共サービスの問題点>
・今進められている改革は人々の共感を得ていない。組合も労働者の立場を前面に出しすぎだ。住民の暮らしを見つめていないし、現場から見ていないのではないか。自分の目で見て自分の頭で考えるなど、公務員として高い職業倫理が必要だ。
・大事なのは自治体に対する住民の信頼である。しかし裏金作りに見られるように甚だ心許ない。窓口の対応も嫌な思いをしたという話をよく聞く。丁寧な対応が信頼に繋がる。公共サービスに携わる人には自覚を求めたい。
・21世紀はスクラップアンドビルドが求められており、民間では厳しいリストラ、成果主義、効率的経営が迫られた。リストラは即首切りということではなく、まず再編=スクラップであり、公務でもまずスクラップを考えるべきだ。何を捨て、何を守るのか明確にすべき。
<公務・公共サービス労働者・労働組合の役割とその評価>
・住民から信頼や親しみを寄せてもらうために、公務員は一所懸命働いているということを見せないといけない。組合が前面に出ると「ゆとりがあっていいね」と思っている住民も多い。税金で成り立っている仕事ということを自覚してほしい。
・不二家やパロマなど民間企業でもコンプライアンスが問題になっているが、公務の労働組合も不祥事に厳しく対応して正しいメッセージを出さないといけない。また、公務にも労働基本権を保障して労使がお互いに責任を持った対応が出来るようにすることも大事だ。対等な立場で不祥事を追及していくことも組合の大事な任務だ。
・裏金の裏には「官官接待」があり補助金を取ってくればいいんだろうということがあった。問題はそういう仕事のやり方でいいのかということだ。仕事の見直しで自治研運動は大きな役割を果たしてきた。しかし昨今の不祥事を見ると、いったいどうなってしまったのか。しっかりしてほしい。
<公共サービス改革と労働組合のあり方>
・公務にはコスト意識がないことが問題だ。過剰なサービスにコストがかかるならいらない。かゆいところに手が届くサービスの時代は終わった。最小限必要なのは何かを整理すべき。
・組合は社会に警鐘を鳴らす"カナリア"の役割を果たしてほしい。また、納税者はお客様という意識を持ってほしい。どうして民営化に反対するのか、どうして公務員でなければいけないのか、国民にわかりやすく説明してほしい。
・公共サービスは一人では買えないものを共同で買うことだ。今の行財政改革は撤退競争になっているが、全部財政の穴埋めに回すのではなく、新しいものにも回さなければならない。例えば、家族のあり方が変わっており、支える仕組みが必要だし、地域における教育は一貫して必要だ。いずれ増税が必要になろうが、どれだけ効率化しているか、それでも必要なのかを説明できないといけない。

 これらに対し公務労協側からは、@地域で人々と繋がっていることは大事なことであり、努力しないといけないA公務員には民間より高い倫理観や公共性に対する信念が必要だし、不祥事については自ら顧みてしっかり正さないといけないBこれまでは公共サービスは政府や自治体だけが提供するものと考えられてきたが、今後は、NPO、民間企業、市民個人などのベストミックスで提供し、トータルで充実しないといけない。その際、最小の費用で最大の効果を追求する必要があるC行政サービスを受ける側の一人でもあるという立場で、住民の皆さんの批判を受けながら政策決定に関わっていきたいD社会通念上おかしいと言われることについては見直しをしてきているし、今後もしっかり対応していきたいE公共サービスのすべてを市場に任せると必要な人に行き渡らなくなる。家族に代わって支える必要がある場合には現物給付が必要であり、公共サービスに従事する者の責任は重いF労働組合は弱い人のために力を出すということが不十分だったことを反省しないといけない、などの考えと決意が表明された。
 また会場からは@自治体職員と自治体当局は一体のものとしてみられるが、分けてほしい。例えば生活保護の給付などでは厚生労働省からの指示があり厳しく対応することが余儀なくされるということがある。職業倫理といわれるがそれだけでは自分の仕事を律することができないA組合の議論では「文部科学省が・・・」「校長が・・・」という話になる一方、住民に対しては権力の側にいる。子どもにどう寄り添って教育をしていくかという運動を進めないといけない、という意見が出された。
 最後に、山本事務局長が「こうした対話集会を開くことにしたのは、格差の拡大や二極化などこのまま進めば日本社会はいったいどうなるんだろうという問題意識があった。ともに生きる社会を支えていく公共サービスに改革していく場合に、既得権擁護の運動ではないかと言われないために、国民の皆さんから厳しいご意見をいただいて、一緒に公共サービスを直していくことが大事だと考えた。今後、地方で対話集会を開催し幅広い意見を伺って、それを運動に取り入れながら、公共サービス憲章制定請願署名運動を進めていく」と公務労協として、今後、自ら正すべきところは正しながら、「ともに生きる社会のための公共サービス憲章」の制定を求める請願署名運動に取り組み、公共サービスの改革運動を進めていく決意を述べ、対話集会を終えた。
 公務労協では、この対話集会を出発点として、地方でも「県民対話集会」を開催するほか、3月からまず組織内で請願署名運動を展開し、統一地方選後には地域での請願署名運動に全力を挙げていくことにしている。

以上