政府は、17日8時30分から、第2回給与関係閣僚会議を開いて本年の給与構造見直しに関わる給与勧告を勧告通り実施することを確認し、その後9時から開いた定例閣議でその方針を正式に決定した(資料1、2)。
公務員連絡会は、この閣議決定を受けて、給与構造見直しに関わる勧告の実施は当然であるが、企業規模を見直したうえで給与改定を見送った措置については強く抗議する、との声明を発した(資料3)。
2006秋季闘争の焦点は、今後、国会段階での給与法改正法案を巡る取組みと地方自治体や行政法人等の確定闘争に移っていくこととなる。公務員連絡会としては、とくに困難な状況にある地公確定闘争について、統一闘争態勢を維持し、取組みを強めていく方針だ。
資料1−閣議決定内容
公務員の給与改定に関する取扱いについて
平成18年10月17日
閣 議 決 定
1 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与については、去る8月8日の人事院勧告どおり、平成18年度の給与改定を見送るとともに、給与構造改革を引き続き推進するものとする。
2 特別職の国家公務員の給与については、おおむね1の趣旨に沿って取り扱うものとする。
3 1及び2については、今年度における新たな追加財政負担は要せず、給与構造改革全体として総人件費の抑制に資するものであるが、我が国の財政事情がますます深刻化している下で総人件費改革が求められていることを考慮すれば、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を削減する必要がある。そのため、次に掲げる各般の措置を講ずるものとする。
(1) 地方支分部局等を始めとする行政事務・事業の整理、民間委託、情報通信技術の活用、人事管理の適正化等行政の合理化、能率化を積極的に推進する等の措置を講ずる。また、定員については、5年間で5.7%以上の純減目標を確実に達成する。その中で、メリハリのある定員配置を実現する。
(2) 独立行政法人(総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第13号に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)についても、中期目標設定、評価等について役職員数も含めた一層の事務運営の効率化を図る。特に、中期目標期間終了時の組織・業務の見直しの結論を本年中に得る独立行政法人については、「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月7日閣議決定。以下「基本方針2006」という。)等を踏まえ、「官から民へ」の観点から事業・組織の必要性を厳しく検討し、その廃止・縮小・重点化を図る。
(3) 独立行政法人の役職員の給与については、改定に当たって国家公務員の給与水準を十分考慮して適正な給与水準とするよう要請するとともに、中期目標に従った人件費削減や国家公務員の給与構造改革を踏まえた給与の見直しの取組状況を的確に把握する。独立行政法人及び主務大臣は、総務大臣が定める様式により、役職員の給与等の水準を毎年度公表する。
また、特殊法人等の役職員の給与についても、改定に当たって国家公務員の例に準じて措置されるよう対処するとともに、主務大臣の要請を踏まえた人件費削減や国家公務員の給与構造改革を踏まえた給与の見直しの取組につき、必要な指導を行うなど適切に対応する。特殊法人等の役職員の給与等についても、法令等に基づき公表する。
(4) 地方公共団体の定員の純減及び人件費の抑制に支障を来すような施策を厳に抑制する。
(5) 地方公共団体の定員については、新地方行革指針(平成17年3月29日)に基づく集中改革プランにおける定員管理の数値目標の着実な達成に取り組むことを含め、「基本方針2006」に沿い、5年間で国の定員純減(▲5.7%)と同程度の職員数の純減を行うよう、引き続き要請する。
(6) 地方公共団体における地方公務員の給与改定に当たっては、現下の極めて厳しい財政状況及び各地方公共団体の給与事情等を十分検討の上、国と同様、行政の合理化、能率化を図るとともに、既に国家公務員又は民間の給与水準を上回っている地方公共団体にあっては、その適正化を強力に推進するため必要な措置を講ずるよう要請する。
また、国家公務員における給与構造改革を踏まえた取組に加え、人事委員会機能を発揮することなどによる地方における民間給与水準への準拠を徹底するなど、「基本方針2006」に沿った取組を着実に推進するよう要請する。
4 給与構造改革の一環としての専門スタッフ職俸給表の新設については、人事院において、複線型人事管理を実現するための政府における取組に呼応し、その環境を早急に整備する観点からも、更にその具体化について検討を進めるよう要請するものとする。
資料2−官房長官談話
内 閣 官 房 長 官 談 話
(平成18年10月17日)
政府は、本日の給与関係閣僚会議及びその後の閣議において、一般職国家公務員の給与改定について人事院勧告どおり実施することなどを内容とする本年度の公務員の給与改定の方針を決定しました。
本年度の勧告は、官民給与比較方法の見直しにより、民間企業の給与実態をより反映したものとなっております。
官民の給与がほぼ均衡していることから、俸給及び期末手当等の改定を見送るとともに、給与構造改革を引き続き推進することとするものであります。
政府は、人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、国の財政状況、民間の経済情勢など国政全般との関連を考慮しつつ、国民の理解を得られる適正な結論を出すべく検討を行った結果、本日、勧告どおり実施することを決定したところであります。
これらについては、今年度における新たな追加財政負担は要せず、給与構造改革全体として総人件費の抑制に資するものですが、政府としては、ますます深刻化している財政事情等にかんがみ、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を削減する必要があると考えております。そのため、行政の合理化、能率化を一層強力に推進するとともに、定員については、五年間で5.7%以上の純減目標を確実に達成します。その中で、メリハリのある定員配置の実現に取り組んでまいります。
なお、地方公共団体においても、「基本方針2006」に沿い、定員の一層の純減や地方における民間給与水準への準拠を徹底するなどの取組を着実に推進するよう要請することとしております。
公務員諸君は、今回の決定が現下の厳しい諸情勢の下でなされたものであることを十分理解し、今後とも、国民の信頼にこたえ、公務能率及び行政サービスの一層の向上を図るとともに、官庁綱紀の厳正な保持、公正な公務運営の確保に努めるよう強く期待するものであります。
資料3−公務員連絡会の声明
本年の人事院勧告の取扱い閣議決定に対する声明
(1)政府は、本日の第2回給与関係閣僚会議で本年の人事院勧告を勧告通り実施することを確認し、その方針を閣議で正式に決定した。
(2)公務員連絡会は、比較対象企業規模を見直した上で給与改定を見送るとした本年の人事院勧告・報告は到底容認できないとの立場から、8月9日に政府に対して十分交渉・協議し公務員給与を改善するよう申入れ、その実現をめざして諸行動を積み重ね、昨日、総務大臣と委員長クラスが最終的な交渉を行ったが要求は受け入れられなかった。
本日の閣議決定で、給与構造見直しに関わる勧告を勧告通り実施することについては当然のことと考えるが、企業規模を見直した上で給与改定を見送るとした人事院の措置を政府がそのまま受け入れることについては、極めて遺憾である。使用者の責任においてわれわれと十分に交渉・協議することを求めてきたにもかかわらず、議論を尽くさないまま決定したことについても遺憾であり、強く抗議する。
本日の閣議決定によって、本来改善されるべき給与改定が見送られ、公務員労働者の生活は大きな影響を受けることとなる。そして、それは地域・地場の民間賃金にも波及し、さらなる格差拡大を招くこととなる。
今回の比較対象企業規模の見直しは、政府の総人件費削減政策の一環として公務員給与水準の抑制を意図して行われたものであることは明らかである。政府が人事院に圧力を加え、人事院が水準決定の基本的な枠組みを一方的に見直すことは、労働基本権制約の代償機能としての人事院勧告制度の役割放棄と変質を意味しており、決して認めることはできない。
われわれは、行政改革推進本部のもとに設置された「専門調査会」の議論を通じて、労働基本権の確立と団体交渉による賃金・労働条件決定制度の確立を強く求めるものである。また、公務員給与の社会的合意を得るため、直ちに政労トップ会談を行うことを要求する。
育児のための短時間勤務制度等の臨時国会での法案提出を要求していたにもかかわらず、それが先送りされたことは不満である。今後、確実に通常国会の早い段階に法案を提出し、早期実施に向けて努力することを強く求める。
(3)政府は、本日の閣議決定を踏まえ、給与法改正法案作業に入り、10月中にも国会提出する予定である。
秋季確定闘争を巡っては、安倍新政権が小泉構造改革路線をさらに徹底する姿勢を表明し、総人件費削減政策がつぎつぎと具体化される厳しい情勢のもとでの取組みとなる。われわれは、こうした厳しい情勢を認識しつつも、あくまで本年の人事院勧告・報告に対する基本方針を堅持し、引き続き国会段階での取組みを進めていくこととする。
また、人件費削減の具体的なターゲットとして給与引下げが狙われている地方公務員給与については、給与水準の確保はもとより、決定基準の確立と労使交渉による決着を求めて闘い抜くこととする。われわれは、独立行政法人等の確定闘争を含め、今後とも基本方針を堅持し、統一闘争態勢のもとで取組みを進めることとする。
この他、秋季闘争においては、定員削減や市場化テストの具体化に伴う雇用確保の取組み、被用者年金一元化や新たな評価制度確立に向けた試行への対応など、重要課題が山積している。公務員連絡会は、これらの直面する個別課題の取組みを通じ、総人件費削減政策自体の転換を求める闘いを強めるとともに、良質な公共サービス確立キャンペーンを全力を挙げて取り組むものである。
2006年10月17日
公務員労働組合連絡会
以上