公務員連絡会地公部会は、4月9日午後2時から、本年勧告に関わる民間給与実態調査等について、全国人事委員会連合会(全人連)への申入れを行った。
公務員連絡会側は、地公部会の山岸議長(都市交委員長)をはじめ地公部会幹事らが出席し、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
冒頭、山岸地公部会議長は、要請書<別紙>を手交し、「2月13日に、本年の地方公務員給与等の課題について要請させて頂いたが、本日は、まもなく民間給与実態調査が開始される時期にあることから、本年の給与勧告に向けた課題を中心に要請させて頂きたい。
地方公務員の給与はここのところ毎年引き下げられてきた。また独自に給与削減する自治体が市町村に拡大するなど、この問題が解消される傾向にはなっていない。
他方で、政府や政党が地方公務員の給与引下げに言及するなど、地方公務員給与が政治的に扱われ、自主的給与決定が阻害されかねない状況がある。こうした状況は、職員の士気の低下や不安感をもたらしている。人事委員会として、毅然とした対応がはかられるよう求めておきたい。
今年の民間の春闘結果は、2006年を上回る賃金引上げとなっている。是非、こうした民間動向を反映した給与勧告となるよう取組みをお願いしたい。
地公部会として、2006年の総務省『地方公務員の給与のあり方に関する研究会』報告や、昨今の状況から、地方公務員の標準的給与を確立するように求めている。この課題について真摯な対応をお願いしたい。要求項目については、事務局から説明する。また、新たな教職員給与の課題について関係組合代表から要請させて頂きたい」と要請した。
続いて、岩本地公部会事務局長が、地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みの実施をはじめとする要請書の課題について説明し、全人連としての努力を求めた。
さらに、中村企画調整委員代表(日教組書記長)から、「中教審答申をうけ、政府においては、学校教育法の改正法案の国会上程にむけて準備作業を進めている。この中では、主幹教諭や副校長といったこれまでにない職について新たに設けると聞いている。全人連においても、以上の点を留意のうえ、モデル給料表の作成にむけ尽力願いたい」と要請した。
こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は次の通り回答した。
<全人連会長回答>
2007年4月9日
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。私から、全国の人事委員会にお伝えいたします。
申すまでもありませんが、公務に従事する職員の勤務条件を適正に確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しており、本年も、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を適切に果たしてまいりたいと考えております。
さて、本年の民間給与実態調査を迎えるにあたりまして、現在の状況認識等について、一言、申し上げます。
まず、最近の経済状況を見ますと、3月の月例経済報告では、「景気は、消費に弱さが見られるものの、回復している。」とし、先行きについては「企業部門の好調さが持続しており、これが家計部門へ波及し国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。」としております。
その一方で、「原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある」とし、引き続き、警戒感も示しております。
このような中、今春闘では、企業収益の改善を反映し、増額回答した企業が増えるなど、賃金の改善傾向が見られる一方、賃金の動きは、横ばい圏内で推移しているとの見方も出始めております。
他方、最近、自治体ごとの給与水準が公表されたこともあり、今後、地方公務員の給与に向ける住民の目は、これまで以上に厳しさを増していくものと思われます。
現在、各人事委員会におきましては、5月初旬から、民間給与実態調査を人事院と共同で実施していくことを予定しており、この調査の対象となる企業規模は、人事院において、昨年と同様とする方向で、準備が進められていると聞いております。
本日、要請をいただいた個々の内容は、各人事委員会において、その調査結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討をしていくことになるものと思います。
全人連といたしましても、必要な点については、人事院や各人事委員会と十分意見交換や連携ができるよう、努めてまいりたいと考えております。
なお、公立学校教職員の給与に関する課題については、全人連としても、学校教育法の改正等、国の動向について注視しており、モデル給料表についても、これらの点を踏まえ、給与部会において検討してまいりたいと考えております。
<別紙> 全人連への要請書
2007年4月9日
全国人事委員会連合会
会長 内田公三 様
公務労協公務員連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合
中央執行委員長 岡部謙治
日本教職員組合
中央執行委員長 森越康雄
日本都市交通労働組合
中央執行委員長 山岸 晧
全日本水道労働組合
中央執行委員長 佐藤幸雄
全国自治団体労働組合連合
中央執行委員長 玉野一彦
日本高等学校教職員組合
中央執行委員長 小林政至
民間給与実態調査等に関わる要請書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
民間の2007春闘における賃金交渉は、景気回復や好調な企業業績を背景に昨年を上回るベースアップや一時金が確保され、今後中小企業等の賃金水準引上げやパート労働者の均等待遇に基づく格差是正・処遇改善が期待されます。
公務においても引上げ傾向にある民間の賃金水準を反映した賃金改定が求められます。そのため、比較企業規模の復元等による公務員賃金の社会的合意の再確立と賃金水準の確保、職務給の原則を踏まえた地方公務員の標準的給与を確立する取組みが必要であると考えます。
一方、厳しい財政事情を理由に人事委員会の勧告を完全実施しない自治体がありますが、これは労働基本権制約の代償措置としての人事委員会勧告制度の空洞化を意味するものであり、許されることではありません。
これから開始される民間給与実態調査等に関し下記のとおり要請しますので、貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、要請事項の実現に向け最大限の努力を頂きますようお願いします。
記
1.民間給与実態を精確に把握し、地方公務員の生活を改善するための賃金水準を確保すること。
2.2007年民間給与実態調査において、比較企業規模を100人以上とすること。また、一時金の公民比較は、比較企業規模を100人以上とするとともに同種・同等比較とすること。公民比較方法のあり方の検討に当たっては、職員団体との十分な交渉・協議に基づくこと。
3.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。そのため、全国人事委員会連合会の体制・機能の強化や人事委員会相互の連携方策などについて、公務員連絡会地方公務員部会との意見交換を進めること。
4.公立学校教職員の給与について、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。モデル給料表の作成に当たっては、関係労働組合との意見交換を行うこと。
5.給与構造見直しに対応し、国の給与決定における審査申立制度の改善措置に対応した措置を講ずること。
6.「不払い残業」の一掃と所定労働時間の短縮(変則・交替制勤務職場における労働時間短縮の重視)に取り組むこと。
7.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、職員団体との交渉・協議、合意に基づき進めること。