2007年度公務労協情報 32 2007年6月18日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院総裁に2007人勧期要求提出−6/18

 公務員連絡会福田議長ほか委員長クラス交渉委員は、18日午後2時から、谷人事院総裁と交渉を持ち、@公務員給与の改善勧告A非常勤職員の処遇の抜本改善B実効ある超勤縮減策、所定勤務時間短縮の実現、などを重点課題とする「2007人事院勧告に関わる要求書」を提出した。これにより、2007人勧期の取組みは正式にスタートした。以後、公務員連絡会は交渉・協議を強め、7.3第1次、7.26第2次中央行動などを実施し、人事院に要求実現を迫ることとしている。

 午後2時から行われた谷人事院総裁との交渉には、福田議長ほか委員長クラス交渉委員が出席して行われた。
 冒頭、議長は要求書(別紙)を手交しながら、次の通り見解を述べた。
(1) 格差や分配構造のゆがみの是正を目指した本年の春季生活闘争は、景気の回復基調のもとで、中小企業やパート労働者を含め昨年を上回る賃金改善を実現した。しかし、企業業績の伸びからみて分配構造を大きく転換するまでには至らない、不十分な結果に終わっているといわざるを得ない。
 一方、公務を巡っては、依然として政府の総人件費削減政策が強力に進められている状況にある。昨年の人事院勧告では、われわれが強く反対したにもかかわらず比較対象企業規模の見直しが強行され、公務員給与が抑制される結果となった。われわれは、このことにより、労働基本権制約の代償機能が著しく損なわれ、人事院に対する信頼も大きく揺らいだといわざるを得ない。政府は、本年の骨太方針で総人件費削減政策をさらに強化することを検討している。貴職が、こうした政府の方針に従い、賃金・労働条件決定の基本的なルールを見直すことは決してあってはならないし、われわれとしても到底容認できない。
(2) 以上のことから、本年の報告・勧告にあたっては、@民間相場を正確に反映した公務員給与の改善勧告A非常勤職員等の雇用や処遇の抜本改善に向けた提言B実効ある超過勤務縮減策の取りまとめや所定勤務時間短縮の意見の申出を含めた労働時間問題の総合的な解決、などの当面する重要課題をなんとしても実現し、中立・第3者機関としての信頼を回復することがなにより強く求められている。また、本年の勧告期の課題について十分交渉・協議し、合意に基づく報告や勧告を行うよう、要請する。
(3) ところで、再就職管理や能力・実績主義人事管理に関わる国公法等改正法案の審議が大詰めを迎えている。これについてわれわれは、@公務員制度の抜本改革の方向性が示されていないことA天下りの事後規制については実効性がきわめて疑わしいことB能力・実績主義人事管理といいながら人事評価制度の整備や労使関係制度の改革が先送りされていること、などきわめて問題の大きい法案だと考えている。
人事院としても、中立・第3者専門機関として対応すべき問題については、毅然として対応していただくよう求めておきたい。とくに、新たな人事評価に関わっては、評価結果の開示や労働組合が参加する苦情処理制度が不可欠であると考えており、@公平・公平、透明で信頼性のある評価制度を確立することA評価の活用方法についてきちっと交渉・協議、合意すること、などについて人事院としても最大限努力してもらいたい。また、今後、政府において「全体パッケージ」として検討される定年延長等の課題についても、重要な勤務条件であることをふまえ、必要な対応を行うよう要請しておきたい。
(4) 本日の要求提出を機に、事務レベルで交渉を積み上げさせて頂くが、しかるべき時期には総裁から直接要求に対する回答を頂きたい。

 続いて山本事務局長が要求書の重点事項を説明。これを受けて総裁は、「要求は承った。公務を巡る状況はかつてなく厳しく、それを考慮におかざるを得ない状況だ。しかし、わたしどもが検討しなければならないことはきちっと検討していく姿勢に変わりない。今後、皆さんの意見を十分聞き、しかるべき段階で回答したい」と、今後十分交渉・協議を積み上げ、しかるべき段階に回答するとの見解を述べた。

(別紙)

2007年6月18日



人事院総裁
 谷  公 士 殿


公務員労働組合連絡会 
議 長  福 田 精 一



2007年人事院勧告に関わる要求書


 本年の春季生活闘争は、景気の回復基調のもとで中小企業を含め昨年を上回る賃金改善を実現しましたが、大きく歪んだ分配構造を是正するまでには至らない不十分な結果に終わっています。
 一方、公務を巡っては、総人件費削減政策が強力に進められ、われわれが強く反対したにもかかわらず昨年の給与勧告で比較対象企業規模の見直しが強行され、実質的に公務員給与が抑制されてきました。われわれは、このことにより、労働基本権制約の代償機能が著しく損なわれ、人事院に対する信頼も大きく揺らいだといわざるを得ません。政府は、本年の骨太方針でさらなる総人件費削減政策の強化策を打ち出すことを検討しており、貴職がこうした政府の方針に追随し、賃金・労働条件決定の基本的なルールを見直すことは、決して認めることができません。
 以上のことから、本年の報告・勧告にあたっては、@民間相場を正確に反映した公務員給与の改善勧告A非常勤職員等の雇用や処遇の抜本改善に向けた提言B実効ある超過勤務縮減策の取りまとめや所定内勤務時間の短縮の意見の申出を含めた労働時間問題の総合的な解決、などの当面する重要課題を実現し、中立・第三者機関としての信頼を回復することがなにより強く求められています。
 貴職におかれては、こうした点を十分認識し、2007年人事院報告・勧告に関わる下記事項を実現することを強く要求します。




1.賃金要求について
(1) 月例給与・一時金の改善勧告について
@ 2007年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の月例給与の水準を改善する勧告を行うこと。また、較差の配分等については、十分な交渉・協議を行い、合意すること。
A 一時金については、民間の実勢を踏まえ、月数増を勧告すること。
B 超過勤務手当の全額支給を実現するとともに、当面、民間実勢を踏まえつつ、割増率を一律的に引き上げること。また、恒常的長時間労働の固定化につながる労働基準法改正法案横並びの割増率改定を行わないこと。

(2) 給与構造の見直し事項について
@ 地域手当の支給割合の引上げに当たっては、十分交渉・協議、合意すること。
A 専門スタッフ職俸給表のあり方について十分交渉・協議、合意し、公務における複線型人事制度の整備に資するものとして本年の勧告で新設すること。本府省手当については、新設しないこと。
B 一般職員の勤務実績反映の運用実態について点検し、必要な対応を行うこと。

(3) 非常勤職員等の処遇改善について
 非常勤・パート職員等の処遇のあり方について十分交渉・協議し、本年の勧告時に以下の点について具体的な改善措置を提言すること。
@ 国会附帯決議(5月8日:参議院総務委員会)に基づき、臨時・非常勤職員の職務内容や任用・給与等の実態調査を実施すること。
A 非常勤等の処遇改善及び制度の在り方について「研究会」を設置し、検討を開始すること。
B 常勤職員と同等の勤務を行っている日々雇用の非常勤職員の給与については、人事院規則を定め、俸給表に位置づけること。
C 公務の最低給与(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
 休憩・休息時間見直しの際の労働時間に関わる課題の「総合的な検討」との約束を踏まえ、以下の事項について本年勧告時までに実現すること。
@ 各府省の勤務時間の実態を踏まえ、本年の勧告時に人事給与システムの導入に対応した厳格な勤務時間管理のあり方と真に実効ある超過勤務縮減の具体策を提言すること。
A 民間の所定労働時間の実態調査結果を踏まえ、本年の勧告時に所定勤務時間の短縮の意見の申出を行うこと。

(2) 男女平等の公務職場の実現について
@ 改定された「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」の着実な実施に向けた指導、メンター制度の実効性確保に向けて必要な取組みを行うこと。
A 育児休業及び育児のための短時間勤務について、数値目標を設定した男性取得の促進策をとりまとめること。

3.その他の事項について
(1) 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。そのために必要な職場環境の整備を行うこと。
(2) 総理の下に設置される有識者による公務員制度に関する検討の場で、公務員の定年延長等が検討されることを踏まえ、勤務条件制度としての総合的な検討を行い、本年の報告で必要な提言を行うこと。
(3) 新たな人事評価の制度設計、その本格実施や活用のあり方等について、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。