2007年度公務労協情報 38 2007年7月31日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

第2次中央行動実施し、人事院から回答引き出す−7/31
−勧告は6日の週、若干の較差勧告、一時金も最小引上げの可能性−

 公務員連絡会は31日、2007人勧期最大の山場となる第2次中央行動を実施した。午後1時30分から、日比谷大音楽堂で行われた中央集会には3千人の仲間が参加し、要求に基づく勧告を求めて最後まで闘う決意を固めあった。第2次中央行動を背景に行われた給与、職員福祉両局長との交渉で人事院は、@勧告日は6日の週で調整中A官民較差に基づき月例給について初任給近辺や扶養手当等の改善を行う方向であり、一時金については最小限の引上げができるかどうかという見通しB専門スタッフ職俸給表の新設等の意見の申出を行うC所定勤務時間の短縮等については早期見直しを報告する、などの回答を示した。これに対して公務員連絡会側が「較差がプラスとなれば6年ぶりであり、一時金も含めて公務員に元気が出るような改善勧告としていただきたい。また、所定勤務時間の短縮は昨年以来の課題であり、今年こそ実現してもらいたい」として、勧告に向けて最後まで努力するよう求めた。公務員連絡会は、さらに折衝を積み重ね、勧告直前には委員長クラス交渉委員による人事院総裁との交渉を行い、勧告内容に関わる最終回答を引き出すことにし、ギリギリまで月例給・一時金の改善と所定勤務時間の短縮を求め交渉・協議を強めることとしている。

 午後1時30分から日比谷大音楽堂で開かれた中央集会は、井津井副議長(国税労組委員長)を議長に選出して始められ、冒頭挨拶に立った福田議長は、「参議院選挙結果は政権交代への第一歩となった。引き続き公共サービスキャンペーンを展開していこう。本年人勧については、6年ぶりの引上げになるといわれているが、精確な調査に基づく勧告を行わせなければならない。公務部内の非常勤職員の問題、所定内勤務時間の短縮も大きな課題だ。要求実現まで最後までたたかい抜こう」と、2007人勧期の最終盤の取り組みに決起することを訴えた。
続いて激励挨拶に駆けつけた山口連合副事務局長は、公務員連絡会が取り組んでいる人勧期闘争を支持し、連合としてもともにたたかうとの決意を表明し、あわせて公務員の労働基本権の確立に向けて全力を挙げていく、と激励の挨拶を行った。
 基調提起では、山本事務局長が「参議院選挙では与党が惨敗したが市場原理主義、小さな政府路線は変わっていないため、引き続き政策転換をめざす取り組みが必要だ」とした上で、本日の給与局長・職員福祉局長との交渉では@月例給与・一時金の改善A非常勤職員の処遇改善B超勤縮減、所定勤務時間短縮を重点に据えて臨むとの方針を提起した。構成組織決意表明には、日教組・小西書記次長、国税労組・葛西中央執行委員、全水道・山本関東地本書記長、税関労連・原川中央執行委員が登壇し、要求実現に向け最後まで闘う決意をそれぞれ力強く表明した。
 集会を終えた参加者は、人事院前交渉支援行動と霞ヶ関一周のデモ行進に出発。「賃金引き上げを勧告しろ」「一時金を改善しろ」「非常勤職員の均等待遇を実現せよ」「所定労働時間を短縮しろ」と力強くシュプレヒコールを繰り返した。
 行動を終えた参加者は再び日比谷大音楽堂に結集し、書記長クラス交渉の報告を受け、要求課題を実現するため最後まで2007人勧期の闘いを進めるとの決意を込めた福田議長の発声による団結ガンバロウを三唱し、この日の行動を締めくくった。
 この日行われた人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。

<人事院職員福祉局長交渉の経過>
 人事院吉田職員福祉局長との交渉は、午後2時15分から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
 冒頭、山本事務局長が「いよいよ勧告に向けて大詰めになってきた。要求を踏まえた具体的な回答をお願いしたい」と局長の見解を求めたのに対して、吉田局長は、以下の通り回答した。

1.勤務時間の短縮について
 本年までの4年間の調査によると、民間企業における平均所定労働時間は、1日あたり7時間44分、1週間あたり38時間48分となっており、職員の勤務時間より1日あたり15分程度、1週あたり1時間15分程度短くなっている。
 勤務時間について、各府省は業務の効率化・合理化や勤務体制の見直し等の所要の準備を行えば、業務遂行に影響を与えることなく対応が可能であるとしているものの、交替制勤務の職場等における体制整備や既存の短時間勤務への制度的な波及等の検討には、今しばらく時間を要する見込みである。したがって、民間準拠を基本として早期に勤務時間を見直すことが適当と考えるが、本年直ちに時短を勧告することができる状況には至っていないと判断したところである。
2.超過勤務の縮減について
 本府省において、職員が超過勤務命令を受けずに相当時間にわたって在庁している実態が見受けられる。この問題については、各府省において在庁時間及びその事由を適切に把握し、不必要な在庁をやめていく必要があるとともに、超勤を命ずべき業務について削減していく取り組みを進める必要がある。政府全体として計画的に在庁時間削減に取り組むこととし、各府省の実態に即した縮減目標の設定や超過勤務の事前登録制など具体的な施策の重要性について報告で言及したいと考えている。また、各府省内での配分の在り方も含め予算の確保を図ることや、業務の繁閑に応じた弾力的な勤務時間制度の導入に向けた検討などについても触れる予定である。
3.高齢者雇用対策について
 無年金期間が発生する平成25(2013)年度を見据えて、民間と同様、年金支給開始年齢までの雇用継続を図ることを前提に、公務における高齢期の雇用確保策について総合的な検討を行う必要があると考えている。本年の報告においては、定年延長や再任用の義務化のいずれをとるにせよ検討を必要とする事項の提示や、この課題に関する研究会の設置など今後の検討体制の整備について言及することを考えている。
4.専門スタッフ職俸給表適用者に係る勤務時間の弾力化について
 専門スタッフ職俸給表適用者については、その業務遂行の特殊性、すなわち自律性が高いことや集中的・継続的に業務を行う必要がある場合がある、などを踏まえ、弾力的な勤務時間の設定が可能となるよう措置する予定である。これについては、勤務時間法の一部改正で必要な措置をとることとなる。
5.その他
 このほか、心の健康づくりの推進や現在研究会を行っているテレワークの検討についても、報告において言及することとしている。

 これに対し、公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 所定勤務時間の短縮については「早期に見直すことが適当」としながら、どうして今年勧告しないのか。われわれとしては、休憩・休息時間見直しの際の人事院の約束も踏まえ、あくまで今年実施すべきであると考える。仮に、今年困難な場合であっても、来年はやるということを明言してほしい。
(2) 超過勤務については、実態として命令が出ておらず、勤務時間管理に厳格さが乏しいという問題があることも踏まえて具体的に対策を取るべきだ。
(3) 高齢雇用について研究会を設けるとのことだが、どんなことを検討するのか。また、公務員連絡会の代表を参加させていただきたい。
(4) 専門スタッフ職については、別途、議論をさせていただいた上で「意見の申出」をしていただきたい。

 これらの指摘に対し吉田局長は次の通り答えた。
(1) 準備を行えば業務遂行への影響なく時短が可能だが、所要の準備に時間がかかる。とくに交替制(船員、刑務所、病院等)や、8月から導入する育児短時間勤務などについても十分な制度的検討が必要ということがある。いつやるかについては、いま最後の詰めの作業を行っているところだ。これまでの経緯も踏まえ、公務員連絡会のご要望を重く受け止め、しっかり検討していく。
(2) 実際の超勤縮減は、各府省がどういうマネジメントをするかということになるが、報告では実情をしっかりつかまえ、政府全体として取り組む必要があることなど指摘することにしたい。
(3) 研究会は学識経験者を中心にこの秋にも発足させて、定年延長や再任用の義務化、その他の関連する問題について幅広く検討したい。
(4) 専門スタッフ職の勤務時間については、新しい仕組みということではなく、研究者のフレックスタイム制をベースに、4週間ごとに勤務時間を割り振る仕組みを考えている。

 最後に公務員連絡会側は、「本日申し上げた要求を踏まえ、総裁回答に向けて最大限努力していただきたい」と重ねて要望し、交渉を締めくくった。

<人事院給与局長交渉の経過>
 人事院出合給与局長との交渉は、午後2時45分から行われ、公務員連絡会側は書記長クラス交渉委員が臨んだ。
 冒頭、公務員連絡会山本事務局長が「6月18日に総裁宛の要求を提出し、これまでに交渉を積み上げてきたので、今日はわれわれの要求を踏まえた回答をお願いしたい」と局長の回答を求めたのに対し、出合局長は「勧告期の作業については、公務員連絡会の様々な要望や人事院が労働基本権制約の代償機関であるという立場を踏まえて行ってきた」とした上で、以下の通り回答した。

1.勧告日について
 8月6日の週で調整中である。
2.月例給の官民較差について
 若干のプラスがでる見込みである。
3.俸給表改定・配分について
 較差が小さいことが予測されることから、俸給表全体にわたる改定は行わない予定である。まず、民間との差がかなり大きくなっている初任給近辺を中心に改善したいと考えている。手当については、較差にもよるが、少子化対策の観点から扶養手当のうち子に係る手当に配慮したいと考えている。公務員連絡会のご意見も踏まえながら最終的に決めたいと考えている。
4.特別給について
 現在集計の最終段階であるが、最小限の増加があるかどうかという見通しである。プラスが出る場合には、民間企業のボーナスにおいて考課査定分が引き続き増加していることから、勤勉手当に充当したいと考えている。また、平成18年度に行ったと同程度の査定原資への振り向け(上位の成績区分の成績率の引き上げ)も行いたいと考えている。
5.専門スタッフ職俸給表について
 給与構造改革の一環として、平成20年度から専門スタッフ職俸給表を新設する予定である。その概要については次のとおりである。
・俸給表は、本省課長補佐級、企画官・室長級、課長級までの水準を基礎とした3級構成で、高度な専門的知識経験が必要とされる調査、研究、情報の分析等により、政策の企画及び立案等を支援する業務に従事する職員を対象とすることとしている。
・専門スタッフ職の昇給や勤勉手当の仕組みは、より成果に着目したものにすることを考えており、さらに最上位の3級の職員については、その専門性の度合い及び業務の困難性に応じて、俸給月額の10%に当たる専門スタッフ職調整手当を創設する予定である。
・この俸給表は、ライン職を中心とした人事管理から複線型人事管理に転換していくに当たっての環境整備の一環として、高度の専門能力を持つスペシャリストに対して適切な給与処遇が行えるよう措置するものと位置づけている。勤務時間の弾力化とあわせて、これまでと違う働き方のできる官職をつくっていきたい。
6.地域手当の支給割合の改定について
 平成20年度における地域手当の暫定支給割合について、支給地域における職員の在職状況等を踏まえて改定を行う。なお、官民較差の状況によっては、改定の一部を前倒しで本年4月に遡って実施することを考えている。
7.非常勤職員の給与について
 非常勤職員の処遇問題については、職員団体から改善に関して非常に強い要望があることを踏まえ、給与に係る問題について一歩でも進むよう、報告において、人事院としての問題意識及び検討の方向性について言及したいと考えている。
8.住居手当の見直しについて
 住居手当に関し、新築・購入時の自宅に係る手当の廃止を含め、民間における支給状況等を踏まえつつ、その見直しに着手したいと考えており、その旨報告で言及することとしている。
9.人事評価結果の給与への反映について
 人事評価については、その基本的枠組み及び評価結果の任免、給与等への活用に関して、本院の基本的な考え方を提示することとしている。今後、職員団体とも十分意見交換をし、使える制度にしていきたい。

 回答に対し公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質し、要求実現を迫った。
(1) 勧告日について、もう少し明確にしていただきたい。
(2) 官民較差がプラスということであれば、俸給表については初任給と若年層の引上げ、手当について生活給のうち扶養手当の子を中心とした引上げを求める。配分については、別途、交渉・協議を行い、合意に基づいて勧告していただきたい。
(3) 一時金については、これまで下げるときは期末手当、上げるときは勤勉手当ということで実施されてきたが、そのルールについてわれわれと十分な話し合いは行われてこなかった。今後は、どのように配分するかについて十分な話し合いを行って合意に基づいて実施していただきたい。本年改善するとすれば、期末手当を引き上げるべきだ。仮に勤勉手当であるにしても、評価制度がまだ整備されていないことも踏まえ、標準者の割合を厚くすべきだ。この問題も別途交渉の上で決めるべきだ。
(4) 専門スタッフ職俸給表について、複線型人事制度との関係がよく分からないので説明していただきたい。
(5) 非常勤職員の問題は、格差社会の中、公務でも重要な課題であり、踏み込んでいただいて具体的な処遇改善につながる第一歩を報告していただきたい。
(6) 自宅に係る住居手当の見直しは、春の段階では全く出ておらず、今になって突然出てきたのは納得できない。地方公務員への影響も大きい。話し合い自体を拒否するものではないが、「廃止」を前提にした協議には反対である。

 これに対し出合局長は次の通り見解を示した。
(1) 勧告日については相手のある話なので、いまの段階では確定的に言えない。
(2) 配分については、考え方は異なっていないので、よく意見を聞き、結論を出していきたい。
(3) 一時金については最終調整を行っているところだ。民間の査定昇給割合が増えていることから、上げる場合には勤勉手当にしたいし、査定原資も増やしたいと考えている。なお、配分をどうするかについては、今後よく議論していきたい。
(4) 複線型人事管理について、専門能力を持っている職員について、定年あるいは定年後まで公務内で働いてもらうことから始めようと考えている。人事を多様化していくことのスタートにするという位置づけである。
(5) 非常勤職員については、給与だけではなく、任用、定員、財政など様々な課題があるが、同じような仕事をしていても府省によって処遇のあり方が違うなどの問題があるので、それを踏まえ、どうしていくべきかの検討を行うことを指摘したいと思っている。
(6) 住居手当はあくまで「廃止」を含め見直しに着手しようということである。手当については一方で合理化し、他方で必要なところに付けていくという見直しが必要である。

 最後に、公務員連絡会側は「われわれの要求を反映するとともに、一時金増を含め精確な官民較差に基づく改善、勧告となるよう、最後まで努力していただきたい」と強く求め、事務レベルの最終交渉を締めくくった。