人事院は、8日午後5時半過ぎ、内閣と国会に対して、@月例給を1,352円、0.35%改善し、一時金の支給月数を0.05月引上げ年間4.5月とする給与改定勧告と住居手当の見直しや非常勤職員給与の実態把握に努め適切な給与を支給する方策を検討するなどの給与に関する報告A来年を目途に勤務時間短縮、新たな超勤縮減策を推進、新たな人事評価制度や高齢雇用についてさらに検討するなどとした公務員人事管理に関する報告を行った。政府はこれを受けて10日に第1回目の給与関係閣僚会議を開いて取扱い方針を協議する予定。
公務員連絡会は、人事院勧告・報告が内閣・国会に提出されたことを受けて、@ベア勧告、一時金の増額は当然A所定勤務時間短縮に踏み込まなかったことは不満だが、来年勧告の確約は到達点B勧告通り実施する閣議決定を行い法案を国会に提出すること、などを求める声明(資料1)を発した。そして、委員長クラス交渉委員が、8日夜には厚生労働大臣、9日には官房長官、総務大臣に対して、@勧告通り実施する閣議決定を行い、早期に給与法改正法案を国会に提出することA人事評価制度の構築に向け、評価結果の開示や職員代表等が参加する苦情処理制度を整備することB公務の労使関係の抜本的改革に着手すること、などを求める要求提出を行うことにしている。
また、公務員連絡会は、8日の人事院勧告を踏まえ、9日に職場集会を中心とした第4次全国統一行動を実施し、内閣総理大臣と総務大臣に要請文を送付する行動などを実施する。
公務員連絡会としては、本年の人勧取り扱いについて、予断を許さない情勢にあるとの認識に基づき、政府等に対する取組みや地方確定闘争などの秋季確定闘争に全力を挙げることとしている。
資料1−公務員連絡会の声明
声 明
(1)人事院は、本日、月例給を1,352円、0.35%、一時金の月数を0.05月引き上げることを中心とする本年の給与勧告や非常勤職員の処遇改善に向けた検討、所定勤務時間の短縮に向けた準備を開始することなどの報告を行った。
(2)2007人勧期の取組みでわれわれは、公務を巡る厳しい情勢を踏まえながら、公務員給与の社会的合意の再構築や団体交渉による決定制度の確立を運動の基本目標として位置づけつつ、@給与水準の改善勧告の実現A非常勤職員の処遇改善B所定勤務時間の短縮、などを重点課題に設定し、2次の中央行動や3次の全国統一行動を実施して、公務員制度改革や参議院選挙闘争と一体の闘いを進めてきた。
(3)本日の人事院勧告は、6年ぶりにベア勧告が行われ初任給・若年層の俸給表が改定されたこと、一時金についても最小単位ではあるもの月数増の勧告が行われたこと、などは本年の民間賃金の実勢や動向からして当然のことであるが、公務員給与を巡る厳しい情勢の中で、終始、給与改善を求めてきたわれわれの取組みの成果である。また、本年、所定勤務時間短縮の勧告に踏み込まなかったことは不満であるが、来年の実施を確約させたことも、ねばり強い交渉の到達点として確認できる。
しかし、@一時金の配分において、人事評価制度が確立していない現状において十分な協議もなく勤勉手当の成績上位者に重点配分したことA専門スタッフ職俸給表について複線型人事制度との関わりを十分説明することなく、政府の要請に基づいて勧告したことは、納得がいかない。加えて、突如、自宅に係る住居手当の「廃止も含め見直しに着手する」ことを一方的に宣言したことについても極めて遺憾である。
公務内の格差是正の課題として重視してきた非常勤職員の処遇改善や超過勤務縮減策については、従来に比べて一歩踏み出しているが、われわれの要求に照らして不十分といわざるを得ない。これを第一歩として、確実に次のステップに踏み出すよう強く求めておきたい。
その他、@高齢雇用の促進A人事評価制度とその活用のあり方等についても検討を進めるとしているが、これらの課題はいずれも勤務条件の重要事項であり、今後、十分交渉・協議し、合意の上で施策のとりまとめを行うことを求めておきたい。
(4)現在われわれは、昨年の比較対象企業規模の一方的な見直し等により、公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度が歴史的・制度的に限界を迎えているとの認識に基づき、団体交渉による決定制度とそのもとでの新たな賃金闘争の構築を目指して全力で取組みを進めている。しかし、それらが実現するまでは、現行の人事院勧告制度のもとでの賃金・労働条件改善の取組みを着実に進めていくことが必要である。
以上のことからわれわれは、政府に対して、公務員労働者や地域の民間労働者等の生活改善に結びつく本年の給与改善勧告を直ちに勧告通り実施する閣議決定を行い、早期に給与法改正法案を国会提出することを求め、秋季確定闘争を進めることとする。
(5)参議院選挙で自民党が大敗し、与野党逆転がなったとはいえ、公務・公共部門については引続き厳しい情勢が継続するものと認識する必要がある。秋季確定闘争を巡っても、追いつめられた安倍政権が公務員給与を焦点に据え、ますますバッシングを強めることも十分に想定され、勧告の取扱いも予断を許さない情勢にある。
われわれは秋季闘争において、こうした厳しい情勢を十分認識し、新賃金の確定闘争を強めるとともに、これから本格化する地方自治体、独立行政法人、政府関係法人等の闘いにおいても統一闘争体制を堅持し、全力で取組みを進めることとする。
同時に、国公法の改正で公務員制度改革が新たな段階に入ったことを踏まえ、連合・公務労協に結集し、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」や「専門調査会」への対応を強め、労働基本権の確立を含む公務の労使関係制度の抜本的な改革や透明で納得性のある人事評価制度確立に向け総力を挙げて取組みを前進させていく。さらに、政府・与党の「構造改革路線」に対決し、格差是正と良質な公共サービス確立キャンペーンを全力で進めていくものである。
2007年8月8日
公務員労働組合連絡会
資料2−連合事務局長談話
2007年8月8日
人事院勧告に対する事務局長談話
日本労働組合総連合会
事務局長 古賀 伸明
1.人事院は8日、政府と国会に対し、本年度の国家公務員の給与について、月例給を1,352円(0.35%)引きあげ、一時金を昨年実績に0.05ヶ月プラスの4.5ヶ月とする勧告を行った。民間賃金の動向は、連合の賃金・一時金集計でみても、同様の傾向にあり、その動きをほぼ反映した内容といえる。6年ぶりの月例給の改善は、民間組合のつくりだした賃金改善の流れを強めるものと評価できる。政府と国会は、人事院勧告の取り扱いを政争の具とせず、早期完全実施をはかるべきである。
2.今回の勧告では、非常勤職員の待遇改善が今後の検討課題として言及されている。これまでほとんど触れられなかった経緯を考えると一歩前進といえるが、検討だけで具体的な待遇改善がはかられなければ、公務労働者間の格差は拡大する。人事院は、職場実態・賃金実態をきちんと把握し、必要な方策について速やかに改善措置を行うべきである。
3.また、専門スタッフ職俸給表の新設や評価制度が未整備の状態での一時金の重点配分など、人事処遇制度の変更なども盛り込まれている。こうした労働条件と密接に関連する課題については、本来、労使による十分な協議と合意形成がはかれるべきものであるが、当該組合への説明や当該組合からの意見反映が不十分だと言わざるをえない。
4.連合は、「公共サービス・公務員制度のあり方に関する連合の考え方」などで人事院勧告制度そのものの問題点を指摘してきた。根本的な問題解決のためには、労働基本権の回復によって団体交渉による労働条件決定をできるようにすべきである。連合は、関係産別とともに、ILO勧告に沿う労働基本権の確立と透明で民主的な公務員制度改革の実現に向けて、引き続き全力で取り組んでいく。
以上