2007年度公務労協情報 44 2007年9月7日
公務公共サービス労働組合協議会

 公務員労働組合連絡会

人勧の取扱いで総務省人事・恩給局次長と交渉−9/7

 公務員連絡会は、7日午前10時30分から、本年の給与勧告の取扱いを巡って総務省人事・恩給局交渉を実施した。総務省側からは阪本人事・恩給局次長ほかが出席し、公務員連絡会側からは岩岬副事務局長ほか幹事クラス交渉委員が交渉に臨んだ。
 この交渉は、8月8日に政府に要求書を提出して以降、初めての交渉として実施されたもの。公務員連絡会としては、この日の交渉をかわきりに、19日に第1次中央行動を実施し、勧告の完全実施に向けた秋季闘争を強化することとしている。

 交渉の冒頭、岩岬副事務局長は「8月8日に人事院勧告に関する要求書を総務大臣に提出し、1ヵ月が経過している。本日は、勧告の取扱いについて中間的な検討状況を聞かせていただきたい」と述べたうえで、次の4点について、総務省人事・恩給局の考えを質した。
(1) 本年の給与勧告の取扱い状況と今後の見通しについて明らかにしてもらいたい。われわれは、直ちに勧告通り実施する閣議決定を行うべきだと考えており、総務省としても、完全実施に向け不退転の立場で給与関係閣僚会議に臨んでいただきたい。
(2) 改正国公法に基づく人事評価については、評価結果の開示や職員代表等が参加する苦情処理制度を整備することが大事であり、透明で信頼される人事評価制度の構築にむけて努力していただきたい。今後の作業に当たっては、人事評価の試行を担当する総務省がリーダーシップを発揮すべきではないか。
(3) 公務員制度改革は、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」で検討されることになっているが、その審議状況を明らかにしてほしい。また、懇談会において検討されることとなっている「定年延長」の問題についての総務省の考え方を示してもらいたい。
(4) 秋に予定されている「専門調査会」の最終報告については、われわれが納得できるものが出た場合には、総務省としても速やかに公務の労使関係の改革に着手してもらいたい。

 これに対して、阪本人事・恩給局次長は、次のとおり総務省の見解を示した。
(1) 人事院勧告制度は、国家公務員の労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり、政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢に立って対処してきているところである。今年度の人事院勧告についても、従来からの基本姿勢の下、国民の理解を得られるような結論を得るべく国政全般との関連を考慮し、誠意をもって検討を進めてまいりたい。当然のことながら、皆様方の意見も十分にお聞きしながら、検討を進めてまいりたい。
 スケジュールについては、8月10日に開催された第1回給与関係閣僚会議において、その取扱いの検討に着手したところであり、現段階において今後の具体的なスケジュールを申し上げることはできないが、できるだけ早く結論を得るべく努力していきたいと考えている。当然ながら臨時国会の開催を念頭においているが、関係省庁間で更に検討を進めているところであり、しかるべき時期に関係閣僚の日程を調整し、改めて閣僚会議にお諮りしたいと考えている。
(2) 信頼性の高い人事評価制度の構築に当たり、評価結果のフィードバックや苦情処理の仕組みのあり方は、大きな論点であると認識している。試行を担当する総務省としても、制度設計を担当する行革事務局と連携・協力して検討を進めてまいりたい。政令案についての職員団体との協議については、行革事務局が対応することになると認識しているが、総務省としても、職員団体の皆さまとは十分に話し合うことは必要であると考えている。
 総務省としては、これまでの試行や検討により得られた知見を行革事務局に提供し、政令案にそれらが反映されるよう、連携・協力しながら検討を進めることとしている。 なお、人事評価制度の設計に関わる協議、苦情処理の仕組みに関する協議については、地方支分部局・専門職種の試行への準備等の対応状況を踏まえ、日程や議題について相談してまいりたい。
(3)「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」は、採用から退職までの公務員の人事制度全般について総合的・整合的な検討を行うために開催することとされ、7月24日に第1回会合が行われたところである。懇談会の委員には、労働界からも高木連合会長が就任されており、幅広い観点から自由かつ活発な御意見をいただくものと認識している。本年秋までにまとめられる報告をもとに、行政改革推進本部において公務員制度改革に関する基本法案を立案し、次期通常国会に提出されるものと承知している。また、労働基本権を含む労使関係の在り方については、行政改革推進本部専門調査会において議論されているところであり、本年秋までに報告がまとめられるものと承知している。総務省としては、改革の推進について、国家公務員制度を所管する立場から、引き続き行政改革推進本部と連携協力してまいりたい。
 定年延長については、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」で総合的・整合的な検討を進めることとされている。公務員制度を所管する総務省としても、必要に応じこれに連携・協力してまいりたい。なお、定年延長は、幅広い課題を有しており、内々で研究していく必要があろうかと考えている。

 これらの回答に対して、公務員連絡会側は、さらに次の通り追及した。
(1) 勧告の取扱いについて、「国民の理解が得られる」とのまくら言葉が付いているが、総務省は給与を上げるときも下げるときも、人勧完全実施が基本姿勢であったはずである。本日の次長の回答はその点が不明確である。総務省の給与関係閣僚会議に臨む姿勢について、改めて明確にしてもらいたい。
 スケジュールについては、臨時国会が9月10日から62日間の会期だとすれば、改正給与法案の審議日程も自ずと制限されてくるのではないか。
(2) 政令案の作成は、行革推進事務局であるとしても、バックデータや仕組みの基本設計の情報は人事・恩給局が提供するのではないか。実質的な結論を出すのは人事・恩給局であり、それはわれわれとの議論の結果であるということを忘れないで欲しい。
 また、人事評価の本格実施に向けた今後のスケジュールについて、明らかにしていただきたい。
(3) 定年延長については、総務省の積極的な対応の姿勢が感じられない。人事院は、研究会の9月設置を決めている。総務省人事・恩給局としても、待ちの姿勢ではなく、主体的、積極的な対応をしていただきたい。

 これに対して、人事・恩給局次長からは、次のとおり、回答があった。
(1) 勧告の取扱いについて、公務員を巡る厳しい情勢からして「国民の理解」というのは当然必要であり、人勧尊重も当然である。総務省としては、従来から労働基本権制約の代償措置としての機能を果たしてきた人事院勧告は今年も完全実施されるべきとの考え方に立ちつつ、国民の理解が得られる結論を早急に得るべく、努力してまいりたい。
(2) 人事評価制度の今後のスケジュールについては、公布から2年以内に施行されることとされており、その円滑な導入に向け、行革事務局と連携・協力を図り進めてまいりたい。
(3) 定年延長は、大きな課題になると思っている。給与その他との関わりもあり、今の仕組みを単純に延長すれば良いというものでないと認識している。秋に「懇談会」の報告が出る予定であり、それを踏まえて、総務省としては検討してまいりたい。

 以上の通り、われわれの追及に対して次長は最後まで抽象的な見解を示すにとどまった。そのため公務員連絡会側は、「本日は、勧告の取扱いについて、まだ途中段階であるとは言え、具体的な方向性が示されなかったことは不満と言わざるを得ない。他の課題についても、要求に応える明確な見解は示されなかった。9月19日に局長交渉を予定しているが、その段階で勧告の取扱いを含めて、納得できる具体的な回答をお願いしたい」と強く申し入れ、交渉を終えた。

以上