2007年度公務労協情報 8 2006年11月14日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

総務省へ2007年度基本要求を提出−11/14

 公務員連絡会は、11月10日に給与法改正法案が成立したことを受けて、人事院、総務省に対して2007年度の賃金・労働条件改善に関わる基本要求を提出し、12月中旬までにそれぞれ誠意ある回答を示すよう求めることとし、13日の人事院への申入れに続き、14日、総務省人事・恩給局に対する申し入れを行った。

<総務省人事・恩給局との交渉経過>
 総務省への「2007年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ」(資料参照)提出交渉は、14日15時から行われ、公務員連絡会からは幹事クラス交渉委員が臨み、総務省からは阪本人事・恩給局次長らが対応した。
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長が「給与法が成立したが、今日時点においても官民比較方法の見直しは容認できない。使用者・政府として、社会的に公正な公務員賃金はどのようなものかを我々と議論させていただきたい」と述べたうえで、基本要求の重点事項を次の通り説明し、12月のしかるべき時期に回答するよう求め、見解を質した。

(1)定員削減にともなう配置転換等の実施については、1年目の取組みがほぼ終わり、もうすぐ2年目の計画の時期になるが、公務員の使用者としての立場から引き続き雇用確保に向けて積極的な取り組みをお願いしたい。
(2)連合全体としては、目に見える形での賃金改善を議論しているが、その点を踏まえ、来年度は公務員給与の改善に結びつくよう取り組んでいただきたい。
(3)公務員賃金を社会的にどう位置づけ直すのかという課題がある。公務員給与の社会的合意を構築するためには、政労トップ会談が必要だ。総務省人事・恩給局としてもその実現に努力していただきたい。
(4)育児のための短時間勤務制度の法案は、次期通常国会の早い時期に提出、成立をさせていただきたい。
(5)退職手当の今後の検討にあたっては、現行の水準を維持するというスタンスで臨んでもらいたい。
(6)福利厚生施策については、総人件費削減という厳しい情勢の中ではあるが、重要な課題であるので、少しでも前へ進むように取り組んでいただきたい。
(7)天下りに関してのいわゆる「中馬プラン」は、事前規制を撤廃し、官業癒着を断たせるものとなっていないなど問題であり、断固反対である。複線型人事管理等によって在職期間の長期化を実現し、天下りをなくすよう努力すべきだ。また、高齢者任用制度については、雇用と年金の接続という制度の趣旨と乖離する実態がある。希望者全員に適用されるように改善されたい。
(8)男女平等の公務職場については、引き続き、目に見える施策の努力をお願いしたい。
(9)新たな評価制度については、別途交渉するが、評価結果の開示や苦情処理制度などが整備されたものとなるよう取り組んでいただきたい。

 これらに対して次長は、「要求書は多岐にわたっているので、今後、検討して回答したい。給与に関わっては、皆さんにとって不満な点もあったと思うが、給与構造改革を行う給与法改正法案が成立したところで、本日公布のための閣議決定が行われた。総務省としては、今後とも労働基本権を制約されている代償措置としての人事院勧告制度を尊重する基本姿勢に立って、国政全般も考慮し適切に対応していきたい」と、今後要求事項を検討し回答するとの見解を示した。

 これに対して、公務員連絡会側はさらに@育児短時間勤務制度の法制化作業の状況A公務員給与の社会的な位置づけのあり方B福利厚生制度についての国家公務員と民間と比較調査の必要性等について、総務省の見解を質した。
 これらについて、総務省側は、@現在、法制局で審査している。論点が多岐にわたっているが、通常国会に間に合うよう取り組んでいきたい、A総務省としては、公務員給与水準をただ引き下げれば良いというような考え方はないし、現在もそのような動機はもっていない。ただし、公務員給与は国民の理解が必要であり、そうした観点から官民比較方法の見直しを人事院に要請し、人事院が中立・公正な立場から行った判断を尊重した。この考え方は今後も変わらないB福利厚生については重要な課題として今後も検討していきたい、などとする見解を示した。

 最後に、公務員連絡会から「本日は要求書の提出なので、今後十分検討して、しかるべき段階で誠意ある回答をお願いしたい」と要望したのに対し、総務省側は「誠意をもって検討し、回答したい」と応え、要求提出交渉を終えた。


資料.総務省への基本要求書

2006年11月14日



総務大臣
 菅  義 偉 殿

公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一


2007年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 日本経済は、大企業を中心として好調を持続しているのとは対照的に、勤労者の所得は企業規模や雇用形態による二極化が進行し、全体としても低迷を余儀なくされています。疲弊の度を強めた地域経済も少なくなく、若者の雇用も改善されず、勤労国民の将来不安は一層募っています。
 こうした状況の中で、人事院は本年勧告において、わたしたち公務員連絡会の反対を押し切って、官民給与比較方法を一方的に見直しました。その結果、本年人勧では月例給、一時金ともに据え置きとなり、比較方法を見直さなかった場合と比べて月例給で1.12%、4,252円、一時金で0.05月分の賃金改善が見送られることとなりました。
 わたしたちは、貴職に対し使用者責任を果たす観点から、本来あるべき給与改定を行うよう求めましたが、人勧通りの給与法改正という結果となっています。
 このことが、公務員労働者の生活に大きな影響を及ぼすのみならず、その志気を挫くことを通じて国民に対する行政への信頼を一層損ねることを強く危惧しているところです。さらに、中小・地場企業に働く労働者の賃金抑制を招き、勤労国民の所得低迷と格差拡大、公務員バッシングの悪循環となることを強く懸念しています。
 また、被用者年金制度の一元化に関連した退職手当の検討、総人件費削減政策や公共サービス改革の具体化が迫られており、公務員の雇用や処遇を確保・改善するための使用者としての貴職の役割はますます重要となっています。
 そうした観点から、2007年度の賃金・労働条件改善に関わる基本的な要求事項を下記の通り申し入れますので、誠意を持って協議に応じ、諸課題の解決に全力であたられるよう要請します。



一、公務員の総人件費と給与等に関わる事項
(1) 公務員総人件費削減政策の具体化に当たっては、良質な公共サービスを確保する観点から、事務・事業のあり方を検証するとともに、公務員連絡会と十分協議すること。
(2) 定員削減にともなう配置転換等の実施に当たっては、真に本人の希望に基づくものとなるよう、引き続き雇用調整本部と公務労協・公務員連絡会との間で十分交渉・協議すること。また、「公共サービス改革基本方針」に基づく官民競争入札に当たっては、公共サービス、適正な労働条件及び公務員の雇用確保を前提とすること。
(3) ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容にふさわしい社会的に公正な給与水準を確保すること。当面、2007年度においては、公務員給与水準を維持・改善すること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 公務員給与のあり方について、社会的合意が得られるよう、政労トップ会談を行うこと。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
(1) 育児のための短時間勤務制度の早期実施について
 育児のための短時間勤務制度の早期実施に向け、次期通常国会の冒頭に関係法案を提出すること。
(2) 本格的短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現すること。また、育児のための短時間勤務制度の実施を踏まえて、本格的短時間勤務制度を実現するため、公務員連絡会との協議を行うこと。
(3) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 当面、@年間総労働時間1800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B自己啓発等休業制度の早期実施を踏まえた総合的な休業制度、などを実現すること。また、「国家公務員の労働時間短縮対策について」の着実な実施を図ること。

三、退職手当の水準等に関する事項
(1) 退職時給付調査結果及び人事院の意見を踏まえ、現行の退職手当水準を維持すること。
(2) 育児短時間勤務制度等の導入に伴い、退職手当制度について、下記事項を改善すること。
@育児休業期間、育児のための短時間勤務者の勤務期間を退職手当の勤続期間から除算しないこと。
A後補充のための任期付短時間勤務職員に退職手当を支給すること。
B自己啓発等休業期間の勤続期間の除算を2分の1とすること。

四、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福 利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応することこと。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応した心の健康づくり対策の着実な推進をはかること。
(3) 2007年度の予算編成に当たっては、職員厚生経費をはじめ、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を増額すること。

五、天下り規制強化、在職期間の長期化並びに高齢者再任用制度に関わる事項
(1) 天下り規制を強化するとともに、引き続き在職期間の長期化に積極的に取り組むこと。
(2) 民間における高齢者雇用継続制度の導入など高齢者雇用の進展を踏まえ、定員の弾力的扱いをはかるなど高齢者再任用制度の定着と拡大に取り組み、雇用と年金の接続をはかること。また、再任用者の実態把握や在職者の再任用希望調査を行い、実情把握に努めること。

六、男女平等の公務職場の実現に関わる事項
(1) 公務の男女平等参画の促進を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2)「子ども・子育て応援プラン」及び育児のための短時間勤務制度の導入を踏まえ、取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、短時間勤務等の取得を促進すること。
(3) 使用者の立場から、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行を 図るよう指導すること。

七、公務員制度改革に関わる事項
(1) 公務、公務員及び労使関係のあり方に関する専門調査会の審議を促進し、労働基本権の付与を柱とする民主的で透明な公務員制度改革案をとりまとめるよう、中央人事行政機関として努力すること。
(2) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。また、国際労働基準違反と指摘された現行法制の見直しについて直ちに協議を行うこと。

八、「新たな評価制度」に関わる事項
(1) 新たな評価制度の検討に当たっては、公正・公平性、透明性、客観性、納得性が具備され、苦情処理制度、労使協議制度などが整備されたものとすること。
(2) 第2次試行に当たっては、上記、4原則2要件を具備したものとなるよう、評価基準と結果の開示、労働組合が参加する苦情処理制度の確立に向け最大限努力し、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意の上で実施すること。
(3) 新たな評価制度の確立に向けて、その全体像、実施スケジュール等を早急に提示すること。

九、その他の事項
(1) 本年4月施行の改正障害者雇用促進法に基づき、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。

以上