給与法改正法案は11月6日の衆議院総務委員会で採択され、8日の本会議で可決され、参議院に送られていた。しかし、国会における与野党対立の影響を受けて審議が延び延びとなり、20日の参議院総務委員会で趣旨説明が行われ、本日、同委員会で審議され、全会一致で採択され、26日の参議院本会議で可決・成立する見込みとなった。成立すれば、30日に公布となる。なお、22日の同委員会では附帯決議(資料)も全会一致で採択された。
参議院総務委員会では、民主党の加藤敏幸、那谷屋正義、武内則男の各議員、社民党の又市征治議員らが、本年の人事院勧告不完全実施や人勧制度の問題点等を追及した。そのうち加藤議員は「不完全実施について、総務大臣はギリギリの判断と言うが、政府の恣意的判断ではないか」と政府の姿勢を追及、武内議員は@専門調査会報告を踏まえた公務の労使関係の改革A地方自治体における財政赤字を理由とした賃金カットの問題、又市議員は、公務における非常勤職員の問題を取り上げた。また、那谷屋議員は、以下の通り、本年の人事院勧告「不完全実施」や政府の人事院に対する「民間給与のより一層の反映のための更なる方策の検討」要請などを追及した。
<那谷屋議員>
不完全実施となったことについて、人事院総裁は談話で遺憾の意を表明しているが、人勧制度そのものが大きく傷つけられたという認識はないか。
<谷人事院総裁>
結果として一部が実施されなかったことは誠に遺憾だ。今回の政府の決定で人勧制度が危うくなるとまでは考えていない。特別な事態である。今後とも尊重されるよう訴え続けていきたい。
<那谷屋議員>
今回のような事態となったことは、公務員の賃金について労使交渉で決める制度に変えていくことが今日的課題であり、その実現のため労使協議の場を設けるべきだ。
<山本総務副大臣>
専門調査会から労使関係のあり方について報告が出されており、政府としては公務員制度改革の一環として国民の理解を得られるよう関係方面と議論して総合的に判断したい。
<那谷屋議員>
人勧取扱いの閣議決定の際、政府から人事院に対し、官民比較方法見直しの再要請が行われたが、昨年政府の要請に基づき100人以上を50人以上に変えたばかりであるし、給与構造改革も進行中である。再度見直しを求めるのは極めて問題だ。
<増田総務大臣>
国民の理解を得るためにも、地域の民間企業の賃金に合わせる必要性が引き続きあることから、そうした方策の検討を人事院に求めたものである。
資料−参議院総務委員会の附帯決議
一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
平成19年11月22日
参議院総務委員会
政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項に配慮すべきである。
1.人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、人事院勧告を尊重する姿勢を堅持し、完全実施するよう努めること。
2.専門スタッフ職俸給表の導入がライン中心の人事管理を見直し、複線型人事管理を実現することに資するものとなるよう、専門スタッフ職職員に適用される制度の不断の見直しに努めること。また、採用試験の種類にとらわれない人事管理を行うなど、幹部職員の選抜及び育成に係る制度の抜本的な見直しに着手すること。
3.官民給与比較の在り方の検討ついては、平成18年度に始まる給与構造改革の実施途中にあること、及び、人事院が公務員人事管理をつかさどる独立性の強い中立第三者機関・専門機関であることに、十分に留意すること。
4.いわゆる常勤的非常勤職員について、勤務形態の調査に基づき、職務内容、勤務条件等を速やかに検討すること。
5.公務員制度改革の一環として検討が進められている公務の労使関係の見直しに当たっては、職員団体等の十分な意見聴取と理解の下、国民の理解が得られる結論を得ること。
右決議する。