2008年度公務労協情報 15 |
2007年12月14日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会 |
総務省、人事院から基本要求に対する回答引き出す−12/14
公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、14日、総務省人事・恩給局次長及び人事院職員団体審議官と交渉をもち、11月21日に提出した本年度の基本要求に対する回答を引き出したが、回答はいずれも具体性がなく不満な内容に止まった。公務員連絡会は、秋季闘争で解決がつかなかった課題については、春季生活闘争に引き継いでいくこととし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。
<総務省人事・恩給局次長との交渉経過>
総務省人事・恩給局阪本次長との交渉は、14日午後1時30分から総務省内で行われ、公務員連絡会側が基本要求に対する回答を求めたのに対して、阪本次長は「去る11月21日に要求書を受け取って以来、部内において誠意を持って検討を行ってきたところである。本日は、今の時期における当局の主な考え方をお答えしたい」として次の通り答えた。
1、公務員の総人件費と給与等について
(1) 配置転換等の取組に関しては、内閣官房とも累次意見交換をされていると承知しているが、これからが本当の正念場であり、現時点では、順調に進んでいるように見えても、決して楽観できない状況である。個々の職員が、自らの進むべき道を真剣に考えるよう、職員団体においても、雇用の確保を図るという観点から真摯な対応をお願いしたい。
なお、本件については、総務省も予算、定員など実施体制を中心にサポートしており、今後とも支援してまいりたい。
(2) 本年度の国家公務員の給与改定については、指定職職員を除き、人事院勧告どおり実施するための改正法案が去る11月30日に成立したところである。人事院勧告の完全実施とはならず、皆様が強い不満を持っていることは理解するが、労働基本権制約の代償機能を果たす人事院勧告制度を尊重する政府の基本姿勢は今後とも変わりがない。
来年度以降の国家公務員の給与改定についても、総務省としては、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮し、皆様方とも十分に意見交換を行いながら、適切に対処してまいりたい。
また、官民比較方法見直しの再要請については、人事院に対して強制や圧力を加えたものではなく、人事院において主体的に検討が行われることを期待したものである。
2、労働時間、休暇及び休業について
(1) 所定内労働時間の短縮については、勤務条件に関わることであり、人事院においてまずは判断することであり、総務省としては、引き続き人事院における検討状況を注視してまいりたい。
(2) 超過勤務の縮減については、超過勤務を命ずべき業務についても、政府全体として業務量を減らす取組み、厳正な勤務時間管理や現場における時間効率の向上の取組みを行うことが重要と考えている。
従来から各府省において、「国家公務員の労働時間短縮対策について」に基づいた様々な検討・取組が進められているものと考えているが、今後、関係機関とも連携しながら、更に実効性ある取組みを進めてまいりたい。
3、新たな高齢者雇用施策について
今後、公的年金の受給開始年齢の段階的な引上げが行われることにより、60歳定年退職者についていわゆる無年金期間が発生することから、公務においても、雇用と年金の連携を図り、職員が高齢期の生活に不安を覚えることなく、職務に専念できる環境を整備することが必要であると考えている。
いずれにせよ、こうした点も含め、現在、総理の下に設けられた「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」において、採用から退職までの公務員の人事制度全般にわたる課題について、総合的・整合的な議論が行われているところであり、公務員制度を所管する総務省としても、これに所要の連携・協力をしながら検討を行ってまいりたい。
4、公務員制度改革について
公務員の労使関係の在り方については、先日、専門調査会の報告が取りまとめられた。また、公務員の人事制度全般について、労働界の代表を含む各界有識者による総理の懇談会で検討が進められており、専門調査会報告も踏まえて、来年1月を目途に報告が取りまとめられ、それを受けて基本法が次期通常国会に提出されるものと承知している。
公務員一人ひとりが高いモラルを維持し、能力を高め、誇りをもって職務に専念できるよう改革を進めることが重要と認識しており、総務省としては、公務員制度を所管する立場から、引き続き行政改革推進本部と連携・協力してまいりたい。
5、新たな人事評価制度について
今後の試行の在り方や政令案の策定に当たっては、今後とも、試行を担当する総務省としても、制度設計を担当する行革事務局と連携・協力して検討を進めるとともに、理解と納得が得られるよう職員団体と十分に話し合うことは必要であると考えている。
6、退職手当の支給の在り方の見直しについて
不祥事を起こした国家公務員に対する退職手当の取扱いの検討に当たっては、この度「国家公務員退職手当の支給の在り方等に関する検討会」を立ち上げ、11月28日に初会合を行い、来年の春までを目途に結論を得る予定である。
この問題の検討に際しては、職員団体からの御意見も十分伺ってまいりたい。
これに対して、公務員連絡会側からは、次の通り質した。
(1) 配置転換については、これまでの雇用調整本部などの努力を評価したい。3年次目について「職員団体においても、真摯な対応をお願いしたい」との回答については、真に受け止めるが、雇用調整本部においても危機意識を共有し、全力で取り組むことを要請したい。総務省としての努力も求めておきたい。
(2) 指定職の給与改定見送りは人勧制度を傷つけるものであり、承服できない。とくに政府が「国民感情をふまえて判断」することは人勧制度の趣旨を否定するものであり認められない。「来年は完全実施する」という、阪本次長の決意を改めて述べていただきたい。
(3) 官民比較方法見直しの再要請を閣議で決定したということは、どう見ても第三者機関の人事院に対する圧力である。地域給与導入・給与構造改革の途中であり、官民給与比較対象企業規模の見直しも実施したばかりで、比較方法の見直しを人事院に再要請することは全く理解できない。
(4) 勤務時間については、人勧制度尊重の基本姿勢に立って、その年の勧告についてはその年で処理するようにしていただきたい。
(5) 人事評価制度については、評価結果の開示と苦情処理制度の整備をわれわれが納得できる形で作っていただきたい。
(6) 退職手当の支給の在り方の問題については、憲法上の財産権の問題や事実認定を当局の裁量だけでやれるのかという問題があり、慎重に検討していただきたい。
これに対して、阪本次長から次の回答があった。
(1) 勧告取扱いについての皆さんの不満は承知している。人事院勧告制度の尊重という基本姿勢は変わりない。
(2) 官民比較方法見直しの再要請は、人事院に圧力をかける趣旨ではない。例えば、地域手当の非支給地域の給与水準が果たしてそれぞれの地域の民間給与水準を反映しているのかといった議論があり、人事院として毎年の官民給与比較のなかで検証することを期待したいという趣旨である。
(3) 勤務時間については、要望として承った。
(4) 人事評価制度については、行革事務局と十分に連携をとり、開示を含めて皆さんと意見交換をしながら検討を進めていきたい。
(5) 退職手当の支給のご指摘については、十分に認識している。検討会では、民法の学者・専門家からも意見を聴くことにしており、組合にもヒアリングに参加していただきたいと考えている。
最後に、公務員連絡会は、「回答は、抽象的な回答がほとんどであり、不満だ。基本要求をめぐる交渉には一区切りつけるが、来年春に改めて要求を出させていただくので、総務省としても各要求課題について継続し検討をしていただきたい」として、基本要求をめぐる交渉には一区切りをつけ、明確とならなかった課題については、引き続き2007春季生活闘争段階で交渉・協議するとの見解を述べ、この日の交渉を終えた。
<人事院職員団体審議官交渉の経過>
人事院井原職員団体審議官との交渉は、14日午後2時30分から行われた。
冒頭公務員連絡会側が、11月21日の申入れに対する回答を求めたのに対し、審議官は「基本要求については、今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な点について、現時点での検討状況を申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。
1、給与に関する事項
(1) 給与水準及び官民比較方法について
公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢は変わらない。
政府の官民給与比較方法の検討の要請に関しては、人事院としては、まずは現在進めている給与構造改革を着実に実施していくことが肝要であると認識しているが、公務員給与の在り方については、情勢適応の原則に基づき常に検討を続けているのであって、今回要請があったことも受け止め、また広く各界の意見を聞きながら、適正な公務員給与の確保に向け、引き続き検討を進めていく。
なお、比較対象企業規模に関しては、同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下で、民間企業従業員の給与をできるだけ広く把握し、反映することが適切であり、現行の「50人以上」という規模は妥当なものと考えている。
(2) 諸手当の見直し・検討について
自宅に係る住居手当については、平成15年の勧告時の報告において、「基本的には廃止の方向で検討することが適当」であるとの認識を既に示しているところであり、その後の情勢を踏まえつつ、本年の勧告時報告で言及した内容に沿って、職員団体のご意見も伺いながら検討する。
特地勤務手当の指定基準の見直しに関しては、教員のへき地手当の見直し等が行われることも考慮し、基準の見直しを図るものであり、ご理解いただきたい。なお、基準の見直しに当たっては、職員団体等関係者の意見も聴きながら、検討を進めていきたい。
(3) 給与構造の改革について
給与構造改革については、平成18年報告で示した内容や措置を順次行っているが、今後も職員団体等関係者の意見も伺いつつ、毎年の具体的な勧告や措置の内容を検討し、決定していく。
なお、本府省手当は、本府省における職務の特殊性・困難性などを考慮して新設するものであり、平成22年までの間に実施できるよう具体化に向けて準備を進めているところである。
2、労働時間、休暇及び休業に関する事項
(1) 年間労働時間の着実な短縮について
所定勤務時間の短縮については、新たな勤務時間に対応した適切な勤務体制等や関連諸制度の検討等の所要の準備を行った上で、来年の民間企業の所定労働時間の調査結果も考慮して、勧告を行いたいと考えている。具体的措置内容については、職員団体等関係者の意見を十分に伺いながら検討を進めていきたい。
超過勤務の縮減については、各府省の実態に即した具体的な取組みに向けて、内閣官房及び制度官庁を中心に各府省との間で協議を行った上で、取組みの計画、スケジュールを確定することが必要と考えている。
3、新たな人事評価制度の施行に関わる事項
人事院としては、人事行政の中立・公正の確保や職員の利益保護を図る観点から、新たな人事評価制度が納得性・信頼性が高いものとなるよう、適切にその役割、使命を果たしていく。また、評価結果の活用の具体化に当たっては、職員団体等関係各方面のご意見を十分に伺いながら検討していく。
4、新たな高齢者雇用の施策の検討に関わる事項
本年の勧告時報告において、平成25年を見据えて公務における高齢期の雇用確保策について総合的に検討する必要がある旨言及し、本年9月から学識経験者等で構成する「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」を開催して検討を進めている。
検討に当たっては、必要に応じ、職員団体をはじめ関係者の意見を伺い、その理解を得ていくことが重要と考えている。
5、非常勤職員制度の改善に関する事項
非常勤職員の給与については、本年の勧告時報告で述べた認識に立って、現在、各府省における非常勤職員の実態についてさらに聴取を行いつつ、問題点の整理を行っている。引き続き関係者のご意見も伺いながら、どのような方策をとることができるかについて早急に検討を進めていきたい。
なお、非常勤職員の問題を検討する際には、給与、休暇のみならず、その位置づけ等を含めて多岐にわたって検討を行うことが必要である。その中には人事院の所掌を超えるものも含まれており、今後、他の関係機関とも連携して検討を進めていく必要があると考えている。
これらの回答に対し、公務員連絡会側は次の通り人事院の考えを質した。
(1) 給与構造改革を行っている最中に比較方法を見直せという政府の再要請は納得できない。人事院としては、給与構造改革を最優先で進めていくという考え方を示されたと受け止め、政府の再要請には毅然として対応することを求めておく。
(2) 企業規模については、どうすれば公務員給与に対する社会的合意が得られるかという観点からの対応を改めて要請する。人事院の判断で一方的に変えられるとの考えは承伏できないことを申し上げておく。
(3) 諸手当については、自宅に係る住居手当についてはその可否を含め十分な議論をさせていただきたいし、特地勤務手当については、今なぜ見直すのかについて納得できる理由を示してもらわなければ、中身の議論には応じられない。へき地手当の見直しは理由にならない。
(4) 本府省手当は、給与制度上、理解できない手当であり、勧告することは反対だ。
(5) 超過勤務については、各省の実態を調べて具体的縮減策を検討すべきだ。
(6) 人事評価制度の整備に当たっては、人事院としても、評価結果の本人開示と苦情処理制度を整備する立場で積極的に取り組んでいただきたい。
(7) 非常勤職員の給与の当面の改善策については、一刻も早く提案をしてもらって議論を行いたい。また、雇用問題を含めた制度全体について関係機関との連携が必要ということであれば、公務員連絡会も含めた検討の場を設け、検討を開始すべきだ。
これに対し人事院側は次の通り答えた。
(1) まずは給与構造改革を続けることが肝要だと認識しているが、一般論としては比較方法の検討は情勢適応の原則との関わりで常に行う必要がある。その際、見直すかどうかは人事院の責任で判断するということだ。一番大事なことは同種同格の比較であり、その中でできるだけ広く把握するということだ。
(2) 諸手当についてはご意見を伺いながら検討していく。
(3) 超勤縮減の問題は、今どう取り組むかについて各府省と議論をしているところだ。
(4) 人事評価結果の活用については、円滑に実施できるよう議論をして参りたい。
(5) 非常勤職員の給与については、できるだけ早く提示してご意見を伺いながら検討していく。
以上のように人事院の回答は明確にならなかったため、公務員連絡会側は「本日の回答や示された見解は納得いかず不満なものであるが、基本要求に関する交渉・協議はひとまず区切りを付けたい。春には改めて要求書を出すことにしているので、来年度の賃金・労働条件の改善に向けて引き続きの努力をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を打ち切った。