2008年度公務労協情報 19 2008年2月15日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院総裁、総務大臣に2008春季要求書を提出−2/15
〜3/19を回答指定日に交渉・行動を積み上げ、誠意ある回答めざす〜

 公務員連絡会は、15日、委員長クラス交渉委員が増田総務大臣、谷人事院総裁とそれぞれ会い、春季要求書を提出し、2008春季生活闘争を正式にスタートした。要求書では、官民比較方法の再度の見直しを行わないことを始め、公務員給与水準の改善、所定勤務時間の短縮、非常勤職員等の雇用と処遇の改善などを強く求めている。今後、3月3日の幹事クラス交渉、3.12中央行動時の書記長クラス交渉などを節々で配置し、3月19日の回答指定日に向け、政府、人事院を追い上げることとしている。
 総務大臣、人事院総裁交渉の経過はそれぞれ次の通り。

<人事院総裁交渉の経過>
 15日午前11時から行われた谷人事院総裁との交渉には、福田議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料1)を手交した。
 要求提出に当たって、福田議長は次の通り述べ、今後十分交渉・協議を重ね、3月19日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 景気拡大局面にあると言われてきた日本経済は、サブプライムローン問題や燃料、食料品の高騰などにより株価低迷や消費不振を招き、先行き不透明となっている。こうした中で、地域や雇用・所得の格差は拡大し続けており、勤労者の生活は一向に改善せず、長期に続く格差社会は、ワーキング・プアや貧困など、新たな深刻な社会的問題が発生している。
(2) 今日、政府や経済界からも「内需主導型の経済に転換すべき」との声があげられているが、そのためには新自由主義的な考え方に基づく市場万能主義的な諸政策をいまこそ大胆に転換することが求められている。連合は、こうした状況を打開するためには、労働分配率の改善による内需拡大が必要であるとの考え方に基づき、パート労働者など非正規労働者を含めた全労働者の処遇改善とワークライフバランスの実現を重要課題に掲げ、2008春季生活闘争を進めている。
(3) 公務員を巡っては、総人件費削減政策のもとで配置転換や独立行政法人の整理合理化などが進められ、政府が官民比較方法の見直しを貴院に再要請するなど、給与のさらなる抑制政策が進められようとしている。こうした状況の下で、公務・公共部門の職場では、総人件費抑制政策の犠牲が労働者個人にしわ寄せされ、仕事面での負担はまさに極限に達しようといる。その一方で、公務員バッシングが繰り返されることにより、仕事や将来に対する自信が持てず、不安感が高まっているのが現状だ。
(4) 人事院には、こうした職場や公務員労働者の現状を十分認識し、なにより労働基本権制約の代償機関としての役割を十全に発揮することが強く求められている。本年の賃金・労働条件改善にあたっては、政府の官民比較方法見直しの要請に毅然として対応し、民間相場を正確に反映した公務員給与の改善をおこなうこと、昨年の報告に基づき所定勤務時間短縮のための勧告を確実に行うことが最重要課題となっている。また、公務内の格差問題に正面から立ち向かい、非常勤職員等の雇用や処遇を具体的に改善することが強く求められている。
(5) 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2008年春季の要求を提出する。本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月19日には、総裁から直接、春の段階の誠意ある回答を示してもらいたい。

 これに対して総裁は、「要求は承った。環境は厳しい中にあるが、指摘された事項はいずれも人事院の職務として検討すべき課題だ。誠意を持って検討し、しかるべき時期に回答したい」とし、今後、交渉・協議していくことに同意した。

<総務大臣交渉の経過>
 15日午前11時45分から行われた増田総務大臣との交渉には、福田議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料2、3)を手交した。
 要求提出に当たって福田議長は、次の通り述べ、3月19日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 公務員を巡っては、総人件費削減政策のもとで配置転換や独立行政法人の整理合理化などが進められ、公務員の雇用不安が高まっている。公務・公共部門の職場では、定員削減などの総人件費抑制政策の犠牲が労働者個人にしわ寄せされ、仕事面での負担はまさに極限に達しようとしている。その一方で、公務員バッシングが繰り返されることにより、仕事や将来に対する自信が持てず、不安感が高まっているのが現状だ。また、昨年の人事院勧告の取扱いの閣議決定の際に、政府が官民比較方法の見直しを人事院に再要請するなど、公務員給与のさらなる抑制政策が進められようとしている。こうした政府の姿勢は労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を否定するものであり、断じて容認できない。
(2) 使用者を代表する立場の総務大臣においては、以上の点を十分認識され、今後の人事行政を進めるとともに、本年の春季生活闘争においては、@公務員の雇用の確保や民間相場を正確に反映した公務員給与の改善A非常勤職員等の雇用や処遇の改善、などに全力で当たることを強く要請する。
 また、改正国公法に基づく人事評価制度の本格実施が迫っているが、能力・実績に基づく人事管理を行うためには、なにより労使が十分話し合い、相互信頼の下で進めることが重要だ。そのためにも、いま政府で進めている新たな人事評価制度の整備に向けた作業を、われわれとの合意に基づいて進めるよう強く求める。この点についても、大臣の努力を強く要請する。
(3) 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2008年春季の要求を提出する。本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月19日には、大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を示してもらいたい。

 続いて地公部会を代表して、佐藤部会議長が次の通り述べた。
(1) わが国は6年近く好景気が続いてると言われても勤労国民には実感が無く、地方は疲弊している。また、三位一体改革による大幅な地方交付税削減によって、自治体財政をますます悪化させている。
(2) その結果、2007地公確定闘争では、人事委員会勧告の凍結や不完全実施、特例条例による賃金カットの提案が多くの自治体であり、とりわけ、北海道の多くの自治体では第二の夕張にはなりたくないということから、赤平市の賃金30%削減提案をはじめ3分の2の自治体で削減が行われている。このような、賃金や人員の削減は、組合員の生活や働く意欲の低下にとどまらず、地域経済にも大きな影響を及ぼしており、公務公共サービスの低下や地域間格差が拡大している。
(3) 衆議院予算委員会において、福田総理は「国と地方の役割分担に応じた自主的な税財源の確保という観点から交付税の在り方を検討する」と答弁した。総務大臣におかれては是非とも、地方分権の推進という観点からも所要の財源確保に向けてさらに尽力してもらいたい。

 これに対して総務大臣は、「要求の趣旨は承った。労使の信頼関係は大事であり、それを築くために率直に話し合い、中身を詰めていくことが必要だ。真摯に検討し、3月下旬にその結果を回答させていただきたい」と、今後、交渉・協議し、回答することを約束した。

 公務員連絡会は、本日の人事院総裁、総務大臣への要求書提出で2008春季生活闘争を正式にスタートさせる。そして、3月3日には幹事クラス、3月12日には中央行動を配置して書記長クラス交渉を実施し、3月19日の回答指定日に誠意ある回答引き出しに向け、政府、人事院を追い上げていくこととしている。


(資料1)

2008年2月15日


人事院総裁
 谷  公 士 殿


公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一


要 求 書


 景気拡大局面にあると言われてきた日本経済は、サブプライムローン問題や燃料、食料品の高騰などにより株価低迷や消費不振を招き、先行き不透明となっています。こうした中で、地域や雇用・所得の格差は拡大し続けており、勤労者の生活は一向に改善せず、長期に続く格差社会は、ワーキングプアや貧困など、新たな深刻な社会的問題を発生させています。政府や経済界からも「内需主導型の経済に転換すべき」との声があげられており、新自由主義的な考え方に基づく市場万能主義的な諸政策は今こそ大胆に転換されなければなりません。
 2008春季生活闘争においては、こうした状況を改善するため、パート労働者など非正規労働者を含めた全労働者の処遇改善とワークライフバランスの観点から労働時間の短縮などによって格差を是正し労働分配率を回復すること、すなわち内需拡大による経済の活性化を実現することが大きな課題となっています。
 公務員を巡っては、総人件費削減政策のもとで配置転換や独立行政法人の整理合理化などが進められ、加えて昨年の人事院勧告取扱いの閣議決定の際に、政府が官民比較方法の見直しを改めて人事院に要請するなど、公務員給与のさらなる抑制が推進されようとしています。労働基本権制約の代償機能として、政府の要請に対し毅然として対応することを強く要請するものです。
 本年の賃金・労働条件改善にあたっては、民間相場を正確に反映した公務員給与の改善はもとより、昨年の報告に基づき所定勤務時間の短縮勧告を確実に行うことが最重要課題となっています。また、公務内の格差問題に正面から立ち向かい、非常勤職員等の雇用や処遇を具体的に改善することが求められています。
 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2008年春季の要求を提出いたします。貴院におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。



1.2008年度賃金要求について
(1) 2008年度の賃金改善について
@ 2008年度の給与改定に当たっては、民間賃金実態を正確に把握し、公務員労働者の給与水準を改善する勧告を行うこと。また、水準・配分・体系等について公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
A 地域手当等の制度移行期間中の勧告内容などについては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。また、本府省手当は新設しないこと。
(2) 社会的に公正な官民比較方法の確立について
@ 政府の官民比較方法の見直し要請に対し、労働基本権制約の代償機関としての立場を堅持し、毅然として対応すること。
A 官民給与比較方法について、社会的に公正な仕組みとなるよう、比較対象企業規模をはじめとして抜本的に改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
(3) 諸手当の見直し・検討について
@ 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。また、自宅に係る手当については、国・地方における支給実態を十分踏まえるとともに、財形貯蓄制度との関わりを含め手当の意義を検証するなど、廃止ありきではなく慎重に検討することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
A 特地勤務手当については、前回見直しの経緯を踏まえ、離島、山間へき地等の生活環境・生活実態と人材確保を重視した慎重な検討を行うこととし、拙速な見直しは行わないこと。
B その他の諸手当の改善については、官民較差及び民間実態を踏まえ、十分交渉・協議すること。

2.労働時間の短縮及び本格的な短時間勤務制度等について
(1) 公務におけるワークライフバランスを確保するため、年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、本年については、次の事項を実現すること。
@ 民間企業の所定労働時間の実態に基づき、所定勤務時間を1日当たり7時間45分に短縮する勧告を行うこと。また、具体的措置内容については、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
A 政府全体として超過勤務を縮減するための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を実施すること。
B 超過勤務手当の全額支給を実現するとともに、割増率を引き上げること。
(2) 公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討を開始すること。介護のための短時間勤務制度導入のための検討を促進すること。

3.非常勤職員等の労働条件の改善について
(1) 2007年報告に基づく非常勤職員の処遇改善措置を直ちに実施すること。
(2) 非常勤職員及びパート職員等の雇用・身分等の差別的取扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保するための施策を提言すること。
(3) 非常勤職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき抜本的に改善することとし、国に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表高卒初任給並みに引き上げること。また、国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務・事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

4.新たな人事評価制度の実施について
(1) 新たな人事評価制度については、公正・公平性、透明性、客観性、納得性が具備され、苦情処理制度、労使協議制度などが整備されたものとすること。とりわけ、評価結果の本人開示、労働組合が参加する苦情処理制度を実現すること。
(2) 改正国家公務員法の施行に伴う新たな人事評価制度の制度設計及び整備に当たっては、人事院として、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、必要な役割を果たすこと。
(3) 新たな人事評価による評価結果の任用、給与等への活用の措置案に基づき、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意すること。これらの活用については、評価制度の信頼度に応じて段階的に進めること。

5.新たな高齢者雇用施策について
(1) 公的年金の段階的支給繰り延べに遅れることなく雇用と年金を接続するため、公務員労働者の高齢期の生活の安定を保障する高齢者雇用施策を早期に実現すること。また、雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」における検討に当たっては、高齢期の公務員労働者の生活実態や要望等を十分反映できるよう、公務員連絡会から意見を聞くこと。

6.男女平等の公務職場の実現について
(1) 公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、必要な施策の確立を図ること。
(2) 取得率の数値目標を明確にした育児休業及び育児のための短時間勤務の男性取得の促進、次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の着実な実施に向け、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 改定された女性職員の採用・登用拡大の指針の実現に向け、必要な取組みを行うこと。

7.その他の事項について
(1) 公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 裁判員制度の施行に備えて、公務員が裁判員に選ばれた場合にその役割を円滑に果たせるよう、所要の制度改正や裁判員制度の周知等の条件整備を図ること。


(資料2)

2008年2月15日


総務大臣
 増 田 寛 也 殿


公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一



要 求 書


 景気拡大局面にあると言われてきた日本経済は、サブプライムローン問題や燃料、食料品の高騰などにより株価低迷や消費不振を招き、先行き不透明となっています。こうした中で、地域や雇用・所得の格差は拡大し続けており、勤労者の生活は一向に改善せず、長期に続く格差社会は、ワーキングプアや貧困など、新たな深刻な社会的問題を発生させています。政府や経済界からも「内需主導型の経済に転換すべき」との声があげられており、新自由主義的な考え方に基づく市場万能主義的な諸政策は今こそ大胆に転換されなければなりません。
 公務員を巡っては、総人件費削減政策のもとで配置転換や独立行政法人の整理合理化などが進められ、公務員の雇用が不安にさらされています。加えて昨年の人事院勧告取扱いの閣議決定の際に、政府が官民比較方法の見直しを改めて人事院に要請するなど、公務員給与のさらなる抑制が推進されようとしています。こうした政府の姿勢は労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を否定するものであり、断じて容認できません。
 以上のことから、本年の春季生活闘争にあたっては、公務員の雇用の確保や民間相場を正確に反映した公務員給与の改善はもとより、公務内の格差問題に正面から立ち向かい、非常勤職員等の雇用や処遇を具体的に改善することが最重要課題となっています。また、人事評価制度の本格実施に向けて、信頼できる新たなシステムを合意に基づいて整備することが求められています。
 公務員連絡会は、1月29日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2008年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。




1.総人件費削減の実行計画等について
(1) 国家公務員の定員削減計画に基づく3年度目の配置転換が本人の希望に基づくものとなるよう、雇用調整本部と公務労協・公務員連絡会との間で十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 独立行政法人見直し等行政改革の推進に伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の確保に責任を持つこと。

2.2008年度の賃金改善について
(1) 2008年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の賃金水準を改善すること。
(2) 官民比較方法見直しの再要請などの人事院勧告制度に対する介入を直ちにやめ、公務員給与のあり方について社会的合意が得られるよう、使用者としての責任を果たすこと。

3.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度について検討を促進すること。
(2) 公務におけるワークライフバランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B総合的な休業制度、などを実現すること。このため、2008年度においては、所定勤務時間を短縮すること。
(3) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を実施すること。
(4) 超過勤務手当の全額支給を実現すること。

4.新たな人事評価制度の実施について
(1) 新たな人事評価制度については、公正・公平性、透明性、客観性、納得性が具備され、苦情処理制度、労使協議制度などが整備されたものとすること。とりわけ、評価結果の本人開示、労働組合が参加する苦情処理制度を実現すること。
(2) 改正国家公務員法の施行に向けた、今後の試行のあり方、政令案等を早急に提示し、直ちに公務員連絡会と交渉・協議を開始し、合意すること。

5.新たな高齢者雇用施策について
 公的年金の段階的繰り延べに遅れることなく雇用と年金を接続するため、公務員労働者の高齢期の生活の安定を保障する高齢者雇用施策を早期に実現すること。また、雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

6.退職手当の支給のあり方について
 国家公務員退職手当の支給制限・返納制度の検討に当たっては、@退職手当が重要な勤務条件であり交渉事項であることA他の関係法令との整合性等多くの問題があること、などから、慎重の上にも慎重を期すこととし、公務労協・公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。「検討会」に対して公務員連絡会の意見を反映し、拙速に報告を取りまとめないよう要請すること。

7.非常勤職員等の労働条件の改善について
(1) 国会附帯決議に基づき、非常勤職員及びパート職員等の勤務条件についての実態調査を実施すること。
(2) 非常勤職員等の雇用・身分等の差別的取扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。
(3) 非常勤職員等の処遇については、「均等待遇」の原則に基づき抜本的に改善することとし、国に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表高卒初任給並みに引き上げること。また、国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

8.男女平等の公務職場の実現、女性労働者の労働権確立について
(1) 公務職場における男女平等参画の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備を行うこととし、政府全体として取り組むこと。
(2) 取得率の数値目標を明確にした育児休業及び育児のための短時間勤務の男性取得の促進、次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の着実な実施に向け、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 改定された女性職員の採用・登用拡大の指針の実現に向け、使用者として必要な取組みを行うこと。

9.労働基本権確立を含む公務員制度改革について
(1) 国家公務員制度改革基本法案(仮称)の検討に当たっては、いわゆる「キャリア制度」の廃止を含む公務員制度の抜本的改革を実現すること。
(2) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(3) 専門調査会の報告を踏まえ、公務の労使関係を抜本的に改革するため、労使協議の場を設置すること。また、非現業公務員に労働協約締結権を付与するための法制化作業に直ちに着手すること。
(4) 国際労働基準確立の観点から、ILO第151号条約を批准すること。

10.その他の事項について
(1) 公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 裁判員制度の施行に備え、公務員が裁判員に選ばれた場合にその役割を円滑に果たせるよう、裁判員制度の周知等環境整備に努めること。


(資料3)

2008年2月15日


総務大臣
 増 田 寛 也 様


公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄



要 求 書


 貴職の地方分権推進、地方公務員の処遇改善に向けたご努力に敬意を表します。
 地方財政の逼迫、地方公務員賃金引下げの圧力のもとで、人事委員会勧告の不完全実施という事態になった自治体が多数あり、労働基本権制約の代償措置とされる人事委員会勧告制度の機能が形骸化してきています。地方財政危機を理由に職員の給与をカットする自治体も依然として後を絶たない状況であり、自治体間の賃金格差は一層広がっています。
 こうした中で、自治体行政の第一線で働く地方公務員の賃金改善、自治体が参考としうる「地方公務員の標準的給与」の確立が求められます。
 自治体にとって、深刻化する社会の格差拡大の克服や住民生活の安定、安全・安心を支える公共サービスの確立が重要な課題です。そのため、自治体の行政責任を果たすとともに、地方分権の着実な推進とそれを支える地方税財政制度の確立、地方交付税制度の堅持と交付税総額の確保が必要です。
 貴職におかれましては、地方公務員の生活の改善をはじめ、下記事項の実現に尽力されますよう要求します。




1.地方公務員の生活の改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。

2.自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重すること。

3.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。その際、公務員連絡会地方公務員部会と十分交渉・協議すること。

4.地方財政危機を公務員賃金や行政サービスにしわ寄せしないこと。また、分権の推進と地域間の財政格差是正のために税財源の地方への移転を図るとともに、必要な交付税総額を確保すること。

5.労働基本権を保障した民主的地方公務員制度を確立すること。ILO151号条約を批准し、公務員の賃金・労働条件を団体交渉によって決定する制度を確立すること。

6.自治体における人事・給与制度に係わる新たな評価制度の導入に当たっては、十分な労使協議を行うよう助言すること。

7.自治体の臨時・非常勤職員について、雇用の安定と均等待遇原則による賃金・労働条件の改善、法律にもとづく災害補償制度の整備を図るよう助言を行うこと。また、非常勤職員の法的地位の明確化や短時間公務員制度実現に向け取り組むこと。

8.年間総実労働時間1,800時間実現に向け、所定労働時間を短縮し、時間外労働の縮減と年休取得の促進を図ること。とくに、恒常的な時間外労働が生じている職場をなくすために必要な措置を講ずるとともに、「不払い残業」の実態把握を行い、その解消に向けて助言を行うこと。時間外労働の縮減について、36協定締結義務職場での締結促進のための施策を徹底し、労働基準法33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」について、厳格な運用を推進するよう助言を行うこと。

9.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。また、育児休業、介護休暇の男性取得促進のための措置を講ずるよう助言を行うこと。

10.国段階では公的年金の段階的繰り延べに遅れることなく雇用と年金の接続を円滑に行うため高齢者雇用施策が検討されていることから、その検討状況について各自治体に伝えるとともに、地方公務員における同施策について自治体の実態を踏まえた制度整備の検討を始めること。

11.自治体職場での男女平等・共同参画のための諸施策を推進するよう助言すること。

12.刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を促進すること。

13.地方行革指針等に基づく自治体での行政改革については、自治体の自主性を尊重するとともに、行政サービスの水準や住民生活への社会的規制を確保するため、業務の安易な民営化や民間委託、市場化テストの導入を自治体に強要しないこと。

14.自治体が委託する公共サービス関連の事業所について、雇用確保に努め、労働基準法など法令遵守させるとともに、公契約条例の制定を進めるように助言すること。

15. 自治体における雇用創出・多様就業型のワークシェアリングの実現に向け、検討を行うこと。

16.自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策に関わる自治体の実態の把握とその問題点や課題について改善策を積極的に進めること。

17.裁判員制度の施行に備え、地方公務員・地方公営企業体職員が裁判員に選ばれた場合にその役割を円滑に果たせるよう、各自治体が裁判員制度の周知等環境整備に努めるよう助言を行うこと。

以上