2008年度公務労協情報 20 2008年2月15日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

地公部会が春闘期の要求を全人連に申入れ−2/15

 公務員連絡会地公部会は、15日15時5分から、春闘期の要求について、全国人事委員会連合会に対する申入れを行った。
 公務員連絡会側は、佐藤地公部会議長(全水道委員長)、金田企画調整代表(自治労書記長)、藤川地公部会事務局長、地公部会幹事が出席し、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
 冒頭、佐藤地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、以下の通り要請の趣旨を述べた。
(1) 地方財政の逼迫、地方公務員賃金引下げの政治的な圧力の中で闘われた2007地公確定闘争においては、人事委員会勧告の凍結や不完全実施、特例条例による賃金カットの提案が多くの自治体であり、例年以上の厳しい闘いを強いられ、今なお決着を見てない自治体もある。とりわけ、北海道の多くの自治体では第二の夕張にはなりたくないということから、赤平市の賃金30%削減提案をはじめ3分の2の自治体で削減が行われている。このような賃金や人員の削減は、組合員の生活や働く意欲の低下にとどまらず、公務公共サービスの低下や地域間格差の拡大を招いている。
(2) 同時に地域経済にマイナスの影響を及ぼしていることは経済界も指摘しており、私たちは地方6団体とも協力しながら地方財政確立と地域間格差解消の取組みを進めている。
(3) 地公賃金を巡っては、賃金水準の改善、標準的給与確立と、人事委員会機能強化が急がれている。全人連におかれては、勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることから、引き続き地方公務員の生活を守るという基本的な使命を十分認識し、その使命を果たされるよう要請する。

 続いて、藤川地公部会事務局長が、要請書の課題について説明し、全人連としての努力を求めた。
 こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は以下の通り回答した。

<全人連会長回答>

2008年2月15日

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 あらためて申すまでもありませんが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識しております。
 現在、人事院及び各人事委員会は、本年の民間給与実態の実施に向け、民間給与実態を的確に把握できるよう、その準備を進めているところです。
 折角の機会ですので、最近の経済情勢や春闘を巡る状況認識について、一言、申し上げます。
 まず、去る1月18日に発表された政府の月例経済報告では、景気の「先行きについては、企業部門が底堅く推移し、景気回復が続くと期待される」とする一方、「サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の下振れリスクや原油価格の動向等が内外経済に与える影響等に留意する必要がある」としております。
 先週のG7の声明においても、「世界経済はより不確実な環境に直面しており、G7各国の成長は幾分減速」するとされており、最近の株式市況の低迷もあって、景気の先行きが懸念されるところです。
 また、既に2月上旬から始まっている本年の春季労使交渉では、企業業績が、過去最高を更新すると見られる好調な企業がある一方、円高や原材料価格の高騰により陰りが見えはじめた業種も見受けられることから、賃上げは企業によりまちまちになるだろうとの観測もあり、今後の春季労使交渉の行方が注目されるところです。
 今後、各人事委員会においては、こうした社会経済状況の動向などを踏まえながら、本日の要請内容を含め、本年の勧告に向けて検討をしていくことになろうかと思います。
 全人連といたしましても、必要な点について、人事院や各人事委員会と十分意見交換が行えるよう、努めてまいりたいと考えております。
 公務員の給与を取り巻く環境は引き続き厳しい状況ではありますが、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしてまいります。


(別紙)地公部会の全人連要請書

2008年2月15日


全国人事委員会連合会 
 会 長  内 田 公 三 様


公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄


要 請 書


 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 公務員労働者は、連年の賃金引下げにより生活水準を維持することが困難となっています。地方財政の逼迫、地方公務員賃金引下げの圧力のもとで、人事委員会勧告の不完全実施という事態になった自治体が多数あり、労働基本権制約の代償措置とされる人事委員会勧告制度の機能が形骸化してきています。地方財政危機を理由に職員の給与をカットする自治体も依然として後を絶たない状況であり、自治体間の賃金格差は一層広がっています。
 民間においては2008春闘が始まっており、労働組合は、労働分配率の是正を掲げ、すべての雇用労働者の賃金改善や非正規労働者の処遇改善・雇用確保などを求めて、団体交渉に臨んでいます。
 公務においても引上げ傾向にある民間の賃金水準を反映した賃金改定が求められます。そのため、比較企業規模の回復等による公務員賃金の社会的合意の再確立と賃金水準の確保、職務給の原則を踏まえた地方公務員の標準的給与を確立する取組みが必要であると考えます。
 貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。



1.地方公務員の生活を改善するための賃金水準を確保する勧告を行うこと。また、人事委員会は労働基本権の代償機関としての責任を果たすこと。

2.2008年民間給与実態調査において、比較企業規模を100人以上とすること。また、一時金の公民比較は、比較企業規模を100人以上とするとともに同種・同等比較とすること。

3.公民比較方法のあり方の検討に当たっては、職員団体との十分な交渉・協議に基づくこと。

4.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。そのため、全国人事委員会連合会の体制・機能の強化をはかること。

5.公立学校教職員の給与の見直しに当たって、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成する際には、関係労働組合との意見交換を行うこと。 

6.給与構造見直しに対応し、国の給与決定における審査申立制度の改善措置に対応した措置を講ずること。

7.休憩・休息時間の見直しに当たっては、始業・終業時刻を延長しないこと。また、育児・介護を行う職員に配慮するとともに、交替制勤務職場の取扱いについては従前同様とすること。

8.年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現に努めること。
(1) 所定労働時間の短縮(変則・交替制勤務職場における労働時間短縮の重視)
(2) 実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的施策の推進
(3) 年次有給休暇取得の促進
(4) 労働時間短縮のための人員確保等の施策の構築

9.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。

10.育児休業・介護休暇の男性取得の促進のための必要な措置を行うこと。

11.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進するため必要な措置を行うこと。

12.公務職場における障害者雇用の促進をはかるため、職場環境の整備を含め必要な措置を行うこと。

13.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、職員団体との交渉・協議、合意に基づき進めること。

以上