国家公務員制度改革法案は、4月4日に閣議決定されたのち、5月9日の衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、14日の内閣委員会で本格的な審議が開始された。
9日の本会議では、民主党が@キャリア制度の見直しA幹部職員人事の内閣一元化B専門調査会報告の協約締結権付与を尊重すべき、と追及したのに対し、福田総理、渡辺行革担当大臣から@現行のキャリア制度が廃止され根本的に異なる仕組みができるA内閣による人事の一元化が達成されるB本法案は専門調査会報告の趣旨を踏まえ立案した、との考えが示された。また、民主党以外の質問に答えて、福田総理、渡辺大臣の双方から、労働基本権の検討について「5年をかけることを前提にしているわけではない」「基本法成立後、引き続き、関係者との率直な意見交換を行っていく」との見解が表明された。
14日の内閣委員会では、民主党、社民党の議員が@政官の接触の規制は国会議員の情報収集を妨げるのではないかA新たな「総合職」試験と幹部育成は閉鎖的なスーパーキャリア制になるのではないかB幹部職員が内閣人事庁と各府省に所属するというのは意味不明だC労働基本権は専門調査会報告から後退している。費用と便益というのは労働基本権になじまない。自律した労使関係の確立という基本理念を条文に明示し、1〜2年で結論を出すべき、などと渡辺大臣を追及したのに対し、大臣は次の通り考えを明らかにした。
(「政官の接触」関係)
○ 国会議員の側からの情報収集などを妨げないような具体的な制度設計を行ってまいりたいと考えます。
(「幹部候補育成課程」関係)
○ 幹部職員候補の選抜については、評価に基づいて行われるものであります。総合職試験からの採用者であっても、直ちに幹部職員候補となるわけではありません。一方で、総合職試験は政策の企画立案に係る高い能力を有するかどうかを重視して行う試験で、この試験からの採用者は、幹部候補育成課程対象者となる可能性が高いものと考えられます。
(「内閣人事庁」関係)
○ より明快には、内閣人事庁所属、各省併任というのがわかりやすい形であろうかと思います。残念ながら、そういう理想にこだわっていると法案を国会に提出できないという現実もございました。そこで、このような妥協の産物として、この基本法が成立後に具体化を図っていこうということになった次第でございます。
(労働基本権関係)
○ 専門調査会の報告書よりも後退しているのではないかという評価があるのは私も聞いております。このような文言にしませんと国会に提出できなかったという現実もあわせて報告をさせていただきます。
○ この費用と便益という言葉は、金銭換算できるものに限定したものではないと思います。
○ (理念を書くべきとの指摘は)大変貴重な御提言として承らせていただきます。
○ 専門調査会のミッションが終了いたしておりますので、この基本法が成立をいたしましたら、速やかに次のステージでの検討が始まるべきものと考えます。
衆議院内閣委員会では、当面、21日、23日の委員会審議、22日の参考人質疑が予定されているが、その後の日程は不透明となっている。
今期通常国会は、会期延長がなく、会期も1ヶ月を切っていることから、法案が成立するかどうかは見通しが立っていないが、公務労協としては、連合と連携しながら、民主党等を通じて政府の姿勢を追及し、少なくとも法案が専門調査会報告、総合懇報告を満たす内容となるよう、対策を講じていくこととしている。
以上