2009年度公務労協情報 17 2008年12月22日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院、総務省から基本要求に対する回答引き出す−12/19
 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、19日、2009年度の基本要求に関する人事院職員団体審議官及び総務省人事・恩給局次長との交渉を実施した。人事院から11月20日に提出した本年度の基本要求に対する回答を引き出すとともに、総務省に対しては本日午前中に給与、勤務時間、退職手当法改正法案が参議院で可決され成立したことを受けて、基本要求を提出するとともに回答を引き出すこととなった。回答はいずれも具体性がなく不満な内容に止まったが、公務員連絡会は、秋季闘争で解決がつかなかった課題については、春季生活闘争に引き継いでいくこととし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院井上職員団体審議官との交渉は、19日午前11時から行われた。
 冒頭公務員連絡会側が、11月20日の申入れに対する回答を求めたのに対し、審議官は「基本要求については、今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について、現時点での検討状況を申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。

一、給与に関する事項
1.給与水準及び官民比較方法について
(1) 公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢は変わらない。
(2) 内閣からの地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの要請に対しては、一つの要請としては受け止める。そのうち地域別官民給与の実態の公表については、国民に対する説明責任という観点も踏まえて今後検討していきたいと考えている。一方、俸給表水準の見直しについては、公務員給与全体を見直すこととなるため、広く各方面の意見を聞きながら、公務員の適正な給与の確保に向けて、中立第三者機関としての人事院の使命に鑑み、その責任を果たして参りたいと考えている。
(3) 本年の勧告時報告において、給与構造改革終了後、これまでの改革の効果を検証するとともに、今後取り組むべき諸課題に関して総合的検討を行う必要がある旨言及したところであり、この考え方に沿って検討を進めて参りたい。いずれにしても、給与構造改革の検証に当たっては、公務員連絡会のご意見を伺ってまいりたい。
(4) 高齢雇用施策の検討に伴う給与体系等の見直しについては、本年の勧告時報告において定年年齢を平成25年から段階的に65歳までに延長することを中心に検討を進める旨言及したところであり、これを行うに当たっては、研究会における検討を踏まえ60歳代前半のみならず、60歳前も含めた給与水準及び給与体系の在り方について、人事施策の検討と一体となった検討を行うことが必要となると考えている。いずれにしても、職員団体を含め関係者と意見交換しながら、中高齢層の職員の適正な給与水準及び給与体系の在り方について検討して参りたい。
2.諸手当の見直し・検討について
(1) 自宅に係る住居手当については、手当としての意義が薄れていることから、来年の勧告に向け、廃止の検討を進める。また、借家借間に係る住居手当については、高額家賃を負担している職員の実情を踏まえた手当の在り方について、民間の状況等を踏まえ、引き続き検討していくこととなる。
(2) 特地勤務手当の指定基準に関しては、特に陸地に所在する官署について交通事情の改善等が十分に反映されていない上、現行基準に基づく級地と実際の格付け級地との乖離が大きくなっている状況にあり、できるだけ早期にその見直しを図る必要があると考えている。なお、基準の見直しに当たっては、職員団体等関係者の意見も聞きながら、検討を進めていきたい。
二、労働時間、休暇及び休業に関する事項
 超過勤務の縮減については、まずは各府省において不必要な在庁時間を減らすとともに、超過勤務を命ずべき業務についても、業務量を減らす取組み、厳正な勤務時間管理や現場における時間効率向上の取組みを行う必要があると考える。現在、政府全体として、各府省において在庁時間削減目標やそのための具体的取組み事項を設定して取組みを進めており、人事院としても「超過勤務の縮減に関する指針」において他律的業務に係る上限目安時間を設定することとしているが、今後とも超勤縮減の方策について、各方面のご意見をうかがいつつ取り組んで参りたい。
 なお、労働基準法改正を踏まえた超過勤務手当制度の取扱いについては、労働基準法の改正内容等を踏まえつつ、検討を進めていく所存である。
三、新たな人事評価制度の施行に関わる事項
 人事評価の活用に関しては別途の場で議論しているところであるが、人事評価及びその活用に関する制度は、今後の人事管理の基礎となる重要なものであると認識しており、来年度に予定されている本格実施に向けて、各府省、職員団体等関係者のご意見を聞きながらよりよい仕組みが実現できるよう、適切に対処していきたいと考えている。
四、新たな高齢者雇用の施策の検討に関わる事項
 昨年9月から開催されている「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」においては、その中間取りまとめが本年7月に出され、現在それを具体化する作業が進められているが、その作業結果を踏まえ、職員団体をはじめ関係者のご意見を伺いながら検討を進めて参りたい。
五、非常勤職員制度の改善に関する事項
 非常勤職員の給与については、給与法の規定に基づき各庁の長が非常勤職員の給与を決定する際に考慮すべき事項を示す指針を本年8月に発出したところであり、今後各府省における指針の実施状況等について把握し、フォローしていきたい。
 非常勤職員の問題は、業務運営の方法、組織・定員管理、予算、人事管理方針などと密接不可分な関係にあることから、今後においては、政府全体として非常勤職員の在り方をどのようにしていくかについて幅広く検討を進めていくことが必要と考えている。人事院としても、政府全体の取組みに対して協力して参りたい。

 これらの回答に対し、公務員連絡会側は次の通り人事院の考えを質した。
(1) 雇用情勢が極めて厳しくなり、公務員の労働条件にも影響してくることは必至だ。来年の見通しについて、見解があれば伺いたい。
(2) 人勧取扱いの閣議決定で、政府から「地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの検討要請」が行われたが、国会で人事院総裁は「まずは現在進めている給与構造改革を着実に進めることが肝要」と答弁している。審議官の回答では、「給与構造改革終了後、総合的検討を行う」とのことだが、給与構造改革が終わる平成22年度までは検証はなく、終了後検証した上で検討することであることを確認したい。また、現時点で、「実態公表」についてどう考えているのか。公表すると較差が埋まってないので前倒しして埋めろという話になるのではないか。
(3) 自宅にかかる住居手当の廃止については、十分交渉・協議を行って、納得できる結論を出して欲しい。自宅以外は高額家賃の話しか出なかったが、住居手当全体についての議論をさせていただきたい。
(4) 特地勤務手当の今回の見直しは、とくに「陸地」を対象にしているいうようことなのか、考えを明らかにして欲しい。
(5) 他律的業務の超勤上限目安時間について、われわれは「720時間」で納得していないが、これでやるということであれば、一定の段階でフォローアップを行い、成果が上がっていなければ、さらに実効性のある施策を検討していただきたい。
(6) 教員の場合には、体育の実技などもあり、定年前の早期退職者が多いので、定年延長の検討に当たっては、現場のいろいろな問題を把握して、制度設計をしていただきたい。

 これに対し人事院側は次の通り答えた。
(1) 来年は厳しい状況にあることは間違いないし、覚悟しないといけない。この数年、民間賃金の動きが小さく、バラツキも大きくなってきて、全体の状況から官民較差を予想することが難しくなった。実際に調査してみないとわからなくなっている。
(2) 地域の官民較差については、まずは給与構造改革で解消することが基本である。終了後に検証することにしているが、必ずしも終了するまで検証しないということではない。地域間配分の適正化は重要な問題であり、今、どういう状況にあるかについて常に分析・検討しており、改革がどのように進んでいるかを把握する必要がある。いずれにしても、基本は給与構造改革を完成させるということであり、その先に、必要があればさらに改革を進めていくということになる。実態公表については来年勧告時の話であり、現時点で結論を出しているわけではないが、データを公表して欲しいという要請については誠実に対応する必要がある。公務員給与に対する関心が高まっている中で、説明責任もあり、応じないということになったとき、公務員給与に対する信頼性に問題が生じることが懸念される。実態がどうかという問題と、ではどうするのかという問題があり、後者についてはまずは給与構造改革を進めるということであり、責任を持って対処する。
(3) 自宅にかかる住居手当については、廃止の検討をすることにしているが、実際にどう対処するかについては皆さんと意見交換をしながら進めたい。高額家賃については、手当受給者のうち上限の27,000円を受けている者の割合が7割を超えており、55,000円以上の家賃を払っているということなので、とくに対応を検討していく必要があることから例示したものであり、その他の課題を含めて検討していきたい。
(4) 今の特地指定基準は、官署からいろいろな施設への距離や公共交通機関の状況を基本としているが、道路事情が改善され、かつては官署と住居が近接していることを前提としていたが、遠くから通勤するように変わってきて、それが指定基準と実態の乖離の原因ではないかという問題意識を述べた。離島はともかくとして陸地ではこうしたことが顕著であることから例示したものである。細分化した基準の見直しを行うことが基本であり、陸地だけ見直して離島はやらないということではない。
(5) 他律的業務の超勤上限目安時間については、一定期間後には何らかのフォローアップを行い、必要があれば、さらに縮減策を検討してまいりたい。
(6) 定年延長に係る問題については、意見を出していただいて、それを踏まえて検討してまいりたい。

 以上の議論を踏まえ、岩岬副事務局長が「地域の官民較差の実態公表については明確な回答がなかったが、前倒しの俸給水準引下げや国だけではなく地方公務員への影響も懸念されるので、公務員連絡会と十分話し合って対応していただきたい。本日の回答は要求事項をきちんと受け止めて来年に向けた姿勢を示した回答とは言えず不満だ。来春闘では改めて要求書を出すので、誠実に対応していただきたい。国家公務員制度改革推進本部が給与制度の見直しを進めようとしているが、人事院勧告制度が代償機能を失うことになれば、重大な決意をせざるを得ない。労働基本権制約下で、人事院勧告制度は公務員にとって唯一の生活改善の手段であり、使命を果たしていただきたい」と強く要望し、本日の交渉を締めくくった。

<総務省人事・恩給局次長との交渉経過>
 総務省人事・恩給局笹島次長との交渉は、19日午後1時30分から総務省内で行われ、公務員連絡会側が別紙基本要求の重点事項について以下の通り説明し、回答を求めた。

(1) 総人件費と給与等の課題のうち、雇用については、アメリカ発の金融危機の影響で民間では深刻な事態になっている。公務においても使用者の立場で責任を持って対応していただきたい。最終年度となる府省間配置転換はもとより、独法見直しや地方分権改革による国の出先機関見直しに伴って雇用問題が発生する恐れがある。国の責任で対応することを明確にしていただきたい。
(2) 人勧閣議決定の際の「地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの検討要請」は人勧制度の空洞化につながりかねず、政治的介入と受け止められるものであり、撤回すべきだ。
(3) 勤務時間の短縮については、超勤の縮減について実効性があがるよう本格的に取り組んでいただきたい。
(4) 福利厚生については、レクリエーション経費が削減され、来年度は要求しないこととなったが、重要な労働条件であり、軽視することは認められない。福利厚生について明確な方針を確立していただきたい。また、来年度の福利厚生経費の予算要求はどうなっているのか。
(5) 定年延長について、人事院は段階的に定年延長するとの考えであるのに対し、国家公務員制度改革推進本部の考え方は少し違っている。また、推進本部が勤務条件について検討すること自体に問題がある。いずれにしろ勤務条件は組合との合意が前提だ。
(6) 非常勤職員について、国会でも議論され、総務省としては検討を始めたということだが、まずは実態を把握し、われわれが参加する検討の場を早急につくって取り組みを進めていただきたい。また、現在、どんな取り組みを始めたのか。
(7) 公務員制度改革については、顧問会議報告等に基づき給与制度の見直しが進められようとしているが、労働基本権の制約下で政府が検討し、人事院に勧告要請を行うことは代償機能の空洞化につながるものであり、到底認められない。中央人事行政機関の補助部局たる総務省人事・恩給局は代償機能を機能させるという位置づけがあり、しっかり対応してほしい。
(8) 新たな人事評価については、最後の仕上げの段階だ。納得性のある人事評価制度が円滑に導入されるよう、行革事務局と連携し、公務員連絡会と十分交渉・協議を行っていただきたい。
(9) 退職手当法改正法案も成立したので、政令等の整備についてはわれわれと協議を行うことを求めておきたい。

 これに対して、笹島次長は、現時点における総務省の主な考え方として、次の通り答えた。

1、公務員の総人件費と給与等について
(1) 配置転換等の取組みに関しては、内閣官房とも累次意見交換をされていると承知しているが、いよいよ最終年度を迎え、きちんと取り組んでいきたい。決して楽観できない状況であり、職員団体においても、個々の職員が、自ら進むべき道を真剣に考えるよう、雇用の確保を図るという観点から御協力をお願いしたい。
 総務省としても予算、定員など実施体制を中心にサポートしており、今後ともこの取り組みがスムーズに行くよう支援してまいりたい。
 なお、独立行政法人見直し等行政改革の推進や地方分権改革による国の出先機関の見直しについては、雇用問題が重要と認識しており、現時点でその詳細が必ずしも明らかではないが、その動向について今後注視してまいりたい。
(2) 国家公務員の給与については、これまで同様、社会一般の情勢に適応させるとの原則の下で行われる人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、適正な給与水準を確保してまいりたい。
(3) 本年度の給与改定の取扱方針の閣議決定において、来年の勧告時に地域別官民給与の実態を公表すること等について人事院に要請したところであるが、民間に合わせることは常にあるべき勧告の姿であり、今後、人事院において、今回の要請を踏まえ、主体的に検討が行われることを期待するものであり、人事院に対し政治的圧力をかけるものとは考えていない。
 なお、人事院は、本年の人事院勧告時の報告において、給与構造改革期間終了後の取組みとして、地域における民間給与の状況等を踏まえ、引き続き地域間の配分の在り方を検討することとしており、今後、人事院において、地域における民間給与等の実態についての調査等が行われるものと思われる。
2、労働時間、休暇及び休業について
(1) 国家公務員の労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策について」(平成4年人事管理運営協議会決定)を本年9月に改正するなど、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進を中心に進めているところである。
 特に、超過勤務の縮減については、超過勤務を命ずべき業務について、政府全体として業務量を減らす取組み、厳正な勤務時間管理や現場における時間効率の向上の取組みを行うことが重要であると思われる。
 各府省において、労働時間短縮対策に基づいた様々な取組みが的確に行われるよう徹底してまいりたい。
(2) 福利厚生施策については、考えるべきことがあると考えているところである。
 また、平成21年度は、民間企業における福利厚生施策の調査等を行う予定であり、そのための予算要求を行っているところである。
 職員厚生経費は、平成21年度予算から健康診断経費のみを各府省の統一単価として要求することとしており、平成21年度の要求額は5,601円と、前年度(20年度予算額(健康診断経費)5,262円)に比べ339円の増額要求を行っているところである。なお、表彰経費は各府省が必要な額を要求しており、レクリエーション経費は要求していない。
3、新たな高齢者雇用施策について
(1) 新たな高齢雇用施策について、今後、公的年金の受給開始年齢の段階的な引上げが行われることが予定され、大きな問題になると認識している。60歳定年退職者について、いわゆる無年金期間が発生することから、公務においても、雇用と年金の連携を図り、職員が高齢期の生活に不安を覚えることなく、職務に専念できる環境を整備することが必要であると考えている。
 こうした問題意識を持って、先般成立した国家公務員制度改革基本法では、再任用制度の活用の拡大をはじめ、定年の65歳への段階的引上げの検討など、幅広い観点から検討を行うこととされているところである。これに伴って、高齢職員の給与のあり方や役職定年制を検討することなど、総合的な検討が必要であり、組合の皆さんと相談しないといけないと思っている。
 公務員制度を所管する総務省としても、内閣官房と連携・協力してこれらに取り組んでまいりたい。
4.非常勤職員について
 給与に関しては、去る8月に人事院から指針が示されており、まずは、この指針を踏まえて、各府省において適切に対応することが必要と考える。
 さらに、本年の人事院からの報告でも「給与に関する指針の策定に加え、休暇及び健康診断の在り方について検討を行うとともに、任用形態・勤務形態の在り方についても問題意識を持って考えていきたい」とされているところである。
 こうした状況も踏まえて、人事院などの関係機関と連携しつつ事務的な検討を始めたところであり、必要に応じて各府省の対応状況の把握や問題点の整理などを行いつつ、総務省としても鋭意検討してまいりたい。
5、公務員制度改革について
(1) 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度改革の具体化については、内閣に置かれた国家公務員制度改革推進本部を中心に検討が行われており、公務員制度を所管する総務省としても、今後とも国家公務員制度改革の推進に連携・協力をしてまいりたい。
(2) また、国家公務員の労働基本権については、当該措置に関する事項について調査審議する労使関係制度検討委員会の第2回会合が先日開催され、法制上の措置にかかる提言について、21年中にとりまとめるとのスケジュールが示されたところである。国家公務員の労使関係制度の在り方については、同委員会において十分に検討が行われることが必要と考えている。
6.新たな人事評価制度について
 新たな人事評価制度については、現在行われているリハーサル試行の結果を踏まえ、制度の公正性、透明性等の確保と、納得性の高いシステムとなるよう、総務省としても引き続き行革事務局と連携・協力をして検討を進めているところである。
 政令等の策定についても、行革事務局において行われるものであるが、来年度からの人事評価制度の施行に当たって、職員団体とも十分に話し合うことは必要であると考えている。

 これに対して、公務員連絡会側からは、次の通り質した。
(1) 府省間配置転換について、「個々の職員が、自ら進むべき道を真剣に考える」とはどういう意味か。配置転換に応じるかどうかは重要な選択だが、その原因を作ったのは政府であり、職員に説教するのはおかしい。さらに、地方分権改革の内容によって雇用に大きな影響を与えることになるので、政府が責任を持って対応することが大前提だ。
(2) 人事院への見直し要請について、政府としては政治的圧力とは考えておらず、人事院が主体的に検討するとの回答だが、人事院はわれわれに「まずは給与構造改革を完成させた上でそれを検証し、必要があれば検討する」と答えている。政府の考えも人事院と同じであると受け止めていいか。
(3) 福利厚生施策の民間実態調査はぜひ行ってほしい。また、調査に当たっては意見交換をさせていただきたい。
(4) 非常勤職員の問題については、人事・恩給局長も国会で答弁しているが、どういう検討を始めたのか明らかにしてほしい。また、われわれが参加する検討の場を設けて、前広に議論させていただきたい。

 これに対して、笹島次長らから次の回答があった。
(1) 府省間配置転換については雇用の確保が重要であることから、雇用調整本部を設置して努力してきたが、マッチングの難度が高まってきたのは事実なので、職員におかれても自分の進むべき道、持ち味等を真剣に考えて対応してほしいという趣旨である。説教をしているわけではなく、当初配転に応じた者は行った先で高い評価を得ている者が多いが、後の方になってくると「残れる」という雰囲気が出てきて意欲的に出て行く者がいなくなってくる心配があり、そういうことにならないようにという趣旨である。政府としても、職員が意思を固めるにあたってのいろいろなサポートをしていることを受け止めていただきたい。地方分権についても情報を収集しながら対応して参りたい。
(2) 給与構造改革は平成22年度までであるが、情報のストックも必要であることから人事院にデータの公表をお願いしたものであり、前倒ししての検討を要請したものではない。
(3) 福利厚生は国と民間企業で異なっている面があり、調査をしても簡単に比較ができないことは承知している。能率向上の観点から取り組む必要があり、知恵を出していきたい。
(4) 非常勤職員の処遇等については、各府省が予算の範囲内で対応していることであるが、法律や人事院規則などで決められているのでそうしたことや人事院の調査結果を勉強しており、その中から課題を抽出していきたい。これまであまり光を当ててこなかったので、どの方向に向かうべきかを勉強している段階であり、皆さんと協議する段階には至っていない。いずれにしても、調査が必要という総務大臣の国会答弁を踏まえて、いろいろな制約の中で将来何ができるか検討していきたい。

 最後に、岩岬副事務局長が「本日の回答内容は申入れを充足するものではなく不満である。改めて検討していただき、来年春闘要求を提出するので、その際、中身のある議論をさせていただきたい」として、基本要求をめぐる交渉には一区切りをつけ、明確とならなかった課題については、引き続き2009春季生活闘争段階で交渉・協議するとの見解を述べ、この日の交渉を終えた。


<別紙>

2008年12月19日

総務大臣
 鳩 山 邦 夫 殿

公務員労働組合連絡会
議長 福 田 精 一


2009年度賃金・労働条件に関わる基本要求事項の申入れ


 世界金融危機は日本の実体経済にも深刻な影響を与えており、物価高も含め国民生活は危機的な状況にあります。そうした中にあって、低下しつつある労働分配率の回復によって内需主導の景気回復が求められています。また、公務員バッシングが吹き荒れる厳しい環境にあって、公務員労働者は、行政や公務員に対する国民の信頼を回復すべく、日夜、自らの職務遂行に邁進しているところです。しかし、国・地方を通じた総人件費削減政策のもとで、事務・事業の廃止・縮小と、組織・定員の大幅な削減が推進され、予算不足、人員不足、将来不安の中で公務員の労働条件は悪化の一途をたどっています。
 本年の勧告については、勧告通り実施するための関係法案が、ようやく本日の参議院本会議で可決・成立したところです。しかし、政府は勧告取扱いの閣議決定において、昨年に引き続き、人事院に対し「来年の勧告時に地域別官民給与の実態を公表し、俸給表水準について必要な見直しを検討するよう要請」し、地域給与の一層の引下げを図ろうとしています。これは、労働基本権制約の下における代償機関に対する「政治的介入」であり、到底認めることができません。
 さて、2009年度の基本要求事項では、公務員労働者の雇用の確保や実質生活の維持・確保を含めた給与改善を行うことを最重点課題としつつ、新たな評価制度に基づく人事管理への対応や新たな高齢雇用施策の具体化などを重点課題としています。
 以上のことから、貴職におかれては、本年の基本要求事項の実現に向けて最大限努力されることを強く申し入れます。



一、公務員の総人件費と給与等に関わる事項
(1) 公務員総人件費削減政策の具体化に当たっては、良質な公共サービスを確保する観点から、事務・事業のあり方を検証するとともに、公務員連絡会と十分協議すること。
(2) 定員削減にともなう配置転換等の実施に当たっては、真に本人の希望に基づくものとなるよう、引き続き雇用調整本部と公務労協・公務員連絡会との間で十分交渉・協議すること。また、独立行政法人見直し等行政改革の推進や地方分権改革による国の出先機関の見直しに伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。
(3) ゆとり・豊かな生活が確保でき、その職務の責任や仕事の内容に相応しい社会的に公正な給与水準を確保すること。当面、2009年度においては、民間の実勢を踏まえ、人事院勧告尊重の基本姿勢に基づき公務員労働者の実質生活の維持・確保を含めた給与改善を行うこと。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(4) 地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの検討要請など人事院勧告制度に対する政治的介入を直ちにやめ、公務員給与に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。

二、労働時間、休暇及び休業に関わる事項
(1) 労働時間短縮、休暇制度改善、総合的休業制度の確立等について
 ワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B総合的な休業制度、などを実現すること。
 このため、2009年度においては、政府全体として、超過勤務の縮減に向けた体制を確立し、実効ある超過勤務縮減策を実施すること。
(2) 本格的短時間勤務制度の早期実現について
 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。

三、福利厚生施策等に関わる事項
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、働き方と職場環境の変化に対応した心の健康づくり対策の着実な推進や復職支援施策の拡充をはかること。
(3) 総人件費削減政策に基づく、福利厚生経費の一方的削減は行わないこと。2009年度の予算編成に当たっては、健康診断の充実など、職員の福利厚生施策の改善に必要な予算を確保すること。なお、予算の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。

四、新たな高齢雇用施策に関わる事項
(1) 新たな高齢雇用施策については、雇用と年金の接続形態の基本を65歳までの段階的定年延長とし、早期に実施すること。 また、雇用の確保は最も重要な勤務条件であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 国家公務員制度改革推進本部において、給与体系のあり方等の検討を含む65歳までの定年延長を検討する場合には、これらが重要な勤務条件であることを踏まえ、公務員連絡会と十分な交渉・協議が行われるよう、総務省として努めること。

五、非常勤職員制度等の改善に関わる事項
(1) 国会附帯決議に基づき、非常勤職員等の職種、在職実態、処遇等に関わる実態調査を直ちに実施すること。
(2) 非常勤職員等については、人事院の本年報告を踏まえ、その位置付けや雇用確保について、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを開始すること。
(3) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

六、男女平等の公務職場の実現に関わる事項
(1) 公務の男女平等参画の促進を人事行政の重要事項と位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備などを積極的に推進すること。
(2) 「子ども・子育て応援プラン」及び育児のための短時間勤務制度の導入を踏まえ、取得率の数値目標等を明確にした男性の育児休業、短時間勤務等の取得を促進すること。
(3) 使用者の立場から、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の着実な実行を図るよう指導すること。

七、公務員制度改革に関わる事項
(1) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(2) 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、抜本的な改革を実現すること。
 国家公務員制度改革推進本部顧問会議報告に基づく、労働基本権制約下での勤務条件についての内閣人事局の機能のあり方の検討については、代償機能の空洞化につながり、憲法違反であることから、直ちにやめること。
 また、国家公務員制度改革推進本部に設置されている労使関係制度検討委員会において、公務の労使関係の抜本改革を実現するための検討を促進すること。

八、「新たな人事評価制度」に関わる事項
(1) 新たな人事評価制度については、公正・公平性、透明性、客観性、納得性が具備され、苦情処理制度、労使協議制度などが整備されたものとすること。とりわけ、評価結果の本人への全面開示、労働組合が参加する苦情処理制度を実現すること。
(2) 改正国家公務員法の施行に向けた、政令等の制定に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意の上で実施すること。
(3) 新たな人事評価制度については、現場で混乱を生じることなく円滑に実施されるためには、制度の周知や評価者訓練の徹底など十分な準備期間が必要であることを踏まえ、慎重に実施時期を定めること。

九、その他の事項
(1) 障害者雇用促進法に基づき、障害の種別をこえた雇用促進を図ること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 公務における外国人の採用を拡大すること。
(3) 改正国家公務員退職手当法の施行に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。

以上