公務員連絡会地公部会は、10日14時35分から、2009春闘期の要求について、全国人事委員会連合会に対する申入れを行った。
公務員連絡会側は、佐藤地公部会議長(全水道委員長)、藤川地公部会事務局長、地公部会幹事が出席し、全人連側は、内田会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
冒頭、佐藤地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、以下の通り要請の趣旨を述べた。
(1) 100年に一度といわれる世界同時不況により、外需依存の日本もその影響をもろにうける経済状況の下で、派遣をはじめ非正規労働者の解雇が相次いでいる。同時に実体経済への影響も広がり閉塞感が強まっている。このような下で2009春闘が取り組まれており、私たちも民間の仲間と春闘を取り組み、一年間の活動をスタートさせる。
(2) 昨年の地公賃金決定結果を見ても、引下げの政治圧力と、財政難による給与の独自削減が行われて、水準をはじめ賃金決定システムが崩壊しようとしている。特例条例による賃金削減の自治体は6割を超えて、人勧制度の歴史的・制度的限界が明らかになっていると認識している。
(3) 加えて、今日の大不況によって更に賃金削減攻撃が強まることが懸念される。制度は国公、水準は民間という地方公務員給与のあり方研究会報告をベースに、地場民間賃金反映を通して国公以下に押さえ込むのが狙いであると認識している。
3月に最終報告が出される技能労務職の給与のあり方研究会をはじめ、先月には人事委員会機能強化等の検討会が再開されるなど、地方公務員をターゲットにした給与引下げの動きは枚挙にいとまがない。
本年は、昨年見送られた国家公務員の住居手当のうち持ち家廃止について、本年は正念場を迎えることになる。国公・地公の制度の違いや、地公の実態を十分に理解の上、慎重な取扱いを要請する。
(4) また、昨年秋から派遣をはじめとする非正規労働者の雇用問題が大きな社会問題になっており、自治体にも50万人を超える臨時・非常勤職員が勤務している。雇用の安定・均等待遇による労働条件改善が自治体に課せられており、全人連としても問題意識を更に強めて必要な措置を講じて欲しい。
(5) 人事委員会勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることから、基本的な使命を十分認識されて対応されるよう要請する。
続いて、藤川地公部会事務局長が要請書の課題について説明し、全人連としての努力を求めた。
こうした地公部会の要請に対し、内田全人連会長は以下の通り回答した。
<全人連会長回答>
平成21年2月10日
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、役員県を通じて、全国の人事委員会にお伝えいたします。
あらためて申すまでもないことですが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識しております。
現在、人事院及び人事委員会では、本年の民間給与実態調査の実施に向け、民間給与実態を的確に把握できるよう、その準備を進めているところです。
この際、折角の機会ですので、最近の経済情勢や春季労使交渉を巡る状況認識について、一言、申し上げます。
まず、去る1月20日に発表された月例経済報告において、政府は、景気の基調判断を「急速に悪化している」とし、「景気の先行きについても、当面、悪化が続くとみられ、急速な減産の動きなどが雇用の大幅な調整につながることが懸念される。加えて、世界的な金融危機の深刻化や世界景気の一層の下振れ懸念、株式・為替市場の大幅な変動の影響など、景気をさらに下押しするリスクが存在することに留意する必要がある」と、これまで以上に厳しい見方を示しております。
また、1月中旬から事実上スタートした本年の春季労使交渉は、労使が共同で雇用安定に向けた宣言を発表するという異例の幕開けとなっております。
日本経済を牽引してきた輸出産業は、海外経済の減速と円高の影響を受け、需要の急減から大幅な減産を余儀なくされております。人員削減の動きも加速するなか、雇用の安定を重視した春季労使交渉の行方が注目されるところです。
今後、各人事委員会においては、こうした社会経済の動向などを踏まえながら、本日の要請内容を含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。公務員の給与を取り巻く環境は、さらに厳しさを増しておりますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしてまいります。
また、全人連といたしましても、人事院や各人事委員会との意見交換に、十分努めてまいりたいと考えております。
なお、政府は、今月3日に、国家公務員制度改革推進本部において、人事院機能の一部移管により、人事管理と組織管理を一体的に行う内閣人事・行政管理局(仮称)の設置や、労働協約締結権を付与する職員の範囲の検討など、公務員制度改革を進めるための「工程表」を決定しました。
全人連といたしましても、こうした国の改革の動きが地方公務員の労働基本権や人事委員会勧告制度に少なからぬ影響を与えることから、引き続き、その動向を注視してまいりたいと考えております。
(別紙)全人連への要請書
2009年2月10日
全国人事委員会連合会
会 長 内 田 公 三 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
要 請 書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
地方公務員の給与を巡っては、地方財政の逼迫、地方公務員賃金引下げの圧力のもとで、人事委員会勧告の不完全実施や職員の給与をカットする自治体も依然として後を絶たない状況であり、労働基本権制約の代償措置とされる人事委員会勧告制度の機能が形骸化してきています。
民間においては2009春闘が始まっており、連合は、賃金カーブ維持分を確保したうえで、物価上昇に見合うベアによって、勤労者の実質生活を維持・確保することを基本として取組みをすすめています。
公務においても、この要求動向を踏まえるとともに、公務員賃金の社会的合意の再確立と賃金水準の確保、職務給の原則を踏まえた地方公務員の標準的給与を確立する取組みが必要であると考えます。
貴職におかれましては、地方公務員の生活を守るという人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.地方公務員の生活を改善するための賃金水準を確保する勧告を行うこと。 また、人事委員会は労働基本権の代償機関としての責任を果たすこと。
2.公民給与比較方法について、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、職員団体との十分な交渉・協議に基づくこと。
4.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。そのため、全国人事委員会連合会の体制・機能の強化をはかること。
5.非常勤・臨時採用職員の処遇改善に関する指針を示すこと。
6.公立学校教職員賃金の見直しに当たって、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成する際には、関係労働組合との意見交換を行うこと。
7.年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現に努めること。
(1)実効ある男女共通の超過勤務規制のための積極的施策の推進
(2)年次有給休暇取得の促進
(3)労働時間短縮のための人員確保等の施策の構築
8.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇、有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。
9.育児休業・介護休暇の男性取得の促進のための必要な措置を行うこと。
10.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進するため必要な措置を行うこと。
11.公務職場における障害者雇用の促進をはかるため、職場環境の整備を含め必要な措置を行うこと。
12.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、職員団体との交渉・協議、合意に基づき進めること。
以上