公務員連絡会は、19日、委員長クラス交渉委員が谷人事院総裁、鳩山総務大臣とそれぞれ会い、春季要求書を提出し、2009春季生活闘争を正式にスタートした。要求書では、俸給表水準の見直しを行わないことを始め、公務員の賃金引上げ、超過勤務の縮減、非常勤職員等の雇用と処遇の改善などを強く求めている。今後、3月5日の幹事クラス交渉、3.13中央行動時の書記長クラス交渉などを節々で配置し、3月23日の回答指定日に向け、政府、人事院を追い上げることとしている。
総務大臣、人事院総裁交渉の経過はそれぞれ次の通り。
<人事院総裁交渉の経過>
19日午前11時から行われた谷人事院総裁との交渉には、福田議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料1)を手交した。
要求提出に当たって、福田議長は次の通り述べ、今後十分交渉・協議を重ね、3月23日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 日本経済はいま、深刻な不況に突入しつつある。その中で、格差はさらに拡大し、非正規労働者を中心に深刻な雇用と生活の危機に直面している。こうした日本の社会経済の危機を打開するためには、これまでの新自由主義的な考え方に基づく市場万能主義的な政策を大胆に転換していくことが求められている。
(2) 連合は、今こそ配分のゆがみを是正し、外需依存型から内需主導型に転換することが必要だとして、非正規を含むすべての労働者の雇用確保と物価上昇に見合う賃金改善を要求し、2009春季生活闘争を進めている。
(3) 公務員を巡っては、総人件費削減政策の下で、従来からの配置転換や独立行政法人の整理合理化などに加え、地方分権改革に関わる国の出先機関の見直し問題などが浮上してきており、雇用や生活に対する不安が急速に高まっている現状にある。
さらに、政府が決定した公務員制度改革の工程表では、給与制度見直しや級別定数の内閣人事・行管局への委譲が謳われ、具体化作業が進められようとしている。また、公務員給与を巡っては、すでに政府が俸給表水準の見直し要請を行っており、与党内においては人勧制度を無視した形で公務員給与の抑制策を検討していることが伝えられている。これらは、人事院の労働基本権制約の代償機能の否定や空洞化に繋がるものであり、われわれは断じて容認できない。貴院には、なにより労働基本権制約の代償機関としての役割を十全に発揮し、引き続きこれらの問題に毅然として対応頂きたい。
(4) こうした情勢の下で、本年の賃金・労働条件改善にあたっては、公務員の実質生活を維持・改善する給与勧告をおこなうこと、非常勤職員の雇用確保やさらなる処遇改善を行うことなどが重要課題となっている。
また、いよいよ人事評価の本格実施が4月から始まる。任用・給与への活用のあり方について、この間交渉・協議を積み上げてきたが、規則の制定に当たって、なにより納得性と信頼性のある人事評価制度とその活用となるよう、最後の努力を要請しておきたい。
(5) 公務員連絡会は、1月27日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2009年春季の要求を提出する。本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月23日には、総裁から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい。
これに対して総裁は、「要求は承った。公務員を巡る情勢は厳しい。要求事項については、誠意を持って検討し、しかるべき時期に回答したい」とし、今後、交渉・協議していくことに同意した。
<総務大臣交渉の経過>
19日午前11時45分から国会内で行われた鳩山総務大臣との交渉には、福田議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料2、3)を手交した。
要求提出に当たって福田議長は、次の通り述べ、3月23日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 公務員を巡っては、総人件費削減政策の下で、従来からの配置転換や独立行政法人の整理合理化などに加え、地方分権改革に関わる国の出先機関の見直し問題などが浮上してきており、雇用に対する不安が急速に高まっている。もとよりわれわれは地方分権は積極的に推進すべきとの立場であるが、今日の危機的な情勢の下で、セーフティーネットに対する国の役割・責任が改めて問われている中で、「行政改革」の視点のみではじめに出先機関統廃合ありきの分権推進委員会の検討姿勢には強い疑義を持つものである。
また、政府や与党内において公務員給与の抑制策が検討中であることが伝えられ、政府が決定した公務員制度改革の工程表では給与制度見直しや級別定数の内閣人事・行管局への委譲が検討されている。これらは労働基本権制約の代償機能の空洞化に繋がるものであり、われわれは断じて容認できない。
(2) 使用者を代表する立場の総務大臣においては、以上の点を十分認識され、今後の人事行政を進めて頂くとともに、本年の春季生活闘争においては、@公務員の雇用の確保や公務員の実質生活を維持・改善する給与引上げA非常勤職員等の雇用や一層の処遇の改善などに、全力で当たることを要請する。
(3) 公務員連絡会は、1月27日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2009年春季の要求を提出する。本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月23日には、大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい。
続いて地公部会を代表して、佐藤部会議長が次の通り述べた。
(1) 私たちにとって地方財政確立の取組みは喫緊の課題である。大臣の御努力によって、新年度予算で地方交付税が1兆円増額されたとはいえ、三位一体改革で5兆1千億円削減により自治体財政が悪化し、地方の実態は表現に苦しむほど疲弊している。
加えて国内総生産は年率換算でマイナス12.7%となり、アメリカ発世界同時不況といいながらアメリカの3倍を超えるマイナス成長となっている。すでに企業の相次ぐ操業短縮・停止と倒産などによる税収の落込みによって、組合員の職場・生活にとどまらず、更なる住民負担増と公務公共サービスの切捨て、そして地域経済にも大きな影響を及ぼすことが懸念される。
名実ともに地方分権が推進されて地方が活性化するよう、引き続き特段の御努力をお願いしたい。
(2) 昨年秋から派遣をはじめとする非正規労働者の雇用問題が大きな社会問題になっており、自治体では派遣など非正規労働者の雇用確保に努力している。これらに対する財政措置をお願いしたい。
また、自治体にも50万人を超える臨時・非常勤職員が勤務している。雇用の安定・均等待遇による労働条件改善が自治体に課せられており、大臣も問題意識をさらに強めて必要な措置を講じて頂きたい。
(3) 本日提出した要求事項は、組合員、臨時・非常勤職員の労働条件改善を始め、地方自治体の活性化に向けた事項であるので、是非とも積極的に検討をされて誠意ある回答を頂くよう要請する。
これに対して総務大臣は、「要求の趣旨は承った。本日いただいた要求書については、3月23日の回答に向けて検討させていただきたい」と、今後、交渉・協議し、回答することを約束した。
これを確認した上で、福田議長は「新たな人事評価制度の本格実施が目前に迫っている。この間事務レベルで交渉・協議を積み重ねてきたが、@個別評語の開示が明確になっていないことA苦情処理への組合の参加が保障されていないこと、など制度的には不満だといわざるを得ない。われわれは、なにより納得性のある人事評価制度が円滑に導入されることが重要だと考えている。人事評価制度導入に当たっての最終段階における大臣の決意を伺いたい」と述べ、大臣の決意を求めた。これに対し鳩山大臣は次の通り答えた。
(1) 平成19年の国家公務員法の改正による能力・実績主義の基礎となる人事評価制度が4月から施行を迎えようとしている。人事評価制度導入については、数次の試行を行い、その間、職員団体とも意見交換を積み重ねてきたところである。
(2) 人事評価制度は、任用や給与などの基礎となる極めて重要なものである。制度官庁として、人事評価制度が円滑に運用されるよう一層の制度の周知や評価者訓練に努めてまいりたい。
(3) また、公務員連絡会とは、納得性のある、信頼性の高い人事評価制度を目指して、引き続き意見交換を行ってまいりたい。
この大臣の見解を踏まえ、福田議長が「いま大臣から、制度導入後も、より納得性と信頼性のある人事評価制度の構築を目指して、引き続き交渉・協議する、との見解が示された。このことを前提に、制度的には不満が残るとはいえ、これが交渉・協議のぎりぎりの到達段階でもあることを踏まえ、4月からの人事評価制度の導入に対応していきたい」と、4月からの実施に対応していく姿勢を示し、人事評価制度を巡る交渉・協議に区切りを付けた。
(資料1)
2009年2月19日
人事院総裁
谷 公 士 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一
要 求 書
アメリカ発の金融危機が日本経済の根幹を揺るがし、多くの雇用が失われ、国民生活や地域社会に深刻な打撃をもたらすなど、わが国は危機的状況にあります。
2009春季生活闘争においては、こうした状況を転換していくため、パート労働者など非正規労働者を含めた全労働者の実質賃金の引上げによって内需を拡大することが大きな課題となっています。また、公共サービスを再構築していくことが重要です。
公務員を巡っては、総人件費削減政策のもとで事務・事業や組織・定員の縮小・削減、配置転換などが進められていますが、加えて公務員制度改革、地方分権改革、行政改革の「3大工程表」の策定による、さらなる整理合理化やコストカットが断行されようとしています。
また、昨年の人事院勧告取扱いの閣議決定の際に、政府は俸給表水準の見直しを改めて人事院に要請するなど、公務員給与のさらなる抑制が推進されようとしています。さらに、政府が決定した公務員制度改革の「工程表」の内容は、現行公務員制度の根幹である人事行政の中立・公正性を大きく損ね、明確な協約締結権付与の担保がないまま労働基本権制約の代償機能を形骸化するものとなっています。貴院に対し、こうした政府の要請や代償機能の形骸化に毅然として対応することを強く要請するものです。
本年の賃金・労働条件改善にあたっては、公務員労働者の実質生活を維持し、改善する給与の改善はもとより、公務内の格差問題に正面から立ち向かい、非常勤職員等の雇用や処遇のあり方を抜本的に改善することが求められています。また、納得性のある新たな人事評価制度が円滑に実施・活用されるよう、労使が引き続き意思疎通を図っていくことが重要です。
公務員連絡会は、1月27日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2009年春季の要求を提出いたします。貴院におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.2009年度賃金要求について
(1) 2009年度の賃金改善について
@ 2009年度の給与改定に当たっては、民間賃金実態を正確に把握し、公務員労働者の実質生活を維持し、改善する賃金引上げを行うこと。また、水準・配分・体系等について公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
A 地域手当等の制度移行期間中の勧告内容などについては、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
B 給与構造改革後の課題については、改革の結果を十分検証した上で慎重に検討することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
C 定年の段階的延長等高齢者雇用施策の検討に伴う給与体系等の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、慎重な検討作業を行うこと。
(2) 社会的に公正な官民比較方法の確立について
@ 政府の俸給表水準の見直し要請に対し、労働基本権制約の代償機関としての立場を堅持し、毅然として対応すること。また、地域別官民給与比較の方法、公表のあり方については、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意にもとづき、慎重に対応すること。
A 官民給与比較方法について、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
(3) 諸手当の見直し・検討について
@ 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。また、自宅に係る手当の「廃止」については、国・地方における支給実態を十分踏まえ、慎重に検討することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
A 特地勤務手当については、前回見直しの経緯を踏まえ、まずは離島、山間へき地等の生活環境・生活実態と人材確保を基本とする指定基準について十分な交渉・協議を行うこととし、拙速な見直しは行わないこと。
B その他の諸手当の改善については、官民較差及び民間実態を踏まえ、十分交渉・協議すること。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 「均等待遇」の原則に基づき、常勤職員と同等の勤務を行っている日々雇用の非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低賃金(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(2) 「非常勤給与ガイドライン」の実施状況を点検するとともに、2009年度については日々雇用の非常勤職員の給与を1時間当たり30円以上引き上げること。
(3) 非常勤職員の休暇制度について、常勤職員に準じた適正な休暇制度を整備すること 。
(4) 非常勤職員等の雇用・身分等の差別的取扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。また、非常勤職員等の雇止めなどの雇用問題や任用のあり方について抜本的に改善するため、直ちに職種、在職実態、勤務形態、処遇等の実態調査を実施するとともに、公務員連絡会が参加する検討の場を設け、 政府全体として解決に向けた取組みに着手するよう、要請すること。
(5) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務・事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
3.労働時間の短縮及び本格的な短時間勤務制度等について
(1) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、本年については、次の事項を実現すること。
@ 政府全体として超過勤務を縮減するための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、着実に実施すること。当面、在庁時間削減の取組みを徹底するとともに、他律的業務を含め超勤上限目安時間の実施状況の実態把握を行うこと。
A 超過勤務手当の全額支給を実現するとともに、労働基準法改正を踏まえ、超過勤務手当の割増率引上げを民間に遅れることなく実施すること。
(2) 公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討を開始すること。介護のための短時間勤務制度導入のための検討を促進すること。
4.新たな人事評価制度について
(1) 新たな人事評価制度については、四原則(公正・公平性、透明性、客観性、納得性)の確保を基本として運用されるよう、人事院として、中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、必要な役割を果たすこと。とくに、評価結果の本人への全面開示、苦情相談・苦情処理への労働組合の参加が保障されるよう、引き続き関係機関に働きかけること。
(2) 新たな人事評価制度の活用に関わる人事院規則等の制定に当たっては、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意すること。また、新たな人事評価制度が円滑に実施されるよう、制度の職員への周知や評価者全員に対する研修の徹底を図ること。
(3) 評価結果の任用、給与等への活用についても、四原則に基づいて行われるよう、各府省を指導するとともに、より適切な仕組みとなるよう、活用状況の点検を随時行い、改善に努めること。
5.新たな高齢者雇用施策について
(1) 新たな高齢者雇用施策については、雇用と年金の接続形態の基本を65歳までの段階的定年延長とする「意見の申出」をできるだけ早期に行うこと。また、雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、具体的な施策の内容、実施時期等について、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」における検討に当たっては、高齢期の公務員労働者の生活実態や要望等を反映できるよう、公務員連絡会から十分意見を聞くこと。
6.男女平等の公務職場の実現について
(1) 公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、必要な施策の確立を図ること。
(2) 取得率の数値目標を明確にした育児休業及び育児のための短時間勤務の男性取得の促進、次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の着実な実施に向け、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 女性職員の採用・登用拡大の指針の実現に向け、必要な取組みを着実に実施すること。
7.その他の事項について
公務職場に外国人の採用、障害者雇用を促進すること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(資料2)
2009年2月19日
総務大臣
鳩 山 邦 夫 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 福 田 精 一
要 求 書
アメリカ発の金融危機が日本経済の根幹を揺るがし、多くの雇用が失われ、国民生活や地域社会に深刻な打撃をもたらすなど、わが国は危機的状況にあります。
2009春季生活闘争においては、こうした状況を転換していくため、パート労働者など非正規労働者を含めた全労働者の実質賃金の引上げによって内需を拡大することが大きな課題となっています。また、公共サービスを再構築していくことが重要です。
公務員を巡っては、総人件費削減政策のもとで事務・事業や組織・定員の縮小・削減、配置転換などが進められていますが、加えて公務員制度改革、地方分権改革、行政改革の「3大工程表」の策定による、さらなる整理合理化やコストカットが断行されようとしています。
また、昨年の人事院勧告取扱いの閣議決定の際に、政府は俸給表水準の見直しを改めて人事院に要請するなど、公務員給与のさらなる抑制が推進されようとしています。
さらに、政府が決定した公務員制度改革の「工程表」の内容は、現行公務員制度の根幹である人事行政の中立・公正性を大きく損ね、明確な協約締結権付与の担保がないまま労働基本権制約の代償機能を形骸化するものとなっています。こうした政府の姿勢は労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を否定するものであり、断じて容認できません。
本年の賃金・労働条件改善にあたっては、公務員労働者の実質生活を維持し、改善する給与の改善はもとより、公務内の格差問題に正面から立ち向かい、非常勤職員等の雇用や処遇のあり方を抜本的に改善することが求められています。また、納得性のある新たな人事評価制度が円滑に実施・活用されるよう、労使が引き続き意思疎通を図っていくことが重要です。
公務員連絡会は、1月27日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2009年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.総人件費削減の実行計画等について
(1) 国家公務員の定員削減計画に基づく最終年度の配置転換が本人の希望に基づくものとなるよう、雇用調整本部と公務労協・公務員連絡会との間で十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
(2) 独立行政法人見直し等行政改革の推進や地方分権改革による国の出先機関の見直しに伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の確保に責任を持つこと。
2.2009年度の賃金改善について
(1) 2009年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の実質生活を維持し、改善する賃金引上げを行うこと。
(2) 地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの検討要請など人事院勧告制度に対する政治的介入を直ちにやめ、公務員給与のあり方について、社会的合意が得られるよう、使用者としての責任を果たすこと。
3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員等の雇用・身分等の差別的取扱いを解消し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。また、非常勤職員等の雇止めなどの雇用問題や任用のあり方について抜本的に改善するため、直ちに職種、在職実態、勤務形態、処遇等の実態調査を実施するとともに、公務員連絡会が参加する検討の場を設け、政府全体として解決に向けた取組みに着手すること。
(2) 「均等待遇」の原則に基づき、常勤職員と同等の勤務を行っている日々雇用の非常勤職員の給与を抜本的に改善すること。2009年度については、「非常勤給与ガイドライン」を遵守するよう各府省を指導するとともに、日々雇用の非常勤職員の給与を1時間当たり30円以上引き上げること。
(3) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
4.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度について検討を促進すること。
(2) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B総合的な休業制度、などを実現すること。
(3) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、着実に実施すること。
(4) 超過勤務手当の全額支給を実現するとともに、労働基準法改正を踏まえ、超過勤務手当の割増率引上げを民間に遅れることなく実施すること。
5.新たな人事評価制度の実施について
(1) 新たな人事評価制度については、公正・公平性、透明性、客観性、納得性の確保を基本として運用されるよう、実施状況について点検、検証を行うこと。また、評価結果の本人への全面開示、苦情相談・苦情処理への労働組合の参加が保障されるよう、引き続き各府省を指導すること。
(2) 新たな人事評価制度の実施に関わる政令や内閣府令等については、公務員連絡会との十分な交渉・協議を行い、合意すること。また、新たな人事評価制度が円滑に実施されるよう、各府省人事当局の責任において制度の職員への周知や評価者全員に対する研修の徹底を図ること。
6.新たな高齢者雇用施策について
(1) 新たな高齢者雇用施策については、雇用と年金の接続形態の基本を65歳までの段階的定年延長とし、早期に実施すること。また、雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 国家公務員制度改革推進本部において、給与体系のあり方等の検討を含む高齢者雇用施策を検討する場合には、これらが重要な勤務条件であることを踏まえ、公務員連絡会と十分な交渉・協議が行われるよう、総務省として努めること。
7.改正退職手当法の施行について
(1) 改正退職手当法を施行するための政令や通知等の整備・改正に当たっては、公務労協・公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
(2) 支給制限、返納、納付制度の公正、公平な運用を保障するため、「退職手当・恩給審査会」委員には適格な人材を選任すること。
8.男女平等の公務職場の実現、女性労働者の労働権確立について
(1) 公務職場における男女平等参画の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備を行うこととし、政府全体として取り組むこと。
(2) 取得率の数値目標を明確にした育児休業及び育児のための短時間勤務の男性取得の促進、次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の着実な実施に向け、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 女性職員の採用・登用拡大の指針の実現に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。
9.労働基本権確立を含む公務員制度改革について
(1) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(2) 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、抜本的な改革を実現すること。
国家公務員制度改革推進本部顧問会議報告に基づく、労働基本権制約下での勤務条件についての内閣人事局の機能のあり方や給与制度見直しの検討については、代償機能の空洞化につながり、憲法違反の疑いが強いことから、直ちにやめること。
また、国家公務員制度改革推進本部に設置されている労使関係制度検討委員会において、公務の労使関係の抜本改革を実現するための検討を促進すること。
(3) 国際労働基準確立の観点からILO第151号条約を批准すること。
10.その他の事項について
公務における外国人の採用、障害者雇用を拡大すること。とくに、知的障害者及び精神障害者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(資料3)
2009年2月19日
総務大臣
鳩 山 邦 夫 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
要 求 書
貴職の地方分権推進、地方公務員の処遇改善に向けたご努力に敬意を表します。
地方財政の逼迫、地方公務員賃金引下げの圧力のもとで、人事委員会勧告の不完全実施という事態になった自治体が多数あり、労働基本権制約の代償措置とされる人事委員会勧告制度の機能が形骸化してきています。また、地方財政危機を理由に職員の給与をカットする自治体も依然として後を絶たない状況であり、自治体間の賃金格差は一層広がっています。
自治体がその行政責任を果たし、地方分権を着実に推進するには、それを支える地方税財政制度の確立、地方交付税制度の堅持と交付税総額の確保が必要です。さらに、急速な雇用情勢の悪化を踏まえて自治体が行う緊急雇用対策に関しては、臨時的対応だけでなく、中長期的な観点から、雇用や住宅などセーフティーネットの充実、職業訓練などの就労支援の充実が求められており、これらの対策に対する財政措置、緊急措置に加え、継続財政措置の充実を早急に実施することが必要です。
以上のことから、公務員連絡会地方公務員部会は、2009年春季の要求を下記の通り提出いたします。貴職におかれては、自治体行政の第一線で働く地方公務員の生活の改善をはじめ、下記事項の実現に最大限尽力されますよう要求します。
記
1.地方公務員の生活の改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。
2.自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重すること。
3.地方公務員の標準的給与の確立に向けた取組みを行うこと。その際、公務員連絡会地方公務員部会と十分交渉・協議すること。
4.地方財政危機を公務員賃金や行政サービスにしわ寄せしないこと。また、分権の推進と地域間の財政格差是正のために税財源の地方への移転を図るとともに、必要な交付税総額を確保すること。
5.労働基本権を保障した民主的地方公務員制度を確立すること。ILO151号条約を批准し、公務員の賃金・労働条件を団体交渉によって決定する制度を確立すること。
6.自治体における人事・給与制度に係わる新たな評価制度の導入に当たっては、十分な労使協議を行うよう助言を行うこと。
7.自治体の臨時・非常勤職員について、雇用の安定と均等待遇原則と労働基準法が定める賃金・労働条件の改善・確保、法律にもとづく健康診断、社会保険や雇用保険の適用等がはかられるよう助言を行うこと。また、非常勤職員の法的地位の明確化や短時間公務員制度実現に向け取り組むこと。
8.年間総実労働時間1,800時間実現に向け、所定労働時間を短縮し、時間外労働の縮減と年休取得の促進を図ること。とくに、恒常的な時間外労働が生じている職場をなくすために必要な措置を講ずるとともに、「不払い残業」の実態把握を行い、その解消に向けて助言を行うこと。時間外労働の縮減について、36協定締結義務職場での締結促進のための施策を徹底し、労働基準法33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」について、厳格な運用を推進するよう助言を行うこと。
9.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。また、育児休業、介護休暇の男性取得促進のための措置を講ずるよう助言を行うこと。
10.国段階では公的年金の段階的繰り延べに遅れることなく雇用と年金の接続を円滑に行うため高齢者雇用施策が検討されており、検討状況について各自治体に伝えるとともに、地方公務員における同施策について自治体の実態を踏まえた制度整備の検討を始めること。
11.自治体職場での男女平等・共同参画のための諸施策を推進するよう助言すること。
12.刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項をはじめ事案の性格によっては任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を促進すること。
13.地方行革指針等に基づく自治体での行政改革については、自治体の自主性を尊重するとともに、行政サービスの水準や住民生活への社会的規制を確保するため、業務の安易な民営化や民間委託、市場化テストの導入を自治体に強要しないこと。
14.自治体が委託する公共サービス関連の事業所について、雇用確保に努め、労働基準法など法令遵守させるとともに、公契約条例の制定を進めるように助言すること。
15. 自治体における雇用創出対策の取組みに対して、財政上の支援を行うこと。
16.自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策に関わる自治体の実態の把握とその問題点や課題について改善策を積極的に進めること。
以上