2009年度公務労協情報 42 2009年 4月6日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

人事院が7日からから民間夏季一時金調査を実施
−公務員連絡会は調査に抗議し、引下げ勧告反対の要求はがき行動実施へ−

 公務員連絡会の書記長クラス交渉委員は、6日13時30分から、民間夏季一時金の臨時調査について、人事院の吉田給与局長との交渉を実施した。
 冒頭、公務員連絡会の吉澤事務局長が人事院の考えを求めたのに対し局長は次の通り、答えた。

(1) 明日7日より、民間企業における夏季一時金に関する調査を行うこととし、本日、調査の実施について公表する予定である。
(2) 本年の民間企業における夏季一時金に関しては、春闘の妥結・回答状況において非常に厳しい結果が出ており、人事院としてもその動向に注視してきたところであるが、判明している妥結状況を見ると大手の製造業を中心に昨年の一時金に比べて2割ないし3割程度の大幅な減額を行う企業がみられ、全体としてみても相当大きな減額となるものと見込まれる状況にある。このような大幅な一時金の変動は、平成に入ってからだけでみても、かつてない大幅なものとなる可能性があるところである。
 本年の一時金については、従前同様、これから民間給与実態調査により昨年冬と当年夏の民間の支給水準を調査し、これに基づいて年間の支給月数で民間との均衡を図ることとしており、この基本的な考え方は、この夏の勧告に向けても変更はない。他方において、国家公務員法に基づき、給与については国会により社会一般の情勢に適応するように随時これを変更することができることとされ、その変更に関してこれを勧告することを怠ってはならないとの責務を担っている人事院としては、今次のように民間一時金の急速かつ大幅な変動がうかがえる事態が生じている場合には、現時点においてできる限りの調査を行い、早急に民間の状況を把握する必要があると判断したところである。
(3) 皆さんからは、この調査に関し様々な意見を頂いたところではあるが、今回の調査は、民間企業における一時金について、このような急激かつ大幅な変動が見込まれるという状況を踏まえた特別なものであることをご理解いただきたい。

 回答に対し公務員連絡会側は、以下の通り、局長の見解を質した。
(1) かつてない大幅な変動であり特別なものとのことであるが背景と調査を行うという結果が釈然としない。2月下旬から与党の動きが報道されており、人事院としての独立性、第3者性はどこにあるのか。
(2) 調査だけに止まるかどうか疑問だ。われわれも民間の厳しさは承知しており、今年の勧告は厳しいことも想定している。しかし、なぜ夏の勧告ではいけないのか。どうして今調査を行うのか。厳しさは民間の各種調査で明らかであり、人事院が調査するのは与党がいろいろ言い出したことに対応するためではないか。
(3) 公務員給与をめぐっては、社会的に厳しい評価があるが、感情的になっている面があることは否めない。それに与党やマスコミが便乗するという動きに人事院が乗ることは危険だ。バブル崩壊以降、一時金は99年の0.3月減など減額が行われている。当時は臨時調査を行っていないが、今回行うのはなぜか。
(4) 一時金を決定しているのは本年の3月末の連合集計で2割、昨年4月段階の集計でも半分だ。本来の調査では実際に支給された一時金を調査するが、今回は決定されたものだけであり、実際にどう支給されるか分からないし、客観的調査とは言えない。人事院がこれまで精確に調査し比較するというスタンスと比べ、余りにも乱暴だ。早く決まるのは大企業が多く、変動が大きく出やすい。
(5) 一時金については、1年遅れの調査、比較という問題があり、われわれが要求してきた結果、ようやく当年の夏の分まで調査して比較するようになった。与党は、民間が下がっているとき、公務員の夏の一時金が現状でいいかというが、上がるときも遅れていることを説明すべきだ。人事院が調査すれば調査だけでは終わらないと世間は見る。現状の比較が到達点であることを十分認識して対応すべきだ。
(6) 人事委員会への情報提供はどうするのか。

 追及に対し給与局長は、次の通り、答えた。
(1) 与党からの要請を人事院が受けとめたことはないし、仮に要請があったとしても受けることはできないと認識している。ではなぜ調査を行うのかと言えば、バブル崩壊以降、民間企業では景気の変動を一時金で調整する動きが強まっており、今回は昨年暮れからの急激な経済悪化で一時金が急速に落ち込んでいる。夏の勧告で精確な実態は把握できると思っているが、これまでに経験したことのない大幅な減であり、どれくらいの変化があるかについてきちんと把握しておく必要があることから調査を行うこととした。
(2) 本来の勧告は例年通り粛々と行い、ボーナスの支給月数は最終的にはそれで決まる。今回の調査については、与党が調査しろと言ったから行うわけではなく、今のところ実態把握に使うこと以外考えていないし、引き下げるための調査を行うわけではない。ただ、調査結果を見たとき、どうするかということはあり得る。
(3) 当時は厚生労働省の調査では、夏冬それぞれ5〜6%減で年間0.3月減となったのがこれまでの大きな変化であったが、今回は大幅で急速なので、どの程度の変動なのか現時点で把握し見極める必要があるということだ。
(4) 現時点でできる限りの調査を行い、どういう形で決まっているかを含めて調べたい。
(5) 一時金の調査のタイミングや比較方法について、これまでいろいろ議論があったが、実績主義からすれば支払わなければ比較はできないので、本体の調査はぎりぎりのところと思う。今回はその議論をするつもりはない。今年は特別な事態であり、毎年このような調査をするつもりはない。
(6) 今回は人事院の本院と地方事務局だけで行い、全国一本の集計である。人事委員会とは共同で調査してきた経過もあるので、情報提供は行う。

 以上のように、給与局長は調査を行うこととなった納得できる明確な理由を示さないまま、大幅な変動を把握するため調査が必要という説明に終始した。このため、最後に吉澤事務局長が「調査を行うこととなった経過や背景、調査の根拠と方法は納得できるものではなく、人事院勧告制度への信頼性を損ねることから、調査を行うことは断じて認められない。人事院が調査を行うことに強く抗議する。調査結果の取扱いについては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めていただきたい」と要請したところ、吉田局長が「調査結果については然るべきタイミングで相談したい」として公務員連絡会と交渉していくことを約束したことから、これを確認し、本日の交渉を打ち切った。

 公務員連絡会では、本日の交渉結果を踏まえ、調査に基づく一時金切下げ勧告反対のはがき要求行動を4月7日から5月8日まで実施することにしている。

以上