公務員連絡会は、28日、「夏季一時金臨時調査に基づく削減勧告反対」の中央行動を実施した。この行動は、人事院が民間企業の夏季一時金の臨時調査を行い、その結果に基づき、公務員の夏季一時金を削減する勧告を行う動きを強めていることから、削減勧告に反対するために実施したもの。
午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた中央集会には、全国から600人を超える仲間が結集し、夏季一時金の臨時調査と削減勧告の動きについて認識を統一するとともに、削減勧告を行わせない取組みについて決意を固めあった。この日行われた書記長クラスと人事院給与局長との交渉では、削減勧告を行わないよう要求したが、局長は「5月の連休前に所要の勧告を行う」と述べ、公務員連絡会の要求に応じる姿勢を一切示さなかった。公務員連絡会では、この日、昼に開いた企画・幹事合同会議で近々に人事院総裁交渉を実施し、今後の取組みを強める方針を確認した。
午後1時30分からの中央集会では、冒頭主催者を代表して挨拶に立った福田議長が「人事院は、公務員連絡会の再三の反対を無視し、夏季一時金の臨時調査を行い、一時金削減勧告を行おうとしており、それには大きな問題がある。一つにはその背景に政治からの圧力があることである。二つに、中小を含む賃金妥結はこれからであり、深刻な影響を与えかねないことである。三つ目に経済不況の下、内需に大きな打撃を与えることだ。不退転の決意でこれからのたたかいに取り組もう」と全力で取り組むことを訴えた。
続いて、国営関係部会から激励挨拶に駆けつけた全印刷の竹井委員長は全印刷の取組みを報告するとともに「一時金の調査と削減勧告の背景には、公務員給与を下げて選挙を有利にしようという政治的な動きがある。勧告が行われれば公務員全体に影響が及ぶ。組合員の生活を確保するため国営企業部会も公務員連絡会と一体となって取り組む」との決意を述べた。
また、吉澤事務局長が、公共サービス基本法の審議状況などを報告した上で、「夏季一時金調査とそれに基づく引下げは、政治的圧力に基づくものだ。今回の問題は、労働基本権の問題に他ならない。仮に勧告が政治的発端で行われるとすれば労使関係を否定することになる。政府が民間の厳しさを踏まえたいということであれば、われわれ組合に提起し交渉で決めるべきだ。そういう意味で今回の勧告は断じて認められない」との基調を提起した。
地公部会の取組みについては、藤川副事務局長が「総務大臣が、地方公務員の対応について、国公準拠基本とするとの考えを表明したことから、地公部会として総務省に通知を出さないよう求めてきたが、総務省は考え方を変えていない。地方でも、削減勧告反対の取組みを強めていこう」と報告した。
構成組織決意表明には、海野章自治労東京都本部副委員長、竹林和也国交職組委員長、矢萩滋福島高教組書記長が登壇し、それぞれの組織の取組みを報告し、全力で闘い抜く決意を述べた。
集会を終えた参加者は、人事院前に移動し、シュプレヒコールをあげて人事院交渉を支援し、交渉終了後その場で交渉報告を受け、この日の公務員連絡会の行動を終えた。
この日行われた人事院給与局長との交渉経過は次の通り。
<人事院給与局長との交渉経過>
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、14時45分から、吉田給与局長と交渉を行った。
冒頭、吉澤事務局長が夏季一時金臨時調査の結果を示すよう求めたのに対し、吉田局長は、次の通り答えた。
○夏季一時金関係
本年の民間企業における夏季一時金に関する特別調査については、先週末(24日)までで予定どおり終了し、現在、最終的な集計・点検作業を行っているところである。 約2700社の調査対象企業のうち、回答企業は約2000社、調査完了率は約76%であり、そのうち、夏季一時金を決定したとする企業は約340社、企業割合を見ると十数%となっている。
4月までに賞与を決めている企業は約10%程度とする昨年の厚生労働省の「平成20年賃金引上げ等の実態に関する調査」結果と大きな違いはなく、今年の民間企業の夏季一時金の決定状況を昨年との比較によって把捉するという今回の特別調査の目的は達成できたものと考えている。
調査を実施する前の会見でも申し上げたように、本年の特別給については、従前同様、通常の民間給与実態調査により前年冬と当年夏の民間の水準を調査し、これに基づいて年間の支給月数で民間との均衡を図ることとしており、この基本的考え方は、この夏の勧告に向けても変更はない。
しかしながら、詳細は集計中であるが、今回の本院の特別調査においても、民間の状況は、6月期の特別給の支給に影響を与えるほど厳しいことが伺える。
いずれにせよ、早急に増減率等の結果をまとめ、必要に応じて5月の連休前にも所要の勧告を行うことを考えている。
○指定職の特別給改正関係
指定職俸給表適用職員の特別給(期末特別手当)への勤務実績の反映について申し上げる。
この問題については、平成16年の勧告時の際に検討の必要性について言及し検討してきたところであるが、特に近時の公務員制度改革の議論のなかで、指定職俸給表適用職員の給与についても能力及び実績に応じた人事管理の徹底を求める声が強まって来ていること、及び今年から新たな人事評価制度が実施されることを踏まえると、できるだけ早期に指定職俸給表適用職員の特別給について、勤務実績を反映させる仕組みを導入する必要があると考えており、そのための措置について、先に述べた本年6月期の特別給についての勧告と同時期に所要の勧告を行いたいと考えている。
回答に対し公務員連絡会側は、指定職の勤務実績反映の問題について、「政府要請を受けて人事院が勧告するものであり、人勧制度上の問題がある」との認識を示した上で、一時金問題について、次の通り、局長の見解を質した。
(1) 民間の夏季一時金については、連合調査では3月31日までに決まっているいるのは2割、いまの話では十数%で実態捕捉の目的は達成したというが、民調と比べればそういう評価はできない。企業規模別、地域別、産業別のバランスは取れていないのではないか。そうしたことも配慮すべきではないか。
(2) 「所要の勧告を連休前に行う」とのことだが、勧告を行う場合の内容や今後のスケジュールについて今日段階で示せることはないか。
(3) 人勧は労働基本権制約の代償であり、中立第三者機関が精確な調査を行い、信頼を確保することが大事であり、引下げであるだけになおのこと、納得性ある説明をしていただきたい。
(4) 局長は政治からの要請は否定されたが、人事院が調査を始めたスケジュールを見れば、政治が先行していたのは明らかだ。まず政府に対し政治の圧力がかかり、それが人事院による調査につながったのは明らかではないか。労使の権限を制約する一方、人事院に大きな権限を与えているのであり、政治からの圧力に人事院が応じるということになれば、直ちに労働基本権を付与すべきということになる。
(5) 現行の一時金の比較方式が、民間の情勢変化に対応できないということを証明することになるのではないか。冬のボーナスや月例給与まで及びかねない。
(6) 地方自治体では対応に苦慮しており、人事委員会の対応も三つに分かれている。地方で調査を行えば、中央以上に偏在したデータになるため、混乱を生じている。土台がしっかりしていない勧告はしないでいただきたい。
(7) 支給実績をみて、夏に勧告すればみんな納得する。地方では、人事委員会勧告が守られていないのに、さらにボーナスをカットするということになれば人勧制度は機能しないも同然だ。
(8) 民間の一時金は、今後、さらに不安定になる。地方では給与制度は国に準拠し、水準は地場ということで来たが、今回、一時金は国並みに減らせということになれば対応しようがない。削減勧告はやめてもらいたい。
追及に対し吉田局長は、次の通り、答えた。
(1) 回答企業のバランスは取れているが、決定企業340社については製造業では決まっている企業が多いが金融や保険はこれからであり、産業のウエイトと340社のウエイトが同じであるかというとそうではない。勧告に当たって配慮していく事項である。
(2) 民間の夏季一時金が下がっていることから、6月の特別給の支給月数を引き下げることが考えられるが、現在の支給月数はこれから民調を行った上で決めることにしているので、今回の勧告で変えるつもりはない。民間と比べ多いということになれば、それを暫定的に支給凍結するということである。本則の支給月数を下げずに附則等で6月に支払うのはこういう月数にするという形とし、その凍結分については8月の勧告でその取扱いを明らかにすることになる。現在、勧告に向けて作業しており、勧告前には総裁からお伝えしたい。
(3) 精確さ、信頼性は当然必要と考えている。今回は、ある種、緊急事態であるが、いまの枠組みは変えたくないので、今回は暫定的に行い、夏の勧告で精算するということだ。
(4) 政治の動きが強まっていたことは承知していたが、人事院が直接要請を受けた事実はない。この春闘で、民間企業で大きく動いたことから、それに対応する意味で調査することにしたものだ。公務員給与は、労使だけでなく、国民がどう見ているかも意識しないといけない。公務員給与全体を守るという意味で、人事院として判断したのでご理解いただきたい。
(5) 職員の皆さんにきちんと説明することは絶対に必要であり、異例、特別の措置であり、なぜそうするのかやその内容はきちんと説明する。
以上のように、給与局長は公務員連絡会の要求に答えなかったことから、最後に吉澤事務局長が「公務員給与に対し、政治や国民から厳しい意見があることは承知しているが、第三者機関として客観的で信頼されることが最低限求められる。今回の調査はそうなっていないので、勧告しないでいただきたい。改めて総裁との間で決着させていただきたい」と総裁交渉を強く要望し、給与局長交渉を締めくくった。
以上