公務労協は、6月19日、東京・ホテルメトロポリタンエドモントにおいて、「公共サービスでともに生きる社会をつくる集い」を開催した。
この集いは、公務労協が2004年秋以降推進してきた「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」の取組みの到達点として、5月13日に全会一致で成立した「公共サービス基本法」の意義について確認するとともに、今後、質の高い公共サービスの再構築にむけ、同法の趣旨を具体化する取組みをすすめていくことを確認するために行ったもの。
集いには、全国から250名が参加、冒頭、主催者を代表して挨拶に立った中村公務労協議長(日教組委員長)は、「公共サービス基本法の成立は、340万筆を集約した『ともに生きる社会のための公共サービス憲章の制定を求める請願署名』と、中央地方で一体となって行ってきた公共サービス基本法の制定を求める集会の開催、地域に向けてのビラ・チラシ配布行動、新聞広告等々運動の積み重ねの成果である」とし、「原口一博衆議院議員・ネクスト総務大臣を中心とする民主党総務部門及び公務労働政策議員懇談会のメンバーの方々に厚く感謝申し上げる」と謝意を述べた。
また、現在の政府・与党の動向について、「公務員制度改革論議と公務員バッシングに政局がからんで、混沌とした状況になっている」とした上で、公共サービス基本法の趣旨を具体的に生かし実践する対応を通じた公務公共サービスに従事する労働組合の社会的責任と役割を十全に果たすとともに、基本法をさらに深化する立法措置や条例制定などの諸課題を追求していくことが重要であることを強調した。
続いて、連合を代表して逢見連合副事務局長から連帯の挨拶を受けた。「『官から民へ』『小さな政府』など、この間政府がやってきたことが重なって格差が拡大し、新たな貧困問題が生じてきた。このようなときに公共サービスは重要な役割を果たしているにもかかわらず、非常に厳しい施策がとられ、さまざまな問題、歪み、爪あとが顕在化してきた」と指摘した。そして「公共サービス基本法をベースにして、特に公共サービスの担い手となる人々が、ディーセントワークという人間らしい働き方を通じて生き生きとした担い手となって公共サービスを提供していけるよう、具体的な政策の要求や提言をすすめていくことが必要である」と訴えた。
挨拶に続き、原口一博・民主党ネクスト総務大臣と、神野直彦・関西学院大学教授による講演が行われた。
原口一博・民主党ネクスト総務大臣は、「公共サービス基本法の目指す社会像と連帯」と題して講演を行った。拡大する公共サービス格差の現状に対して、政治と労働組合、官と民、正規と非正規労働者の分断をさせないよう3つの連帯が必要であること、公共サービス基本法に主権者の権利保障を明確にしたが、公共サービスの受け手である国民は、保護の客体ではなく権利の主体とすべきであること、「一方通行型地域社会」から「交差点型地域社会」への転換、「コミュニティと家庭を支えるまちづくり」を行うことが、公共サービス基本法の目指す社会であること、などが述べられた。その上で、原口議員は、この公共サービス基本法は第一歩であり、公共サービス基本条例やプログラム法を作る必要があることを指摘するとともに、「是非その課程において、希望の社会へ向かう工程表を自ら作るべく自らの権利を職場で学び、討論してもらいたい」と訴えた。
続いて神野直彦・関西学院大学教授からは、「所得再分配国家から公共サービス提供国家へ」と題する講演が行われた。百年に一度といわれる今日の危機は、第二次世界大戦後アメリカを中心にした経済秩序であるパクスアメリカーナの崩壊であることを指摘した。新しい社会・経済秩序の構築にあたって、生活保障において現金給付をするかサービスを提供するかという選択の中で、貧しい人に限定した現金給付が高い国はさらなる貧困を招いており、公共サービスにより医療・教育・福祉などを提供した方が貧困がなくなることなどを述べた。その上で、公共サービス提供国家の創造には、福祉・医療サービス、教育・再教育・再訓練という対人社会サービスの必要性とともに、現金給付中心の「垂直的再配分」からサービス重視の「水平的再配分」の重要性を強調した。
「集い」は最後に、「公共サービスを再構築するという目標に向けた道程はこれからであり、さらに努力する」ことが確認され、終了した。
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