公務労協は、25日、総務省との交渉を実施し、新たな定員削減計画を策定しないことや公共サービス、必要な定員の確保などを申し入れた。
この申入れは、来年度予算の概算要求に向けて、新たな定員合理化計画を策定することが麻生首相から指示され、総務省行政管理局が作業に着手したことを受けて行ったもの。
申入れ交渉には、公務労協側からは吉澤事務局長以下、国公関係構成組織の書記長らが参加し、総務省側は橋口行政管理局長、住澤管理官らが対応した。
冒頭、吉澤事務局長は別紙申入書を手交し、「5月29日の閣僚懇談会で新たな定員合理化計画を策定するようにという総理の指示が伝達されたと聞いている。深刻な景気の下で雇用が危機的状況にあり、公務・公共サービスの役割が重要になってきているが、公務の職場では定員の削減で厳しい勤務環境になっている」と述べ、申入れ事項の実現などを求めたのに対し、橋口局長は次の通り答えた。
(1) 1の「新たな定員削減計画を策定しないこと」という要求であるが、定員合理化計画は新たな行政需要に対応していくために、メリハリのある定員配置を行うツールである。閣僚懇で新たな定員合理化計画を作るようにという総理の指示もあり、厳しい定員事情の中で、厳しい目標だが、新たな行政需要に応じていくためには、新たな合理化計画を策定することが必要と考えている。
(2) 2の「新規採用をはじめ必要な要員を確保すること」については、定員合理化計画の枠組みの中で、各府省からの要望を伺いながら、対応していくことになる。
(3) 3の「市場化テストやアウトソーシングを行わないこと」については、国民に対してどのようにして質の高い行政サービスを提供していくかが重要であり、効率的にやっていく必要があり、その場合、その一つの手段として市場化テスト等があり、外してしまうわけにはいかないと考えている。
(4) 4の再任用や定年延長については、2月に決定された公務員制度改革についての工程表に検討することが書かれており、定員管理のあり方もその中で検討することになる。
(5) 5の「十分な交渉・協議」については、要望通りにすることは約束できないが、よく意見を聞いて策定することとしたい。
これに対し、公務労協側はさらに以下の通り橋口局長の見解を質した。
(1) 雇用が深刻になっているとき、公務員の定員を削減すると言うことになると大きなマイナスのインパクトを与えることになるのではないか。
(2) スクラップアンドビルドということでは、新たな行政需要にどう応えていくかということもあるが、まずは事務事業そのものを見直すことが必要である。定員がない中で臨時・非常勤職員で対応しているという問題もある。もう少し弾力的に対応できるよう、知恵を出すべきだ。官房長官にも申し入れたことであるが、地方自治体の集中改革プラン、国の定員合理化計画について、一時凍結し、常勤職員の採用を前倒しすることは考えられないか。きめ細かく、バランスを考えて対応していただきたい。
(3) 2011年度以降の定員合理化計画と国の出先機関改革との関係はどうか。定員削減のために出先機関改革を行うものでないことを確認したいし、人の移管はあくまで政府の責任で行ったもらいたい。
追及に対し行政管理局側は、次の通り答えた。
(1) 公務員に対する国民の厳しい批判がある中で、新たな行政需要に応えていく必要があり、手綱を緩めるわけにはいかない。苦しい中ではあるが、新たな計画を策定し、スクラップアンドビルドで対応していく必要があると考えている。
(2) 考え方としてはあり得ると思うが、事務事業の廃止が限界にきている中で、定員合理化についてどう知恵を出して考えていけばいいのか。組織機構そのものを減らすことや行政評価制度の活用、総人件費改革といろいろやってきたが、これらの中でもっと効果的に人件費を減らしていくべきだということも指摘されている。再任用や定年延長の問題に対しては、定員合理化計画だけでは解決できないのでいろいろ検討しないといけない。
(3) 定員を削減するために出先機関改革を行っているわけではない。事務権限を国から地方へ移すことを踏まえて出先機関の組織と人を移していくことになるが、残った出先機関についてどうするかという課題がある。十分効果的、効率的に事務ができるようにしないといけないと考えている。出先機関改革が具体的にどうなっていくのかが見えてきたときに定員合理化計画でどうするかを考えていくことになる。
続いて国公関係組合が、@農林水産省では最終年度の府省間配転を進めているところであり、受け入れ先をしっかり確保していただきだくために定員合理化計画が妨げにならないようにしていただきたいA国税では人員不足であり、景気が悪い中で徴収環境も悪化しているという現状を踏まえていただきたいB北海道開発局では現在1003名の削減計画を実施しているところであり、新たな削減が課せられると定年退職者も減っていることもあり相当に厳しい。この間の新採抑制でアンバランスな年齢構成になってきており、事務事業にも支障を来たしかねないC国土交通省の出先機関は分権改革で半分になるということが言われ、さらに新たな定員削減となると一体どうなるのか。補正予算の執行もうまく回っていない状況があり、必要な要員を確保していただきたいD沖縄の職場では要員不足で目の前の業務を何とかこなしている状態であり、職員の健康被害も相当出ている、などと職場の厳しさを訴えた。
訴えに対し、橋口局長は「雇用の確保は大事なことだと思っているし、各府省から職場の厳しい状況は伺っているが、新たな行政需要に効率的効果的に応えていくためには定員の合理化が必要であることについてご理解願いたい」との考えを示すにとどまった。
最後に吉澤事務局長が、「公務の職場では超過勤務をしても手当が支払われないカラ残業が増えている。新たな定員削減を行えば、それがさらに増えることになる。不況の下での雇用危機など国全体の状況も踏まえて対応していただきたい」と重ねて、弾力的な対応を強く求め、申入れ交渉を締めくくった。
(別紙)
2009年6月25日
総務大臣
佐 藤 勉 様
公務公共サービス労働組合協議会
議 長 中 村 讓
新たな定員合理化計画の策定等に関する申入れ
常日頃から、行政の効率的、効果的運営とその改善に向けてご尽力されていることに心から敬意を表します。
さて、来年度以降の国の行政機関の定員管理については、麻生首相の指示により、総務省において新たな定員合理化計画の策定に向けた検討が着手されたと聞き及んでおります。
この間、財政危機を背景として行財政のスリム化が強行され、国民生活に関わる公共サービスも大幅な縮小・切り捨てが行われてきました。公共サービス基本法が5月13日に全会一致で成立したことにみられるように、いま求められているのは国民生活の安心・安全を保障する良質な公共サービスをいかに提供するか、そのため財政的・人的資源をどう確保するかであり、定員削減それ自体を自己目的化した合理化計画の策定ではありません。
また、今回の新たな定員削減計画が、国の出先機関の見直しを前提としていることについても、その見直しが地方分権ではなく行政改革の観点から検討されていること、国家公務員の雇用確保を明確にしていないことからも、到底容認することができません。
加えて、この間の定員削減計画の実施により、職場では複雑・高度化した事務・事業と新たな課題へより少ない人員での対応を求められ、職員は慢性的な超過勤務等による極めて厳しい勤務環境の中で日々の業務を遂行することを余儀なくされています。
以上のことから、従来の延長線上で新たな定員削減計画を策定することは、公共サービスの側面からも、公務員の雇用と生活の確保の側面からも行うべきではないと考えます。つきましては、新たな定員合理化計画の策定等に当たりまして、下記事項を申し入れますので、その実現に向けて最大限努力されるよう要請します。
記
1.公共サービスのさらなる縮小・切り捨てにつながり、国家公務員の雇用・労働条件の悪化をもたらす新たな定員削減計画を策定しないこと。
2.事務・事業の効果的で着実な実施と職員のワーク・ライフ・バランスを確保するため、新規採用をはじめ必要な定員を確保すること。
3.定員削減を目的とする市場化テストや事務・事業のアウトソーシングを行わないこと。
4.希望者全員の再任用の保障、65歳定年制の実現を柱とする高齢者雇用施策の確立、非常勤職員の雇用・任用制度の改善のため、弾力的な定員管理のあり方の検討作業に着手すること。
5.以上につき、公務労協並びに関係労働組合と十分交渉・協議すること。
以上