公務労協は、6月30日、東京・九段会館において社会保障学習会を開催した。この学習会は、中長期の社会・経済状況を視野に入れ、安心・安全な社会のセーフティネットとしての労働政策、所得政策、医療保障政策を包括した具体的な社会保障制度のあり方について学習することなどを目的に行った。
学習会には、全国から約800名が参加、冒頭、主催者を代表して挨拶に立った岡部公務労協副議長(自治労委員長)は、「『連帯と相互の支えあい』という協力原理がいかされ、ぬくもりのある社会をめざし、公務労協は現場を踏まえた政策を示す必要がある。この集会を公務労協としての年金制度の検討に役立てていこう」と述べた。
続いて、駒村康平・慶応大学教授が、「今日求められる労働政策、所得政策、医療保障政策を包括した具体的な処方箋」と題して講演を行った。雇用、社会保障システムの構築に当たっては、それぞれの制度間の整合性が必要であり、少子高齢化社会を向かえようとしている今日、ワークライフバランスを重視した、包括的、連続的な政策が求められていると述べた。そして、保育、教育などを充実し日本社会の可能性を広げること、高齢化社会・低経済成長社会では、どんな改革を行ってもみんなが得するような改革は困難であり、それぞれのコスト分担を決めていくことが政治の役割だと指摘した。
講演後、「今後の年金改革を考える」をテーマにしたパネルディスカッションが行われ、パネラーに大林尚・日本経済新聞社編集委員兼論説委員、板垣哲也・朝日新聞社論説委員、小畑洋一・読売新聞社社会保障部長、コーディネーターは駒村康平さんがつとめた。
まず、各新聞社が提言した年金制度改革案について、三人のパネラーから概要の説明がされた。大林・日本経済新聞社編集委員兼論説委員は、年金制度は持続的な制度設計とする必要があることを指摘し、基礎年金(共通年金)は財源を消費税とし、月額給付は実質価値6.6万円分を維持するなどした改革案を説明した。また、板垣・朝日新聞社論説委員は、現行の社会保険方式を維持した上で、税財源は医療、介護に優先的に配分すること、国民年金の空洞化対策として非正規労働者の厚生年金の適用拡大を図ることが必要だと述べた。次に、小畑・読売新聞社社会保障部長は、現行制度を基本に、基礎年金の受給に必要な加入期間を25年から10年に短縮し、最低保障年金を創設して、月5万円を保障、基礎年金の満額は月7万円に引き上げるなどとした案を説明した。
その後、各社の改革案について、@制度が経済的、財政的、政治的に持続可能性があるかどうかA雇用の流動化や生活の多様化などの社会状況への変化に対応しているかどうかB適当な給付水準が確保されるかどうか、の3点にわたって議論が行われた。
最後に、藤川・公務労協副事務局長が、「医療、福祉、年金などの社会保障制度全般にわたって公共サービスの質を向上させるという立場から、公務労協として積極的な取組みを進めていこう」とまとめを行い、終了した。
以上