公務員連絡会岡部副議長(議長代行)ほか委員長クラス交渉委員は、7日13時30分から人事院総裁と交渉を持ち、本年の勧告内容に関わる回答を引き出した。公務員連絡会は、この回答を受けて、10日に代表者会議を開いて公務員連絡会としての勧告に対する態度を確認し、声明や政府に対する要求書などを決定することとしているが、11日に予定される勧告後、官房長官や総務大臣など主要な給与関係閣僚に対して、勧告の取扱いにあたっては公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意するよう要求する予定。
<人事院総裁との交渉経過>
13時30分から行われた人事院総裁交渉の冒頭、岡部副議長が「6月24日に本年の人勧期要求を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。勧告直前でもあるので、本日は総裁から直接回答をいただきたい」としたのに対し、総裁は次の通り回答を示した。
1 勧告日について
勧告日は、8月11日(火)となる予定である。
2 官民較差等について
調査の結果、官民較差は、「0.2%台前半のマイナス」となる見込みである。また、特別給は、「0.35月の減」となる見込みである。
3 今年の給与改定の内容について
以下、本年の給与改定の内容について申し上げる。
・ 俸給月額については、マイナス較差を踏まえ、初任給を中心とした若年層及び医療職俸給表(一)を除き、すべて引下げを行う。
改定に当たっては、公務員連絡会の要求にも配慮した。
・ 給与構造改革に伴う経過措置額の算定基礎となる額についても、引下げ改定が行われる俸給月額を受ける職員を対象に、所要の引下げを行う。
・ 平成15年以降も存置していた新築・購入後5年に限り支給する自宅に係る住居手当については、廃止する。
・ 特別給については、年間支給月数を「0.35月分」引き下げる。
本年6月期に凍結した「0.2月分」は支給することなく引下げ分に充て、残りの「0.15月分」は、12月期の特別給を減ずる。
年間の引下げ分の割り振りは、期末手当を「0.25月分」、勤勉手当を「0.1月分」減とする。
4 超過勤務手当の支給割合等について
労働基準法の改正を踏まえ、日曜日又はこれに相当する日の勤務を除き、月60時間を超える超過勤務に係る超過勤務手当の支給割合を、勤務1時間当たり「150/100」に引き上げるとともに、当該加算した支給割合の超過勤務手当の支給に代えて勤務することを要しない日又は時間(代替休)を指定することができる制度を新設する。
5 改定の実施等について
・ 超過勤務手当の支給割合の引上げ等については、平成22年4月から、その他の改正については、公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときはその日)から実施する。
・ 本年4月から改正法施行日までの較差相当分を解消するための年間調整については、基本的には15年、17年と同様の方式により行う。調整率については、俸給月額の引下げ改定の対象とならない職員を除いて較差が解消されるような率を設定することとする。
・ 前述の給与構造改革に伴う経過措置額の算定基礎となる額の引下げも、この調整率を基に行うこととする。
6 給与構造改革について
地域間給与配分の見直しについては、平成17年に示した地域区分(ブロック)を単位として、本年4月の各地域別の較差を算出した結果、その較差は縮小の方向にあるが、23年度以降に最終的な検証を行う必要があると考えている。
また、23年度以降においては、経過措置の段階的解消に伴って生ずる制度改正原資の取扱いを含め様々な課題があり、これらについて、来年度以降順次具体的な見直しを行えるよう検討を進める。
7 非常勤職員について
非常勤職員の給与については、昨年発出した給与決定に関する指針により、各府省における給与の適正支給の取組みは着実に進んでいるが、引き続き早期に指針の内容による給与の支給が確保されるよう、関係府省に要請していく。
また、忌引き休暇等の対象となる非常勤職員の範囲を拡大するなどの取組も進めることとしている。
日々雇用の非常勤職員については、その任用、勤務形態を見直し、臨時的な業務に一定期間雇用されるという性格に応じた適切な任期や再任のルールを設定する必要があると考えており、引き続き、政府の関係部局と連携して本年度内を目途に結論を得るべく検討を進めていきたい。
8 高齢期の雇用問題について
公務能率を確保しながら65歳までの職員の能力を十分活用していくためには、平成25年度から始まる年金支給開始年齢の引上げに合わせて、定年年齢を段階的に65歳まで延長することが適当であると考えている。
定年延長の実施に当たっては、採用から退職に至るまでの人事管理全体の見直しが必要であり、そのための十分な準備期間や必要な法制整備に要する期間を考慮すると、本院としては、22年中を目途に具体的な立法措置のための意見の申出を行うことができるよう、本年秋以降、個別課題についての具体的な考え方等を示しながら、関係各方面と幅広く意見交換を重ね、鋭意検討を進めていきたい。
以上のような点について、報告において言及する。
9 公務員人事管理関係について
公務員制度改革に当たっては、全体の奉仕者として高い専門性を持って職務を遂行するという職業公務員制度の基本を生かしつつ、制度及び運用の一体的な改革を進めるとともに、公務員の意識改革を徹底することが肝要であり、報告では、このような公務員制度改革に対する本院の基本姿勢、政官関係と公務員制度や公務員の役割、労働基本権問題に関する基本的考え方について示すとともに、従来どおり職員団体からの要求事項を含む個別課題への取組について言及することとしている。
具体的には、
○採用試験の基本的な見直し
○時代の要請に応じた職業公務員の育成
○能力、実績に基づく人事管理への転換
○超過勤務の縮減
○両立支援の推進
○職員の健康の保持
などの諸課題について報告する予定である。
10 育児休業法の改正に関する意見の申出について
今般のいわゆる民間育児・介護休業法の改正も踏まえ、配偶者が育児休業をしている職員についても、育児休業の取得を可能とすることなど育児休業制度の拡充を内容とする「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出」を、給与勧告と同時に行う予定である。
<最後に>
本年の勧告は、月例給、特別給ともに引下げという厳しい内容となるが、今次のように民間が厳しい状況にあるときは、民間と共にそれぞれの役割を担いつつ社会を形成している公務員としても、このような民間の「痛み」を相応に共有すべきことはやむを得ざるところであり、このことは、公務員や公務運営に対する国民の支持、納得を得るためにも重要であると考えている。
本院としても、引き続き、公務員が厳しい状況の下で、士気を低下させることなく職務に精励できるよう努力していきたいと考えており、公務員連絡会におかれても、今回の勧告の趣旨及び改定の必要性について、特段の御理解をお願いしたい。
今後も高齢期の雇用問題等多くの課題が山積しており、これらについて一つ一つ着実な解決を図り得るよう、皆さんとも十分意見交換をしながら検討を進めていきたいと考えているので、引き続き、積極的な対応をお願いしたい。
以上の回答に対し、岡部副議長は次の通り公務員連絡会としての見解を述べた。
(1) ただいまの総裁回答のうち、月例給を引き下げ、一時金も大幅に引き下げるということについては、民間実勢を反映したものとはいえ、われわれの生活に大きな影響を与えるものであり、極めて不満な勧告だと言わざるを得ない。この公務員給与の引下げが、地方や地場企業に波及し、景気回復に悪影響を与えることを心配する。
自宅に係る手当の廃止については、われわれとしては、あくまで国家公務員における実情を踏まえた措置であると認識している。
高齢者雇用に関わって、雇用と年金の接続をはかる観点から、65歳までの段階的な定年延長の意見の申出を来年中に行う方向を打ち出したことについては、評価したい。今後は、給与のあり方を含む個別の課題についてわれわれと十分に交渉・協議を行い、確実に意見の申出をしていただくことを強く要請したい。
また、非常勤職員の任用制度のあり方について本年度中に結論を得るよう検討する、とのことだが、是非、われわれの意見も踏まえ、見直しの目的である雇用の安定に結びつくような結論を得るよう努力してもらいたい。
(2) ただいまの総裁回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定するが、政府に対しては勧告の取扱いに当たって十分われわれと交渉・協議し、合意することを求めていきたいと考えている。
8月30日に総選挙が行われ、政治情勢が大きく変化することが予想されるが、われわれ公務・公共部門を巡っては、厳しい情勢が継続するものと認識しており、勧告の取扱いも予断を許さない情勢にあると考えている。
今後、政府において労使関係制度のあり方を含む公務員制度改革の議論が本格的に進められていくが、現状では人事院勧告制度が公務員の唯一の賃金・労働条件改善の機会である。この点を十分踏まえ、人事院としても引き続き労働基本権制約の代償機関として、定年延長をはじめとした懸案課題の解決に向けて最大限努力することを要請しておきたい。
以上