公務労協は、20日、公務員事務局交渉を実施し、今次国会に提出すべく作業中の国公法等改正法案の内容を質すとともに、別紙の「今後の公務員制度改革に関する申入れ」を提出し、その実現を迫った。
交渉は、15時から行われ、公務労協側から岩岬・藤川・花村の副事務局長と構成組織担当者が参加し、公務員事務局側は笹島審議官、境・駒崎両参事官らが対応した。この交渉は、公務員に労働基本権を付与することをマニフェストに掲げた民主党を中心とする新政権が発足し、公務員事務局幹部人事が行われたことや、今次通常国会に内閣人事局を設置するための国公法等改正法案が提出される情勢となったことなどを踏まえて行ったもの。
冒頭、岩岬副事務局長が「国公法等改正法案をこの通常国会に提出すると聞いており、公務労協と十分交渉・協議を行い、納得の上で作業を進めていただきたい。きょうはその法案の検討状況を教えてほしい」と説明を求めたのに対し、笹島審議官は次の通り答えた。
(1) 昨年、前政権が国会に提出した国公法等改正法案は廃案になった。新政権、新体制の下、新たな問題意識で法案の検討作業を進めている。公務員制度改革については、国家公務員制度改革基本法に定められていることを含め多くの課題があるが、新政権の下では労働基本権の問題を重くみて進めていくことになるのではないかと考えるが、それには時間が掛かる。
(2) 現在検討中の国公法等改正法案は、@内閣人事局を設置して幹部人事を一元化することA官民人材交流センター及び再就職等監視委員会を廃止し、再就職等規制違反の監視を行う新たな組織を設置することB国家公務員制度改革推進本部事務局を廃止し、推進本部の公務員制度改革に関する事務を内閣人事局に行わせること、を内容として、予算関連・日切れ扱いで作業を進めている。
(3) 政治主導の下で検討を進めており、現時点では具体的な内容を説明できる段階には至っていないが、内容が固まった段階でご説明し、話し合っていくこととしたい。
これに対し公務労協側は、「予算関連・日切れ扱いと言うことであれば、もう時間もあまりないが、公務労協と十分交渉・協議を行うことを保障していただきたい」と要望した上で、次の通り、さらに検討状況を質した。
(1) なぜいま説明のあった3点を措置することにしたのかについて、制度改革の全体像の中でそれらがどう位置づけられるのかを説明していただきたい。
(2) 幹部職員の一元管理ではどのようなことを考えているのか。級別定数などは動かさないということでよいか。一元化はどのような公務員制度にしていくかにも大きく係わるし、昨年の法案のように幹部職員とはいえ降任・降格をやるということになれば、中立・公正の確保の観点で問題だ。
(3) まず3点だけ措置するということであれば2段階論になるので、法案を決める際には、労働基本権の付与・拡大を含めた改革の全体像明確にしてもらわないと納得できない。
(4) 定年延長については人事院が本年中に意見の申出を行うことになるが、公務員制度改革の中で検討することになるのか。また、前政権の工程表では「再任用の原則化」について2009年中に結論を得ることとされていたが白紙撤回ということか。
これに対し、公務員事務局側は、次の通り答えた。
(1) 政治主導の文脈の中で国家戦略局を設置することにしており、内閣人事局も政治主導で幹部職員の一元管理を行うということではないか。全体像は、定年延長や幹部人事の弾力化、再就職規制とも複雑に絡み合うし、労働基本権の取扱いも踏まえる必要があり、その検討には相当の時間がかかる。そこで、まずは3つに絞ったのではないか。
(2) 将来どういう公務員制度をめざすかについては、今後具体的に検討していくことになる。基本法がベースであり、適格性審査などについて検討しているが、幹部職員の人事管理の話なので級別定数等の話は入らないと考えている。また、降任・降格をどうするかについては、具体的に申し上げる段階にはない。
(3) 前政権の工程表の扱いを含め全体像については、政務3役を中心に政治的に判断されることになるので、それを踏まえて事務局として検討していくことになる。
(4) 定年延長も公務員制度改革の中に入ってくる。「再任用の原則化」は基本法にも規定されており、現政権の判断で検討を進めていくことになるのではないか。
以上のように、公務員事務局側が法案の内容について具体的で納得できる説明を行わなかったことから、岩岬副事務局長は「今日の説明は具体性がなく不満である」とした上で、「別紙の申入れ事項は、今後の検討に当たって最低限実現してほしい事項を取りまとめたもである。政務3役を含めて部内で検討し、事務局長等から責任ある回答をいただきたい」と強く要請した。これに対し、笹島審議官が「政務3役に伝え、高いレベルで議論ができるようにする。法案についてはタイミングを見ながら、話し合っていくこととしたい」と約束したことから、これを確認し、交渉を締めくくった。
(別紙)
2010年1月20日
公務員制度改革担当大臣
仙 谷 由 人 殿
公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部
本部長 中 村 讓
今後の公務員制度改革に関する申入れ
昨年12月に労使関係制度検討委員会報告がまとまる一方、民主党を中心とする新政権が発足して4か月が経過しましたが、新政権の公務員制度改革に関する基本姿勢はいまだ明らかにされていません。その一方で、幹部職員の一元管理のための内閣人事局の設置や官民人材交流センター等を改組するための関連法案を通常国会に提出する準備が進められていると仄聞しており、当該職員の意見を聞くことが重要です。
公務員制度改革は、行政が国民の期待とニーズに応え、その信頼を回復するための極めて重要な課題であり、あり得べき全体像を定めた上で、具体的な制度改革を進めるのでなければ、わが国の将来に禍根を残すことになりかねません。
また、公務員労働者が意欲を持って働ける仕組みを構築することにより、効果的かつ効率的な事務・事業の運営を推進していく必要があります。そのためにも労働基本権の確立を含む自律的労使関係制度の整備が不可欠です。
以上のことから、貴職が今後の公務員制度改革を進めるに当たって、下記の通り申し入れますので、その実現に向けて最大限努力されるよう要請します。
記
1.前政権の「公務員制度改革に係る「工程表」」を廃止し、新政権としての公務員制度改革の基本理念及び全体像を明確化するとともに、次の事項を盛り込んだ政府決定を行い、通常国会に提出する、内閣人事局を設置する等の国家公務員法等改正法案の附則に遅くとも秋の臨時国会で法制化することを規定すること。
(1) 国際労働基準を満たす団結権、団体交渉・労働協約締結権及び争議権の付与・拡大の方向性とその時期
(2) 自律的労使関係制度の整備と権限ある本格的な使用者機関の設置
2.国家公務員法等改正法案については、公務労協と十分交渉・協議し、成案を得ること。
3.公務員の労働基本権を確立するための自律的労使関係及び65歳までの段階的定年延長の制度設計については、公務労協との交渉・協議、合意に基づいて進めること。
以上