公務員連絡会地公部会は、12日14時35分から、2010春闘期の要求について、全国人事委員会連合会に対する申入れを行った。
公務員連絡会側は、佐藤地公部会議長(全水道委員長)、岡本企画調整代表(自治労書記長)、藤川地公部会事務局長、地公部会幹事が出席し、全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
冒頭、佐藤地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、以下の通り要請の趣旨を述べた。
(1) 地方財政の逼迫、地場民間賃金重視の勧告の下で闘われた昨年の地公確定闘争では、新たに100の自治体で独自削減が提案されるなど、厳しい闘いを強いられている。
賃金や人員の削減は、組合員の生活や働く意欲の低下にとどまらず、公務公共サービスの低下が深刻化しており、私たちは地方6団体とも協力しながら地方財政確立と地域間格差解消の取り組みを進めている。
(2) また、地公賃金に対する総務省のスタンスは、制度は国準拠、水準は民間準拠と、国家公務員キャリアを頂点とする公務員給与の序列化によって、総務省の調査でも国家公務員給与を大きく下回っている。
しかも財政危機を理由にした、特例条例による賃金削減の自治体は6割をこえており、人事委員会勧告制度が機能不全と指摘せざるを得ない。
(3) このような下で、2012年から非現業職員に協約締結権を付与し、労使による交渉によって賃金を決定する制度に移行する動きが進んでおり、新たな賃金闘争に備え努力していきたいと考えている。
(4) 更に自治体には50万とも60万人ともいわれる臨時・非常勤職員が勤務しているが、劣悪な労働条件に加えて法の谷間に位置している。雇用の安定・均等待遇による労働条件改善について、全人連としても必要な対策をお願いしたい。
(5) 各人事委員会におかれては、本年も、勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることから、基本的な使命を十分認識され対応されるよう要請する。
続いて、藤川地公部会事務局長が要請書の主な課題について説明し、全人連としての努力を求めた。
こうした地公部会の要請に対し、関谷全人連会長は以下の通り回答した。
<全人連会長回答>
平成22年2月12日
ただいまの皆さまからの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
さて、最近の社会経済情勢についてですが、去る1月20日に発表された月例経済報告において、政府は、景気の基調判断を「持ち直してきているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」とし、先行きについても、「雇用情勢の一層の悪化や海外景気の下振れ懸念、デフレの影響など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある」とし、警戒感を示しています。
また、民間賃金の状況については、2月2日に発表された「毎月勤労統計調査」において、2009年の労働者一人当たりの現金給与総額は、前年から3.9%と大幅に減少しています。その要因として、残業代などの所定外給与やボーナスなど特別に支払われた給与が大幅に減少していることが報告されており、依然として厳しい状況にあることが窺えます。
このような厳しい情勢の中、本年の春季労使交渉においては、「賃金カーブの維持」や「定期昇給制度のあり方」が焦点となるものと見られ、その行方が注目されるところです。
今後、各人事委員会においては、こうした社会経済の動向などを踏まえながら、本日の要請内容を含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。現在、人事院及び各人事委員会では、本年の民間給与実態調査の実施に向け、民間給与実態を的確に把握できるよう、その準備を進めているところです。
あらためて申すまでもないことですが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識しています。
公務員の給与を取り巻く環境は、さらに厳しさを増していますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしていきます。
また、全人連といたしましても、人事院や各人事委員会との意見交換に、十分努めていきたいと考えています。
(別紙)全人連への要請書
2010年2月12日
全国人事委員会連合会
会 長 関 谷 保 夫 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
要 請 書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
地方公務員の給与を巡っては、地方財政の逼迫、地方公務員賃金引下げの圧力のもとで、職員の給与を独自にカットする自治体が依然として後を絶たない状況が続いています。また、昨年は、夏季一時金の臨時勧告、自宅に係る住居手当に関わって、それぞれの地方自治体の実情を十分踏まえることなく、国と同様の取扱いを勧告した人事委員会も多くみられました。私どもは、労働基本権制約の代償措置とされる人事委員会勧告制度の空洞化を懸念しています。
連合は、2010春季生活闘争において、すべての組合で賃金水準の低下を阻止するため、賃金カーブ維持、非正規労働者を含めた全労働者を対象に、賃金をはじめとした待遇改善に取り組むなどの方針を決定し、運動をすすめています。
公務においても、この要求動向を踏まえ、民間の賃金実態を正確に把握し、公務員労働者の賃金を維持・改善すること、臨時・非常勤職員の処遇改善などの要求実現に向けた取組みが必要であると考えます。
本年は、労働基本権や労働条件決定制度のあり方を含めた公務員制度改革が大きな節目を迎えますが、新たな決定制度が確立するまでは、労働基本権制約の代償機関としての人事委員会勧告制度を十全に機能させることが重要であることは言うまでもありません。
貴職におかれましては、人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.地方公務員の生活を維持・改善するための賃金水準を確保する勧告を行うこと。また、人事委員会は労働基本権の代償機関としての責任を果たすこと。
2.公民給与比較方法について、当面、現行の比較企業規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。
4.臨時・非常勤職員の処遇改善に関する指針を示すこと。
5.公立学校教職員の給与の見直しに当たって、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成する際には、関係労働組合との交渉・協議を行うこと。
6.公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間を早期に1,800時間程度に短縮するために、引き続き次の事項の実現に努めること。
(1) 実効ある男女共通の超過勤務規制
(2) 年次有給休暇取得の促進
(3) 労働時間短縮のための人員確保等
7.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇(リカレント休暇)の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。
8.育児休業・介護休暇の男性取得の促進のための必要な措置を行うこと。
9.国家公務員の進捗状況を踏まえ、実効あるセクシュアルハラスメントの防止策を引き続き推進するため必要な措置を行うこと。
10.公務職場における障害者雇用の促進をはかるため、職場環境の整備を含め必要な措置を行うこと。
11.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。
以上