公務員連絡会は、18日、委員長クラス交渉委員が原口総務大臣、江利川人事院総裁とそれぞれ会い、春季要求書を提出し、2010春季生活闘争の火蓋を切った。要求書では、公務員労働者の賃金の維持・改善、非常勤職員等の雇用と処遇の改善、65歳までの定年延長の実現、労働基本権の確立などを強く求めている。今後、3月3日の幹事クラス交渉、3.12中央行動時の書記長クラス交渉などを節々で配置し、3月23日の回答指定日に向け、政府、人事院を追い上げることとしている。
総務大臣、人事院総裁交渉の経過はそれぞれ次の通り。
<総務大臣交渉の経過>
18日8時40分から総務省内で行われた原口総務大臣との交渉には、棚村議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料1、2)を手交した。
要求提出に当たって棚村議長は、次の通り述べ、3月23日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 日本経済は、大企業製造業を中心に、一時期に比べれば業績を持ち直しつつあるが、中小企業の経営環境や雇用情勢は依然として厳しく、円高やデフレの影響による景気の「二番底」も心配される不透明な状況にある。
(2) こうした中で連合は、配分の歪みを是正し、経済を外需依存型から内需主導型に転換するため、非正規を含むすべての労働者の賃金・労働条件の改善に取り組む方針を確立し、いま、まさに2010年春季生活闘争を進めている。
(3) 一方、公務・公共部門をめぐっては、「事業仕分け」にみるように政策決定の基準やプロセスが変化しつつあり、公務員の仕事や雇用のあり方にも大きな影響を与えている。また、依然として総人件費削減政策が進められ、公務員給与への削減圧力が強まっている。
大臣にご尽力頂き、昨年成立した公共サービス基本法は、良質な公共サービスが確実に実施されるようにするため、公共サービス従事者の適正な労働条件を確保することを定めている。公務員の使用者を代表する立場の総務大臣におかれては、この基本法を実現するためにも、本年の賃金・労働条件の改善に当たって@公務員労働者の賃金の維持、改善A非常勤職員等の処遇改善と雇用確保B雇用と年金を接続するための65歳までの段階的定年延長の実現、などに最大限ご努力頂くよう、強く要求する。
(4) また、公務員制度改革も重要な段階を迎えているが、労働基本権の確立、労働協約による賃金・労働条件決定制度の実現を含む公務員制度の抜本改革に向けて、総務大臣の立場からご尽力頂きたい。また、地方分権に関わる国の出先機関の見直しの検討に当たっては、総人件費・定員削減を自己目的化するのではなく、国民に安心・安全の公共サービスを提供する観点から事務・事業を十分精査し、政府の責任で雇用確保に万全を期すよう要請する。
(5) 公務員連絡会は、1月26日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2010年春季の要求を提出する。本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月23日には、大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい。
続いて地公部会を代表して、佐藤部会議長が次の通り述べた。
(1) 地方自治体、地方公務員を取り巻く環境は相変わらず厳しいと言わざるを得ない。とりわけ地方財政確立と地方分権は喫緊の課題だ。
(2) 鳩山政権の下、原口大臣の努力によって地方交付税が増額され、地域主権改革の具体化に向けた国と地方の協議の場の法制化原案作成作業が、大詰めを迎えていると伺っている。
疲弊しきっている地方財政の確立と、主権者である国民が主役の社会に移行することによって、国も地方も社会も元気が出るように引き続き特段の御努力をお願いする。
(3) 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度の検討が進められているが、地方公務員において国に遅れないよう検討を要請する。また、年金支給開始年齢引上げに伴って、人事院は段階的定年制導入を昨年報告した。地方自治体の場合は法律が出来たとしても自治体ごとに条例化しなければならず、2013年から国・自治体が一斉に制度がスタートできるよう総務大臣として特段の取組みを要請する。
(4) 非正規労働者の雇い止めが社会問題になっているが、自治体にも60万人を超える臨時・非常勤職員が勤務している。しかし、職員並みの仕事をしながら労働条件は劣悪であるにも関わらず適用される法律がない。大臣も問題意識を更に強めて必要な措置を講じて頂きたい。
(5) 本日提出した要求事項にあるように、組合員、臨時・非常勤職員の労働条件改善はきわめて重要な課題であり、また地方自治体の活性化に向けた事項であるので、是非とも積極的に検討され、誠意ある回答をいただけるよう要請する。
これらに対して総務大臣は、「要求の主旨は承った。要求書の主旨については3月下旬の回答に向けて検討を進めていく」と答え、今後公務員連絡会と交渉・協議していくことを約束した。その上で、以下の見解を述べた。
(1) 公務公共サービスで働く皆さんの労働条件、人権の保障といった点に特段の意を尽くしていきたい。また、地方交付税1.1兆円の増額要求については、財政力の弱い自治体に傾斜配分できるような取組みを指示しているところである。是非地域でも活かしていただきたい。
(2) 今年の国の税収は1997年当時の見通しでは、92兆円を予定していたところ37兆円という状況になっており、公務で働く皆さんも国民も大変な雇用情勢に置かれている。原口ビジョンを出させて貰っているが、そうした状況を根本から変えていきたいと考えている。新自由主義的なものから脱却し一人ひとりの尊厳が保障させる社会を皆さんと一緒に目指していきたい。公務で働く人も民間で働く人も協力して、ともに成長し、国民の豊かさの実現をめざしていくため、いわゆるガバナンスの改革をしようとするものである。消防職員の労働基本権もまさにその一つである。労働基本権について長きにわたり皆さんと議論を進めてきているが、その旨を踏まえて回答したい。
<人事院総裁交渉の経過>
18日11時から行われた江利川人事院総裁との交渉には、棚村議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料3)を手交した。
要求提出に当たって、棚村議長は次の通り述べ、今後十分交渉・協議を重ね、3月23日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 企業製造業を中心に、一時期に比べれば業績を持ち直しつつあるが、中小企業の経営環境や雇用情勢は依然として厳しく、円高やデフレの影響による景気の「二番底」も心配される不透明な状況にある。
(2) こうした中で連合は、配分の歪みを是正し、経済を外需依存型から内需主導型に転換するため、非正規を含むすべての労働者の賃金・労働条件の改善に取り組む方針を確立し、いま、まさに2010年春季生活闘争を進めている。
(3) 公務・公共部門をめぐっては、「事業仕分け」にみるように政策決定の基準やプロセスが変化しつつあり、公務員の仕事や雇用のあり方にも大きな影響を与えている。また、「ムダ削減」のスローガンのもとで依然として総人件費削減政策が進められ、公務員給与への削減圧力が強まっている。
一方、公務員制度改革も重要な段階にあり、団体交渉と労働協約による賃金・労働条件決定制度のあり方の検討も進められているが、実際にそれが実施されるまでは、現行の唯一の賃金・労働条件決定の機会である人事院勧告制度が労働基本権制約の代償機能として十全に機能しなければならない。
貴職におかれては、このことを十分認識し、本年の賃金・労働条件の改善に当たって@公務員労働者の賃金を維持、改善する給与勧告A非常勤職員等の一層の処遇改善と実際の雇用確保に結びつく任用制度の改善B65歳までの段階的定年延長の実現に向けた意見の申出、などに最大限ご努力頂くよう、強く要求する。
(4) 公務員連絡会は、1月26日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2010年春季の要求を提出する。要求事項の重点は事務局長から説明させていただくが、本日の要求提出を機に、これから事務当局との交渉を積み重ね、3月23日には、総裁から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい。
続いて、吉澤事務局長が要求事項のポイントを説明し、「極めて厳しい環境の中で職務に奮闘している職員・組合員の切実なギリギリの要求内容である。今後の誠意ある交渉・協議と、積極的な要求の検討をお願いしたい」と、回答日に向けた公務員連絡会との交渉・協議や要求内容の前向きな検討をさらに要請した。
これに対して総裁は、「私も現在の経済情勢を同様に心配している。これから本番を迎える春闘の動向を注視して、本日の皆さんからの要求書の主旨を踏まえ、3月23日の回答にむけ十分検討して参りたい。また、人事院は法律に基づき与えられた任務があり、その任務を果たすべく、責任を持って進めて参りたい」と見解を示すとともに、今後、交渉・協議していくことに同意した。
(資料1)
2010年2月18日
総務大臣
原 口 一 博 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 棚 村 博 美
要 求 書
日本経済は、昨年来の世界的な経済危機の下でデフレスパイラルから抜け出せない中、失業率が長期的に高止まりし、"二番底"も取りざたされるなど、国民は先の見えない不安な状況に置かれています。
2010春季生活闘争では、こうした状況から脱却していくため、内需を拡大することが最も重要な課題であり、なんとしても非正規労働者を含めたすべての働く者の雇用確保と賃金水準の維持、底上げを実現しなければなりません。日本社会を覆う、雇用不安・所得不安・将来不安を払拭し、希望と安心で満たしていくことが求められており、新政権に対する国民の期待も高まっています。
また、昨年成立した公共サービス基本法に基づき、公共サービスを具体的に再構築していくことも重要な課題です。日本社会のあり方を、効率と競争優先の市場原理主義に基づく社会から、働く者を大切にし、連帯と相互の支え合いに基づく、ともに生きる思いやりのある社会に転換していかなければなりません。
公務・公共部門においては、総人件費削減政策のもとで公務員バッシングが強まるなど、引き続き厳しい情勢にありますが、公務員労働者が国民の期待に応えていくためには、雇用の安定と公務員に相応しい労働条件が確保されなければなりません。
本年の賃金・労働条件改善にあたっては、公務員労働者の賃金を維持・改善することはもとより、非常勤職員等の処遇と雇用のあり方を抜本的に改善すること、雇用と年金を接続するための高齢者雇用施策の確立などが重要課題となっています。
公務員連絡会は、1月26日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2010年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.総人件費削減の実行計画等について
(1) 公務員の総人件費削減政策を撤回し、公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の適正な勤務条件と労働環境を確保すること。
(2) 定員削減に伴う配置転換実施後のフォローアップについては、引き続き雇用調整本部が責任を持って対応すること。 また、独立行政法人や国の出先機関の見直しに伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。
2.2010年度の賃金改善について
(1) 2010年度の給与改定に当たっては、公務員労働者の賃金を維持し、改善すること。また、使用者の責任において、実態に見合った超過勤務手当の支給、独立行政法人等を含めた公務員給与の改定に必要な財源の確保に努めること。
(2) 地域別官民給与の実態公表とそれに基づく俸給表水準見直しの検討要請など人事院勧告制度に対する政治的介入を直ちにやめ、公務員給与のあり方について、社会的合意が得られるよう、使用者としての責任を果たすこと。
3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員等の雇用・身分等の差別的取扱いを解消することとし、日々雇用職員の任用・勤務形態の見直しに当たっては、任期を1年以内とし更新可能とする、任期を定めた新たな非常勤職員制度を創設することを基本に、あわせて定員管理の弾力化を図り、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。
(2) 日々雇用職員制度の見直しを第一歩と位置づけ、非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。
(3) 「均等待遇」の原則に基づき、常勤職員と同等の勤務を行っている日々雇用の非常勤職員の給与を抜本的に改善すること。2010年度については、引き続き「非常勤給与ガイドライン」を遵守するよう各府省を指導するとともに、非常勤職員の給与を1時間当たり30円以上引き上げること。
4.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(2) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充B総合的な休業制度、などを実現すること。
(3) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施すること。また、超過勤務手当の全額支給を実現すること。
5.新たな人事評価制度の実施について
新たな人事評価制度については、公正・公平性が確保され、円滑に運用されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底に努めるとともに、実施状況を検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
6.新たな高齢者雇用施策について
(1) 65歳までの段階的定年延長を中心とする新たな高齢雇用施策を確立することとし、人事院の意見の申出がなされた場合には、直ちに法改正に着手すること。
(2) 定年延長に伴って、給与体系・水準や退職手当のあり方等を検討する場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
7.福利厚生施策の充実について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、ワーク・ライフ・バランスの確保を重要な柱として新たに位置づけることを含めて、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、使用者側の体制整備や予算の確保に努め、必要な心の健康診断やカウンセリング等の着実な実施や復職支援施策の拡充・強化を図ること。
(3) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(4) 「国家公務員福利厚生基本計画」の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
8.男女平等の公務職場の実現、女性労働者の労働権確立について
(1) 公務職場における男女平等参画の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、女性公務員の採用、登用の拡大を図り、女性の労働権確立や環境整備を行うこととし、政府全体として取り組むこと。
(2) 取得率の数値目標を明確にした男性の育児休業及び育児のための短時間勤務等の取得を促進することとし、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 女性職員の採用・登用拡大の指針の実現に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。
(4) 次世代育成支援対策推進法に基づく前半5年間の「行動計画」が終了することから、使用者の立場から、その実施状況の点検を行い、より積極的な後半計画の策定とその着実な推進に取り組むよう、各府省を指導すること。
9.労働基本権確立を含む公務員制度改革について
(1) ILO勧告に基づき、労働基本権制約の立法政策を根本から見直し、公務員の労働基本権、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立すること。
(2) 国家公務員制度改革基本法に基づく公務員制度の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、抜本的な改革を実現すること。
(3) 国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会報告を踏まえ、自律的労使関係を早急に確立することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて作業すること。
(4) 国際労働基準確立の観点からILO第151号条約を批准すること。
10.その他の事項について
(1) 公務における外国人の採用、障がい者雇用を拡大すること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務・事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
以 上
(資料2)
2010年2月18日
総務大臣
原 口 一 博 殿
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
要 求 書
貴職の地方分権推進、地方公務員の処遇改善に向けたご努力に敬意を表します。
2010年度の地方財政計画案において、地方交付税が1.1兆円増額されました。地方交付税の増額は、私どもをはじめ多くの地方自治体関係者が強く求めてきたことであり、高く評価しているところです。また、民主党マニフェストにあるように「地域主権」確立のため、地方が自由に使える自主財源を大幅に増やし、地方自治体が地域のニーズに適切に応えられるようにするための一歩とも言えます。
一方、地方公務員給与については、地方財政が逼迫していることを理由にして6割以上の自治体において独自の給与削減措置が実施されています。このような事態は、労働基本権制約の代償措置とされる人事委員会勧告制度の空洞化につながると懸念しています。質の高い公共サービスを実現するためには、地方公務員が意欲と誇りを持って働くことができる労働条件の整備が必要です。
以上のことから、公務員連絡会地方公務員部会は、2010年春季の要求を下記の通り提出いたします。貴職におかれては、下記事項の実現に最大限尽力されますよう要求します。
記
1.地方公務員の生活の改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。
2.自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重すること。また、給与決定にあたって地方自治体に対して国と同様の取扱いをするよう求めないこと。
3.地域主権の推進と地域間の財政格差是正のために税財源の地方への移転を図ると ともに、財源不足によって安易な公務員賃金の削減や行政サービスの低下などが生 ずることのないように、引き続き必要な交付税総額を確保すること。
4.労働基本権を保障した民主的な地方公務員制度を確立すること。また、ILO151号条約を批准し、公務員の賃金・労働条件を団体交渉によって決定する制度の確立をめざし、公務員連絡会地方公務員部会との十分な協議のもと進めること。
5.65歳までの段階的定年延長を中心とする新たな高齢雇用施策の検討にあたって、 多種多様な地方公務員の職務を踏まえるとともに、公務員連絡会地方公務員部会と の十分な協議のもと進めること。
6.自治体における人事・給与制度に係わる新たな評価制度の導入に当たっては、十分な労使協議を行うよう地方自治体に対して必要な対応を行うこと。
7.自治体の臨時・非常勤職員について、雇用の安定と均等待遇原則および労働基準法が定める賃金・労働条件の改善・確保、法律にもとづく健康診断、社会保険や雇用保険の適用等がはかられるよう助言を行うこと。また、非常勤職員の法的地位の明確化や短時間公務員制度実現に向け取り組むこと。
8.年間総実労働時間1,800時間実現に向け、所定労働時間を短縮し、時間外労働の縮減と年休取得の促進を図ること。とくに、恒常的な時間外労働が生じている職場をなくすために必要な措置を講ずるとともに、「不払い残業」の実態把握を行い、その解消に向けて助言を行うこと。また、時間外労働の縮減に向けて、36協定締結義務職場での締結促進のための施策を徹底し、労働基準法33条3項の「公務のために臨時の必要がある場合」について、厳格な運用を推進するよう助言を行うこと。
9.各種休暇制度を新設・拡充し、総合的な休業制度を確立すること。とくに、家族看護休暇およびリフレッシュ休暇・有給教育休暇の新設、夏季休暇日数の拡大をはかること。また、育児休業、介護休暇の男性取得促進のための措置を講ずるよう地方自治体に対して必要な対応を行うこと。
10.自治体職場での男女平等・共同参画のための諸施策を推進するよう助言すること。また、次世代育成支援対策推進法に基づく前半5年間の「行動計画」が終了することから、使用者の立場から、その実施状況の点検、より積極的な後半計画の策定に向けて地方自治体に対して必要な対応を行うこと。
11.自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策に関わる自治体の実態の把握と、その問題点や課題についての改善策を積極的に進めること。
12.刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項については任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を促進すること。
13.公共サービス基本法の実効化をはかるため、地方自治体に対して必要な支援を行うこと。
14.少子・高齢化、地域医療確保、環境保全などの公共サービス水準を維持・向上させるため、地方公務員の十分な定員確保を行うこと。
15.自治体が委託する公共サービス関連の事業所について、雇用確保に努め、労働基準法などの法令を遵守させるとともに、公契約条例の制定を進めるよう助言すること。
16. 自治体財政健全化法の運用については、国の関与は最小限に止め、自治体の自主的・主体的な財政健全化を基本とすること。
(資料3)
2010年2月18日
人事院総裁
江 利 川 毅 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 棚 村 博 美
要 求 書
日本経済は、昨年来の世界的な経済危機の下でデフレスパイラルから抜け出せない中、失業率が長期的に高止まりし、"二番底"も取りざたされるなど、国民は先の見えない不安な状況に置かれています。
2010春季生活闘争では、こうした状況から脱却していくため、内需を拡大することが最も重要な課題であり、なんとしても非正規労働者を含めたすべての働く者の雇用確保と賃金水準の維持、底上げを実現しなければなりません。
公務・公共部門においては、総人件費削減政策のもとで公務員バッシングが強まるなど、引き続き厳しい情勢にありますが、公務員労働者が国民の期待に応えていくためには、雇用の安定と公務員に相応しい労働条件が確保されなければなりません。
本年の賃金・労働条件改善にあたっては、公務員労働者の賃金を維持・改善することはもとより、非常勤職員等の処遇と雇用のあり方を抜本的に改善すること、65歳までの段階的定年延長の意見の申出を確実に行うことなどが重要課題となっています。
公務員連絡会は、1月26日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2010年春季の要求を提出いたします。貴院におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.2010年度賃金要求について
(1) 2010年度の賃金改善について
@ 2010年度の給与改定に当たっては、民間賃金実態を正確に把握し、公務員労働者の賃金を維持し、改善すること。また、水準・配分・体系等について公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
A 給与構造改革が2010年度に終了することを踏まえ、その進展状況について慎重な検証を行うこととし、新たな制度見直しの検討を開始する場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。あわせて、経過措置が段階的に解消することによって生じる制度改正原資の活用方法についても、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
B 定年の段階的延長に伴う給与体系・水準の見直しに当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意の上で検討作業を行うこと。
(2) 社会的に公正な官民比較方法の確立について
@ 政府の俸給表水準の見直し要請に対し、労働基本権制約の代償機関としての立場を堅持し、毅然として対応すること。
A 官民給与比較方法については、当面、現行の比較企業規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう、抜本的に改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
(3) 諸手当の見直し・検討について
@ 住居手当については、全額支給限度額、最高支給限度額を引き上げるなど総合的に改善すること。
A 単身赴任手当の見直しについては、単身赴任の解消策を含めて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
B その他の諸手当の改善については、官民較差及び民間実態を踏まえ、十分交渉・協議すること。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 「均等待遇」の原則に基づき、常勤職員と同等の勤務を行っている日々雇用の非常勤職員の給与を俸給表に位置づけ、国に雇用される労働者の最低賃金(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(2) 「非常勤給与ガイドライン」の実施状況を点検・報告するとともに、着実な処遇改善に努めることとし、2010年度については非常勤職員の給与を1時間当たり30円以上引き上げること。
(3) 非常勤職員等の雇用・身分等の差別的取扱いを解消することとし、日々雇用職員の任用・勤務形態の見直しに当たっては、任期を1年以内とし更新可能とすることを基本に、任期を定めた新たな非常勤職員制度を創設し、本人の希望に沿った継続的・安定的な雇用を確保すること。
(4) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務・事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
(5) 非常勤職員制度の見直しを踏まえ、非常勤職員に育児休業法を適用する「意見の申出」を行うこと。
3.労働時間の短縮及び本格的な短時間勤務制度等について
(1) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、本年については、次の事項を実現すること。
@ 政府全体として超過勤務を縮減するための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した職場における厳格な勤務時間管理と、新たな上限規制の導入を含めた実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施すること。当面、在庁時間削減の取組みを徹底するとともに、他律的業務を含め超勤上限目安時間の遵守状況について調査、検証すること。
A 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率及び超過勤務代休時間の取扱いについては、民間企業の実態を踏まえた見直しを行うこと。なお、超過勤務手当については全額支給すること。
(2) 育児休業法等の改正及び人事院規則改正による両立支援策については、公務員連絡会が別に提出した意見を反映させることとし、早期に実施すること。
(3) 病気休暇制度や運用のあり方等の検討に当たっては、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
(4) 公務に雇用創出型・多様就業型の本格的なワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的な検討を開始すること。介護のための短時間勤務制度導入のための検討を促進すること。
4.新たな人事評価制度について
中立・公正な人事行政や勤務条件を所管する立場から、新たな人事評価制度の実施及び評価結果の活用状況を検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
5.新たな高齢者雇用施策について
(1) 新たな高齢者雇用施策については、65歳までの段階的定年延長を実現するための「意見の申出」を2010年中のできるだけ早期に行うこと。
(2) 雇用の確保は、最も重要な勤務条件であることから、具体的な施策の内容、実施時期等について公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
6.男女平等の公務職場の実現について
(1) 公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、必要な施策の確立を図ること。
(2) 取得率の数値目標を明確にした育児休業及び育児のための短時間勤務の男性取得の促進をはかることとし、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 次世代育成支援対策推進法に基づく前半5年間の「行動計画」が終了することから、その実施状況の点検を行い、より積極的な後半計画の策定とその着実な推進に取り組むよう、各府省を指導すること。
(4) 女性職員の採用・登用拡大の指針の実現に向け、必要な取組みを着実に実施すること。
7.福利厚生施策の充実について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、ワーク・ライフ・バランスの確保を重要な柱として新たに位置づけることを含めて、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいた心の健康診断やカウンセリングの着実な実施や復職支援施策の拡充・強化を図ること。
(3) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
8.その他の事項について
公務職場に外国人の採用、障がい者雇用を促進すること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
以上