2010年度公務労協情報 19 2010年3月3日
公務公共サービス労働組合協議会
 公務員労働組合連絡会

2010春季要求事項で幹事クラスが総務省・人事院と交渉−3/3
−中間的回答に不満の意を表明し、さらに誠意ある回答を求める−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、3日午後、人事院職員団体審議官、総務省人事・恩給局次長と交渉を行い、2月18日に提出した2010春季要求に対する中間的な回答を引き出した。しかし、この日の回答は総務省、人事院ともに抽象的で不満な内容にとどまった。このため、公務員連絡会は、12日の各局長との交渉ではさらに誠意ある回答を行うよう要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げて行くこととした。
 人事院、総務省交渉の経過は次の通り。

<人事院職員団体審議官との交渉経過>
 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、13時30分から、根本職員団体審議官、上山参事官と交渉を行った。
 冒頭、公務員連絡会の岩岬副事務局長が「2月18日に総裁に要求書を提出したので、重点事項についてのこの間の中間的な検討状況を伺いたい」と人事院の回答を求めたところ、審議官は「皆さんからの要求書については、先月18日総裁宛に提出され、現在最終回答に向け検討を行っているところである。最終回答は、ご要望のとおり3月下旬を想定しているが、それに向けて今後もしっかりと意見交換をしていきたい。本日私の方からは、現段階における状況について、回答させていただく」と述べた上で、次の通り答えた。

1 2010年度賃金要求について
(1) 今年の民間春闘の状況については、失業率が高水準にあるなど、引き続き厳しい経済・雇用情勢の下で行われている。そのような状況の中で、連合は、統一的なベアの要求を見送っており、各産別組合や単組においてもベア要求を見送るところが多いとの報道がなされている。また、日本経団連は「経営労働政策委員会報告」において、「ベースアップは困難と判断する企業が多いものと見込まれる」とした上で、「定期昇給の抑制・凍結も議論になる」との厳しい考えを示している。こうした状況からすれば、今年の民間賃金の状況は引き続き厳しいものになると考えられる。
(2) 公務員給与について、人事院としては例年と同様、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較をして較差を解消することを基本に勧告を行うこととしている。
(3) 給与構造改革については、平成22年度において、当初予定していた制度の見直しや新設がすべて実施されることとなる。給与構造改革後の施策の検討、制度改正原資の活用方法の検討については、公務員連絡会のご意見を伺ってまいりたい。
(4) 住居手当、単身赴任手当の見直しに関する要求については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえながら検討していきたい。

2 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員の給与については、平成20年8月に発出した指針に沿った適正な支給が図られるよう取り組んで参りたい。
(2) 非常勤職員の任用・勤務形態の見直しについては、本院としても、関係府省と連携し、鋭意検討を行っているところである。

3 労働時間等について
(1) 超過勤務の縮減については、各府省において不必要な在庁時間を削減することが必要であり、現在、政府全体としてそのための取組みがなされている。
(2) 人事院としても総労働時間の縮減については、勤務時間を昨年4月から1日7時間45分、1週間38時間45分に短縮したところである。また、超勤縮減については、昨年2月、他律的業務に係る上限の目安時間を720時間としたところであり、その遵守状況について注視してまいりたい。
(3) 45時間を超え60時間以内の超勤割増率の状況については、4月以降の民間の実態を調査していくこととする。

4 新たな人事評価制度について
 新人事評価制度については、昨年4月から施行されているが、多くの府省では、昨年10月から実施してきているところであり、その具体的な結果が出るのは今後であり、まずはその人事評価の実施状況、評価結果の活用状況等を把握していきたい。

5 高齢期雇用問題について
 高齢期の雇用問題については、昨年の勧告時の報告で述べたように、平成25年度から段階的に65歳まで定年を延長することが適当であり、本年中に意見の申出ができるよう検討中である。これからも公務員連絡会の皆さんと意見交換をしながら検討を進めていきたい。
 また、定年延長に伴う給与制度の見直しに当たっては、60歳台前半の給与水準及び給与体系を設計するほか、60歳前の給与カーブや昇給制度のあり方についても検討を行うこととしたい。これらについても、公務員連絡会の皆さんと意見交換しながら検討を進めてまいりたい。

6 男女平等、福利厚生施策等について
(1) ワークライフバランスや両立支援に関する改善など男女ともに働きやすい職場環境の整備については、昨年後半、民間育児・介護法の改正に併せ、国家公務員の育児休業法の改正も行われており、それに伴い、今後、人事院規則や関係通達等の改正を行うことになる。
(2) 病気休暇制度や運用のあり方等の検討に当たっては、民間の状況や公務の実態を見極めながら、公務員連絡会の皆さんや各府省の意見を聴取した上で、総合的に検討していきたい。

 回答に対し公務員連絡会側は、次の通り人事院の見解を質した。
(1) 昨年秋の基本要求に対する回答の中で、現在のところ比較対象企業規模50人以上を見直すことは考えてないとの見解を示していたが、今日においてもその考えに変わりはないか。
(2) 日々雇用の非常勤職員の任用・雇用のあり方について、昨年の報告では結論を年度内に出すとのことであったが、いつ結論を出すのか。23日の総裁回答では制度見直しの内容や実施時期について明確に回答すべきだ。また、非常勤職員の育児休業法適用に関してはどのように考えているか。
(3) 超勤割増率の民間実態調査において、通常の割増率がどうなっているのか把握するのも重要と考えるが、45時間未満の民間実態を調査することは考えていないのか。
(4) 給与構造改革期間終了後の施策の検討を行うとしているが、進め方や検討内容をどのように考えているのか。
(5) 定年延長をどう実現していくかが本年の最重要課題であり、65歳まで段階的に定年を延長するため、年内に意見の申出を行って頂きたい。また、給与カーブのあり方を含め様々な課題について、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めて頂きたい。
(6) 新たな人事評価制度について、人事評価の実施状況や評価結果の活用状況等を把握していきたいとしているが、どのように調査しようと考えているのか。組合も調査を予定しているので、参考にしてもらい、問題点を洗い出し、改善に向けて取り組んでもらいたい。
(7) メンタルヘルスに問題を抱える職員が増大しており、管理者研修等も含めた環境整備や施策の改善・拡充が必要ではないか。また公務員の福利厚生について、職員のニーズや民間の正確な実態把握を行い、改善・充実を図るべきではないか。

 これに対し人事院側は、次の通り考えを示した。
(1) 比較対象企業規模については、現行の「50人以上」が適当であると考えており、現段階では見直すことは考えていない。
(2) 日々雇用の非常勤職員の任用・勤務形態の見直しについては、本年度内を目途に結論を得ることを申し上げ、関係府省との調整を行いながら検討を急いでいる。できるだけ早く結論を得られるよう努力し、皆さんとも話し合っていきたい。育児休業法の適用については、日々雇用非常勤職員の見直し後の新たな任期や再任のあり方が明らかになった上で検討していきたい。
(3) 民間における超勤割増率の実態調査について、月45時間未満の調査は要望としては受け止めるが、現在45時間以上の調査だけを考えている。
(4) 給与構造改革後の施策等の検討については、今後、皆さんから意見をお伺いするとともに、給与構造改革後の検証を踏まえながら検討していきたい。
(5) 定年延長については、給与カーブのあり方を含め、皆さんとよく話し合っていきたい。
(6) 人事評価の実施状況や評価結果の活用状況等の調査を、いつ、どのように行うかはまだ検討していない。評価結果が処遇に反映される1回目が今度の6月の一時金であり、2回目が12月の一時金、3回目が来年1月の昇給ということになる。今後、情報を収集しタイミングを考えながら、日程や調査内容等について検討していきたい。
(7) 民間実態調査は、基本的には給与に関しては春に、給与以外の事項に関しては秋に実施している。福利厚生については、民間の状況を把握し、適正なものの確保を図っていきたい。メンタルヘルスについては、これまでに指針を示し、医者の配置や研修の充実、パンフレットの作成などを行ってきた。管理者研修も含めてさらに充実を図っていきたい。

 これらの見解に対し、公務員連絡会側は、さらに@給与に関する基本姿勢を堅持し、労働基本権制約の代償措置としての人事院の機能を十分に果たすことA昨年の給与や一時金の大幅削減で大変厳しい状況にある公務員の生活を支えるという視点から勧告に向けた作業を進め、給与水準の維持・改善に努力することB昨年行った一時金の暫定勧告のようなことは、官民比較方法の信頼性を著しく損なうものであり、勧告制度の信頼性を維持していくためにも二度と行わないこと、などを強く訴えた。
 最後に岩岬副事務局長が「今日の回答は、まだまだ内容が具体的でなく不満である。今後議論を積み重ねて、12日の書記長クラスと各局長との交渉では、われわれの要求について具体的な回答を示してほしい」と局長交渉では誠意ある回答を示すよう強く求め、本日の交渉を締めくくった。

<総務省人事・恩給局次長交渉の経過>
 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、14時45分から、総務省人事・恩給局淵上次長と交渉を実施し、2010春季要求書に対する検討状況を質し、中間的な回答を求めた。
 はじめに、岩岬副事務局長が要求に対する総務省の回答を求めたのに対し、次長は「ポイントを絞って回答する」として、次の通り回答を示した。

1 総人件費削減の実行計画等について
 配置転換等の取組みに関しては、職員の配置転換も最終年度を迎えるが、個々の職員の新たな職場への定着化に向けて、引き続き、必要な対応が図られるよう努力してまいりたい。

2 2010年度の賃金改善について
 2010年度の給与改定の方針については、人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢の下、皆様方の御意見等も伺いながら、今後、政務三役に相談してまいりたい。

3 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の処遇については、一昨年8月の人事院の指針を踏まえて、非常勤職員の俸給月額の決定等について、改善の取組みを推進していくことが必要と考える。
 さらに、日々雇用の非常勤職員の任用・勤務形態をめぐる問題については、その在り方について人事院などの関係機関と現在、詰めの作業をしているところである。
 いずれにせよ、皆様方の御意見等も伺いながら、早期に案を取りまとめて、政務三役に相談してまいりたい。

4 労働時間、休暇及び休業等について
 超過勤務の縮減については、超過勤務を命ずべき業務について、政府全体として業務量を減らす取組み、厳正な勤務時間管理や現場における時間効率の向上の取組みを行うことが重要であると考えている。
 先の給与法改正においても、超勤についてのコスト意識を高め、超勤を強力に抑制するため、超勤手当の支給割合引上げを定めているところであり、各府省において、労働時間短縮対策に基づいた様々な取組みが的確に行われるよう徹底してまいりたい。

5 新たな人事評価制度の実施について
 評価制度が円滑に運用されるよう、引き続き、職員団体とも十分意見交換し、円滑に運用していきたいと考えているのでよろしくお願いしたい。

6 新たな高齢者雇用施策について
 今後、定年延長等の検討に当たっては、@総人件費の抑制A定員管理への影響B新規採用への影響C組織活力の維持等の課題への対応が必要であり、これらの課題も含め、国家公務員制度改革推進本部が基本法に基づき総合的に検討しているところである。関係機関と連携をしながら、政府全体として取り組んでまいりたい。

7 福利厚生施策の充実について
 福利厚生施策については、特にメンタルヘルス対策について充実を図ってきたところであるが、国家公務員福利厚生基本計画の見直しの際には皆様方の御意見も十分に伺ってまいりたい。

8 労働基本権確立を含む公務員制度改革について
 労働基本権の回復は、大臣も「公務員制度改革において俎上に載せて前進させていく課題である」と仰っており、労働基本権の在り方を含む公務員制度改革の具体化に向けては、当局としても積極的に公務員制度改革本部事務局に協力してまいりたい。

 これに対して、公務員連絡会側からは、次のことを質した。
(1) 総人件費改革に関わっては、独立行政法人や国の出先機関の見直しに関わって雇用問題が生じる場合には、政府として統一的に雇用責任を持つことを要求しているので見解をいただきたい。
 また、配置転換については目標を達成することができたが、この1月にも自殺者が出ている。不幸なことが生じないよう、丁寧なフォローアップをお願いしたい。
(2) 給与については、政府として人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢については変わりはないということをまず明確にすべきだ。その上で本年の給与改定については勧告を踏まえて政務三役に相談するという回答だと理解してよいか。
(3) 日々雇用の非常勤職員の任用・雇用のあり方の見直しの時期について、明確にしてもらいたい。何が問題で進まないのか、考えがあれば示して頂きたい。公務員連絡会としては4月スタートを要求してきたが、できるだけ早く実施できるよう人事院と連携して取り組み、大臣回答では具体的な方向性を明確に示して頂きたい。国会でも官製ワーキングプアが問題にされており、是非とも解決すべきだ。また、非常勤職員調査の結果はいつ頃示してもらえるのか。
(4) 人事評価については、仕組みはできたが機能させることが大事だ。管理職の認識が不十分なので信頼できる制度となるよう努力して頂きたい。人事院と連携して最も適切な時期に実施状況の調査を行って問題点を把握して、改善措置については公務員連絡会と十分に話し合ってほしい。組合としても調査・点検を行うことにしているので、話し合いながら進めて頂きたい。
(5) 高齢雇用施策については、勤務条件であり総務省としても検討すべきである。過日、定年延長に係る総務省の試算結果が報道されたが、前提条件が一つの政策判断を伴っているにもかかわらず現実離れし、政治的に利用されつつあり、極めて遺憾だ。どういう意図で試算したのか説明してもらいたい。
 また、人事院は65歳までの段階的な定年延長について、年内に意見の申出を行うとの考えであるが、政府として国家公務員制度改革推進本部が対応するとしても、総務省人事・恩給局も使用者の立場で前向きに取り組んで頂きたい。
(6) 定年延長に伴って退職手当の見直しも課題になると考えられるが、現時点の見解を伺いたい。また、検討を始めるときには、十分議論させてほしい。
(7) 高齢者雇用施策は、国家公務員が決まらないと地方公務員の検討が始まらない。地方が国に遅れることなくついて行けるよう早めに方向性を出してほしい。
(8) 福利厚生施策に関する研究会の報告が3月中にでるとのことだが、メンタルヘルス対策やレクリエーションを含めた福利厚生施策の充実について確実に取り組んでもらいたい。

 これに対し、総務省側は次の通り答えた。
(1) 原口大臣も、国の出先機関見直しについて、地域主権戦略会議で検討していくという考えを示しており、その具体化に当たっては、独法の見直しを含めて、雇用に対するご懸念が生じることのないよう十分対応していく。
(2) 政府として人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢は変わらない。本年の給与改定については、新政権は政治主導なので最終的には政務三役が判断するということであり、人勧尊重の立場で相談するということである。
(3) 過去における非常勤職員の常勤化問題を踏まえ、関係府省でルールを作って運用してきており、今回はその見直しが必要であり、定員や予算計上のあり方について、どこまで見直すかについて結論が出ていないということだ。大きな方向性としては、前に出すという姿勢であり、人事院の考えを踏まえつつ、一定の整理を行うべく、今月末を目途に作業を進めている。実施時期については、できるだけ早くできるよう努力する。調査結果も含め、23日の大臣回答では一定の方向性が示せるよう努力しているところだ。
(4) 定年延長の影響については、様々な対応策を考える必要があり、そのためには、定量的に問題を把握する必要がある。まずは対策を講じないとどうなるかという自然体の試算が出発点であり、今の状態のまま定年延長を行うとどうなるかを試算した。給与、任用、仕事の方法等についてどういう対策を講じればどうなるか、それで国民の理解が得られるか、今後、この試算を出発点として、公務員事務局(内閣人事局)と連携し、いろんな条件や対策を織り込んだ案をいくつか示し、具体的に集約できるよう努力していきたい。
(5) 最も給与が高い時を基準に計算する方法もあり、また勤続年数が増えても支給月数に上限があるので、定年延長に伴い必ず見直す必要があるということではないが、民間準拠なのでそういう観点からの検討はある。
(6) 高齢者雇用施策について、国と地方の足並みが揃うよう努力していく。

 最後に、岩岬副事務局長が「今日の回答は具体性がなく不満だ。12日には局長から、大臣回答に結びつく具体的で明確な回答をお願いする。とりわけ、この10年間にわたって公務員給与は下がりつつけ、昨年は一時金が大幅に引き下げられ、ローン返済に苦慮している組合員も少なくない。公務員の労働条件を総合的に改善することは可能であり、例えば超勤縮減にはお金は掛からない。そういう観点で使用者として努力してほしいし、公務員連絡会と十分話し合って頂きたい。われわれの要求を大臣に伝え、誠意ある回答をすることを要求する」と強く要請し、本日の交渉を締めくくった。

以上