公務員連絡会は、12日、2010春季要求の実現をめざして中央行動を実施した。午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた3.12中央集会には、全国の仲間800人が結集した。日本経済が低迷し続ける中、2010春季生活闘争を取り巻く厳しい現状に対する認識を統一するとともに、非常勤職員等を含めた公務部門労働者全体の賃金・労働条件の維持・改善やワークライフバランスの確保をめざし、23日の回答指定日に向け闘う決意を固めた。この日行われた書記長クラスと総務省人事・恩給局、人事院の各局長との交渉では、労働基本権制約の下で人勧制度を守り、民間賃金を反映した給与改善を行うことや臨時・非常勤職員の処遇改善と雇用安定に向けた任用・勤務形態の見直し、65歳まで段階的に定年延長することを明確にするよう求めたが、取り巻く情勢の厳しさを反映して総務省、人事院の姿勢はきわめて堅く、要求を満たす明確な見解は示されなかった。公務員連絡会では、この日の昼に開いた企画・幹事合同会議で総務大臣、人事院総裁回答の獲得目標を設定し、書記長クラスの交渉経過を踏まえつつ、23日に向けて詰めの交渉・折衝に入ることを確認した。
午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた中央集会では、冒頭主催者を代表して挨拶に立った棚村議長が「日本経済の低迷は外需依存の体質にあることは明白である。外需から内需への転換を図ることが必要であり、そのためにも家計や個人消費を支える給与改善は欠かせない。連合は2010春季生活闘争においてすべての働く者の処遇改善に向け取り組んでいる。組合員の期待と社会的役割を果たすべく、連合に結集し、官民一体になった取り組みを進めよう。また、良い社会をつくる公共サービスキャンペーンの取組みをはじめ、公益法人・独立行政法人の見直し、国の出先機関の見直し、労働基本権回復に向けた取組みなど、公務をめぐる課題も山積しており、さらに公務員連絡会の団結を強め取り組んでいく必要がある」と全力で闘うことを訴えた。
続いて激励挨拶に駆けつけた團野連合副事務局長は、「2010年闘争は、15日からの第1の山場を前に極めて重要な局面を迎えている。企業業績は回復基調にあり、二番底の懸念はなくなりつつあるが、中小企業は依然厳しい状況にある。そうした中、連合では、賃金水準のこれ以上の低下を抑え、非正規労働者の処遇改善や賃金の底上げ、労働時間の短縮による雇用の確保などを重点に取組みを進めている。すべての働く者とその家族の幸せのために全力を挙げて闘う」と、国営部会を代表して宇田川全印刷書記長は「連合・公務労協方針を基本に、実質生活維持のための賃金の維持・改善、各組合間の格差是正、年間総労働時間1,800時間の実現、65歳まで安心して働ける新たな高齢雇用施策の実現などに向け、取組みを進めている。公務員を取り巻く環境は大変厳しいが、ともにがんばっていこう」と、それぞれ闘う決意を述べた。
このあと基調提起に立った吉澤事務局長は、「新政権がどうしてくれるのかではなく、汗をかいてともにつくってきたこの政権の下でわれわれ自身が一体どうするのかを考え、提言していくことが重要だ。物価水準が低下し、深刻なデフレ状況が続く中、連合が掲げる賃金水準の維持はわれわれにとって至上命題である。また民主党がマニフェストで掲げた労働基本権回復の課題も早急に実現することを求めて取組みを進める。われわれにとっては正念場の年であり、そのスタートがこの春闘段階という理解の下、職場を含めた取組みへの結集が重要だ」と述べ、取組みへの結集を訴えた。
構成組織決意表明には、森下国公総連中央執行委員、軍司自治労副委員長、清水日教組書記次長が登壇し、それぞれの組織が取り組んでいる課題を報告するとともに全力で闘い抜く決意を述べた。
集会を終えた参加者は、人事院前に移動し、「公務員労働者の賃金を改善しろ」「非常勤職員の雇用を確保しろ」「超過勤務を短縮しろ」とシュプレヒコールをあげ、人事院交渉を支援し、交渉終了後その場で交渉報告を受け、この日の公務員連絡会の行動を終えた。
この日行われた総務省人事・恩給局長、人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。
<総務省人事・恩給局長交渉の経過>
公務員連絡会書記長クラス交渉委員と総務省人事・恩給局村木局長との交渉は、12日午前11時から総務省内で行われた。公務員連絡会側は、本日段階での総務省の見解を求め、局長は「2月18日に要求書を受取り、その後それぞれのレベルにおいて、皆さんと議論を重ねてきたところである。最終回答は23日に大臣から行うことを予定しているが、本日は、私の立場として申し上げられることについて回答する」として、次の通り回答した。
1 総人件費削減の実行計画等について
(1) 配置転換等の取組みに関しては、最終年度を迎えることとなるが、個々の職員の新たな職場への定着化に向けて、引き続き、必要な対応が図られるよう努力してまいりたい。
(2) 国の出先機関等の取扱いについては、原口大臣も記者会見等において、地域主権担当大臣として、「国・地方協議の場、あるいは地域主権戦略会議の中でしっかり議論していきたい」と発言されており、今後の人員の移管の段階においては、これが円滑に進むよう協力してまいりたい。また、独立行政法人の見直しについても注視してまいりたい。
2 来年度の給与改善について
(1) 人事院勧告制度は労働基本権制約の代償措置であり、労働基本権がなお制約されている現状においては、同制度を尊重することが政府としての基本姿勢である。
(2) 2010年度の給与改定の方針に当たっては、同様の基本姿勢の下、皆様方の御意見等も伺いながら、適正な給与水準が確保されるよう、検討してまいりたい。
なお、人事院の昨年の勧告時報告において、給与構造改革期間終了後の取組みとして、地域における民間給与の状況等を踏まえ、引き続き地域間の配分の在り方を検討することとしており、今後、人事院において、地域における民間給与等の実態についての調査等が行われるものと思われる。総務省としては、中立・第三者機関である人事院における検討の状況を見守ってまいりたい。
3 非常勤職員の問題について
(1) 非常勤職員の処遇については、一昨年8月に人事院から出された給与に関する指針を踏まえて、非常勤職員の俸給月額の決定、通勤手当の支給、長期勤務者への期末手当の支給等について、改善の取組みを推進していくことが必要と考える。
(2) さらに、日々雇用の非常勤職員の任用・勤務形態をめぐる問題については、昨年の人事院の報告の中で、「引き続き政府の関係部局と連携して本年度内を目途に結論を得るべく検討を進める」こととされているところであり、その在り方について人事院などの関係機関と現在、詰めの作業をしている。
いずれにせよ、皆様方の御意見等も伺いながら、早期に案を取りまとめて、政務三役に相談してまいりたい。
4 労働時間の短縮等について
国家公務員の労働時間の短縮については、平成4年に決定(人事管理運営協議会決定)された「国家公務員の労働時間短縮対策について」を平成20年9月に改正するなど、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進を中心に進めている。
特に、超過勤務の縮減については、超過勤務を命ずべき業務について、政府全体として業務量を減らす取組み、厳正な勤務時間管理や現場における時間効率の向上の取組みを行うことが重要であると思われる。
先の給与法改正においても、超勤についてのコスト意識を高め、超勤を強力に抑制するため、超勤手当の支給割合引上げを定めているところであり、各府省において、労働時間短縮対策に基づいた様々な取組みが的確に行われるよう徹底してまいりたい。
5 新たな人事評価制度の実施について
評価制度が円滑に運用されるよう、制度の周知・徹底のため、昨年夏から評価者の評価能力を高めるための評価者講座を開催してきたところであり、今後とも引き続き行うこととしている。
本制度については、引き続き、職員団体とも十分意見交換し、円滑に運用していきたいと考えているのでよろしくお願いしたい。
6 高齢者雇用施策について
平成20年6月に成立した国家公務員制度改革基本法においては、雇用と年金の接続の重要性に留意して、定年の段階的引上げの検討等を行うこととされている。
民主党政策集においては、「定年を段階的に65歳まで延長することによって、年金受給年齢まで働ける環境を整える」とされている。
また、昨年8月の人事院勧告時に行われた「報告」においては、人事院の研究会の最終報告も踏まえ、定年年齢を段階的に65歳まで延長することが適当との基本的な考え方を表明したものと承知している。
今後、定年延長の検討に当たっては、@総人件費の抑制A定員管理への影響B新規採用への影響C組織活力の維持等の課題への対応が必要であり、これらの課題も含め、国家公務員制度改革推進本部が基本法に基づき総合的に検討しているところであり、関係機関と連携をしながら、政府全体として取り組んでまいりたい。
7 福利厚生施策の充実について
国家公務員の福利厚生計画については、社会経済情勢の変化や職員のニーズに対応するとともに、国民の理解を得るべく効率的かつ効果的に推進していくことが重要と認識している。
今後の福利厚生の在り方に関し、研究会を開催して幅広い視点から議論いただいているところであり、年度内には報告がまとまる予定である。
報告の扱いについては、次期の国家公務員福利厚生基本計画の改定に反映させるとともに、例えば、メンタルヘルスの問題など、個別の課題への対応の検討にも、次年度以降、順次取り組んでいきたい。
国家公務員福利厚生基本計画の見直しの際には皆様方の御意見も十分に伺ってまいりたい。
8 男女平等の公務職場の実現について
平成21年度の国家公務員T種試験等事務系区分の採用者に占める女性の割合は30.6%であり、男女共同参画基本計画(第2次)に目標として掲げる水準に達したところである。一方、登用については今後も各府省における取組みを積極的に推進していく必要があると考えており、能力及び実績に基づく人事管理の徹底により、意欲と能力のある女性の登用の拡大を、より一層推進していく所存である。
9 労働基本権の回復について
公務員の労働基本権については、国家公務員制度改革基本法第12条を受け、国家公務員制度改革推進本部の下に置かれた労使関係制度検討委員会において、国民に開かれた自律的労使関係制度の措置へ向け、昨年末に報告書がとりまとめられたところであり、総務省としても、当該委員会の検討作業に積極的に協力してきたところである。
労働基本権の回復は、大臣も「公務員制度改革において俎上に載せて前進させていく課題である」と仰っており、自律的労使関係制度を措置することなど、公務員制度改革の具体化に向けては、当局としても積極的に公務員制度改革本部事務局に協力してまいりたい。
局長の回答に対し、公務員連絡会側は次の通り総務省の考えを質した。
(1) 総人件費削減に関わる配置転換の問題について、2010年度で計画が終わった後のフォローアップに万全を期すべきである。適切な公務公共サービスを提供していくために必要な人員の確保は重要である。現在の定員削減計画が終了する2010年度以降どのような状況になっていくのか。
(2) 独立行政法人や国の出先機関の見直しに関わり、総務省として、職員の雇用確保が前提だという明確なメッセージを出すとともに、23日には大臣から明確な回答をお願いする。
(3) 現在の人勧制度の下では、人勧尊重というのは当然のことと理解しているが、この間、給与構造見直しや比較企業規模の見直し、昨年の一時金の臨時勧告の問題などは、政治・政府の圧力によりなされたと理解している。前政権の下で俸給表水準の見直しが要請されていたが、新政権下ではその点、どのように対応する方針か。
(4) 非常勤職員の処遇改善に関わり、人事院の指針を受けて、各府省においてどのように対応がなされているのか。また非常勤職員等の実態調査結果はいつ公表するのか。
(5) 霞が関を中心に長時間の超過勤務が恒常化している。この実態を政府として正面から認識すべきだ。IT等を活用した厳格な勤務時間管理を行うなど、抜本的対策を実施すべきだ。
(6) 政府として、雇用と年金の接続のための施策の中心に定年延長をおいて検討する考えであり、総務省としてもその実現に努力すると理解してよいか。また、人事院が「意見の申出」を行った場合は誠意を持って対応してもらいたい。
(7) 総務大臣が記者会見で「退職管理の基本方針を策定する」と発言しているが、この基本方針というのはどういうもので、何を盛り込むのか。退職のあり方は重要な勤務条件であり、基本方針を閣議決定する前に公務員連絡会と十分協議してもらいたい。
これらに対し、村木局長は次の通り答えた。
(1) 定員削減計画については、人事・恩給局は所管部局ではなく、現在、担当局から具体的な話は聞いていない。
(2) 独立行政法人や国の出先機関の見直しに関わる雇用の確保について、23日に明確な大臣回答をという強い要請があったことは、大臣に伝える。
(3) 俸給表水準の見直しは、前政権の下での要請ではあるが、人事院がどのように判断するかであり、政治的圧力とは考えていない。新政権でどうなるかにかかわらず、すでに人事院で検討されている問題であり、それを見守っていきたい。人事院がどのような勧告・報告をするかわからないが、それを受けてどうするかは政治の判断だと考えている。
(4) 非常勤職員の処遇改善については、一昨年の人事院の指針に基づき各省での取組みが進められ、一定の成果が上げられており、その上で、任用等の課題について、制度官庁で検討が進められていると理解している。実態調査の結果については、制度設計の議論に役立つように集計しようと考えており、制度設計に合わせて公表することを考えている。
(5) 超勤実態については、全体を一般化して言うのは難しいが、職員には、とくに国会開催時には、朝早くから夜遅くまで働いてもらっており、肉体的な負担も大きいと認識している。人事管理を行う立場から、職員の健康の面からも真剣に取り組んでいかなければいけないと考えている。勤務時間管理については、人事院規則では、書面でなければいけないとはなっておらず、その方法についていろいろな知恵があったら出してもらいたい。ICTの活用は、民間や地方公共団体で先行的に実施しているところを視察し勉強している。コスト面なども考慮し、検討していきたい。
(6) 定年延長問題については、国家公務員制度改革推進本部における施策の推進に、総務省として最大限協力するという立場だ。
(7) 「退職管理の基本方針」については、これから作業しなければならないが、改正国公法で定めることが求められており、その内容としては、天下り禁止や再就職に関わるルールを守ること、各任命権者が職員の退職管理をどのような方針で行うかなどを定めるもので、人事当局が守らなければならないルールを盛り込むものだと思う。決定する時期については、現在、国会に提出している国家公務員法の改正に併せて施行できるようにするというのが一つの考えだ。公務員連絡会にはしかるべき時期に説明し、意見交換させていただく。
最後に、吉澤事務局長が「23日の最終回答に向け、積極的な検討を重ねてもらいたい」と強く要請し、本日の交渉を終えた。
<人事院職員福祉局長との交渉経過>
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、同日14時45分から、桑田職員福祉局長と交渉を行った。
冒頭、桑田局長が「先般ご提出された皆さんからの要求については、3月23日に予定している最終回答に向けて検討を行っているところである。本日、私の方からは、勤務時間等職員福祉局関係の要求に関する現段階における検討状況について、回答させていただく」として次の通り考え方を示した。
1 労働時間等について
(1) 超過勤務の縮減については、不必要な在庁時間を削減することが必要であり、現在、各府省において削減目標を設定するなどして、政府全体として取組みがなされている。
(2) 総勤務時間の縮減については、人事院としても勤務時間を昨年4月に1日8時間から7時間45分に短縮したところである。
また、特に長い超過勤務を命ぜられた職員に休息の機会を与えるため、「超勤代休時間」を導入したところであり、適切に活用されるよう各府省を指導してまいりたい。
(3) 昨年2月に定めた他律的業務に係る720時間の目安時間については、遵守状況を注視してまいりたい。
2 男女平等、福利厚生施策等について
(1) 昨年11月に公布された育児休業法の改正法は、本年6月30日に施行することとなっており、現在、施行に伴う人事院規則や関係通達等の改正の準備を進めている。改正内容の周知期間等を考慮し、3月15日に公布を予定している。
(2) 心の健康づくり対策については、指針を定めるほか、相談窓口の設置、研修の実施など施策の充実に努めている。
現在、「円滑な職場復帰及び再発防止のための受入方針」(平成17年7月)を改定するため検討会を設け、専門家による検討を進めている。
(3) 病気休暇制度や運用のあり方等の検討については、現在、公務における病気休暇の取得実態や、昨年秋の「民間企業の勤務条件制度等調査」の結果を取りまとめるなど精査しているところであり、現時点で、具体的な検討の方向性について確たることは申し上げられないが、今後、皆さんの意見を聴取しながら本年夏の勧告時を目途として検討してまいりたい。
以上の回答に対し公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 超勤の縮減が焦眉の課題となり、この数年間様々な取組みが行われているが、国公実態調査による超勤実態は2006年227時間、2007年231時間、2008年234時間と増えている。こうした問題は結果がすべてだ。結果が出ないのなら、その原因を分析して新たな対策を取らないといけない。上司がいると帰れないというような職場の文化そのものを変えないといけない。他方、定員削減が進められ、職員の仕事の負荷は高まり、職員の健康はギリギリの状態だ。政府全体として取り組むことは当然であるが、とくに霞が関では国会や政治との関わりが強く、人事院としてきちんと取り組むべきだ。
(2) われわれはITを活用して厳格な勤務時間管理を行うよう求めており、人事院と人事・恩給局が協力してこれを活用することを検討すべきだ。他律的業務の上限目安については、一定期間後に点検することになっていたはずであり、1年経過しているのでしっかり調査し、実態を丁寧に検証し手立てを講じるべきだ。
(3) 本府省でも超勤は予算から見て平均でも月30時間程度に止まっているが、相当不払い超勤があるのではないか。政権が交代し、チャンスでもあるので、今年はぜひとも前向きに進めていただきたいし、総裁から明確な回答をお願いしたい。
(4) 他律的業務の典型例として国会、国際、法令、予算等が挙げられているが、国土交通省では全職場を他律的業務を行っているものとして720時間を適用している。適用職場の単位を細かく設定することなどにより、限定的に運用するよう指導すべきだ。
(5) 非常勤職員に対する育児休業等の適用は昨年来の課題であるが、非常勤職員の雇用のあり方について年度内に結論を得た上で、その内容が一定の任期を定めたものになれば適用する方向で意見の申出に向けて検討してもらいたい。
(6) 「円滑な職場復帰及び再発防止のための受入方針」の改定に向けた検討についてはどのようなことを考えているのか。長期病休、自殺など深刻な事態が増えていることから、しっかり取り組んでほしいし、内容については前広に議論させていただきたい。
(7) 病気休暇・運用のあり方の見直しスケジュールはどうなっているのか。また、検討に当たってはわれわれと十分交渉・協議・合意してもらいたい。
これらの質問に対し、局長らは以下の通り答えた。
(1) 一昨年4月から全府省で、在庁時間削減に全力で取り組んでおり、意識も高まってきている。引き続きコスト意識を高め、業務の効率化を図るなどの取組みを着実に進めていきたい。われわれも文化を変えることが必要と考えている。いずれにしても状況を注視しながら、政府全体として取り組んで行きたい。
(2) 平成20年の国公実態調査では720時間を超えて超過勤務をしていた職員は1.8%、約3,000人だったので、引き続き国公実態調査なども含めて超えている者についてフォローしていきたい。
(3) 在庁時間のうち超過勤務として支払うべき時間については超勤手当を支払いながら在庁時間削減の取組みを進めているところであり、成果が上がっていないということではない。
(4) 超過勤務の縮減については総務省からも「縮減対策」が示され、各府省はそれに基づいて取組みを進めているが、人事院としても上限目安を守るようお願いをしているところである。
(5) 非常勤職員の雇用のあり方の検討を行っている最中であり、任用形態が決まった段階で検討することにしている。育児休業等を適用するかどうかは任期の定まり方にもよるが、人事院は職員の利益を守る立場で仕事をしているのでご理解願いたい。
(6) メンタルヘルス対策については、検討を始めたばかりであり、まだ具体的にどうするとは言えないが、復帰しても再発するということを少なくしようという問題意識であり、夏頃までに検討会の報告がまとめられるのではないかと考えており、それを踏まえて具体策を検討することとしたい。
(7) 病気休暇等の見直し内容の検討はこれからであり、夏の勧告時の報告を目途に具体化していきたい。データ等は皆さんに前広にお示しし、組合の皆さんとしっかり議論していく。
最後に、吉澤事務局長から「23日の総裁回答までに十分検討し、明確な回答をいただきたい」と申し入れ、職員福祉局長交渉を締めくくった。
<人事院給与局長との交渉経過>
公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、15時15分から、尾西給与局長と交渉を行った。冒頭、吉澤事務局長が回答を求めたのに対し、尾西局長は、次の通り考え方を示した。
1 今年の民間春闘等の状況について
(1) 今年の民間春闘の状況について最近の各種報道などをみると、失業率は昨年後半に比べやや持ち直しているものの、依然高水準にある。また、今日時点の連合傘下の組合の要求内容は統一的なベアの要求は見送っており、月例賃金及び一時金の要求も前年に比べ、それぞれ減となっている。
(2) また、日本経団連は「経営労働政策委員会報告」において、「ベースアップは困難と判断する企業が多いものと見込まれる」とした上で、「定期昇給の抑制・凍結も議論になる」との考えを示している。
(3) こうした状況からすれば、今年の民間賃金の状況は引き続き厳しいものになることと考えられるが、いずれにせよ、今月17日の春闘の集中回答の状況などを注視していきたい。
2 本年の勧告に向けての基本姿勢について
(1) 公務員給与について、人事院としては、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その両者の給与の精確な比較を行い、較差を解消することを基本に勧告を行うという基本姿勢に変わりはない。
(2) 平成18年度から5年間かけて実施してきている給与構造改革については、平成22年度において当初予定していた施策はすべて実施されることになる。
各施策のうち、評価結果の活用状況や地域間給与配分については、まず、検証を行うこととしたい。
また、必要な見直しの検討に当たっては、皆さんのご意見を伺って参りたい。
(3) 諸手当の改善については、民間の状況、較差等を踏まえ、検討していきたい。
(4) 1ヶ月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、人事院としても民間の企業の動向等について調査する方向で検討したい。また、審議官会見で要望のあった「45時間未満の割増状況調査」については検討したい。
3 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
日々雇用の非常勤職員の任用・勤務形態の見直しに当たっては、日々雇い入れるのではなく、適切な任期を設定し、再任のルールを設けることを検討している。
現在、関係府省と連携しながら、鋭意検討を行っているところである。
4 新たな人事評価制度について
先日の審議官会見でご要請のあった新たな人事評価の実施状況・活用状況の調査については、関係部局とも相談し、皆さんをはじめ各方面の情報や意見を踏まえながら、実施時期・内容を検討していきたい。
いずれにしろ、人事評価に関しても引き続き、人事行政の公正の確保、代償機能など、人事院としての役割を果たしていきたい。
5 高齢期雇用問題について
高齢期の雇用問題については、昨年の勧告時の報告で述べたように、平成25年度から段階的に65歳まで定年を延長することが適当であると考えており、本年中を目途に意見の申出を行うことができるよう鋭意検討を進めている。
また、定年延長に伴う給与制度の見直しに当たっては、60歳台前半の給与水準及び給与体系を設計するほか、60歳前の給与のあり方についても検討を行うこととしたい。
これらについても、皆さんと意見交換しながら検討を進めてまいりたい。
回答に対し、公務員連絡会側は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 給与勧告に向けた基本姿勢に変化はないことは確認するが、この間、地域給与、比較企業規模、一時金の臨時勧告などの問題があった。昨年、前政権の下で地域給与を比較して俸給表水準を見直すことが人事院に要請されているが、その後政権が代わった。人事院としてどのように対応するつもりか。昨年の報告では、複数年の結果を見て慎重に対応すると報告していたが考えに変わりはないか。
(2) 給与構造改革終了後の給与制度見直しについては、検証が前提であり、われわれと十分交渉・協議することは当然のことだ。制度改善原資の取扱いについても、われわれとの交渉・合意に基づいて進めることを約束してほしい。
(3) 官民比較については現行の比較企業規模が適当であるとの考えに変わりはないか。
(4) 住居手当については、高額家賃負担への対処が昨年の持家に対する手当廃止の歳の宿題だったので、今年の較差の状況を見ながら人勧期に議論させていただきたい。単身赴任手当については、単身赴任そのものを解消することも課題であり、合わせて検討すべきではないか。
(5) 非常勤職員の給与ガイドラインについて昨年の報告では「ほとんどの府省で指針の水準に達している」とされ、全府省で遵守されるまでには至っていなかったが、その後の取組み状況はどうか。非正規職員、非常勤職員が社会問題になっている中でもあり、その徹底を図るべきではないか。
(6) 非常勤職員の任用・勤務形態見直しについては「鋭意検討」との回答であるが、昨年報告したとおり「年度内」に結論を出すべきだ。23日の総裁回答では明確に応えられるよう、これまで以上の努力を求める。
(7) 高齢雇用施策については、年内に段階的定年延長の意見の申出を行うということであるが、給与以外にも役職定年、短時間勤務など多くの課題があるので、これらを含めて十分交渉・協議し、合意に基づいて進めてほしい。
これに対し局長らは次の通り答えた。
(1) 俸給表水準見直しの政府要請に限らず、人事院に対するいろんな意見や要請をお聞きすることは当然のことであるが、どうするかの判断は代償機関としての人事院が行う。
(2) 給与構造改革終了後の課題については、地域給与等についての検証を行った上で、見直す必要があれば皆さんと十分意見交換を行いながら進めていきたい。
(3) 官民比較企業規模については、現行の比較企業規模50人以上が適当であると考えており、現在のところ、それを変えることは考えていない。
(4) 住居手当も単身赴任手当も民間の状況や官民較差がどうなるかによる。いずれも皆さんと議論させていただくが、単身赴任については望ましいことではないが、実態としてやむを得ない面もあることを踏まえて検討していきたい。
(5) 非常勤職員の給与については、昨年の夏以降、さらに指針が徹底されつつあると考えているが、引き続きフォローしていく。
(6) 非常勤職員の任用・雇用形態については、組織定員、予算も関わり、人事院だけでは解決できないことから、現在、関係府省と話し合っている。当然、「年度内に結論を得ることを目途」にしているが約束できる状況ではない。総裁回答に向け、残りの10日間、一生懸命努力する。
(7) 定年延長については、年内に意見の申出を行うことを前提に作業を進めていくこととしており、これから皆さんと十分意見交換をしながら検討していきたい。
最後に吉澤事務局長が「今日の回答では、まだまだ課題が残っている。総裁交渉ではより積極的な回答をお願いしたい」と強く要望し、給与局長交渉を締めくくった。
以上