公務労協は、17日17時30分から、地域主権改革を担当する逢坂総理補佐官に対し、別紙の「「地域主権戦略大綱」の策定に向けた要請」を行った。
この要請は、今年の夏に予定されている「地域主権戦略大綱」の策定を前に、今日段階の検討状況や、21日と24日に実施される「出先機関改革の公開討議」の具体的内容を明らかにさせるとともに、再度、国と地方の役割分担の明確化や国の出先機関の見直しに伴う人員移管のしくみの整備を求めて行ったもの。公務労協側は、吉澤事務局長をはじめ、花村副事務局長、藤川副事務局長、国公連合、全農林、国交職組、全開発、林野労組の各書記長等が出席し、政府側は、逢坂補佐官、渡会地域主権戦略室次長らが対応した。
冒頭、吉澤事務局長が、@「地域主権戦略大綱」の策定に当たっては、公共サービス基本法の基本理念に則り対応することA国の出先機関の見直しに当たっては、補完性の原理を踏まえ、国と自治体の役割分担や事務・権限などのあり方について、丁寧な審議を行い、「大綱」ではその考え方や方向性の整理にとどめることB国の出先機関の見直しに伴う人員移管等の仕組みの検討に当たっては、雇用と生活の確保に万全を期すことC公務労協や関係組合と十分な協議を行い、合意の上進めること、を要請するとともに、「大綱」策定に向けた現段階での検討状況や「公開討議」の具体的内容について質した。
これに対し、逢坂補佐官は以下の通り回答した。
(1) 「大綱」策定に向け、地域主権戦略会議を今月1回、来月2回開催する予定である。また6月中頃には「国と地方の協議の場」において、地方の意見を聞き、6月末を目途に「大綱」の決定をしたいと考えている。義務付け・枠付けの見直しを始め、基礎自治体への権限移譲、ひもつき補助金の一括交付金化や地方税財源の移譲など、それぞれの分野に濃淡はあるが、なんらかの形で「大綱」に盛り込む予定である。
(2) 21日と24日に行う出先機関改革の「公開討議」については、どのような出先機関のどのような事務・権限を地方に移管していくのか、その考え方や基準の整理といいう位置づけで実施するもので、関係府省から実態や課題、地方代表者からの意見などを聞き、関係府省・地方自治体・地域主権戦略会議の三者で意見交流する形で進める。
(3) 地域主権改革は、国民のためのものでなくてはならないというのは当然のことである。公共サービス基本法の趣旨に基づき、補完性の原理を踏まえて国と地方の役割をどのように考えるかなど、検討を進めていきたい。
(4) 出先機関の見直しに伴う人員移管の仕組みの検討については、雇用確保を前提にして丁寧に検討しなければならないと考えている。
(5) また「大綱」策定に向けた検討を進めるにあたり、公務労協の皆様を含め関係各方面のご意見をよく聞きながら丁寧に進めてまいりたい。
逢坂補佐官の回答に対して吉澤事務局長は、「『公開討議』では、出先機関改革の基本的考え方・基準を取りまとめるというのであれば、なぜ11機関という個別具体の機関を取り上げるのか。行政刷新会議の仕分けと重なる部分が払拭できず、心配せざるを得ない」と、改めて「公開討議」の目的を質した。
それに対して逢坂補佐官は、「『公開討議』は、地域主権改革における国の出先機関の基本的考え方の取りまとめに向け、どのような出先機関のどのような事務・権限を地方に移管していくのかについての考え方や基準の整理に資するために実施するものであり、個別具体の検討に踏み込むことは考えていない。ただし、シナリオはなく、個別の機関の事務・権限の議論になることも想定されるが、それを決定することが今回の目的ではない。基本的考え方・基準を整理するに当たり、総論として検討するやり方と個別具体の事業の検討を通して横断的にまとめるやり方がある。今回の『公開討議』は、それぞれの機関から話を聞いて、一般的な考え方・基準を取りまとめるということだ」と回答した。
引き続き、各構成組織から現場の実態を踏まえ、地域主権改革、特に国の出先機関の見直しに関わり要請した。
全開発は、「雇用問題が最大の課題で、現場では、働く仲間が今後どうなっていくのかと、不安を抱きながら日々業務を遂行している。雇用の確保を明確に担保した上で、議論を進めて欲しい」と訴えた。また、林野労組からは、「2020年までに木材自給率を50%に高めるという『森林・林業再生プラン』が昨年12月に出された。今後、国と地方が連携し、森林資源をどのように活用していくかが大きな課題となっている中、今回、森林管理局が取り上げられている。国有林との連携が求められており、『森林・林業再生プラン』を踏まえて欲しい」、国交職組からは、「全国知事会の中間報告等、この間の情勢に職場では心配している。地方整備局が担っている職務は二重行政ではないと認識している。国と自治体の役割分担と事務・権限のあり方など、慎重に検討して欲しい」、全農林からは、「農水省の職場では、ここ4年間、定員純減で、まず数ありきの削減を余儀なくされてきた。加えて、人件費2割削減や地方機関の新規採用8割カットの話も出てきており、職場では不安や不満の声が強まっている。国と地方の役割分担を精査し、慎重に結論を出して欲しい」と訴えた。
これに対して逢坂補佐官は、「人件費2割カットや国家公務員の新規採用抑制の話は、地域主権改革と連携をとって進められているものではなく、別の視点から出てきた話である。新規採用抑制の話は、平成23年度限りのもので、それ以降は、全体的見通しをもって検討していくということを確認している。また、人件費2割カットは、出先機関だけで行うということは非現実的である。労働基本権とそれを踏まえた労使交渉により決着していく課題だと認識している」と回答した。また「それぞれの職員の雇用・身分を含め慎重に進めるべきであると考えており、今後もアドバイスを頂きたい。本日の要請内容や皆さんの声は、原口総務大臣に直接伝えたい」と述べた。
最後に吉澤事務局長が、今、現実に出先機関で働いている者のことを念頭に置くとともに、「大綱」策定に向け、公務労協及び関係組合との十分な協議・合意を前提に丁寧な議論を行うよう、再度強く求め、この日の要請を終えた。
(別紙)
2010年5月17日
内閣府特命担当大臣(地域主権推進)
原 口 一 博 様
公務公共サービス労働組合協議会
議 長 中 村 讓
「地域主権戦略大綱」策定に向けた要請
日頃の国政におけるご尽力に心から敬意を表します。
さて、地域主権戦略会議は、この夏に予定する「地域主権戦略大綱」策定に向けた論議を進めているものと承知しています。
わたしたち公務労協は、「地域主権」の具体の検討にあたっては、社会経済情勢の変化に対応した形で国と地方自治体の行政の役割分担を見直し、その上で、より地域に密着した基礎的自治体が国民生活に不可欠な公共サービスを住民のニーズにそって遂行するとの観点で進めるべき、と考えています。
一方、国の出先機関について、「事務・権限仕分け」のための公開討議が5月21日、24日の両日に実施されると聞いています。国の事務・権限の地方自治体への移譲に伴って財源確保や組織体制のあり方など検討すべき多くの課題があります。
また、「地域主権」の本旨を踏まえた改革とすべきであり、「行革、総人件費削減」を目的とした改革であってはなりません。
つきましては、「地域主権戦略大綱」策定に向け、下記事項について要請いたします。
記
1. 「地域主権戦略大綱」策定に際しては、公共サービス基本法の基本理念に則り、「安全かつ良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適正に実施されること」を前提として対応すること。
2. 国の出先機関の見直しについては、補完性の原理を踏まえ、国と自治体の役割分担と事務・権限、財源などのあり方を十分に検討した上で進めるとともに、「事務・権限の仕分け」の討議にあたっては、出先機関の事務・権限毎の仕分けを拙速に行うことなく、その「考え方・方向性の整理」とすること。
また、人員移管等の仕組みの検討にあたっては、政府の責任において国家公務員の雇用と生活を確保することを前提とすること。
3. 国の出先機関の見直しをはじめ「地域主権戦略大綱」策定に際しては、公務労協及び関係組合と十分な協議を行い、合意の上に進めること。
以上