公務員連絡会地公部会は、11月11日および12日の両日、地方財政確立等に関する地方団体、各政党への要請を実施した。地方6団体要請には幹事クラスが、各政党要請には地公部会議長と書記長クラスが参加し、@地域公共サービスの実態に見合った財源保障、A抜本的な地方分権改革の早期実施と地方税財源確保のための制度改革など地方自治の確立、B自治体の自主的・主体的な財政健全化の支援、C地方公務員の総人件費の十分な確保、D地方税制について国と地方が対等の立場で協議する場の設置、の実現に向けて、関係省庁・政党へ働きかけるよう申し入れた(別紙要望書参照)。
<地方6団体要請の経過>
11月11日午後、地方6団体に対する要請行動を実施した。要請には、藤川地公部会事務局長はじめ、自治労の松本総合労働局長、日高教の佐藤書記長、都市交の吉田書記次長、全水道の岡書記次長が参加した。要請の概要は以下の通り。
なお、全国町村議会議長会への要請については、翌12日の実施となった。
(1) 全国知事会要請の概要
全国知事会は、重松調査第一部長らが対応した。全国知事会からの回答の概要は以下の通り。
@ 要請内容は、ほとんど知事会の主張と同じ。地方交付税の増額については、地方6団体としても政府に要請しているところ。この結果、原口総務大臣から約1.1兆円の増額要求をしていただいたと受け止めている。
A 地方では、労使一体でぎりぎりの節約を行い、行政サービスを維持するよう努力している。このことが世間に充分に認められないというのは残念である。
B 地方交付税は「事業仕分け」の対象としないよう要請してきたが、今日から行政刷新会議の作業が始まった。変な形で国の関与が強化されないよう、地方の実情にあった対応がなされるよう原口大臣に期待したい。また、みなさん方としても、十分な対応をお願いしたい。
(2) 全国都道府県議会議長会要請の概要
全国都道府県議会議長会では、松岡調査第一部長らが対応した。全国都道府県議会議長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 要望書については、大枠では同じ考えであり、地方交付税増額等について、国と真摯に協議ができるようにしたいと考えている。
A 今回の予算編成は、民主党が主張する「地方主権」の真価が問われる試金石である。行政刷新会議に対しては、地方の立場を代表している原口大臣が押し切られないよう応援していきたい。その意味ではみなさん方とも連携していきたい。
(3) 全国市長会要請の概要
全国市長会は、杉田行政部長らが対応した。全国市長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 概算要求で地方交付税の法定率の引上げが提示されているが、法定5税にリンクする地方交付税総額が各自治体で算定した交付税額と著しく異なる場合、法定率を引き上げ、地方交付税総額を拡大するのが本来のあり方である。今回の法定率の引上げは、地方財源不足を国、地方で折半し、そのうち国負担分の法定率の引上げであり、本来の法の趣旨と異なる。しかし、地方交付税総額の増額を打ち出した点はこれまでの政権にないことであり、地方交付税総額拡大にむけた一歩として評価したい。
A 現在、政府税調には地方6団体代表者が入っていないが、意見交換ということで意見を申し上げた。民主党マニフェストには、地方6団体代表が税調に参画することが盛り込まれており、その仕組みの確立を求めていく。
B 行政刷新会議で、国の事業仕分けに際して、地方に負担転嫁となるような議論にならないよう監視する。
(4) 全国市議会議長会要請の概要
全国市議会議長会は、上市副部長が対応した。全国市議会議長会からの回答の概要は以下の通り。
@ 地方財政の確立については、みなさんの要望とほぼ一緒であり、市議会議長会として国に要望している。
A 地方財政審議会、政府の審議会等で税源移譲、国庫補助負担金改革をかねてより要望している。補助金の自由度拡大、廃止補助金の確実な財源保障を求めている。
B 自治体財政健全化法については、市議会議長会としての要望は取りまとめていない。ただ、健全化法の運用に関わらす、地方の行財政運営に対する国の関与の廃止・縮小は進めるべきことである。
C 地方税制は、国と地方の税収配分5:5の実現、税源偏在の少ない税源の充実を求めている。民主党政権下で消費税の改革は進めないとしているが、偏在性の少ない税として地方消費税の充実が必要と考える。地方消費税の充実は、消費税全体の議論がされない限り、情勢的には厳しい。しかし、現状の税制の中でも国と地方の税収配分5:5の実現をめざす。
D 税調に地方6団体が参画を求めていくことも重要だが、その前に地方行財政全般に関わり協議する国と地方の協議の場の法定化を優先するべきと考える。
E 行政刷新会議の事業仕分けの項目に、地方の固有財源である地方交付税がリストに載るのは問題と考える。市議会議長会としても問題を指摘していく。
(5) 全国町村会要請の概要
全国町村会は、小川財政部副部長らが対応した。全国町村会からの回答の概要は以下の通り。
@ 地方交付税の1.1兆円の増額、法定率の引上げは町村会としても評価したい。その実現のために訴えていく。
A 抜本的な地方分権改革の実現も要望としてまとめている。一括交付金については、制度設計が明確になっていないが、財政規模が小さい町村の財政運営に配慮した設計になるよう求めていきたい。
B 自治体財政健全化法については、町村会として要望は取りまとめていないが、要請の趣旨は理解できる。
C 先日の政府税調に地方6団体の代表が招かれたが、税制に関わる正式な協議の場への参画は求めたい。
D 行政刷新会議の事業仕分けの項目に地方交付税がリストに載ったが、そもそも地方交付税が事業仕分けの対象といえるのか疑問である。今後の政府の動向を見極めていく。
なお、全国町村議会議長会への要請は、翌12日午前に地公部会事務局により実施した。要望書を手渡し、内容を説明、それに対し町村議会議長会は「地方財政の確立は、みなさんとほぼ同じ考え方であり、努力していきたい」と回答した。
<各政党要請の経過>
社民党・公明党への要請は11月12日午後に実施した。要請には、地公部会から佐藤議長(全水道委員長)、岡本企画調整代表(自治労書記長)、岡本日教組書記長、高木都市交書記長、西川全水道書記長、佐藤日高教書記長が出席した。
(1) 社民党要請の概要
社民党は、重野安正幹事長、又市征治副党首、照屋寛徳衆議院議員、中島隆利衆議院議員が対応した。冒頭、佐藤議長が「原口総務大臣が1.1兆円の地方交付税の増額、法定率の引上げを打ち出し、地方分権改革推進委員会の第4次勧告でも法定率の引上げが盛り込まれた。一方で、行政刷新会議の事業仕分けに地方交付税が槍玉にあげられている。地方が元気になるためには、財政の充実が必要であり、社民党の役割を発揮していただきたい」と要請した。
要請に対して、重野幹事長は、「事業仕分けの問題等については、連立与党の社民党、国民新党が関与していないなかで、その内容について与党として責任を負えない。社民党として予算編成の進め方について政府に申し入れる。地方財政の状況は、税収が大幅に落ち込むことが予想される。その中で、公務員人件費が標的になるのではないかと危惧しているが、地方財政充実にむけて社民党として努力したい」と述べた。
又市副党首は、「地方交付税の増額をめぐり、抑制をはかりたい財務省との綱引きになっている。極めて厳しい状況にあるが、組合も含め、周りから声を上げていくことが大事である。党としてもがんばる」と述べた。
最後に要請内容への最大限の努力を再要請し、要請を終えた。
(2) 公明党要請の概要
公明党からは、西博義衆議院議員が対応した。冒頭、佐藤議長から「小泉政権以降、前政権が進めた地方交付税の圧縮により、地域の疲弊は深刻な状況を迎えている。6割の自治体で財政状況を理由とした賃金カットが進められ、公立病院の存続が危ぶまれている。概算要求で1.1兆円の地方交付税増額が打ち出される一方、行政刷新会議の事業仕分けの対象に地方交付税があがっている。公共サービスの充実・確保のためには、地方財政の確立が不可欠であり、野党の立場から協力をお願いしたい」と要請した。
これに対し、西衆議院議員は「概算要求では地方交付税増額、法定率引上げが打ち出された。一方、事業仕分けについては、政府が何をめざしているのかわからず、長年積み上げてきた事業をわずかな短時間でそのあり方を決定していいものか。結局、地域や市民が被害者になるのではないかと危惧しており、国会でも問題点を追及していく」との発言があった。
最後に地公部会側が、要請内容への最大限の努力を再要請し、要請を終えた。
(別紙)
2009年11月11日
様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 佐 藤 幸 雄
地方財政確立等に関する要望書
貴職の地方自治確立、地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
地方財政は、国主導による景気対策に起因する地方債の増加や、三位一体改革以降の財政圧縮などによる5.1兆円の地方交付税削減により、極めて厳しい状況となっています。さらに、金融危機に端を発した景気後退による大幅な税収減が深刻化しています。
過日、総務省は、来年度の予算概算要求で、地方交付税を今年度より約1兆1,000億円増の16兆9,200億円程度要求する方針を決めました。
「公共サービス基本法」(2009年5月13日成立)の趣旨に基づく具体的な施策等を実現するため、地方自治体の一般財源の確保、国と地方の税財源の見直しを踏まえた政府予算編成が求められています。私たちとしても、関係者の方々との十分な連携のもと、予算概算要求額の実現に向けて取り組んで参りたいと考えております。
貴職におかれましては、地方自治と地方分権を推進する立場から、下記事項の実現に向けてご尽力を頂きますようお願いします。
記
1.地方財政計画の策定については、自治体との協議のもとに、地方分権、少子・高齢化、地域医療確保、環境保全など地域の行政需要を的確に反映させ、地域公共サービスの実態に見合った財源保障を実現すること。また、恒常的な財源不足にもかかわらず長年据え置かれてきた地方交付税の法定率を引き上げること。
2.抜本的な地方分権改革を早期に実現し、国庫補助負担金制度の改革、税源移譲など安定した地方税財源を確保するための制度改革を急ぎ、地方自治の確立を図ること。
3.自治体財政健全化法の運用については、国の関与は最小限に止め、自治体の自主的・主体的な財政健全化を支援すること。
4.医療・福祉・介護、教育、環境などの公共サービス水準を維持・向上させるため、地方公務員の総人件費(定数・給与)の十分な確保を行うこと。
5.地方税制について、地方分権の時代にふさわしい税制を構築するため、新たな政府税制調査会に地方六団体の代表が参画するなど、国と地方が対等の立場で地方税制について協議する場を設けること。
以上