公務労協は27日、東京・全日通会館で「組織拡大に向けた自律的労使関係学習会」を開催した。この学習会は、自律的労使関係制度の下での労使交渉や、交渉体制の確立や交渉力の強化に向けた組織拡大の意義などについて学習を深め、具体的取り組みに結びつけることを目的に行ったもの。学習会には、国公連合の構成組織を中心に、全国から120人が参加した。
学習会の冒頭、森永公務労協組織拡大センター長(国公連合委員長)が主催者挨拶に立ち、公務員制度改革、とりわけ労働基本権をめぐる情勢を報告するとともに、自律的労使関係の確立に向け、公務・公共部門における団体交渉制度の具体的な制度設計が今後重要になると述べた。それと同時に「それぞれの構成組織における組織拡大・強化はもちろんのこと、国公連合の組織強化が大変重要である。本日の学習会を通して、認識を深めるとともに決意を固め、更なる運動を展開しよう」と訴えた。
学習会では、連合中央アドバイザーの田島恵一さんと早稲田大学教授の島田陽一さんを講師に迎え、2つの講座を開催した。
田島さんは、「民間労組の労使交渉と組織拡大の取り組み」をテーマに講演し、@労働者の権利を担保する法規定A労使が対等な立場で労働条件を決定するための生命線となる労働協約の重要な役割B賃金・労働条件決定に向けた労働組合の関与と非常勤・未組織労働者を含めた組織拡大の重要性、などにふれ、公務員の労働条件に組織拡大が大きく影響することを強調した。
島田さんは、「労使関係検討委員会報告と自律的労使関係確立に向けた課題」と題して講演し、「国家公務員制度改革推進本部労使関係検討委員会」報告に至る経過や公務労協「公務・公共部門の団体交渉制度の在り方に関する研究会」最終報告の内容を踏まえ、「自律的労使関係の確立に向け、今後どのような内容の制度にしていくかが重要だ」と指摘した上で、労使交渉で労働条件を決定する場合の具体的課題を提起した。
学習会では、この2つの講座とともに、参加者が10グループに分かれて意見交換を行った。これは、参加者同士や講師との意見交換を通じ、自律的労使関係制度確立へ向けた意識づけや交渉体制の確立と交渉力強化のための組織拡大についての重要性を各々再認識し、共有化を図ることを目的としたもの。各グループでは、協約締結権確立後の労使交渉における課題、組織の現状や組織拡大に向けた課題などについて意見交換を行った。その中で、「賃金・労働条件を労使交渉で決定することになれば、財政が非常に厳しい時代に逆に悪化してしまうのではないか」「労使交渉で決着しても、マスコミ等からの公務員バッシングで、内容が覆されてしまうのではないか」「協約を結んでもその実効性を確保していくのが難しいのではないか」など不安の声が出された。その一方で、「組合の専従体制の在り方を含めた産別機能を充実させ交渉力などを身につけることが重要ではないか」「組織率低下の現実の中、公務員産別全体の課題として組織拡大が必要ではないか」「良好な労使関係構築のため『労使協議会』のように労使が意見交換できる場の設置が必要ではないか」といった意見も出された。
それらに対して、島田さんは、自律的な労使関係を確立するためには、勤務条件決定の枠組みや具体的な勤務条件は、法定事項ではなく協約事項となるよう、限りなく民間に近づけるしくみの構築が必要であること、交渉における第三者機関の参考指標は、自律的な労使関係の形成を著しく阻害することにもなりかねないため不要であること、財政的権限を有する者を含め労働条件決定に責任を持てる使用者機関の設立が重要であることなどを強調した。また、マスコミ報道等による公務員バッシングで労使交渉で決着した内容が覆されてしまうのではないかという点に関しては、「公正・中立な第三者機関がチェックしたとしても免れることのできるものではなく、自律的労使関係の下でも覚悟しなければならないことだ」と述べ、労働組合として国民をどう味方につけるかが課題だとした。
田島さんは、組織拡大は、何よりもリーダーが本気になるかどうかが一番重要であると指摘した。また、未組織職場では、年休をはじめ出産・育児休暇などがなかなか取得できていないなど、権利が法で保障されていても行使できない実態を紹介し、労働組合の日頃の活動があるからこそ法や協約等で定めた権利が行使できるということを未組織労働者や組合員に訴えることが必要であることや、組織拡大に向けた困難性を言うよりどれだけ可能性に着目し取り組みを積み上げることができるかが重要であることを強調した。
最後に、労働協約締結権の確立を前に、自律的な労使関係構築に向けた具体的な制度設計の議論とともに組織拡大・強化の重要性を意思統一し、この日の学習会を終えた。
以上