公務員連絡会は、13日、2010人勧期第1次中央行動を実施し、中央決起集会、人事院交渉及び交渉支援行動に取り組んだ。
午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた7.13第1次中央決起集会には全国から1,000名を超える仲間が結集し、経済の先行きが不透明であることに加えて国・地方の財政赤字の圧力の下、公務や公務員給与を取り巻く情勢がますます厳しいなか、月例給水準の維持と公務員労働者の生活を防衛する一時金支給月数の確保、非常勤職員の雇用確保と処遇改善、段階的定年延長などの要求に沿った人事院勧告・報告の実現に向けて、取組みを強化する決意を固めあった。
この日の幹事クラス交渉委員と人事院職員団体審議官との交渉では、人事院に対し要求実現を求めたが、審議官は情勢が極めて厳しいことを強調し、われわれの要求には応えない一方、較差がマイナスとなった場合には50歳台後半を狙い撃ちにした給与引下げを実施することを提案するなど、到底受け入れられない回答を示した。このため、公務員連絡会は50歳台後半の給与引下げ提案は断じて認められないとして撤回を求め、人員削減が進み厳しい労働条件の下で日々の業務運営に全力を尽くしている組合員の切実な要求に応えるよう強く迫った。
午後1時30分から社会文化会館ホールで開かれた中央集会で、冒頭、主催者を代表して挨拶にたった棚村議長は「参議院選挙で与野党が逆転し、再び「ねじれ国会」という大変厳しい状況になった」と述べるとともに、「本日の行動を契機に人勧期の取組みは山場を迎える。さまざまな方面から公務員賃金削減が叫ばれている今日、この人勧期から確定期の取組みが大変重要となる。公務員連絡会の団結と主体的力量を発揮して闘いを進めていこう」と総決起を訴えた。
激励挨拶に駆けつけた連合の山口副事務局長は、2010春闘ではすべての労働者を対象とした処遇改善の取組みを進め、3,000を超える組合で非正規労働者に関する処遇改善に結びつけたことを報告し、公務部門においてもさらなる取組みを求めた。そして「人勧は大変厳しい状況にあるが、生活防衛に向けて、行動目標に基づく粘り強い交渉で、民間春闘結果を踏まえた結果を出していただきたい」と連帯の挨拶を行った。
続いて吉澤事務局長が、「参院選の結果を踏まえ、改めて昨年の政権交代の原点に立ち返るとともに、政権・政党と労働組合との関係では、使用者である政府との間で、緊張感ある、しかし自民党を中心とする政権とは違ってお互いの信頼関係に基づいた労使関係を構築すべきことを再認識しておく必要がある」ことを訴えた上で、人勧期をめぐる情勢について@月例給についてマイナス較差が想定される厳しい状況にあることA一時金についても昨年冬の民間実績が△10〜△15%となり同様に厳しい状況にあること、を強調した。そして「こうした厳しい情勢にあることを共有し、それを要求実現のエネルギーとして、最後まで全力で取組みに結集しよう」と、厳しい情勢の中で粘り強い取組みを求めた。
構成組織決意表明では、日教組・小西副委員長、国公総連・沢田全農林中央執行委員、全水道・岡崎副委員長が登壇し、単産や職場の取組み報告も含め、力強くたたかう決意を表明した。
集会を終えた参加者は、人事院交渉を支援する行動に移り、「公務員の生活を守れ」「非常勤職員の処遇を改善しろ、雇用を守れ」「一時金の支給月数を確保しろ」などとシュプレヒコールを繰り返した。このあと、この日行われた職員団体審議官との交渉経過の報告を受け、団結ガンバロウで行動を締めくくった。
なお、公務員連絡会は、この日に開いた企画調整・幹事合同会議で、50歳台後半層の給与引下げ提案に断固反対していくことを意思統一し、はがき行動や全国統一行動を強めるとともに、8月上旬にも中央行動を配置し、不退転の決意で人勧期の闘いを進めていく方針を決定した。
この日行われた人事院職員団体審議官との交渉経過は次の通り。
<職員団体審議官交渉の経過>
幹事クラス交渉委員と根本職員団体審議官との交渉は15時から行われた。
冒頭、岩岬副事務局長が、「6月22日に総裁に2010年人勧期要求を提出したので、人勧に向けた作業状況と合わせて現時点での中間的な回答を示していただきたい」と審議官の見解を求めたのに対し、根本審議官は次の通り答えた。
1.勧告作業の実施状況について
民間給与実態調査は、5月1日〜6月18日までに行われ、特段の支障もなく終了し、現在集計中である。国公実態については、最終的な取りまとめ段階に入っているところである。
2.官民較差について
官民較差については、現段階では何とも言えないが、本年の民間企業における春季賃金改定状況についてみると、現時点の各種調査の集計結果では、昨年と比べほぼ同程度の状況にあり、昨年同様に厳しい状況である。
また、一時金については、民間の昨年冬のボーナスが大きく落ち込んでいる。今年の夏は、連合調査ではわずかな落ち込みも見られ、他の調査では、若干プラスのようであるが、昨年冬のマイナスが大きく、極めて厳しい状況である。
3.諸手当について
月60時間の法定時間外労働の算定における日曜日等の取扱い及び1か月に45時間を超える時間外労働を行う場合の割増賃金率については、現在、民間の実態を調査しているところであり、その状況を踏まえ、検討して参りたい。
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、検討して参りたい。
4.給与構造改革終了後の検討事項等について
給与構造改革は、本年度で当初予定していた施策がすべて実施されることとなる。今後は、その状況も踏まえつつ考えていくこととしており、皆さんのご意見も伺って参りたい。
給与構造改革の現時点における状況等については、次のとおり考えている。
@ 地域間給与配分の見直しについては、昨年、地域別の較差は縮小の方向にあることを公表したが、本年も地域別の較差の状況を公表することとしたい。
A 勤務実績の給与への反映については、昨年4月から新たな人事評価制度が施行されているところであり、今後、当該人事評価制度の活用状況のフォローアップを行うとともに、必要に応じて見直しを検討することとしたい。
B 年功的な俸給構造の見直し、俸給カーブのフラット化、中高年層の給与の引下げについては、一定の改善は見られるものの、50歳台後半層については、公務の給与水準が民間を大きく上回り、その差が拡大する傾向が見られることから、早急に是正する必要があると考えている。
50歳台後半層の問題は早急に対応する必要がある。
仮に、マイナス較差がでた場合は、50歳台後半層の職員の給与で対応し、若年層から50歳台前半層までへの影響を極力避けることが適当である。従来の俸給の傾斜配分による方法では限界があることから、新たな方法として50歳台後半層の給与に一定率を乗じ引き下げることを考えている。
いわゆる制度改正原資の取扱いについては、来年4月にどの程度生じるかを現在精査中である。改めて皆さんと意見交換したい。
5.労働諸条件の改善について
超過勤務の縮減については、まずは各府省において不必要な在庁時間を削減するとともに、超過勤務を命ずべき業務についても、業務量を減らす取組み、厳正な勤務時間管理、業務効率の向上の取組みを行う必要がある。
現在、政府全体として在庁時間縮減に取り組んでいるところであり、各府省の取組み状況については、全体が取りまとまった段階で、職員団体に対してお示ししたいと考えている。
また、人事院としても、本年4月から、超過勤務を抑制し、また、超過勤務の多い職員に休息の機会を与えるため、超過勤務手当の支給割合の引上げ及び超勤代休時間を指定できる制度を新設したところである。
病気休暇制度の見直しや運用のあり方等の検討に当たっては、公務における運用実態、民間の状況等を見極めながら、職員団体等と意見交換を行い、総合的に検討を進めてきたところである。現時点における見直し案の概要は、以下のとおりである。
・ 1回の病気休暇の上限期間は、連続する90日の範囲内とすること。ただし、例えば、精神疾患の病状で休んでいる時に、交通事故に遭った場合のように、休暇の原因が明らかに異なる場合には、例外的に1回に限り、異なる病気に罹患した日から期間を算出すること
・ 連続1週間(週休日等を含む。)を超える病気休暇を取得した後、職務復帰後実勤務日数が20日間に達するまでの期間以内に再び病気休暇を取得する場合には、その前後の病気休暇の期間を通算すること
・ 断続的に一定日数以上病気休暇を取得する職員に診断書の提出や健康管理医等の診断を義務付けること
これらを基本として、現在成案を得るべく検討しているところであり、更に皆さんと相談して参りたい。
6.新たな高齢期雇用施策について
昨年の勧告時報告において、「国家公務員の定年年齢を平成25年度から段階的に65歳まで延長することが適当と考える」旨述べるとともに、「人事院として、平成22年中を目途に具体的な立法措置のための意見の申出を行うことができるよう、諸課題の検討を進めていく」旨表明したところであり、現在、定年延長のほか、延長後の給与の在り方、役職定年制、短時間勤務、困難職種への対応等についても検討しており、意見の申出に向けて皆さんと意見交換しながら、制度の具体的な内容について更に検討を進めて参りたい。
なお、本年も勧告時報告において、新たな高齢期雇用施策の検討状況について報告することとしたい。
7.非常勤職員等の処遇改善について
日々雇用の非常勤職員の任用形態の見直しについては、日々雇用が更新されるという現行の制度を廃止し、会計年度内で臨時的な業務に応じて最長1年間の任期を設定して任用する仕組みを新たに設けること等を内容とするパブコメを6月30日から行っており、今後、皆さんと、更に協議を行った上で、できるだけ早期に実施できるようにして参りたい。
非常勤職員の育児休業等については、非常勤職員の任用形態の見直しが現在の方向で確定した場合は、意見の申出を行うことを検討しているところである。
これに対し公務員連絡会側は、次の通り、審議官の見解を質した。
1.官民較差について
勧告作業は例年通りのペースで進んでいるということか。であれば、勧告日も例年通りと想定していいか。
月例給について、厳しいということだが、マイナス較差の可能性が高いということか。一時金の月数確保も含め、生活防衛のため、代償機関としてギリギリまで努力してもらいたい。27日の局長交渉では、官民較差の見通しを明らかにされたい。
2.50歳台後半層の給与引下げ問題について
(1) 高齢者給与の官民逆格差については、通常の世代間配分の見直しの課題(俸給の傾斜配分)としては公務員連絡会としても対応しなければならないと考えている。しかし、50歳台後半層の給与について一定率をかけて給与水準を引き下げるという提案には、職務給原則や能力・実績主義との関わりで整合性がなく、年齢差別ともなるのではないかという大きな問題点がある。人事院としては、職務給や能力・実績主義との関わりについて、明確で納得いく説明をする責任がある。
また、給与構造改革を実施したのに、何故民間との差が開いたのか。人事院が進めてきた給与構造改革の総括とも関わる。民間で50歳台後半の給与が下がっているということだが、どのような理由で下がっているのかを含めたデータを示す必要がある。
(2) 本年の勧告を前にしたこの時期に「早急に対応する必要がある」といわれても、あまりに拙速で、手続き的にも極めて問題があり、到底認められない。通常の傾斜配分を超えて特別の制度的な見直しを行う必要があるということであれば、われわれと十分時間をかけて交渉・協議し、納得の上で進めるべきである。
20日の週に、再度審議官交渉を要求する。その場で、@職務給や能力・実績主義との関わりについての人事院の正式見解A民間の実態についての正確なデータ(どのような理由で下がっているのか)を示すよう要求する。それが示されなければ、実施することにならない。
3.病気休暇制度見直しについて
総合判断して、90日の期限を設けることはやむを得ないと考えるが、病気休暇制度の趣旨が損なわれないようにすべきである。
とくに、「連続1週間(週休日等を含む)」は不合理で厳しすぎるので、例えば2週間にするなど修正していただきたい。また、特定疾患の特例的上限期間の規定は残すべきである。
制度の切り替えに当たっては、現に休んでいる人に十分配慮した経過措置を設けるべきだ。
4.新たな高齢期雇用施策について
確実に年内に意見の申出を行ってもらいたい。夏の報告で検討状況を報告するということだが、定年延長に関わる制度骨格を近々にも提起してもらい、十分議論させていただきたい。
5.非常勤職員等の処遇改善について
日々雇用の非常勤制度の見直しについては、規則改正の前にわれわれと最終的な交渉を行い、合意の上で制度を改正するようにしてもらいたい。
非常勤職員の育児休業、介護休暇等については、確実に今年の夏の勧告に合わせて意見の申出を行うようにしてもらいたい。公務員連絡会としての意見を提出することを予定しているので、それを反映した制度内容とするよう努力してもらいたい。
これに対し、根本審議官は、次の通り答えた。
(1) 勧告作業は例年のペースで進んでいるが、中身について人事院内で検討するほか皆さんの意見も聞きながら進めているので、勧告日について、今の段階ではいつとは言えない。
(2) 月例給については、マイナス較差になることも十分あり得るという認識に立っている。
(3) 50歳台後半層の給与の問題については、20日の週に改めて人事院の考え方を示すこととしたい。
(4) 病気休暇については、引き続き、みなさんと議論していくこととするが、経過措置についてはこれから具体的に詰めていく際に議論することとしたい。「1週間」については変えることは難しいと考えている。特定疾患については、現在は結核が指定されているが状況が変わっており、特定疾患という例外を設けることは難しい。
(5) 定年延長については、年内に意見の申出ができるよう作業を進めていく。
(6) 日々雇用非常勤職員制度の見直しに当たっては、細かい点もあるので規則の制定前に皆さんの意見を伺うこととしたい。
(7) 非常勤職員の育児休業、介護休暇等については、細かい点を含めて27日の局長交渉で説明させていただきたい。
以上の審議官の見解に対し、公務員連絡会側はさらに、次の通り追及した。
(1) 50歳台後半層の給与引下げは、定昇の仕組みと比べて大きな問題がある。職務給との関係について納得できる説明がない限り認められない。こういう大きな見直しについて、資料も理由も示さないという提案の仕方、交渉の仕方にそもそも問題がある。
職場では、定員削減、新採抑制で超勤が増え、メンタルヘルス不調も増加しているし、給与構造改革で給与も下がっている。現場のモチベーションは下がるばかりだ。組合員には強い怒りがある。提案を撤回すべきだ。
(2) 病気休暇について、「1週間」といっても週休日等が多く含まれている場合があり、問題だ。また、治癒に長期間を要する精神疾患が増えていることや悪性の結核も出てきていることから、特定疾患制度は残すべきである。
これに対し根本審議官は、次の通り答えた。
(1) 50歳台後半層の給与引下げについて指摘のあった問題点に対する人事院の見解は整理してご説明することとしたい。ご要望のデータについても努力したい。
(2) 病気休暇は「1週間超」で診断書を出してもらうことにしているので、これを延ばすことは難しい。週休日等のはさみ方については、多少弾力的に考えられるかどうかについて検討してみたい。特定疾患制度を導入したときは結核が国民的な病気であり罹患者も多く、民間でも特例的に扱っていたが、状況が変わり特定疾患として扱う必要はなくなっている。精神疾患に限らず治癒に長期間を要する場合には休職で対応することになる。
以上のように審議官が具体的で明確な見解を示さなかったことから、最後に、岩岬副事務局長が「今日の回答は具体性がなく極めて遺憾である。50歳台後半層の給与引下げは認められないので改めて撤回を求める。27日の局長交渉では、勧告の全体像が分かる具体的な回答を示してもらいたい」と強く要請し、本日の交渉を締めくくった。
以上