2010年度公務労協情報 41 2010年9月3日
公務公共サービス労働組合協議会

公共サービスの再構築や労働基本権確立に向け、政府・政党に要請
−公務労協との一層の対話と信頼関係の構築を強く求める−

 公務労協は9月8日に、国民生活の安心と安全を確保するための公共サービスの再構築と公務員の労働基本権の回復を求めて、5,000人規模の中央行動を実施する。それに先駆け、8月30日から9月3日にかけて政府や政党に要請を行った。30日には荒井聡国家戦略担当大臣、蓮舫行政刷新担当大臣、社民党に、31日には原口一博総務大臣、玄葉光一郎公務員制度改革担当大臣に、9月1日には民主党、国民新党に、3日には公明党にそれぞれ要請した。
 要請に際し中村議長が「昨年公共サービス基本法が全会一致で成立し、公共サービスについては国民的合意が得られたのではないかと思う。いま私たちは、地方自治体の公共サービス基本条例を制定するキャンペーンを展開している。政権交代が実現し、組合員には公共サービスや労働基本権回復に期待感があったが、ねじれ国会で厳しい状況にある。私どもとしてはここで足踏みをすることなく先に進めてもらいたい」と要請の趣旨を述べるとともに、要請事項について、それぞれの考え方を質した(別紙要請書参照)。また、各構成組織委員長からも、公務員制度改革と人件費問題、独立行政法人・政府関係公益法人や特別会計の見直し、事業仕分け、地域主権改革や国の出先機関改革に係る雇用問題など、当該組織の意見・要望を踏まえた労使交渉・対話と信頼関係を前提とするよう強く求めた。
 各大臣および政党の見解の概要は以下の通り。

<原口総務大臣>
○この間、皆さんからさまざまな力を借りてきたから、これまでの改革案ができてきた。
○人事院勧告についても、労働基本権の代償措置として尊重すべきであるとさまざまな場面ではっきり主張している。労働基本権の回復については、消防職員の団結権等も含めて、国家公務員制度改革基本法に則った具体的な法律に早く着手していきたい。国の出先機関改革については、連合と協議しているが、当事者としての公務労協とも引き続き協議を進めていきたい。また公共サービス基本法のバージョンアップも行いたい。
○当事者との対話のないところに政策はない。公共サービス分野で働く者の権利を保障し、国民の公共サービスを受ける権利を保障する改革を実現していきたい。


<玄葉公務員制度改革担当大臣>
○労働基本権の回復・付与については、来年の通常国会で成立できるように制度設計を始めたところだ。皆さんと相談しながらいい制度設計をしたい。幹部人事の一元化を中心とした法案は、残念ながら廃案となったが、トータルなパッケージを出した方がいいと思うのでその方向で考えている。今後、トータルパッケージの、とくに労働基本権付与の制度設計について、本格的な検討をしなければいけないので、相談にのっていただきたい。
○総人件費は、マニフェストに2割削減が書いてある。国民からの回答が求められており、辛い立場だが約束は約束だ。公と民とNPOの関係をどうするか、効率的で適正な質の高い行政サービスが提供されるという、全体像も描きながら検討していくことが必要だ。給与については、基本は労使交渉で決めることだと思うが、同時に地方移管の問題や退職金を含めた諸手当の見直し、定員削減、新規採用の抑制、退職金を積み増すことによる希望退職なども含めて検討し、国民の皆さんから理解が得られるような中身にしないといけない。


<荒井国家戦略担当大臣>
○「政治主導」について、政治家とその下で働く公務員との間でコンセンサスが十分でない。政治主導というのは政治家が決断をし、責任を取るということであり、その下で公務員の皆さんにどのように働いてもらうかが大事だ。
○大きな政府か、小さな政府かということでは、公務員バッシングが政治の中にも蔓延しており、まだ大きな政府だという言い方がされている。公務員制度は国の根幹であり、大きな課題だ。公務員側にも反省しなければならないこともある。その第1は天下りをなくすことであり、そのためにも公務員制度改革についてしっかりとした制度設計が必要である。


<蓮舫行政刷新担当大臣>
○本日の要請は受け取った。皆さんの立場は分かるが、民間も大変厳しい状況にある。国民の声も皆さんの耳に入っていると思うので、そのバランスも是非考えていただきたい。経済情勢や財政事情も厳しい中、あるところだけを守るということはやりたくないし、するつもりもない。皆さんの意見も伺いながら、また国民の代表としての私たちの立場を是非理解していただきながら、一緒に前進していきたい。
○独立行政法人や公益法人、出先機関などで、一生懸命働いている職員がいるということは勿論のことと理解している。現在、公益法人・独立行政法人改革についてまとめの作業に入ってきている。私からは監督官庁に指導の徹底を要請しているが、今後は様子を見ながら進めていきたい。


<民主党(細野幹事長代理、石毛政策調査会副会長)>
○公務労協とは、これからも政策テーマについてもお互いが理解しあう中ですすめていきたい。受け皿としては、日常的なやりとりは党サイドの方が受けやすい。党との対話を通じて幅を持って検討していく方がよいと考えている。
○党内に公務員制度改革PTを設置し、これまで3回勉強会を実施してきた。総務省や人事院の説明を受けてきたが、今後は皆さんからの意見を聞く機会も設けたいと考える。マニフェストで公務員の人件費2割削減と打ち出していることについて、労働基本権の代償措置である人勧尊重の立場は一貫しており、人勧と労働基本権の関係はしっかり認識もしている。人勧の取扱いの決定は政府だ。政府決定に関して民主党議員の間で議論の場を持とうというのがPTの役割である。皆さんの懸念が生じないようにしたい。


<国民新党(下地幹事長)>
○たとえば学校給食が民営化されると、収益確保のために、子どもたちに提供される給食の質が落ちてしまうという問題もある。国民新党は公共サービスの重要性を十分認識している。また、公務員が地域経済に貢献するという意味においても、公共サービスを再構築していく必要がある。
○財政再建という名の下に何でもできるという状況になっている。多くの課題が山積するなか、何が必要かよく考えてやっていくことが重要である。


<社民党(福島党首)>
○社民党は、要請書にある総人件費問題を始め、独立行政法人や政府関係公益法人改革、出先機関改革などにも危機感を持っている。公共サービスは、まさしくマンパワーだ。社民党として、改革ありきではなく、公共サービスの有り様を前面に出した議論ができるようにしていきたい。
○総論ばかりを主張すると空中戦になってしまうので、各論で公共サービスの必要性を訴えていくことが必要ではないだろうか。貧しい人・地域や困っている人・地域こそ公共サービスが必要である。


<公明党(斉藤政調会長、魚住国対委員長)>
○与野党の政策をみると、森林政策や温暖化対策、地域の活性化、教育の問題など重要な公共サービスの確保を柱にしている。しかし、公務員制度改革となると、人数を減らせ、人件費を減らせの話になってしまうことに疑問を抱いている。
○公明党では、公務員制度改革PTを設置し、行革推進本部の本部長でもある魚住裕一郎議員が座長をしている。一部の党は公務員に対して批判的であり、与党は皆さんと協力関係があるが、わが党は、中間のバランスのとれた議論をしている。今後も引き続き意見交換をしながら進めていきたい。



(別紙)要請書

2010年 月 日

           様

公務公共サービス労働組合協議会
議 長  中 村  讓

要 請 書


 日頃の国政全般における貴職のご尽力に心から敬意を表します。
さて、公務労協は、公務公共サービスに従事する労働組合としての社会的責任と役割を果たすとともに、公務員そして公共サービスに対する国民の信頼回復をはかることを基本的な立場として、良質な公共サービスの実現に向けた公共サービスキャンペーン、公務員の労働基本権の回復をはじめとする民主的な公務員制度改革の実現等の課題に係る活動を展開してきました。
 一方、政権交代後、初の国政選挙となる第22回参議院議員選挙において、衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」が再現し、政治情勢の混迷化が心配されます。
つきましては、公務員制度改革と総人件費問題、独立行政法人・政府関係公益法人改革、特別会計の見直し、地域主権・国の出先機関改革等、国民生活を支える公共サービス及び職員の雇用や勤務条件に係る課題について、以下のことを実現されるよう要請します。


1.公務員の労働基本権の回復と公務員制度改革について
○ 遅くとも2011年通常国会において、公務員の労働基本権の回復と民主的な公務員制度改革の実現に係る法制度措置を行うこと。
○ 公務員の労働基本権の回復については、連合要求(「新しい公共サービスのために」2006年9月)に基づくとともに、ILO勧告をみたした法制度措置を実現すること。

2.公務員の総人件費について
○ OECDの統計上最低となっている現下の政府の規模等を踏まえ、総人件費の際限ない削減政策を行うことなく、公・民・NPO等の役割分担等を明確化した公共サービスのあり方を明らかにし、国民が享受する公的なサービスの質及び量を拡充する観点での検討を行うこと。
○ 人事院勧告制度を無視した一方的給与削減等は、断じて行わないこと。

3.独立行政法人・政府関係公益法人改革について
○ 法人等の見直しにあたっては、個々の事務・事業を精査することとし、「削減ありき」で事務・事業及び法人等の廃止・民営化を行わないこと。また、国民生活の安心・安全を脅かす事業の効率化等を行わないこと。
○ 国の機関として直接事務・事業を実施する必要がある場合には、当該法人等を国の機関とすること。
○ いわゆる「天下り」ポストは基本的に廃止することとし、「官製談合」が生じないよう、情報公開はもとより組織及び運営方法を抜本的に改めること。
○ 見直しに伴って雇用問題が生じる場合は、政府が統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。

4.特別会計の見直しについて
○ 特別会計の見直しにあたっては、個々の事務・事業、資金等について国民生活の安心・安全の観点から十分精査するとともに、「廃止ありき」で対応しないこと。
○ 見直しに伴って雇用問題が生じる場合は、政府が統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。

5.地域主権・国の出先機関の改革について
○ 地域主権改革については、公共サービス基本法の基本理念を踏まえ、「安全かつ良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適正に実施されること」を前提として対応すること。
○ 国の出先機関改革については、補完性の原理を踏まえ、国と自治体の役割分担と事務・権限、財源などのあり方を十分に検討した上で進めること。
○ 国の出先機関改革に関する人員移管等の仕組みについては、国家公務員の地方公務員への身分移管という雇用・労働条件上の重大な課題を含んでおり、政府が雇用・労働条件確保に責任を持つ体制を確立すること。

以上