2010年度公務労協情報 8 2009年12月16日
公務公共サービス労働組合協議会

労使関係制度検討委員会が報告を取りまとめ、仙谷担当大臣に提出−12/16
労使関係制度の3パターンを提示し、政府に検討を要請

 国家公務員制度改革推進本部に設置されていた労使関係制度検討委員会(座長:今野浩一郎学習院大学教授)は、15日の会議で「自律的労使関係制度の措置に向けて」と題する報告書を取りまとめ、本日午前中、仙谷公務員制度改革担当大臣に提出した。
 この委員会は、国家公務員制度改革基本法第12条の自律的労使関係制度の措置に向け、2008年10月に設置され、このほど報告を取りまとめたものである。委員会は労働組合代表、使用者代表、有識者の三者で構成され、山本連合副事務局長、金田自治労特別執行委員(前書記長)、森永国公連合委員長が参加し、意見反映に努めてきた。
 報告では、労使合意を直接反映し民間の労働法制により近い案から、国会の関与と公務員の特殊性をより重視する案まで、協約締結権を付与する場合の選択肢の組合せのモデルケースを三つ例示し、「それぞれ別の観点から整理したものであり、検討委員会としていずれか一つの案を推奨するものではない。また、これらは制度化の選択肢を三つに絞ったものではなく、幅を持たせて考えることが適当である」と説明している。また、「終わりに」では、労働基本権のあり方について、「争議権や消防職員等の団結権について、別途検討することが必要」などの意見も紹介している。
 この報告に対し、公務労協は別紙1の労働基本権確立・公務員制度改革推進本部「見解」を公表し、「政府の審議会として初めて協約締結権付与を前提とした自律的労使関係の具体的制度設計を提示した報告として確認できる」とした上で、「政府との交渉・協議を一層強化して、行政運営の基盤である公務員制度について、開かれた民主的仕組みに抜本改革することを含め、自律的労使関係制度の構築に向けて、全力で取組みを進める」ことを明らかにした。また、連合も別紙2の事務局長談話を発表した。
 公務労協としては、今後、労働基本権の付与はもとより公務員制度を抜本的に改革するため、マニフェストに「公務員の労働基本権回復」を明記した民主党を中心とする政権という千載一遇の機会を捉え、連合と連携し、要求の実現に向けて取組みを強化していくことにしている。

 報告書(pdf2.1M)


(別紙1)公務労協対策本部見解
労使関係制度検討委員会報告
「自律的労使関係制度の措置に向けて」に対する見解


1.労使関係制度検討委員会(座長:今野浩一郎学習院大学教授。以下、「委員会」という。)は、12月15日、「自律的労使関係制度の措置に向けて」と題する報告を取りまとめて、本日、公務員制度改革担当の仙谷大臣に提出した。報告は、第三者機関による勧告制度に代えて、非現業公務員に新たに労働協約締結権を付与するため、「選択肢の組合せのモデルケース」として、@労使合意を直接的に反映することをより重視する観点と民間の労働法制により近い制度とするモデルケースT、A現行公務員制度の基本原則を前提としつつ、労使合意を尊重するモデルケースU、B労使合意に基づきつつ国会の関与をより重視する観点と公務員の特殊性をより重視するモデルケースV、という3つのモデルケースを併記し、「委員会としていずれか一つの案を推奨するものではない」「三つに絞ったものではなく、幅を持たせて考えることが適当である」として、幅があることを断っている。したがって、どのような具体的制度設計を行うかは政府の判断に委ねられることになった。

2.委員会は「自律的労使関係制度を措置する」ことを規定した国家公務員制度改革基本法第12条に基づく検討を行うために、2008年10月に国家公務員制度改革推進本部に設置され、連合、公務労協から3名の委員が参加し、連合の提訴に対するILOの累次にわたる勧告を満たした自律的労使関係制度を構築するために、労働協約締結権のみならず、団結権や争議権の付与を含めた抜本的改革案とするよう、強く主張してきた。
 報告が3つのモデルケースを併記するにとどめたことに加え、責任ある中央人事行政組織の具体的なあり方に踏み込まず、団結権や争議権の検討を行わなかったことは問題である。しかしながら、報告は、政府の審議会として初めて協約締結権付与を前提とした自律的労使関係の具体的制度設計を提示した報告として確認できる。また、委員会ワーキンググループにおける委員の積極的な議論や労働側委員の奮闘により、明確に団体交渉、労働協約による賃金・労働条件決定制度を構築する考え方も盛り込まれており、公務における労使関係の抜本的改革を実現するための足がかりとなり得るものである。

3.本年夏の総選挙で新たに政権についた民主党は、そのマニフェストで「公務員の労働基本権を回復し、民間と同様、労使交渉によって給与を決定する仕組みを作る」ことを宣言している。自律的労使関係を措置すべきとする委員会報告が行われたことから、公務員の労働基本権回復を国民への約束とする新政権の下で、いよいよ実現に向けた具体的制度設計の段階に移ることとなった。

4.今後は、政府において労働基本権回復の具体的制度設計と関連法案の策定が行われることになるが、民主党を中心とする政権が、そのマニフェストに基づき、委員会報告の労働協約締結権付与にとどめることなく、国・地方の現業・非現業公務員に対する新たな団結権や争議権付与を早急に具体化し、実現することを強く求める。
 公務労協は、連合と連携しつつ、政府との交渉・協議を一層強化して、行政運営の基盤である公務員制度について、開かれた民主的仕組みに抜本改革することを含め、自律的労使関係制度の構築に向けて、全力で取組みを進めるものである。

 2009年12月16日

公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部


(別紙2)連合事務局長談話

2009年12月16日

労使関係制度検討委員会報告
「自律的労使関係制度の措置に向けて」に関する談話

日本労働組合総連合会
事務局長 南雲 弘行


1.12月15日、労使関係制度検討委員会(内閣官房国家公務員制度改革推進本部内に設置)は、「自律的労使関係制度の措置に向けて」と題した報告をまとめ、本日、公務員制度改革担当である仙谷大臣に提出した。報告書は、与野党合意によって成立した国家公務員制度改革基本法に基づき、自律的労使関係制度を措置するにあたり、現在、協約締結権が付与されていない職員へ協約締結権を付与する場合の制度について、多面的な角度から検討したものである。政府の審議会として、今回初めて協約締結権付与を前提とする制度設計を示したことについては、連合として評価する。

2.今回の報告は、自律的労使関係制度の全体像設計にむけた結論をまとめたものではなく、「選択肢のモデルケース」を示したものである。具体的には、労使合意をより重視する民間の労働法制に近いケース、現行公務員制度の基本原則を前提として労使合意を尊重するケース、国会の関与と公務員の特殊性をより重視するケースの3モデルが示されているが、検討委員会はこれを「いずれか一つの案を推奨するものではない」、「制度化の選択を3つに絞ったものではない」としている。このため、今後の制度のあり方については、政府の判断に委ねられることとなる。

3.連合はこの間、ILO基準に則った、国際的にも通用する労使関係制度の構築を求めてきた。民主党も、マニフェストにおいて「公務員の労働基本権を回復し、民間と同様、労使交渉によって給与を決定する仕組みを作る」と明記しており、日本での国際労働基準に基づく公務労使関係制度の確立は東南アジア諸国における改革に大きな影響を与えることからも、政府はマニフェストの実現にむけた改革を速やかに断行すべきである。

4.今後は、連合として政府に対し、早急な全体の制度設計と関連法案の取りまとめを求めるとともに、今回の検討委員会では課題として残された、責任ある人事当局のあり方や団結権・争議権に関しても、引き続き検討を求めていく。公務における民間同様の労使関係制度の構築、そして透明で民主的な公務員制度確立に向けて、連合は今後もその取り組みを強める。

以上