2011年度公務労協情報 13 2010年12月17日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

定年延長の意見の申出、年内見送り。連絡会は強く抗議−12/17
−総務省、人事院から基本要求に対する回答引き出す−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は、17日、総務省人事・恩給局次長及び人事院職員団体審議官との交渉を実施し、総務省に対しては12月1日に、人事院には11月24日に提出した2011年度基本要求に対する回答を引き出した。人事院は年内の定年延長に関わる意見の申出を見送ることを表明した。公務員連絡会は「人事院に対する信頼を失うような非常に重い問題だ。我々との約束を反故にしたことは極めて遺憾である」とし、厳しく抗議した。その他の回答においてもいずれも具体性がなく不満な内容に止まった。公務員連絡会は、定年延長に関わる意見の申出をはじめ、秋季闘争で解決がつかなかった課題については、春季生活闘争に引き継いでいくこととし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。

<総務省人事・恩給局次長との交渉経過>
 総務省人事・恩給局平山次長との交渉は、17日11時から総務省内で行われ、公務員連絡会側が12月1日の申入れに対する回答を求めたのに対し、平山次長は「現時点において可能な範囲で回答させていただく」として次の通り答えた。

一、給与をはじめとする雇用・労働条件確保について
(1) 本年の人事院勧告受けた給与の取扱い方針では、「次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法律を提出し、交渉を通じた給与改定の実現をはかる」こととし、さらに、現下の経済社会情勢や厳しい財政事情等を踏まえ、「その実現までの間においても、来年度から人件費の削減を可能とするための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から順次提出する」ことが閣議決定された。
(2) これを受けて、次期通常国会に給与法改正案を提出する方向であり、今後、具体的内容の検討を進めることになる。検討に当たっては、公務員連絡会をはじめ職員団体の理解と合意が得られるよう誠意を持って話し合いたいと考えている。
二、労働時間、休暇及び休業について
 超過勤務の縮減については、全省庁一斉の超過勤務縮減キャンペーンの実施をはじめ、本年4月から60時間を超える超過勤務手当の割増や超勤代休時間制度の新設によるコスト意識を持った超勤抑制に努めるとともに、超過勤務縮減を管理職員の人事評価の対象として明確化するなど、取組みを進めてきている。今後とも、公務員連絡会の意見も伺いながら、引き続き、超過勤務縮減のための取組みを進めてまいりたい。
三、福利厚生施策等について
(1) 国家公務員の福利厚生計画の見直しに当たっては、「福利厚生施策の在り方に関する研究会報告」を参考にしつつ、各府省や職員団体のご意見も伺いながら進めたいと考えている。
(2) 心の健康づくりについては、予防や早期発見が肝要であると認識している。2006年度から管理監督者を対象にメンタルヘルスにおける知識の習得等を目的として開始した「メンタルヘルスセミナー」は、受講者から高い評価を受けており、引き続きこの取組みを進めてまいりたい。
(3) 「試し出勤」については、人事院から各府省あてに通知が発出されたことは承知しており、当面、その動向を見守りたいと考えている。
(4) 今後とも福利厚生施策の充実に努めつつ、鋭意検討してまいりたい。
四、段階的な定年延長の実現について
(1) 定年延長の検討に当たっては、国家公務員制度改革推進本部を中心に、基本法に基づく総合的に検討しているところであるが、現時点においても意見の申出が行われていないことなどから、関係法案を次期通常国会へ提出する状況ではないと考えている。
(2) 人事院の意見の申出も踏まえ、関係機関とも連携しながら、政府全体として取り組んでまいりたい。
五、非常勤職員制度の改善について
 本年10月1日から新たな期間業務職員制度を導入し、先の臨時国会では、人事院の意見の申出に基づき育児休業等の取得を可能とすることを内容とする法改正を行ったところである。
 総務省としては、まずはこれらの制度の適切な運用の確保に努めていきたい。
六、人事評価制度について
 制度が円滑に運用されるよう、制度の周知徹底はもとより、本年夏には評価者の評価能力を高めるための評価者講座を開催してきたところであり、今後とも引き続き行うこととしている。
 本制度については、引き続き、職員団体とも十分意見交換し、円滑に運用していきたいと考えているのでよろしくお願いしたい。

 これに対して、公務員連絡会側からは、次の通り質した。
(1) 人件費削減問題については、総務大臣が臨時国会で「次期通常国会に給与法改正案を提出したい」と答弁していることは承知している。公務員連絡会としても極めて重い課題だと認識しており、回答のように、総務省としては職員団体の理解と合意が得られるよう誠意を持って話し合っていくとの基本姿勢であると受け止めておく。
(2) 来年度の給与改定については、この間、給与水準が下がり続けて組合員の生活は厳しい状態にあることを使用者としてしっかり受け止めてもらい、維持、改善していくという積極的な姿勢で対応してもらいたい。
(3) 「出先機関改革のアクションプラン」が年内にも定められ、国の出先機関改革の具体化が求められることになっている。また。独立行政法人、政府関係法人についても事業見直しの閣議決定が行われ、年明け以降には独法制度そのものや組織の在り方の検討が本格化する。こうした動きの中で、組合員は自分の雇用がどうなるか、強い不安感を持っている。雇用問題を生じさせないことが基本であるが、仮に生じるということになる場合には、政府として統一的な体制を確立して、国が使用者として雇用に責任を持ってもらいたい。
(4) 超勤縮減については、色々な取組みが行われてきているが、一向に減っていないことも現実だ。そういう意味では、それぞれの取組みの効果を検証していくことが大事だ。この間、公務員連絡会が要求してきたIT活用による厳格な人事管理など一歩踏み込んだ取組みをすべきだ。公務員連絡会との話し合いを継続して、来年度こそ目に見える成果が上がるよう努力して頂きたい。
(5) 福利厚生について、まずは重要な勤務条件と位置付けていただきたい。
 その上で、国家公務員の福利厚生基本計画の見直しについては、本年7月に公務員連絡会として意見を提出し、ワークライフバランスの確保や超勤縮減対策の重要性、メンタルヘルス対策の強化を要請したところであり、そういう方向での見直しをお願いしたい。いま作業中であると聞いているが、新年度からの実施に向けて、案の段階で議論することを約束してもらいたい。
 管理者向けのメンタルヘルスセミナーについては、忙しくて受講しない管理職も多いと聞いており、全員が受講するよう総務省として指導を強化していただきたい。
(6) 福利厚生関係予算では、昨年度からレクリエーション経費が計上されない事態が続いており、本年行った公務員連絡会の調査では、国家公務員の場合、レクリエーションに参加した組合員は20%に止まっており、58%が不満を感じている。勤務意欲にも大きく影響するので、復活と整備に努力していただきたい。
(7) 定年延長については、年内に意見の申出を行うことは厳しい状況にあることは承知しているが、人事院としては雇用と年金の接続について、段階的な定年延長で対応するとの基本的考え方に変わりはないということであり、意見の申出が行われた場合には、前の原口大臣から回答を頂いたように、政府として尊重し、2013年度実施に間に合うよう法整備を図ってもらいたい。
(8) 非常勤職員の問題は、わが国全体の雇用をどうしていくのかという課題であり、処遇の底上げ、改善と雇用の安定が重要な課題だ。本年、日々雇用制度に代えて期間業務職員制度が導入されたことで一歩前進したが、まだまだ課題は残っている。来年度に向けては、均等処遇を目指す観点から、非常勤職員を法律に位置付けることを検討してもらいたい。
(9) 自律的労使関係制度については、本日争議懇の報告もまとまり、次期通常国会への法案提出に向け、年明け以降、山場を迎えることになるが、人事・恩給局は新たに設置される公務員庁の中心になることは間違いないので、前向きに対応していただきたい。
(10) 人事評価については、この秋から本府省以外の機関でも本格実施が始まった。現場の話を聞くと、制度を十分に理解していない管理職が少なくないということだ。引き続き、管理者研修の強化に取り組み、あわせて検証のための調査とそれに基づく問題把握、改善に努めてもらいたい。

 これに対して、平山次長らから次の回答があった。
(1) この間、公務員給与が下がっていることについては、昨今の厳しい経済状況や民間の賃金実態を踏まえるとやむを得ない部分があると当局としても認識しているが、生活が厳しい状況にあることは承知している。
(2) 出先機関改革や独法等の見直しについては、当方の所管でないため言及しがたいところだが、どういう改革になるか見守っているところ。皆さんのご意見を関係方面にしっかり伝える。
(3) 超勤縮減については、ワークライフバランスや職員個人の健康確保の視点にたち、事務室を閉める等の様々な超勤縮減対策を実施してきており、人事当局としても検討を重ねてきた。IT活用による人事管理については、原口前大臣も以前に言及しており、民間の状況等を含めて検討していきたい。また、国会対応について2日前までの質問締切といったルールが徹底できておらず、超勤縮減につながらない実態が事実あることは認識している。
(4) 福利厚生基本計画の見直しについては、ワークライフバランス、超勤縮減対策の重要性、メンタルヘルス対策の強化の3点を含めて、政府内で検討をしている。内部での検討がなお続いているところだが、今後皆さんとの意見交換の機会も持ちたいと考えている。また、管理者向けのメンタルヘルスセミナーについては、全ての管理職を対象に、eラーニング等を用いて実施できるよう努力していきたい。
(5) 定年延長について中心となるのは国家公務員制度改革推進本部だが、総務省としても雇用と年金の接続をはかるよう十分配慮していきたい。
(6) 非常勤職員の問題は、本年10月1日より期間業務職員制度が施行されたところであり、まずそれがきちんと運用されるかを見守りたい。中長期的視点に立った検討については今後引き続き検討していきたい。
(7) 自律的労使関係制度の構築については、人事・恩給局としても最大限協力し対応していくつもりだ。
(8) 人事評価制度は昨年から実施しているが、まだ制度の理解がされていない状況もあるので、まずは制度の周知と徹底に努めたい。

 その後、交渉委員より以下の要請をした。
(1) 人件費の大幅削減により、住宅ローンや教育費、車の買い換えなどを抱えた職員は大変な状況だ。年収ダウンとならないよう取り計らいをお願いしたい。
(2) 人事評価制度について、部局ごとに、この部局にはA評価がつくはずがない、この部局ではB評価以下がつくはずがないといった誤解や本省と地方でのレベル格差等、職員の業務に対する評価ではない誤った認識を持つ管理職がいるので、全管理職を対象に指導を徹底してほしい。また、人事評価が人材育成につながっていないとの調査結果があるが、昇任・昇格に差をつけるだけでなく、人材育成に重点を置いて活用していただきたい。
 これに対し、平山次長らから、「人事評価制度の検証のためのアンケート調査の準備を今進めている。来年には実施することにしており、内容は皆さんと相談したい」と回答があった。

 最後に、大塚副事務局長が「来年度の賃金・労働条件の改善に向けて前向きに対処していくことを求めたが、本日の回答の中身は抽象的で具体性がなく不満だ。これから政府予算案の決定などがあり、年明け以降、春闘も始まるので、来年2月に改めて春季要求書を提出する。公務員の労働条件の改善のみならず、人事行政の改善に向け、引き続き努力することを強く求めておく」として、基本要求をめぐる交渉には一区切りをつけ、明確とならなかった課題については、引き続き2011春季生活闘争段階で交渉・協議するとの見解を述べ、本日の交渉を終えた。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院根本職員団体審議官との交渉は、17日13時30分から行われた。
 冒頭公務員連絡会側が、11月24日に提出した基本要求に対する回答を求めたのに対し、審議官は「主な要求事項について、現時点における検討状況などについて申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。

一、給与に関する事項
1.給与水準等について
(1) 公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢は変わらない。
(2) 民間賃金の状況は、今年の冬のボーナスについては昨年よりも若干いいという調査結果もあれば、月数でマイナスという調査結果もあり、いずれにせよ月例給および特別給について民間の動向を注視していきたい。
(3) 給与構造改革の効果については、今後も検証と行っていきたいと考えている。新たな見直しを行う際には、皆さんの意見を伺いながら進めていく。
2.高齢層給与問題について
 定年延長に伴う60歳台前半の職員の給与水準については、60歳台前半の民間企業従業員の所得水準を踏まえつつ、職員の職務と責任を考慮して設定することとしており、また、とくに官民の差の大きい50歳台後半層を中心とする50歳台の俸給水準などについて、引き続き必要な見直しを行うよう検討しているところである。これらの検討に際しては、公務員連絡会と十分意見交換しながら進めていきたい。
3.諸手当の見直し・検討について
 住居手当の見直し等について、民間の状況、較差の大きさや配分の優先順位等を踏まえ、考えていきたい。
二、労働時間、休暇等に関する事項
(1) 平成21年度の平均在庁時間は、本府省の在庁状況をサンプル的に調査・把握したところ、週当たり12時間程度となっており、前年度に比べて1時間程度減少している。今後も、計画的な在庁時間縮減に引き続き取り組んでいく。
(2) 超過勤務の上限目安時間については、昨年2月の指針の改定により、新たに他律的業務の比重の高い部署について、1年につき720時間と設定したところである。今後、そのフォローアップとして、本府省で超過勤務が年間720時間を超えている職員の状況や当局の具体的な対応について、主要府省の担当者から聴取し、必要に応じて指導等を行うとともに、こうした取組みを通じて指針の徹底が図られるよう努めていきたい。
(3) 月45時間を超え60時間を超えない超過勤務に係る超過勤務手当の支給割合については、本年4月の民間事業所における状況から、本年は公務において超過勤務手当の支給割合を引き上げる状況にはないと判断したところであるが、今後も引き続き民間における時間外労働の割増賃金率の状況を踏まえ適切に対応していきたい。
(4) 介護のための短時間勤務や休暇、休業等についても要望を受けているが、人事院としては、職員の休暇、休業等についてもこれまで適宜見直しを行ってきたところであり、今後とも民間の状況等を見定めつつ必要な検討を行うこととしたい。
三、新たな人事評価制度の実施・活用について
 人事院は、昨年4月に導入された人事評価制度が公正・適正に実施されるよう、研修の実施などを通じて各府省を支援し、また、その評価結果の活用が適切に行われるよう、各府省に指導を行ってきている。
 今後、各府省における人事評価の実施状況、評価結果の活用状況等を把握した上で、皆さんや各府省の意見を伺いつつ、人事行政の公正の確保、職員の利益の保護を図る観点から、人事院としての役割を果たしていきたいと考えている。
四、定年延長について
(1) 本年中を目途に意見の申出を行うため、本年の勧告時の報告に示した「定年延長に向けた制度見直しの骨格」に基づき、関係各方面と意見交換を重ねてきた。
 しかし、公務を取り巻く諸情勢の変化の中で、高齢層の職務と給与との関係をどう設計すべきか、定年延長の下でどのような人事管理を行っていけば組織活力が確保できるのかといった点など、なお検討を深めるべき課題と論点がある。そのため、本年中の意見の申出は行わないこととしたい。ただし、2013年4月からの定年延長の段階的実施を目指すことに変更はない。
(2) 検討を促進するため、来週にも、検討を深めるべき課題と論点を整理してお示しし、皆さんをはじめ関係者の意見を改めて伺うこととしたい。このような形で検討を進め、皆さんや関係者の理解を得ながら、成案を得て具体的な立法措置のための意見の申出を行うこととしたい。
五、福利厚生施策に関する事項
 人事院としては、福利厚生施策も公務員制度の重要な事項と認識し、メンタルヘルス対策(心の健康づくり)などについても充実に努めてきたところである。本年においては、「円滑な職場復帰及び再発の防止のための受入方針」を全面改定して長期病休職員の職場復帰に係る主治医と職場の健康管理医等との連携を強化する旨を明記したほか、「試し出勤」の実施要綱の作成・周知を行うなど復職支援策の着実な推進に力を入れてきたところである。引き続き施策の充実に努めていきたいと考えている。
六、非常勤職員制度の改善に関する事項
 非常勤職員の適正な処遇を確保するため、人事院は、2008年8月に「非常勤職員給与決定指針」を発出し、また、本年10月から期間業務職員制度の導入、来年4月には育児休業制度の適用等を行ってきたところである。今後とも「指針」の達成状況を踏まえながら給与の適正な支給が図られるよう取り組んでいくとともに、期間業務職員制度や育児休業制度等が、各府省において適切に運用されるよう、制度の周知徹底や助言指導に努めていきたいと考えている。
七、男女平等の公務職場の実現に関する事項
(1) 人事院としては、セクシュアル・ハラスメントについては、これまでもその実態を把握し、防止策等への活用を図るなど、その対策に努め、また、いわゆるパワー・ハラスメントについても、その防止に向けて、本年1月に「パワー・ハラスメントを起こさないために注意すべき言動例」を作成したところである。人事院として、セクハラ、パワハラの防止等は重要な問題ととらえており、今後とも施策の充実を図って参りたい。
(2) また、政府における「第3次男女共同参画基本計画」の策定を踏まえながら「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」の改定に向けて、取組んでいきたいと考えている。

 定年延長に関わる意見の申出の年内実施を見送るとした根本審議官の回答に対し、大塚副事務局長はまず、「意見の申出は2010年中を目途に行うと世の中に約束してきたことだ。人事院に対する信頼のみならず、意見の申出や勧告に対する信頼も損なわれる話で、極めて重い問題だ。また、われわれとのこれまでの約束を反故にしたことも極めて遺憾である」と述べ、厳しく抗議した。その上で、@2013年4月から定年延長の段階的実現を目指すという方針を貫いて必ず意見の申出を行うことA意見の申出は遅くとも年度内には行うことを強く訴えた。また「来週にも、課題と論点を整理して示して関係者の意見を聞くとのことであるが、公務員連絡会としても、来週の提示内容を検討し、意見を提出するのでそれを踏まえた意見の申出を実現してもらいたい」と、意見の申出に向け引き続き公務員連絡会との交渉・協議を行うことを求めた。
 それに対し根本審議官は「年内の意見の申出を見送る事態となったことは大変申し訳なく思う。公務員連絡会の指摘は深く受け止めたい。定年延長の実施時期を変えるわけではない。意見の申出に向け、公務員連絡会をはじめ関係各方面の意見を踏まえ、検討していく」と、2013年度からの定年延長の実施に向けた姿勢に変わりはないことを改めて表明した。
 公務員連絡会側は「定年延長は新規採用に関わる問題でもある。遅くとも年度内に意見の申出を行わないと物理的にも間に合わなくなる」「人事院が意見の申出を行わなければ、地方自治体も動くことができず、地方公務員の定年延長実施にも大きな影響を及ぼすことだ」と強調し、公務員連絡会の意見を踏まえた意見の申出を遅くとも年度内に行うよう再度強く求めた。

 公務員連絡会側は、引き続き、その他の要求事項に関する回答に対し、次の通り人事院の考えを質した。
(1) 公務員給与については、98年をピークに下がり続け、40歳係長配偶者、子ども2人では98年の年収634万円が本年の勧告後は513万円となり、121万円、ほぼ2割の大幅な減額になっており、組合員の生活の厳しさはますます募っている。月例給については来春闘を含めこれからということになるが、この冬の一時金については、日経新聞や日本経団連の調査では若干伸びており、組合員も期待しているのでぜひとも引上げに向け努力してもらいたい。
 給与構造改革終了後の取組みについては、今後も検証を行うとの回答であるが、勧告時の報告にあったように「地域ブロック間の給与配分の見直しは、着実に成果を挙げている」という観点に立って、「最終的な検証を行う」という姿勢に変わりないか。また、比較企業規模については、現行の50人以上を維持することを確認しておきたい。
(2) 高齢層の給与については、60歳台については定年延長の意見の申出に向けた課題として、50歳台については「俸給水準などについて」という回答なので、来年の官民較差を踏まえた配分の問題として議論していく。50歳台の課題については、本年の勧告で行った年齢による引下げの撤回を改めて求めておく。十分な交渉・協議を行い、合意が前提であることを強く申し入れる。
(3) 勤務時間外の在庁時間が週当たり12時間となって昨年に比べ1時間減少したとのことであるが、年間では600時間を超えていることになり、まだまだ長い。しかも、サンプル調査であり、これが本府省の在庁実態を把握していることになるのか疑問だ。来年度は、この取組みをパワーアップし、地方機関を含めて拡大、深化させてもらいたい。
 月45時間を超え60時間を超えない超過勤務の割増率については来年の民調で調査し、その結果を踏まえて改善するものと受け止める。また、超勤代替休暇についても調査してもらいたい。
 その他、介護のための短時間勤務についても積極的に対応してもらいたい。
(4) 人事評価については、この秋から本府省以外の機関でも本格実施が始まった。現場の話を聞くと、制度を十分に理解していない管理職が少なくないので、研修の強化に努めてもらいたい。また、実施状況や評価結果の活用状況を把握するということであり、実態調査を行い、その結果について公務員連絡会と話し合って、問題の把握と改善に努めてもらいたい。
(5) 福利厚生については、メンタルヘルス対策が重要な課題になっている。本年は新たに「試し出勤」を導入したが、十分活用できるように、研修や啓発活動を充実させながら取組みを強化してもらいたい。
(6) 非常勤職員の問題については、本年、日々雇用制度に代えて期間業務職員制度が導入されたことで一歩前進したが、まだまだ課題は残っている。来年度に向けては、雇用の安定や均等処遇を目指す観点から、非常勤職員を法律に位置付けることを検討してもらいたい。
(7) 男女平等の問題について、女性職員の採用・登用拡大指針が改定され、きめ細かく対策を講じていくことになると受け止めている。問題は各府省の人事管理の現場で採用・登用の拡大が実現できるかどうかだ。職場では滅私奉公のような無定量の超勤や転勤に応じないと意欲がないと決めつける傾向が残っている実態もある。立派な指針ができてもそれが各府省の実施計画や職場でいかされなければ意味がない。人事院として各府省に対する指導力を発揮してもらいたい。

 これに対し人事院側は次の通り答えた。
(1) 民間給与状況については、冬の一時金集計や春闘結果など、今後の推移を見守っていきたい。地域ブロック間の給与配分の見直しについては、現在状況を注視しているところであり、改善が進むことを期待している。今後、給与構造改革終了後の検証を深めていきたい。また、比較企業規模については、現行方式が適当な方法だと思っており、見直しは考えていない。
(2) 本年の勧告で実施した50歳台後半層の引下げ措置は、皆さんが納得できるものではないとの認識はしている。今後の高齢層の給与のあり方についてどのようにしていくか、皆さんと協議していきたい。
(3) 720時間を超える在庁時間の実態把握については、まずは主要府省の緊急度の高いところから始めさせていただきたい。月45時間超60時間未満の超過勤務の割増率に関わる民調の中身は現在検討中であるが、改善に向け努めていきたい。また介護のための短時間勤務については、現行の仕組みを超えて新たに設けることとなると、それなりの工夫が必要で、介護に関わる現行制度の公務における活用状況や民間状況を注視していきたい。
(4) 人事評価については、管理職員等に対する研修等引き続き実施する。実態調査に関しては、現在検討しているところであるが、本年が本格実施の最初の年であり、一通り完結した時点で行いたい。その結果を踏まえ、公務員連絡会と話し合いながら課題の把握や改善等に努めていきたい。
(5) メンタルヘルス対策については、研修や啓発活動の充実など一層努力していく。
(6) 非常勤職員については、さまざまな形態があり、その中で今回、期間業務職員制度を導入した。さらにどのような整理ができるか考えていきたい。
(7) 政府の男女共同参画基本計画を受け、人事院も「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」を速やかに改定することにしている。指針が各府省の実施計画や職場に活かされなければ意味がないというご指摘は、まさにその通りである。各府省に指導するなど指針に基づく具体的な取組みがなされるよう、人事院としてさらに努力したいと考えている。

 その後、交渉委員から「現給保障については、給与構造改革を行う際の約束事であり、それをしっかり踏まえて対応してもらいたい」「メンタルヘルス対策では、『試し出勤』といった工夫は理解するが、早期発見・治療が何よりも重要だ。メンタルヘルスに直結する心の健康に関する調査を具体的に検討し、実施してもらいたい」「民間ではさまざまな賃金・労働条件が国家公務員に準拠している場合も少なくない。介護のための短時間勤務について、公務において家族の介護のために職場を辞めなくてもいいようにさまざまなメニューを用意することが必要だ。また公務に導入することによって民間にもよい影響を与えるという観点から、是非とも積極的な検討を進めてもらいたい」といった要請を行った。

 最後に大塚副事務局長が「来年度の賃金・労働条件の改善に向けて前向きに対処していくことを求めたが、本日の回答の中身は抽象的で具体性がなく不満だ。とくに定年延長の年内意見の申出見送りは極めて遺憾であり、重ねて抗議する。各組織からも総裁に直接抗議文書を送ることにしたい。定年延長という方針に変わりはなく、遅くとも年度内に意見の申出を必ず行うことを強く申し入れる。本日の回答も踏まえ、来年2月に改めて春季要求書を提出するので、厳しい状況ではあるが、労働条件が改善され、組合員が意欲を持って勤務できるよう、引き続き努力することを強く求めておく」と強く要望し、本日の交渉を締めくくった。

以上