公務員連絡会は15日、人事院が昨年12月22日に示した「高齢期雇用問題に関する検討状況の整理」に対する意見を提出した。これは、人事院の「検討状況の整理」について、公務労協「公務・公共部門の新たな高齢雇用施策検討委員会」で考え方を整理し、公務員連絡会として人事院に提出したもの。
交渉は13時30分から行われ、公務員連絡会からは大塚・花村・藤川各副事務局長をはじめ各構成組織幹事クラス交渉委員らが出席し、人事院は根本職員団体審議官らが対応した。
冒頭、大塚副事務局長は、昨年中に定年延長に関わる「意見の申出」を行わなかったことはきわめて遺憾であることを改めて強調した上で、「人事院『高齢期雇用問題に関する検討状況の整理』に対する意見」(別紙)を説明した後、現在の検討状況や年度内の「意見の申出」に対する人事院の姿勢などを質した。
これに対し根本審議官は、現時点での検討状況や今後の姿勢について、以下のとおり回答した。
(1) 現在、各府省の意見を集約しているところである。
(2) 今後、皆さんからの意見や各府省から寄せられた意見等を踏まえ、年末にお示しした「検討状況の整理」をさらに詰めていきたい。
これに対し、公務員連絡会側から、地方自治体では人事院の『意見の申出』を踏まえ検討を進めることになることから、地方公務員の定年延長実施にも大きな影響を及ぼすことを改めて訴えた。
最後に、大塚副事務局長から、本日提出した意見を十分に踏まえ、われわれとの交渉・協議、合意に基づいて本年度中に『意見の申出』を行うことを強く求め、本日の交渉を終えた。
(別紙)
2011年2月15日
人事院総裁
江 利 川 毅 殿
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会
議 長 棚 村 博 美
「人事院『高齢期雇用問題に関する検討状況の整理』に対する意見
2013年度から始まる公的年金の支給開始年齢の繰り延べを前に、新たな高齢期雇用施策の確立が急務となっています。
貴院は、2009年に続き、2010年勧告時に「本年中を目途に成案を得て具体的な立法措置のための意見の申出を行う」ことを報告していたにもかかわらず、なお検討を深めるべき課題と論点があるとして2010年中に意見の申出を行わず、12月22日、「高齢期雇用問題に関する検討状況の整理」(以下、「検討状況の整理」という。)を関係者に示し、意見を求めてきました。
公務員連絡会は、雇用と年金を接続する方法として段階的な定年延長とすることを基本とし、新たな高齢期雇用施策の実現にむけて、組織内の議論を行い、「検討状況の整理」に対する意見を、下記の通りとりまとめました。
貴職におかれては、高齢雇用施策の検討にあたり、本意見を踏まえ、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づき、本年度内に「意見の申出」を行うよう強く要請いたします。
記
1 「3 高齢期雇用問題に関する人事院の基本的な考え方」について
(1) これまでの人事管理の見直しの必要性について
(人事院の考え方)
各府省において、能力・実績主義を徹底し、年次順送り的な人事運用や短期間での頻繁な異動を見直すことが必要。
また、それぞれの行政運営に適した組織体制の見直しを進めることや研修機会の拡充等を通じて専門性の涵養を図ることが必要拡充等を通じて専門性の涵養を図ることが必要
(公務員連絡会の考え方)
○ 65歳まで働き続けられるよう、職員の健康維持やワーク・ライフ・バランスの観点から、これまでの60歳までの働き方や人事管理全般の検証・見直しを行う必要がある。
○ いわゆるキャリア職員の年次順送り人事、短期異動は直ちに改められるべきである。また、能力・実績主義の徹底については、新たな人事評価制度が導入されたばかりであり、検討状況の整理でも言及しているように「過渡期」として、まずは、その公正な運用に努めながら評価制度に対する職員の信頼度を高めていくことが重要である。
○ 「行政運営に適した組織体制の見直し」は、これまでのライン職中心の組織体制からスタッフ職が政策立案に必要な役割を果たすことができる組織体制に変えることを意味しているが、組織の見直しに合わせて複線型人事制度を整備すべきである。指摘されている専門的な知識・経験を高める人材育成・人事配置や研修の拡充等は複線型人事管理の整備により、はじめて実現するものである。
また、こうした複線型人事制度が本府省以外の機関でも広く活用できるよう、現行の専門スタッフ職俸給表について、下位級の増設を含めた見直しを行うべきである。国民に対する行政サービスの拡充の観点も含め、職員の知識と経験を活かせるよう窓口専門職や相談員など積極的な職域開発も必要である。
○ 障がい者についても、高齢期に働き続けられる施策を講じる必要がある。
(2) 多様な働き方について
(人事院の考え方)
ア 短時間勤務制
・ 職員が希望する場合、通常より短い勤務時間で勤務させることができるよう措置
・ 高齢層が短時間勤務に移行した分だけ若年層の新規採用や昇進を可能とすることにより、雇用延長と組織活力の確保を両立させる必要
→ 各府省における組織体制や業務運営手法を見直し、高齢期の短時間勤務の機会を確保していくことが必要(後述の役職定年後の活用方策としても使えるか)
(公務員連絡会の考え方)
○ 60歳前についても取得理由を問わない本格的な短時間勤務制を導入すべきである。すでに育児短時間勤務制度が整備されているほか、「短時間勤務制度」ではないものの介護休暇制度があることに加えて、地方公務員については、高齢者部分休業制度(現行定年前5年間に1日4時間まで)が措置されている。人生の様々な段階において、職員個々人の人生設計に対応できる、短時間勤務制度を整備することは、ワーク・ライフ・バランス確保の観点からも求められる。
○ 家族介護の終了や収入の確保など職員の事情により短時間勤務からフルタイム勤務に戻ることを権利として保障することや、高齢期における多様な働き方として、短時間勤務の時間及び勤務日数等については固定化せず、職員の希望を踏まえ柔軟に対応することが必要である。
○ 短時間勤務の定員管理上の扱いは、現行の短時間再任用の取扱いに代えて、勤務時間を基礎に係数を乗じて定員カウントするなど弾力化する必要がある。
(人事院の考え方)
イ 高齢期の働き方に関する意向を聴取する仕組み
・ 60歳以降の働き方について職員の意向を聴取し、公務能率の確保の観点から職務付与の在り方を検討
→ 50歳台に60歳以降の働き方について職員の意向を聴取するだけでなく、30歳台、40歳台において、高齢期の働き方についての情報提供を行うとともに、職員のキャリアプランに関する意向を聴取することも必要
(公務員連絡会の考え方)
○ 60歳以降の働き方について、60歳よりも早い時点で、すなわち50歳台で聞くことに賛成である。ただし、本人希望の尊重を基本に、任命権者が退職勧奨、降任、短時間勤務への移行を強要する場とならないような仕組みとし、職員からの苦情に対応する制度を整備すべきである。
○ 早い時期からの情報提供に加えて、職員に対する啓発・研修の実施や相談窓口設置など、職員自らが高齢期の働き方の認識を深めることにより、適切に対応できるよう条件整備を図ることとし、あわせて退職準備プログラムも充実する必要がある。
(3) 雇用と年金の連携方策について
(人事院の考え方)
(能力・実績主義を徹底し、人事管理全体の見直しや多様な働き方の用意を前提にして公務における高齢期雇用を進める場合の雇用形態は次の2通り。
A案 勤務の継続を希望する者全員を再任用することで対応する場合
B案 定年の引上げにより対応する場合 人事院案)
→ 人事院として、来るべき本格的な高齢社会において、公務能率を確保しながら能力・実績に応じて65歳まで職員を十分活用していくためには、年功的な給与体系の見直しと適切な高齢層の給与水準の設定や組織活力の確保のための人材活用方策を講じるとともに、多様な働き方を選択できるような制度設計を行うことにより、意欲をもって60歳以降も勤務することを希望する者には雇用の機会を提供する仕組みとして、段階的な定年延長を行うことが適当と判断機会を提供する仕組みとして、段階的な定年延長を行うことが適当と判断
(公務員連絡会の考え方)
○ 新たな高齢雇用施策は、@制度的に65歳まで生きがいを持って働き続けることを保障することA高齢期の生活を保障するための処遇が確保されること、が基本でなければならない。したがって、指摘されているように、A案の再任用制度では、@職員の能力が十分発揮されにくいことA無年金期間が生じることにより再任用希望者の大幅な増加が予測され、必要な職務を用意することが難しいこと、から適当でなく、B案の定年の引上げを選択すべきである。
○ B案のデメリットとされている「若年層・中堅層のモチベーションの維持等」については、段階的定年延長が相当長期間にわたって進むプロセスであることから、能力・実績主義の人事管理への転換、複線型人事制度、短時間勤務制度を含む多様な働き方の整備を通じて解決できる課題であると考える。なお、これらはA案においても同様であり、B案固有の[デメリット]とは言えない。(給与体系、給与水準の課題は(4)参照)
(4) 給与制度の見直しについて
(人事院の考え方)
(総給与費の増加を抑制することを前提に、給与制度を見直す場合、以下の2つの方策が考えられる。
A案 民間の状況を踏まえ、60歳以降の給与を相当程度引下げ 人事院案
B案 給与カーブ全体を見直し、60歳前後で給与を連続 )
→ 人事院としては、60歳以降の給与を相当程度引き下げる措置が適当と判断。その方法や60歳台の具体的な給与水準については、役職定年制の導入の議論等を踏まえて検討。なお、今後現行の現役世代(60歳前)の給与の在り方の見直しも行っていく必要
各府省においては、これを前提に、どのような人事管理を行うのか検討が必要(能力・実績主義をどのように進めるか、60歳の時点で職務(ポスト)の見直しを行うことが必要かどうか等)直しを行うことが必要かどうか等)
(公務員連絡会の考え方)
○ B案は、指摘されているように、中堅層を含め相当広範な職員層の給与を引き下げることになり、職員の生活維持の観点から到底容認できない。また、60歳台について、公務員給与が民間給与を大きく上回ることから、現実的に選択困難と考えられる。
○ 公務員の給与については、基本的には職務給の原則が維持されるべきであり、60歳台前半の給与についても、同様に考える必要がある。すなわち、仕事が変わらない限り職務の級が維持されることにより、ゆとりある生活が確保できる給与水準(少なくとも60歳時点の給与水準の8割)とする必要がある。なお、A案の[メリット]として指摘されている「公務員給与を継続雇用制度を中心とした民間の60歳代前半の給与水準」に合わせることは、定年延長のもとでは不適当であり、職務・職責を踏まえて公務の給与水準を検討すべきである。
○ 60歳前の給与のあり方については、世代間配分の問題として、定年延長とは切り離した検討を行うべきと考える。その場合の考え方としては、職員が60歳定年を念頭において生活を設計し、教育費負担や住宅ローン支払いなどを行っている実態を踏まえ、現行給与水準を維持することを基本とした見直しに止めるべきである。
○ 「能力・実績主義をどのように進めるか」については、人事評価制度に対する信頼性を高める中で、評価結果に基づく人事管理を進めていくことにより能力・実績主義が徐々に実現していくと考えられる。また、「60歳の時点で職務(ポスト)の見直しを行うことが必要かどうか」については、60歳時点に限らず、適材適所の人事配置を行うことが基本であることを踏まえつつ、とくに高齢期においては、本人の希望に基づく降任・降格、配置換も検討されてよいと考える。
(5) 役職定年制について
(人事院の考え方)
@ 導入の可否
→ 各府省において役職定年後の働き方を見出す取組をしてもらいながら、役職定年制導入に向けて検討を進めていくことが必要と判断
A 役職定年制の対象となる職員の範囲
→ 本府省課長以上(事務次官・外局長官を除く)及び管区機関等のこれらに相当する職員を対象とすることが考えられるが、それで支障がないか、問題があるとすればどのような条件が整うことでクリアできるのか、あるいは適用範囲の見直しが必要なのか、各府省において検討する必要(特に、本府省の局長や、管区機関等の本府省課長以上に相当する職員以外の地方機関の管理職の取扱いなど)
B 役職定年年齢の設定
→ 原則として現行の定年年齢である60歳を役職定年年齢とすることを前提に検討することが適当と考えるが、それで支障がないか、各府省において検討する必要
C 役職定年後の働き方
→ 公務組織外での人材活用が可能な仕組みや短時間勤務制など多様なツールを用意しておく必要があるが、まずは各府省において、具体的にどのような人材活用が考えられ、そのためにどのような環境整備が必要か十分検討がなされる必要。人事院としても対応を検討
(公務員連絡会の考え方)
○ 指定職を含めた本府省課長クラス以上への役職定年制の導入は、組織活力を維持するため、能力・実績に基づく人事制度が定着するまでの過渡的措置としては、やむを得ないものと考える。他方、地方出先機関等における本府省課長クラス以上以外の管理職の役職定年制については、昇任・昇格ペースが全体として遅延することや役職定年後の受け皿を相当数用意することの困難性など、定年延長後の地方における人事管理を踏まえたとき、導入すべきではないと考える。
○ 現行60歳定年制の下で、事務次官等については特例的に62歳とされていることも踏まえたとき、60歳以上を役職定年年齢とすることを前提に検討することが適当である。なお、少なくとも現行定年である60歳までは、公務内で職員の能力を活用することを基本とすべきである。
○ 役職定年後の職員のポストとしては、組織の見直しに合わせた複線型人事制度の整備を前提に、長年培われた専門的な知識・経験を活用できるよう「スタッフ的な職の整備」を行い、専門職として活用する必要があると考える。
(6) 人事交流機会の拡充について
(人事院の考え方)
→ 内閣において高い公共性が認められる法人の選定を行う必要があるほか、各府省及び政府全体として幅広く職員を公務外で活用する手段を検討する必要
(公務員連絡会の考え方)
○ 民間企業やNPO法人等公務外において、公務の中立・公正性を確保しつつ、職員が公務で培った知識・経験や能力を広く活かしていける仕組みを設ける必要があるが、いわゆる「天下り」にならないよう慎重に検討すべきである。
2 政府全体として検討が必要な課題等
以下の課題については、所管府省を含め政府全体として検討されることになるが、公務員連絡会としては次の通り措置すべきと考える。
(1) 退職手当等について
@ 現行の支給水準を維持することを基本とし、60歳台前半の給与水準が60歳時点より下がることとなる場合においても、現行制度と同様に最も高いときの俸給等を基礎として算定する方法を維持すべきである。
A 60歳超で自発的に退職する場合には、少なくとも現行60歳定年時における支給水準を確保すべきである。
B 職員が自己都合で退職する場合の支給率については、公務の場合、定年、整理等と比べて相当低い水準にあるが、民間企業では長期勤続した場合には同じか、差があっても大きくないことから、一定の勤続年数以上の場合にはその支給水準を引き上げるべきである。
C 短時間勤務に移行する場合には、給与が二重に減額されることも勘案し、移行時点で退職手当を支払うことを基本とすべきである。
D 職員が60歳定年退職を前提に生活を設計していることを踏まえ、60歳時点で退職手当の一部が受給できる仕組みについて検討すべきである。
(2) 共済組合制度の適用等について
公務内に雇用されている職員の社会保険制度(健康保険、年金保険)としては共済組合制度を適用することとし、すべての短時間勤務者に原則として共済組合加入資格を付与すべきである。
なお、公的年金の繰上げ支給制度の改善についても検討課題と考える。
(3) 支援措置について
「高年齢者雇用安定法」にもとづく民間企業労働者に対する高年齢雇用継続給付金等の各種支援措置について、その趣旨を踏まえ、公務部内においても制度化することを検討すべきである。
3 その他の課題
加齢に伴い65歳まで勤務することが困難となり、特例定年等を設定する必要がある職種等については、組合との十分な交渉・協議を行うこととし、次の通り対応すべきである。
配置換や短時間勤務により雇用を確保することを基本とするが、これによりがたい場合については、65歳前の特例定年を設けることとし、特例定年から65歳までの再任用については、本人が希望した場合には義務化することにより雇用を確保すべきである。さらに、再任用によっても雇用が確保できない場合には、「退職給付上の代替措置」を確実に措置することとすべきである。
以上