政府は、本日18時半過ぎから、第2回給与関係閣僚会議を開いて本年の人事院勧告について、総務大臣の回答どおりの内容で実施する方針を確認し、その後19時前から始まった臨時閣議で正式に決定するとともに(資料1、2、3)、給与法改正法案、非常勤職員に育児休業等を適用するための国家公務員の育児休業法等改正法案を決定、国会に提出した。
公務員連絡会は、この閣議決定に際し、給与法改正法案など関係法案について、総務省交渉を実施するとともに、@政府原案の成立をめざすA人件費削減を検討する場合には合意に基づく十分な交渉・協議を求めるB次期通常国会で労働基本権の確立による自律的労使関係の実現をめざす、との声明を発した(資料4)。
本日の人勧取扱い方針の閣議決定、関係法案の国会提出を受けて、2010秋季闘争の焦点は、「ねじれ国会」のもとでの関係法案をめぐる取組みと地方自治体や独立行政法人等の確定闘争に移っていく。また、次期通常国会に労働基本権付与法案を提出させることや、政府が人件費削減を具体的に検討する場合の交渉・協議が大きな課題になってくる。公務員連絡会は、2日を中心に、全国統一行動として職場集会等を実施し、閣議決定内容を報告し、今後の取組み方針を意思統一することにしている。
なお、関係法案についての総務省交渉の経過は次の通り。
<総務省交渉の経過>
関係法案の交渉には、公務員連絡会の幹事クラス交渉委員が臨み、総務省側は谷・渡邊両参事官ほかが対応した。
冒頭、公務員連絡会側が法案の内容を質したのに対し、総務省側が給与法改正法案、国家公務員の育児休業法等改正法案の概要について説明した。なお、後者の改正法案の中で、国家公務員(一部の特別職を含む)及び地方公務員の育児休業、さらに民間の育児介護休業法で規定されている現業国家公務員及び地方公務員の介護休業等についても、あわせて措置される。また、総務省としては、この法案と給与法案の一括審議をめざすとしている。
説明に対し、質疑を行い、法案の内容が人事院勧告及び育児休業法改正に係る意見の申出通りであることが確認されたことから、最後に大塚副事務局長が次の通り、総務省の最大限の努力を要請した。
(1) 「ねじれ国会」のもと、野党から更に引下げを求める法案が提案されると厳しい対応が迫られることになるが、政府としても原案通り成立するよう最大限の努力をお願いしたい。
(2) 公務員に労働基本権を付与する法案について、次期通常国会で実現するよう、総務省としてもご努力願いたい。また、人件費削減を検討する場合には、総務省が所管する問題であるので、「合意」を前提として、われわれと十分な交渉・協議することを約束していただきたい。
要請に対し、総務省側が「承った」と答えたことから、これを確認し、交渉を終えた。
資料1−閣議決定の内容
公務員の給与改定に関する取扱いについて
平成22年11月1日
閣 議 決 定
1 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与については、去る8月10日の人事院勧告どおり改定を行うものとする。
2 特別職の国家公務員の給与については、おおむね1の趣旨に沿って取り扱うものとする。
3 1及び2については、今年度における新たな追加財政負担は要しないものであるが、我が国の財政事情が深刻化している状況にかんがみ、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を削減する必要がある。そのため、次に掲げる各般の措置を講ずるものとする。
また、人事評価制度の的確な運用を通じて、能力のある者が登用され、成果を挙げた者が報われるよう、能力・実績に基づく人事管理の徹底を図るものとする。
(1) 予算の執行に当たっては、優先順位の厳しい選択を行い、経費の節減に努めるとともに、今後、なお引き続き、経費の見直し・節減合理化を図ること等により、歳出の削減に努力する。
(2) 地方支分部局等を始めとする行政事務・事業の整理、民間委託、情報通信技術の活用、人事管理の適正化等行政の合理化、能率化を積極的に推進する等により、定員の純減を可能な限り確保する。その中で、メリハリのある定員配置を実現する。
(3) 独立行政法人(総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第13号に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)の役職員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与水準も十分考慮して給与水準を厳しく見直すよう要請するとともに、中期目標に従った人件費削減等の取組状況を的確に把握する。独立行政法人及び主務大臣は、総務大臣が定める様式により、役職員の給与等の水準を毎年度公表する。
今後進める独立行政法人制度の抜本見直しの一環として、独立行政法人の総人件費についても厳しく見直すこととする。
また、特殊法人等の役職員の給与改定に当たっても、国家公務員の給与水準も十分考慮して給与水準を厳しく見直すよう要請するとともに、主務大臣の要請を踏まえた人件費削減等の取組につき、必要な指導を行うなど適切に対応する。特殊法人等の役職員の給与等についても、法令等に基づき公表する。
(4) 国家公務員の給与改定等に関する上記の取扱いの決定に際しては、その内容も踏まえ、地方公務員の給与改定について、各地方公共団体において、地方公務員法の趣旨に沿って適切な措置を講じるとともに、地方公共団体の定員についても、行政の合理化、能率化を図り、適正な定員管理の推進に取り組まれるよう期待する。
4 国家公務員の給与改定については、次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図る。なお、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する。
資料2−官房長官談話
内 閣 官 房 長 官 談 話
(平成22年11月1日)
1 政府は、八月十日に提出された人事院勧告を受け、その取扱いについて、国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格、他方で現下の経済社会情勢や厳しい財政事情なども勘案し、検討を行ってまいりました。
2 本日の閣議において、本年度の国家公務員の給与改定について、人事院勧告通り実施する方針を決定いたしました。
本年の勧告は、現下の民間の給与実態を反映し、俸給及びボーナスの引下げ等を行うこととするものであり、職員の年間給与が二年連続でマイナスとなる厳しい内容であります。
3 これらについては、今年度における新たな追加財政負担は要しないものですが、政府としては、我が国の財政事情が深刻化している状況にかんがみ、行財政改革を引き続き積極的に推進し、総人件費を削減する必要があると考えております。そのため、経費の見直し・節減合理化等による歳出の削減、行政の合理化、能率化推進による定員の純減確保など、各般の措置を講じてまいります。
4 国家公務員の給与改定等に関する上記の取扱いの決定に際しては、その内容も踏まえ、地方公務員の給与改定について、各地方公共団体において、地方公務員法の趣旨に沿って適切な措置を講じるとともに、地方公共団体の定員についても、行政の合理化、能率化を図り、適正な定員管理の推進に取り組まれるよう期待いたします。
5 国家公務員の給与改定については、次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ります。なお、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出することといたします。
6 公務員諸君は、今回の決定が現下の厳しい諸情勢の下でなされたものであることを十分理解し、公務員一人一人が国民全体の奉仕者であることを強く自覚するとともに、改めて厳正な服務規律の確保と公務の適正かつ能率的な運営を図るよう強く期待するものであります。
資料3−総務大臣談話
総 務 大 臣 談 話
平成22年11月1日
1 政府は、八月十日に提出された人事院勧告を受け、その取扱いについて、国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格、他方で現下の経済社会情勢や厳しい財政事情なども勘案し、検討を行ってまいりました。
2 本日の閣議において、本年度の国家公務員の給与改定について、人事院勧告通り実施する方針を決定いたしました。
3 給与改定に当たっては、行財政改革を引き続き積極的に推進し、人件費を削減するとともに、能力・実績に基づく人事管理の徹底を図ります。このため、経費の見直し・節減合理化を図るとともに、行政事務・事業の整理等行政の合理化、能率化の積極的な推進により、定員の純減を可能な限り確保し、メリハリのある定員配置を実現します。
4 国家公務員の給与改定等に関する上記の取扱いの決定に際しては、その内容も踏まえ、地方公務員の給与改定について、各地方公共団体において、地方公務員法の趣旨に沿って適切な措置を講じるとともに、地方公共団体の定員についても、行政の合理化、能率化を図り、適正な定員管理の推進に取り組まれるよう期待いたします。
5 国家公務員の給与改定については、次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図ります。なお、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出することといたします。
6 なお、地方公共団体においても行財政改革の取組が進められているところです。各府省においては、地方公共団体に定員の増加を来し、人件費の累増をもたらすような施策を厳に抑制されるようお願いいたします。
資料4−公務員連絡会の声明
声 明
(1) 政府は、本日の第2回給与関係閣僚会議で本年の人事院勧告を勧告通り実施する方針を確認し、その後の臨時閣議で給与法改正法案、育児休業法改正法案と合わせ、正式に決定した。
これまで人事院勧告の取扱いについては、政府として取扱い方針を決定した後、給与法改正作業に着手し、改正法案の閣議決定、国会提出という手続きが取られてきたが、本年は取扱い方針の決定と同時に給与法改正法案等を閣議決定し、国会に提出するという異例の取扱いとなった。
公務員連絡会は、法案作成作業に当たっても十分な交渉・協議を求めてきたところであり、同時決定により改正法案の内容について十分な議論ができなかったことについては問題を残した。
(2) 異例の対応となったものの、人事院勧告及び意見の申出通り実施されることになったことは、公務員連絡会が、政府に対し人勧尊重の基本姿勢に立った方針を決定することを求め、二度の中央行動や要請ハガキ・文書送付行動などを積み重ね、連合及び公務労協とともに政府・与党対策を強力に行ってきた結果である。しかしながら、労働基本権制約のもとでその代償措置として当然に尊重されるべき人事院勧告の取扱いについて、勧告を超える給与の引下げが主張され、政府の方針決定がずれ込んだことは人勧制度の土台が大きく揺らいでいることの明白な証左であり、公務員の新たな賃金・労働条件決定制度の構築が急がれるものである。
(3) 人勧取扱い方針の閣議決定は、昨年は総選挙前に自公政権のもとで行われたことから、民主党を中心とする政権としては今回が初めてのことになった。公務員連絡会が問題としてきた、自公政権下における人事院への地域給与見直し要請や地方公務員給与の適正化要請に代えて、労働基本権制約のもとでの第三者機関の主体性と、地方自治体の労使による給与決定の自律性が尊重され、民主党を中心とする政権における対応として評価できるものである。
また、本年の取扱い方針では、「次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出することとし、交渉を通じた給与改定の実現を図る。なお、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する」ことを明記している。
労働基本権については、6月のILO総会で当時の細川厚生労働副大臣が「労働基本権を付与する方向で検討を加速し、来年の通常国会に法案を提出できるよう努力する」との考えを表明していたが、今回、政府の方針としてはじめて「自律的労使関係制度を措置」する具体的日程を閣議決定したことは、民主党を中心とする政権のもと、公務員の労働基本権問題の解決に向け、意義あるものとして評価する。
なお、国家公務員の人件費削減について、本日決定された方針に基づき、政府が法的措置の具体化に向けた検討を行うのであれば、公務員の賃金・労働条件に重大な影響を与えることから、民主党を中心とする政権との信頼関係を前提とした「合意」に基づく公務員連絡会との十分な交渉・協議が不可欠であることは指摘するまでもない。
(4) 第176臨時国会は、「ねじれ国会」のもと、野党からさらなる引下げを求める修正案が提出されることが想定され、政府原案通りの法案成立は予断を許さない極めて厳しい情勢にある。このため、公務員連絡会は、最終的な決着が付くまで国会段階での取組みを強力に推進していく。同時に、地方公務員給与について、給与水準の確保を基本に労使交渉による決着を求めてたたかい抜くこととする。また、独立行政法人等の確定闘争を含め、最後まで統一闘争態勢のもとでの取組みを進める。
(5) 総人件費削減政策のもとで、労働基本権制約の代償機能としての人事院勧告制度の制度的限界はいよいよ明らかである。公務員連絡会は、連合、公務労協に結集して、労働基本権の確立と労使交渉・労働協約による賃金・労働条件決定システム、すなわち国際労働基準を満たした公務員の自律的労使関係制度を構築するため、次期通常国会で関係法案の成立を目指し、不退転の決意でたたかい抜くものである。
さらに、景気の先行きが不透明な経済情勢のもと、国民生活の安定と安心を保障する良質な公共サービスの再構築に向けた取組みを進めていく。
2010年11月1日
公務員労働組合連絡会
以上