2011年度公務労協情報 32 2011年5月16日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

政府が「俸給・ボーナス支給額の1割カット」を提案−5/13
−公務員連絡会は地方公務員への影響遮断を確認させ、一律カット撤回と再提案を要求−

交渉に臨む公務員連絡会各構成組織委員長
 本日、政府は公務員連絡会に対し、国家公務員の給与について、「俸給・ボーナス支給額の1割をカットする」との給与引下げ提案を行った。この提案は、4月22日の公務員連絡会の2011春闘要求に対する回答交渉で、総務大臣が「国家公務員の給与引下げについては、具体案がまとまった段階で、よくご説明し、理解が得られるよう、話し合いたい」と答えたことを受けて行ったもので、政府側の代表として片山総務大臣が提案し、公務員連絡会側は棚村議長(国公連合委員長)をはじめ委員長クラス交渉委員が臨んだ。
 公務員連絡会側は、冒頭、一部のマスコミが「国公にあわせ地方交付税を減額する」などと報道したことに対し、地方公務員等への影響を遮断することが前提であることを大臣に確認させた上で、@交渉・協議、合意を基本とすること、A自律的労使関係制度や労働基本権を確立するための関係法案の国会提出が前提であること、などを約束させるとともに、提案内容の根拠と削減理由の明確で納得できる説明を迫りながら、一律カットの撤回と再提案を要求した。
 公務員連絡会は、今後、交渉体制を一層強化しながら、書記長クラス交渉委員による政府との交渉・協議を配置し、政府を追及していくことにしている。
片山総務大臣(中央)、鈴木副大臣(中央左)  総務大臣交渉の経過は次のとおり。

<総務大臣交渉の経過>
 交渉は、13時25分から総務省内で行われた。冒頭、棚村議長が、本日の一部の朝刊等で"国公、地公あわせた給与引下げ"の報道について、棚村議長は、「この間の議論は、国家公務員の総人件費削減についてであり、地方公務員については、これまで論議もしてきていない。片山総務大臣自身もこのような報道を不本意に思っていると思うが、国公の人件費削減の議論が地方公務員の給与に影響するというのでは約束違反であり、交渉に入ることはできない。大臣のこの問題の受け止め及び決意について明確な見解を伺いたい」と厳しく問い質した。
 これに対し、大臣は、「"地方公務員の給与引下げ検討"との報道があったが、政府の方針ではない。皆さんとのこれまでの話合いのなかでも、地方公務員についてその影響が及ぶことはないと約束してきた。地方公務員は、国家公務員と給与の決定方式が異なり、条例で決めることとなっており、それぞれの自治体で自主的に取り組まれているものである。今日までの私の考え方については、総理や閣僚会議で話してきており、本日の提案は政府の代表として行うものだ。官僚の中には、本日の報道の内容を主張する人もいるだろうが、政府の考え方は変わらない。情報統制しているわけではないので、様々な話が出てくることもあるだろうが、私は皆さんとの約束を果たしていく」との考えを明らかにした。
 さらに、徳永副議長(自治労委員長)は、地方公務員への影響について、「今後、仮に国家公務員の給与引下げについて合意した場合、政府として、地方交付税、義務教育国庫負担金を断じて削減しないという受け止めでよいか」と質したのに対し、片山総務大臣は「地方公務員も国家公務員と同様に給与引下げに応じろというつもりはないし、それに基づいた財政措置を考えていくつもりもない。政府としてこれまでの方針は変更しない」と回答し、地方公務員には影響させないことを約束した。
 公務員連絡会側は、この大臣の約束を確認し、本日の交渉に入ることとし、片山総務大臣から、政府を代表して、国家公務員給与引下げの具体的内容について、次の通り提案が行われた。 (1)政府は、現下の社会経済情勢や厳しい財政事情などを踏まえ、国家公務員の人件費の削減について、まずは、現在の人事院勧告制度の下では極めて異例ではあるが、自律的労使関係制度が措置されるまでの間においても、その移行を先取りする形で、給与の引き下げを内容とする法案を今通常国会に提出すべく検討を行ってきたところ。
(2) 先月の春闘要求に対する回答の場では、国家公務員の給与引き下げについては、具体案がまとまった段階で、よくご説明し、理解が得られるよう話し合いたい旨お伝えしたところであるが、本日、政府としての引下げの方針がまとまったのでお示しする。
(3)今回の給与引き下げについては、我が国は厳しい財政事情にあり、特に今般の東日本大震災への対処を考えれば、さらなる歳出削減は不可欠となっており、国家公務員の人件費についても例外ではないと考えていることから行うものである。
(4) このため、職員の皆さんの理解が得られるよう、話し合った上で、給与の引き下げを行うこととしたいと考えており、具体的には、平成25年度末までの間、俸給・ボーナス支給額の1割をカットすることを基本として、国家公務員の給与の引き下げを行うことについて、政府を代表して提案したい。
(5) 今回の給与引き下げは、職員のみなさんには大きな痛みを伴う措置ではある。震災対応を含め、日夜公務に精励していただいている中、大変心苦しく思うが、是非ともご理解いただき、ご協力をお願いしたいと考えている。

 提案に対し、棚村議長は、次の通り要求し、誠実に対応することを強く迫った。
(1) 第1は、今回の交渉に臨む総務大臣の姿勢として、公務員連絡会と誠実な交渉・協議を行って、合意を前提に法案を提出することを約束してもらいたいということだ。
(2)第2は、昨年の人事院勧告取扱いの閣議決定でも明確に指摘されているように、「自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図る」ことである。自律的労使関係制度の確立と労働基本権の回復を実現するための法案の国会提出、成立、施行を確実としなければならないということだ。したがって、仮にこの問題について合意した場合には、同日に法案を閣議決定、国会提出し、同時に成立させることを約束してもらいたい。
(3) 第3に、地方公務員への影響の遮断については冒頭で確認していただいたが、地方交付税及び義務教育国庫負担金等の予算措置等については、政府の責任として国家公務員の給与引下げとは関わりなく算定し、断じて削減等が行われることはないと理解する。
(4) 第4は、提案内容に関わって、どうしてこのような内容としたのか、あるいは給与カットの理由・必要性について、組合員が納得できる明確な説明をしてもらわないといけない。また、片山総務大臣は国家公務員の総人件費2割削減について、給与削減の具体化に合わせ全体像を示すということを国会で答弁されているが、給与引下げを先行させるのであれば、総人件費の削減の全体像の中で、今回の給与カットがどう位置付けられるのか明確にしてもらいたい。
(5) 第5に、この間、定員削減及び純減が取り組まれてきた中にあって、公務員労働者は東日本大震災への対応に全力で取り組んでおり、休日出勤を含めて超過勤務も大幅に増えている実態がある。今後、復興構想・計画に基づいて予算の2次補正等が行われ、引き続き全力を挙げた復興対策に取り組まなければならない。こういう状況の中で、これまでのような定員削減を行うことは困難であり、凍結すべきと考える。なお、必要な超勤予算については確保してもらいたい。
(6) 第6に、膨大な長期債務、財政悪化の責任は政治の側にある。しかし、東日本大震災への対処もある。一律カットの提案をいただいたが、職責に応じて負うべきであり、提案の一律カットは再考してもらいたい。とくに、若年層については、給与の絶対額が少ないことから特段の対応を求める。また、今回の給与カットを退職手当の算定に反映させることはやめてもらいたい。
 これに対し、片山総務大臣は、次のとおり回答し、残余の問題についてはこれからの交渉を通じて話し合っていくことを約束した。
(1) 国家公務員の給与引下げは極めて異例のことであり、できる限り皆さんの理解と納得が必要と考えている。できる限り真摯に対応し、皆さんと合意に達した上で法案を出せるよう努めていきたい。
(2) 自律的労使関係制度の確立と労働基本権の回復を実現するための法案と給与削減の問題は密接な関係にあることは十分認識しており、中野公務員制度担当大臣とも連携して、両法案を同時に提出し、成立させるよう政府全体として努力したい。
(3) 今回の提案はあくまで国家公務員の給与に関する提案である。地方公務員にも同様に削減を求めるつもりはない。地方自治に基づき、労使で真摯に話し合って決めるという給与決定原則に従うべきと考えている。昨年の人勧取扱いの閣議決定では地方公務員の給与への言及は整理したところであり、旧に復することのないようにしたい。

 最後に、棚村議長は、「本日の交渉におけるわれわれの主張をしっかりと受け止めていただき、再提案及びそのほかの課題について改めて交渉を行うこととし、その際、明確な回答をお願いしたい」と強く求め、本日の交渉を締めくくった。

以上