2011年度公務労協情報 38 2011年5月25日
公務公共サービス労働組合協議会

国公制度改革関連法案および独法見直しに関わり、園田政務官と交渉し政府の明確な回答求める−5/24
 公務労協は24日18時から、国家公務員制度改革関連法案に関わり、園田政務官と交渉を行った。これは、5月20日に推進本部事務局からの法案提示を受けて以降その問題点を質してきたが、さらに法案の閣議決定、国会提出に向け、4月5日の園田政務官との「全体像」をめぐる交渉で指摘した@国家公務員の争議権、A消防職員・刑事施設職員の団結権等、B地方公務員の労働基本権、C在籍専従制度の取扱い、D給与法等の法律事項と政令事項の振り分け、E実施時期の課題等について、政府の明確な回答を求めて行ったもの。また、独立行政法人の見直しについて、改革の第二弾としての制度・組織見直しの検討状況を質すとともに、独法における賃金・労働条件は労使交渉により決定されるものであることを十分踏まえ対応するよう求めた。
 交渉には、公務労協からは吉澤事務局長をはじめ各構成組織書記長らが出席した。

 冒頭、吉澤事務局長は、23日の片山総務大臣との交渉で国家公務員の給与削減提案を受け入れたことに触れ、「本来は自律的な労使関係制度のもとでしっかり交渉し合意すべきことだが、大臣も言及していたように、それを先取りする形で、きわめて異例な措置として合意した。それは労働基本権回復を確信したからこそである。この給与削減法案に対して、労使関係に係る法案が後送りされることは断じて許されない」と、自律的な労使関係制度の確立に向けた法案を給与削減法案と同時に扱い、政府の責任で必ず成立させるべきことを強調した。その上で4月5日の政務官交渉の際指摘した事項について、この間の交渉経過も踏まえ、下記の通り改めて要求し、政務官の見解を求めた。
(1) 消防職員への団結権の付与は連合会長自らも政府に主張してきた極めて重要な課題であり、法案の閣議決定を前に、いよいよ期限が限られている中、判断ではなく相当高度な場面での決断が必要で、大臣にもしっかり伝えてもらいたい。また、行刑施設職員の団結権については、近い将来に議論させてもらう。
(2) 争議権については、国家公務員労働関係法案の附則に検討規定を置き、「検討を行い、必要な措置を講ずる」としたことの重さを改めてお互いで認識し、検討するに当たってはこれまでの議論を踏襲し、政府が一方的に争議権の扱いについて決定するようなことがないようお願いする。
(3) 給与法等の法律事項と政令事項の振り分けについて、国家公務員法等一部改正法案の附則に検討規定を置き「検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」としているが、争議権同様、いつやるのか不明確である。この問題は自律的労使関係制度の根幹にかかわる課題であり、新たな労使関係制度の下でしっかり交渉させてもらいたい。
(4) 在籍専従について、認証された労働組合のみから構成される連合体については認証の有無に関わらず在籍専従できることとされたことの意義はきちんと受け止める一方、上部組織等の扱いについて、典型的な例として震災ボランティアの対応に見られるように、時代の変化により労働組合に求められているのは社会的役割であり、その点も十分踏まえた対応をお願いしたい。
(5) 消防職員への団結権付与の課題も含め地方公務員の労働基本権について、「全体像」では「国家公務員の労使関係制度に係る措置との整合性をもって、速やかに検討を進める」こととしており、現在、総務省を中心として具体的な検討が進められその中で決断していただけるものと理解している。総務省政務三役と連携し、さらに積極的な推進を図るよう政務官として対応していただきたい。

 これに対して園田政務官は、「長年、労働基本権の回復、自律的労使関係の確立について議論があったが、今回の法案は皆さんとも協議させていただきながら作り上げてきた法案だと認識している。震災の関係もあり、法案の提出時期が遅れていることを申し訳なく思うが、大臣も申し上げているように、速やかに成案を得て、必ず今国会に提出し、成立に向けて努力していきたい」と法案の提出・成立に向けた決意を述べた上で、以下の通り回答した。
(1) 行刑施設職員についても、今後しっかりと議論していかなければならないと考えている。
(2) 争議権については自律的労使関係制度がしっかり機能していることを見た上で、国民の理解の状況も勘案しつつ、皆さんとも議論をさせていただきながら、遅滞なく検討させていただきたい。
(3) 給与法等の法律事項と政令事項の振り分けについては、法案が成立すれば平成25年度から行われる本格的な中央交渉の重要なテーマになるものと考えており、その中でしっかりやっていただきたい。
(4) 在籍専従先について、法律上の位置づけは苦心させてもらったが、法律上の位置づけにない上部組織等の取扱いについては、上部組織の運動への参画という趣旨から整理されれば可能ではないかと考えている。
(5) 消防職員の団結権等をはじめ地方公務員の労働基本権については、片山大臣をはじめとする総務省政務三役においてしっかり検討いただいているものと承知しており、今後とも情報共有や連携を密にしながら進めさせていただく。

 園田政務官の回答を受け、森永国公連合書記長が「国家公務員の給与削減について、我々として極めて厳しい判断を下したことを重く受け止めて欲しい。したがって自律的労使関係に係る法案と給与削減法案の歩調をしっかり合わせて国会の議論を進めていただきたい」と再度強く訴えたのに対し、園田政務官は「しっかり受け止めさせていただく。この法律の重要さは身に染みて感じており、必ず成立するようしっかり努めていきたい」と改めて決意を述べた。

 また、吉澤事務局長は、独立行政法人の見直しについて次の通り質した。
(1) 昨年12月7日に閣議決定された「事務・事業の見直しの基本方針」を踏まえた見直しが進められる中、改革の第二弾として行われようとしている制度・組織の見直しについての現段階の検討状況はどうなっているのか。
(2) 「基本方針」の中で「国家公務員と比べて給与水準が高い法人は、給与水準の適正化に係る具体的な方策と数値目標を内容とする取組を着実に実施する」ことが求められていることについて、国家公務員の給与削減問題も踏まえて、独法の賃金・労働条件は各法人における自主的・自律的な労使交渉、合意により決定されたことが最優先されるべきであることを、政府全体としてしっかり受け止め対応すべきだ。
 これに対し園田政務官は、以下の通り回答した。
(1) 独法職員も原発への対応も含めて震災の復旧・復興に本当に一生懸命対応いただいており、見直し作業が法人に負担を与える恐れもあることから、事務局内部の整理は行っているが、ヒアリングや意見交換など対外的な検討は進んでいない。今後、状況を見ながら議論していくことになるが、皆さんと議論させていただきながら信頼関係のもと進めていきたい。
(2) 独法の賃金・労働条件の決定については、片山大臣が申し上げているように自律的な労使交渉が基本になることは当然である。一方、運営費も含め国民の税金が投入されているということもあり、国民にも理解が得られるよう説明責任をしっかり果たしていくことも必要である。
 園田政務官の回答に対し、公務労協側は再度「片山総務大臣も述べていた通り、独法では自律的な労使関係のもとでしっかり交渉がなされるべきで、そのことを財務当局も含め政府全体として確認いただきたい」と強調した。

 最後に、吉澤事務局長が「本日は政務官から誠意ある回答をいただいたが、約束通り、国家公務員制度改革関連法案の閣議決定前に中野公務員制度担当大臣から直接、回答いただくとともに、法案の成立、制度の実施に向けた決意を伺いたいので、よろしくお願いする」と要請し、この日の交渉を終えた。
 

以上