2011年度公務労協情報 40 2011年6月3日
公務公共サービス労働組合協議会

「国公制度改革法案」「国公給与特例法案」を閣議決定−6/3
−公務労協は、今後の取組みについての決意を表明−
 政府は本日開催した国家公務員制度改革推進本部会議で、非現業国家公務員への協約締結権の付与など自律的労使関係制度を確立する「国家公務員制度改革関連4法案」(以下、「4法案」という。)を本部決定し、その後の閣議で決定した。
 あわせて、公務員連絡会との交渉、合意に基づいた「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」についても閣議決定(資料1参照)し、菅総理大臣が東日本大震災各府省連絡会議(事務次官等で構成)で「国家公務員の給与に関する内閣総理大臣の談話」を発表した(資料2参照)。
 また、4法案の閣議決定に際して、総務省が昨日の民主党公務員制度改革PTに示した「地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方」(資料3参照)を公表した。その中で、地方公務員の労働基本権について「一般職の地方公務員に協約締結権を付与する」ことや、消防職員の団結権について「付与することを基本的な方向としつつ、必要な検討を進める」ことが明記された。これら法案は夕刻に国会に提出された。

 公務労協は、4法案が閣議決定されたことについて「自律的労使関係制度を措置する法案が、民主党を中心とする政権の下でまとめられたことは、まさに政権交代を強く意義づけるもの」であり、公務員の労使関係に「新たな扉を開くものとして、計り知れない歴史的意義を持つもの」と評価するとともに、「法案の成立に全力を挙げる」とする労働基本権確立・公務員制度改革対策本部見解(資料4参照)を公表した。
 また、連合においても事務局長談話(資料5参照)を発表した。

 公務労協は、労働基本権確立・公務員制度改革対策本部会議で、@4法案の早期成立をはかる、Aその際、国家公務員給与の削減に係る法案が先行して審議・採決されることが断じてないように対応する、B消防職員の団結権付与も含めた地方公務員の労働基本権等に係る法案の可及的速やかな策定・国会提出に向けた対策に全力を傾注するなど、今後の取組みについて確認した。

 閣議決定を受けて、今後、舞台は国会へ移されることとなり、1948年以来制約され続けてきた公務員の労働基本権と自律的労使関係の確立に向けた取組みは、いよいよ最終局面を迎える。公務労協は連合とともに法案の成立に向け全力を挙げていく。



(資料1)
国家公務員の給与減額支給措置について


平成23 年6月3日
閣議決定


 政府は、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成22 年11 月1日閣議決定)を踏まえ、人件費を削減するための措置について検討を進めてきたところであるが、我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み、一層の歳出の削減が不可欠であることから、国家公務員の給与について以下のとおり減額支給措置を講ずることとし、必要な法律案を今国会に提出する。

1 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25 年法律第95 号)の適用を受ける国家公務員の給与については、別紙1のとおり減額支給措置を講ずることとする。

2 特別職の職員の給与に関する法律(昭和24 年法律第252 号)の適用を受ける国家公務員の給与については、別紙2のとおり減額支給措置を講ずることとする。

3 検察官の給与については、裁判官の給与に準じることとされていることを踏まえつつ、1及び2の趣旨に沿った減額支給措置を講ずることとする。

4 防衛省の職員の給与については、1の趣旨に沿った減額支給措置を講ずることとする。ただし、自衛官(将・将補(一)を除く。)並びに自衛隊の部隊及び機関に勤務する事務官等については、施行の日から起算して6月を超えない範囲内で政令で定める期間まで給与減額支給措置を適用しない。

5 独立行政法人(総務省設置法(平成11 年法律第91 号)第4条第13 号に規定する独立行政法人をいう。)の役職員の給与については、法人の業務や運営のあり方等その性格に鑑み、法人の自律的・自主的な労使関係の中で、国家公務員の給与見直しの動向を見つつ、必要な措置を講ずるよう要請する。
 また、特殊法人等の役職員の給与についても、同様の考え方の下、必要な措置を講ずるよう要請するとともに、必要な指導を行うなど適切に対応する。


(別紙1)



一般職給与法適用対象者の給与減額支給措置要綱


T 俸給月額、俸給の特別調整額、期末手当、勤勉手当等の支給減額率
 1 俸給月額
@ 本省課室長相当職員以上(指定職、行(一)10〜7級)   ▲10%
A 本省課長補佐・係長相当職員(行(一)6〜3級)     ▲8%
B 係員(行(一)2、1級)                ▲5%
その他の俸給表適用職員については、行(一)に準じた支給減額率
※1 平成17 年給与法改正法附則第11 条の規定による俸給(給与構造改革に伴う経過措置額)についても、俸給月額と同率で減額
※2 55歳超職員の給与減額支給措置(▲1.5%)適用後の俸給月額等についても、同率で減額
2 俸給の特別調整額(管理職手当)           一律▲10%
3 期末手当及び勤勉手当                一律▲10%
4 委員、顧問、参与等の日当              一律▲10%

U 俸給月額に連動する手当等の減額支給
1 地域手当等の俸給月額に連動する手当(期末手当及び勤勉手当を除く。)の月額は、減額後の俸給月額等の月額により算出
2 超過勤務手当等の算出基礎となる勤務1時間当たりの給与額や休職者の給与は、減額後の俸給月額等の月額により算出
※ 扶養手当、住居手当等の俸給月額に連動しない手当については、減額の対象外

V 給与減額支給措置の期間
法律の公布の日の翌々月の初日から平成26 年3月31日まで

W その他
期間業務職員等の非常勤職員については、常勤職員の給与との権衡を考慮し、予算の範囲内で給与を支給することとされているが、常勤職員より相当程度給与水準が低い場合には、減額を行わないことを基本とする運用を行う。


(別紙2)



特別職給与法適用対象者の給与減額支給措置要綱


T 俸給月額及び期末手当の支給減額率等
1 俸給月額
@ 内閣総理大臣                      ▲30%
A 国務大臣クラス・副大臣クラス              ▲20%
B 大臣政務官クラス、常勤の委員長・委員、
  大公使等(A以外の者)                 ▲10%
※ 地域手当の月額は、減額後の俸給月額により算出

2 期末手当
@ 内閣総理大臣、国務大臣クラス、副大臣クラス
俸給月額の支給減額率と同じ
A @以外の者                     一律▲10%

3 非常勤の委員等の日当等               一律▲10%

4 秘書官については、一般職給与法適用対象者に準じて措置


U 給与減額支給措置の期間
法律の公布の日の翌々月の初日から平成26 年3月31 日まで



(資料2)
国家公務員の給与に関する内閣総理大臣の談話

平成23年6月3日


 本日、国家公務員の給与減額支給措置について閣議決定をしました。

 国家公務員の人件費については、昨年11 月の給与取扱方針の閣議決定を踏まえ、給与の引下げを内容とする法案の検討を進めてきました。我が国の財政事情は、総債務残高が主要先進国中最悪の水準であるなど極めて厳しい状況であり、さらに3月11 日に発生した未曾有の国難とも言うべき東日本大震災に対処するため、一層の歳出削減が不可欠のものとなっています。

 今回の震災への対応を含め、国家公務員の諸君が日夜公務に精励していることは高く評価しています。しかしながら、大変心苦しい思いはありますが、現在の厳しい状況を考えれば、徹底的な歳出見直しの一環として、国家公務員の給与費についても削減せざるを得ないと考えています。

 このため、現在の人事院勧告制度の下では極めて異例の措置でありますが、職員団体と真摯に話合いを行った上で今回の給与減額支給措置を決定しました。また、本日、この減額措置のための所要の法案とともに自律的労使関係制度を措置するための法案を閣議決定したところであり、政府として両法案の成立を目指します。

 今回の措置は、国家公務員の給与費が無駄遣いであるからとか国家公務員の働きぶりへの評価が低いからということでは決してありません。現在の厳しい状況への対処の一つとしてやむを得ず行うものであります。国家公務員の諸君においては、我が国の置かれた厳しい状況に鑑み、今回の措置がやむを得ない事情によるものであることを理解いただき、引き続き震災からの復興を始めとした職務に全力で取り組むことでより一層国民の信頼を勝ち得るようお願いします。



(資料3)
地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方

平成23年6月2日
総   務   省


T 趣旨
  国家公務員に係る自律的労使関係制度の措置を踏まえ、地方公務員についても新たな労使関係制度を設けることとする。

U 制度の概要

1 協約締結権を付与する職員の範囲
一般職の地方公務員(ただし、団結権を制限される職員、重要な行政上の決定を行う職員及び地方公営企業等に勤務する職員等を除く。以下「職員」という。)に協約締結権を付与する。

2 団体交渉の当事者
(1)労働側の当事者 ○ 労働組合は、職員が主体となって自主的にその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体とする。
○ 都道府県労働委員会に認証された労働組合は、団体協約の締結、不当労働行為の救済申立て、あっせん・調停・仲裁手続への参加、職員の在籍専従等が可能となる。
○ 認証の要件は、規約が法定の要件を満たすこと、構成員の過半数が同一地方公共団体に属する職員であること等とする。

(2)使用者側の当事者
地方公共団体の当局は、引き続き交渉事項について適法に管理し、又は決定することのできる者とする。

3 団体交渉等
(1)認証された労働組合と地方公共団体の当局は、下記の事項について団体交渉を行い、団体協約を締結できるものとする。
  @ 給料その他の給与、勤務時間、休憩、休日及び休暇に関する事項
  A 職員の昇任、降任、転任、休職、免職及び懲戒の基準に関する事項
  B 職員の保健、安全保持及び災害補償に関する事項
  C @〜Bに掲げるもののほか、職員の勤務条件に関する事項
  D 団体交渉の手続その他の労働組合と地方公共団体の当局との間の労使関係に関する事項

(2)地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項は、引き続き団体交渉の対象とすることができないこととする。

(3)現行地方公務員法において規定されている予備交渉の実施、団体交渉の打ち切り、勤務時間中の適法な団体交渉の実施等については、引き続き法定する。
なお、職員が勤務時間中の適法な団体交渉に参加する際の手続を整備する。

(4)地方公共団体の当局は、団体交渉の議事の概要及び団体協約を公表しなければならないこととする。

4 不当労働行為の禁止
(1)地方公共団体の当局が労働組合の構成員であること等を理由として職員に対する不利益な取扱いをすること、認証された労働組合との団体交渉を正当な理由がなく拒否すること、労働組合の運営等に対して支配介入・経費援助をすること等の行為を禁止する。

(2)不当労働行為があった場合の都道府県労働委員会による救済制度を設ける。

5 勤務条件の決定原則等
(1)情勢適応の原則等、現行地方公務員法において規定されている勤務条件の決定原則については、引き続き法定する。

(2)職員に協約締結権を付与することに伴い、勤務条件に関する人事委員会勧告制度を廃止する。

(3)住民への説明責任を果たし、住民の理解を得る観点から、民間の給与等の実態を調査・把握する。調査・把握する主体等については更に検討を進める。

6 勤務条件の決定方法及び団体協約の効力
(1)職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、引き続き条例で定めることとする。

(2)勤務条件を定める条例の制定改廃を要する内容の団体協約を締結した場合には、地方公共団体の長は条例案の議会への提出義務を負うこととする。(ただし、地方公共団体の長以外の機関が団体協約を締結する場合には当該地方公共団体の長との事前調整を行う仕組みを設ける。)

(3)勤務条件を定める規則等の制定改廃を要する内容の団体協約を締結した場合には、地方公共団体の長その他の機関等が規則等の制定改廃の義務を負うこととする。

7 交渉不調の場合の調整システム
  認証された労働組合と権限ある地方公共団体の当局の間に発生した紛争であって団体協約を締結することができる事項に係るものについて、都道府県労働委員会によるあっせん、調停及び仲裁の制度を設ける。

8 人事行政の公正の確保
  勤務条件に関する措置要求、不利益処分に関する不服申立てその他の職員の苦情の処理に関する事務等については、引き続き第三者機関が所掌する。
 

V 消防職員の団結権
  消防職員の団結権については、付与することを基本的な方向としつつ、必要な検討を進める。



(資料4)

国家公務員制度改革関連法案の閣議決定に対する見解


1.本日、政府は国家公務員制度改革関連4法案(以下、「4法案」という。)を閣議決定した。法案の内容は、自律的労使関係制度(非現業国家公務員への労働協約締結権の付与、人事院勧告制度の廃止、公務員庁の設置等)の確立のほか、幹部職員人事の一元管理や退職管理の一層の適正化などを措置するものである。

2.労働基本権は、公務員労働者にも当然に保障されなければならない憲法上の権利であり、自らの労働条件は労使交渉を通じて自律的に決定されなければならない。しかしながら、わが国公務員の労働基本権は1948年以来大きく制約され、その回復は公務員労働者全体の悲願であり、公務労協もその設立以来、連合に結集し全力を挙げて取り組みを進めてきた。
 また、格差社会が深刻化する中で、公務労協は良い社会をつくる公共サービスキャンペーンを展開し、公共サービス基本法の制定を実現してきた。
 労働基本権の確立は、労使が直接対等平等の立場で労働条件を決定するという自律的労使関係の構築のみならず、国民が求める良質な公共サービスを実現するための基盤となるものである。  自律的労使関係制度を措置するこの法案が、民主党を中心とする政権の下でまとめられたことは、まさに政権交代を強く意義づけるものであり、1948年以降制約され続けてきた公務員労働者の労働基本権と自律的労使関係の確立に向け、新たな扉を開くものとして、計り知れない歴史的意義を持つものである。

3.一方、争議権については、国家公務員労働関係法案の附則で「検討を行い、必要な措置を講ずる」と、給与等についての法律事項と政令事項の振り分けについては、国家公務員法等一部改正法案の附則で「検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされ、今後の課題として残されている。これらの課題については、新たな制度の下での交渉・協議を通じて、争議権の早期付与などわれわれの要求が実現するよう全力を挙げて取り組んでいかなければならない。

4.消防職員の団結権を否認している現行制度は、結社の自由を否定した組合権の重大な侵害であり、まさに人権問題である。また、ILOにおいても、最も関心の高い問題である。その意味で、民主党公務員制度改革PTに対し総務省が提出した「地方公務員の労使関係制度に係る基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)において、「付与することを基本的な方向としつつ、必要な検討を進める」ということにとどまっているのは極めて不十分である。政府が即刻、付与を明言するよう重大な覚悟を持って追求する。

5.地方公務員の労働基本権については、今回法案化には至らなかったが、基本的考え方で「一般職の地方公務員に協約締結権を付与する」ことが明記されたことにより、国・地方の公務員の労働基本権について全体のパッケージとして改革することが確認されたものと受け止めるものである。

6.以上のことから、悲願であった公務員の労働基本権、自律的労使関係の確立に向けた取組みは、民主党を中心とする現政権の下、いよいよ最終局面を迎える。公務労協は連合とともに法案の成立に全力を挙げることとする。

2011年6月3日

公務公共サービス労働組合協議会
労働基本権確立・公務員制度改革対策本部




(資料5)

2011年6月3日


国家公務員制度改革関連法案等の閣議決定に対する談話


日本労働組合総連合会
事務局長 南雲 弘行



1.政府は3日、国家公務員制度改革推進本部会議での決定を受けて、国家公務員制度改革関連四法案と国家公務員の給与を減額する国家公務員給与の臨時特例に関する法律案等を閣議決定した。
 連合は、公務員労働者の労働基本権回復を最重要課題の一つとして政策要求に掲げ、国際労働運動と連携したILOへの提訴と累次の勧告を引き出し、国内外でその実現を目指して取り組んできた。本日閣議決定された自律的労使関係制度の措置内容は労働基本権回復に向けた可能性を開く歴史的な一歩であり、これまでの取り組みと政権交代の結果として評価する。

2.公務員制度改革関連法案は、@幹部人事の一元管理その他人事制度改革、A退職管理の一層の適正化、B自律的労使関係制度の措置、を主内容とするものである。積年の懸案となっている自律的労使関係制度については、非現業国家公務員への協約締結権の付与、人事院及び人事院勧告制度の廃止、公務員庁の設置などを規定している。また、地方公務員の労働基本権のあり方については国家公務員に準じて行うこととしており、消防職員の団結権のあり方について、所管する総務省は「付与することを基本的な方向としつつ、必要な検討を進める」との見解を表明した。

3. しかし、基本的な労働条件である賃金・勤務時間などに関して、法律事項と政令事項の振り分け(交渉事項の範囲)は「検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」(法案附則)と曖昧になっている上に、消防職員の団結権についても政府として付与するとの明確な意志が表明されていないこと、争議権についても「検討を行い必要な措置を講ずる」(法案附則)とされて引き続き制約下に置かれており、国際労働基準を満たした労使関係制度確立のためには取り組みを強力に継続しなければならない。
公務員制度改革関連法案と同時に決定された国家公務員の給与を減額する国家公務員給与の臨時特例に関する法律案は、「人事院勧告制度の下では極めて異例であるが、自律的労使関係制度への移行を先取りする形で職員団体の理解をうる」との総理大臣見解のもとで、基本権付与の法案と特例法案の同時提出、同時成立との労使合意が前提とされている。

4.健全な労使関係には信義則が不可欠であり、政府・与党には労使の合意事項を誠実に履行する極めて重い責任がある。連合は、政府として早急に消防職員の団結権付与を明確にすることを求め、民主的公務員制度と労働基本権の確立のために引き続き全力で取り組みを進めていく。


以上