公務労協は、6月6日、東京・日本教育会館において社会保障学習会を開催した。この学習会は、被用者年金一元化を含む社会保障制度と税の抜本改革の必要性が高まっている情勢を踏まえ、税と社会保障の一体改革をめぐる検討状況と課題について、共通認識を醸成することを目的に行ったもの。
学習会には、全国から約500人が参加、冒頭、主催者を代表して、森永栄・公務労協社会保障専門委員長(国公連合書記長)が、「税と社会保障の一体改革についての政府の取りまとめが最終段階にあるなかで、労働組合としてどのような点を発信をしていかなければならないかについて、本日の集会を通じて意志統一を図る場としていただきたい」と挨拶し、学習会をスタートした。
はじめに、小島茂・連合総合政策局長が社会保障制度と税制の一体改革の実現に向けた連合の考え方を提起した。連合がめざす社会と社会保障の姿として、@ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)政策の推進、A「人間の安全保障」と社会保障の機能強化、B積極的社会保障政策と積極的雇用政策の連携、C全世代支援型の社会保障体系の構築、D社会連帯を基礎に社会保障の安定財源の確保、を図る必要があり、またこれらと整合性のとれた再分配機能の強化や地方税体系の確立など税財制改革が必要であると指摘した。
続いて、民主党「社会保障と税の抜本調査会」事務局次長を務める武内則男・参議院議員が、党の調査会における議論経過と到達点について報告した。報告の中で、武内議員は、調査会での議論の結果、党の社会保障制度改革案のなかに、社会保障の国・地方の役割分担について「基礎自治体をはじめとする地方自治体が、自らが持つ資源を十分に活かし、住民に対してワンストップサービスを含む質の高い社会サービスを効率的に提供し、また助け合いの地域社会の基盤を強化できるよう、国は財政基盤の安定化、柔軟なルールの選定などを進める必要がある」との考え方を示したことを明らかにした。さらに、医療、介護、年金のうち、年金を除く社会保障サービスは地方自治体が提供しナショナルミニマムを守っている実態を踏まえ、地方自治体として税財源を確保していくことの重要性を訴えた。
その後、駒村康平・慶応大学教授が、「税と社会保障の一体改革を検討する「集中検討会議」の検討状況と今後の課題」と題して講演を行った。
駒村教授は、人口減少・高齢・単身化社会の進展、グローバル経済への対応が求められるという複雑困難な社会のなかにおいて、社会保障改革の議論をめぐっては既得権益を守ろうとする人との利害対立が生じるが、社会保障制度をこれ以上悪化させないように将来への展望をひらく改革を実行しなければならない、と述べた。具体的には、社会保障の「機能強化」と「効率化」、社会保障制度の検討にあたっては、現物給付、雇用対策、税制も含めた横断的な視点が必要であり、とりわけ年金については一元的な制度、最低保障機能、財政的に安定した制度という基本的な方向性を確立すべき、と指摘した。
最後に、吉澤伸夫・公務労協事務局長が「税と社会保障制度の一体改革は、これからが政治的、社会的、国民的に大議論になる。公務労協は、連合のリーダーシップの下に結集し、社会保障を受ける国民的な視点のみならず、社会保障の運営に従事する公務員としての視点もしっかりと持ち、それらの議論に対応していかなければならない。また、厚生年金と共済年金の両制度における整合という観点で法案化され廃案となった被用者年金一元化について、課題が継続されているということから今後どうあるべきか、しっかりとした議論のもとで方針を確定し、皆さんとともに取り組んでいきたい」とまとめ、学習会を締めくくった。
以上