公務員連絡会地公部会は、10日11時30分から、2011年民間給与実態調査について、全国人事委員会連合会に対する要請を行った。
公務員連絡会側は、阿部地公部会議長(都市交委員長)、岡本企画調整代表(自治労書記長)、藤川地公部会事務局長、地公部会幹事が出席し、全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、都道府県人事委員会のブロック代表および政令市の代表者が対応した。
冒頭、阿部地公部会議長は、要請書(別紙)を手交し、以下の通り要請の趣旨を述べた。
(1) 公務員の賃金決定制度を巡る状況は、6月3日に「国家公務員制度改革関連法案」「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」が閣議決定されたことなどによって、半世紀以上にわたる人事院勧告による賃金決定制度から大きく変わろうとしている。地方公務員を含む具体的な制度については、これからの協議によるが、両法案が、使用者である政府と労働組合である公務員連絡会との合意、約束である以上、必ず成立すると確信している。
(2) 東日本大震災によって日本の経済は大変厳しい状況になっている。このような状況下で人事委員会の民間調査が行われるわけで、地公部会としては「本来は自律的労使関係制度の下、労使交渉で賃金決定がなされるべきであるが、労働基本権の制約が解消されていない中で、代償機関である人事委員会の調査は当然であり、その内容は精確なものでなければならない」と考える。また、今回の国家公務員の臨時特例措置による削減以前から、地方自治体の6割近くは独自給与削減を実施していることなどを十分加味し、調査や勧告するに当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づく対応を強く要請する。なお、今回の国家公務員の給与カットに追随した勧告を行うことは、人事委員会勧告制度の十全の機能、この間の政府と組合との交渉・協議の合意を否定するものであり、断じて認められないことも申し添えておきたい。
続いて、藤川地公部会事務局長が要請書の主な課題について説明し、全人連としての努力を求めた。
こうした地公部会の要請に対し、関谷全人連会長は以下の通り回答した。
<全人連会長回答>
平成23年6月10日
ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
早速、全国の人事委員会にお伝えします。
本年は、例年にない様々な状況が生じております。広範な地域に甚大な被害をもたらした東日本大震災は、発生から3ヶ月ほど経過した現在も、依然、社会生活や経済活動に大きな影響を及ぼしております。また、公務員制度改革や国家公務員の給与に関する動きをめぐって、これまで以上に活発な議論が行われております。
さて、震災後の景気について、政府の月例経済報告は、「東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている」とし、先行きについても、「当面は東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれる」として、厳しい状況との認識を示しております。
また、厚生労働省が発表した4月の毎月勤労統計調査の速報値では、一人平均の現金給与総額は、前年同月比で1.4%のマイナスとなっており、震災による民間賃金への影響が推測されます。
毎年、各人事委員会が人事院と共同で行っている民間給与実態調査につきましては、震災の影響により、当初予定していた5月1日からの開始は見送ったところですが、被害が甚大であった岩手県、宮城県、福島県及び仙台市の人事委員会を除いて、現在、6月下旬から8月上旬までの調査期間での実施へ向け、準備を進めているところです。例年と異なる日程ではございますが、本年も引き続き民間給与の水準を適切に把握し、公務員の勤務条件が社会情勢に適応した水準となるよう、努めてまいります。
本日、要請をいただいた個々の内容につきましては、各人事委員会において、調査の結果や各自治体の実情等も踏まえながら、本年の勧告へ向け、検討を行っていくことになることと思います。
公務員の給与を取り巻く環境は大変厳しい状況にありますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしてまいります。
また、公務員制度改革や、高齢期における雇用問題など、公務員の人事給与制度に関する動向につきましては、全人連といたしましても、引き続き適切に対応していきたいと考えております。
全人連は、今後も、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、各人事委員会や人事院などと十分な意見交換に努めてまいります。
(別紙) 全人連への要請書
2011年6月10日
全国人事委員会連合会
会 長 関 谷 保 夫 様
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 阿 部 卓 弥
民間給与実態調査に関わる要請書
貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
東日本大震災が日本経済に与える影響が深刻化する中での2011春季生活闘争は、交渉を中断・延期せざるを得なかった組合や、統一闘争を解除した産別もあり、3月のヤマ場での回答引出しに大きな影響を与えました。3月末から4月までに回答を引き出した組合数やその水準は昨年を上回る結果となっているものの、全体としては、賃金カーブ維持分を確保するに止まっています。
6月3日、国家公務員の給与減額措置についての法案が閣議決定されました。この措置は、我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み、現行制度の下での極めて異例の措置です。
各人事委員会におかれましては、国家公務員の給与引下げは、あくまで臨時的、特例的なものであることを十分に認識され、公民給与比較方法を通じて民間賃金実態を正確に把握し、労働基本権制約の代償としての人事委員会勧告制度を十全に機能させることが極めて重要な課題となっています。
貴職におかれましては、人事委員会の使命を十分認識され、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。
記
1.民間賃金実態に基づき公民較差を精確に把握し、人事委委員会勧告制度の下で地方公務員労働者のあるべき賃金を勧告すること。当面、現行の比較企業規模を堅持すること。また、一時金の公民比較は、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
2.各人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。
3.諸手当の改善については、地域の実情を踏まえつつ、組合との十分な交渉・協議に基づくこと。
4.臨時・非常勤職員の処遇改善に関する指針を示すこと。
5.公立学校教職員の給与について、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成、提示すること。また、作成に当たっては、関係組合との交渉・協議、合意のもと進めること。
以上