人事院は、本年の民間給与実態調査に関する方針が固まったとして、公務員連絡会・労働条件専門委員会にその骨格を提示した。
この民間給与実態調査は、本年は東日本大震災の影響を踏まえ、例年と比べおおよそ2か月遅れとなる6月24日から8月10日までの間に実施することが明らかにされていたが(2011年度公務労協情報No35参照)、このほどその内容が示されたもの。
冒頭、人事院の平野参事官は、次のとおり基本的な骨格を明らかにした。
1.調査期間については、6月24日(金)〜8月10日(水)の48日間(昨年は49日間)。
2.調査対象事業所は、企業規模50人以上で、事業所規模50人以上とする母集団約47,500事業所(昨年は約51,000事業所)から抽出した約10,500事業所(昨年は約11,100事業所)。カバー率は昨年とほぼ同水準で全体で6割を超える程度である。
3.調査方法は、人事院と、岩手、宮城、福島の各県を除く44都道府県、仙台市を除く18政令指定都市、特別区、熊本市、和歌山市の65人事委員会が分担し、職員が直接事業所を訪問して調査を行う。調査員は、約1,100人(昨年は1,200人)である。
4.調査の内容は以下の通り。
(1) 事業所単位で行う調査事項
@賞与及び臨時給与の支給総額
A毎月きまって支給する給与の支給総額
@、Aに関わって、ボーナスの民間との比較の基礎として、賞与及び月例給の支給状況
B本年の給与改定等の状況・・ベース改定、定期昇給の状況、賞与の支給状況等
C家族手当・住宅手当・通勤手当の支給状況
(住宅手当については、支給額の決定要素について調査することとし、通勤手当については、交通用具使用者に対する手当を距離段階別定額制をとった場合の支給額等を調査する)
D時間外労働の割増賃金率の状況
(月45時間超60時間以下の場合のみ調べる)
E高齢者雇用施策の状況・・・定年制度の状況、定年前の給与減額の状況
(段階的定年延長について意見の申出を行うこととしていることから、昨年に引き続き従業員別に行う調査において、60歳を超える従業員(再雇用者等)の給与についても調査する)
F雇用調整の状況・・・・・・平成23年1月以降における措置の状況、4月分給与の減額の状況等
(昨年同様、ワークシェアリング、賃金カットを含めて調べるほか、今年度については5月以降に新たに雇用調整を実施する予定があるかどうかも調査する)
(2) 従業員別に行う調査事項(調査職種78、うち初任給関係19)
月例給の民間との比較の基礎として、年齢、学歴等従業員の属性とその4月分所定内給与月額(4月分のきまって支給する給与総額と、そのうちの時間外手当額、通勤手当額)
(初任給については、昨年に引き続き総合職、一般職に分けて調べる)
これに対して、公務員連絡会側は、次の通り、人事院の見解を質した。
(1) 本年は東日本大震災の影響で実施時期が遅れることに加え、岩手、宮城、福島については調査を行わないということであり、いま説明があったように調査対象事業所数も減ることになる。またさらに東京電力の計画停電や部品の供給が滞ったことによる休業や操業短縮も少なくなかったと考えられる。そういう意味で、本年の調査結果については、例年以上に慎重に扱う必要がある。また、定年延長の議論もあることから、調査結果については途中段階を含めて前広に説明してもらいたい。
(2) 高齢者の雇用施策の実施状況については、簡素化するものの昨年に引き続いて調査するとのことである。昨年は、詳細な調査を行っており、定年延長に向けて調査結果を含めて交渉・協議するよう求めてきたが、今改めて昨年の調査内容を確認してみると、その結果が十分に示されていない。定年延長に向けての議論では、昨年、今年の調査結果を丁寧に示しながら議論することを改めて求めておきたい。
(3) 月45時間超60時間以下の時間外の割増率については、昨年からの宿題として調査するということだが、公務員連絡会としては、あわせて超勤代休時間の調査もお願いしてきたところであり、本年行わないことについて残念だということを申し上げておく。なお、連合の調査では設けたのは7.7%で設けていないところが83.5%という割合になっている。
(4) 通勤手当については、手当対象外の新幹線や高速バスを利用し、差額を自己負担しているという職員もおり、遠距離通勤に対する補填を希望する声も多い。本年は交通用具使用者について調査するとのことだが、遠距離通勤者の手当の支給状況についても検討してもらいたい。
これらに対し、平野参事官は次の通り答えた。
(1) 調査結果について、本年は震災の関係で調査時期が遅れ、8月10日まで調査をしていることからすれば、早期の公表は厳しいと思う。皆さんの要望の趣旨は承知しているが、ご理解いただきたい。
(2) 高齢者の雇用施策の実施状況については、必要に応じてお示しできるよう努めたい。
(3) 通勤手当について、遠距離通勤者に対する補填の要望は聞いているが、本年度の調査は交通用具使用者の通勤手当のみを調査することとしている。公共交通機関を利用する職員のうち99.5%くらいの割合で手当の範囲内でカバーできており、これらの要望は数としては多くない。しかし、家族や健康を理由に、通勤可能な範囲で異動を希望する職員の声もあるので、今後はこれらの意見も念頭において検討したい。
最後に公務員連絡会は「本年は大地震の影響もあり、2か月遅れとなり、調査結果についてもどのようなものになるか予想が付かないところもある。そういう意味で、調査結果については、慎重に扱っていただき、前広に説明をお願いしたい」と申し入れ、交渉を終えた。
以上