人事院は、本日11時過ぎに、内閣と国会に対して、@月例給の899円、0.23%引下げや現給保障を来年度から2年かけて廃止するなどの給与に関する報告・勧告、A段階的な定年延長の実施に向けた意見の申出、B国家公務員制度改革関連法案に関する論点や国家公務員制度改革基本法に定める課題など国家公務員制度改革に関する報告を行った。また、「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」について改めて人事院の考えを報告している。
公務員連絡会は、これを受けて、@国家公務員給与については、本来の労使関係を先取った政府との間で決着しているにも関わらず、その労使合意とその意義をも無視する形で給与勧告を強行したことは極めて遺憾である、A定年延長実施に向けた意見の申出については、雇用と年金を接続する方法としては最も相応しい方法であり、国、地方ともに年金の支給開始年齢の繰り延べに遅れることなく定年延長を実現しなければならない、B本来あるべき自律的労使関係を実現すべく関連法案の成立に向け全力を挙げるとともに、公共サービス基本法の活用や公共サービス基本条例制定運動を中心に、国民生活の安心と安全を確保する公共サービスの再構築に向けた取組みを進めていく、などを内容とをとする声明(資料1)を発した。
また、29日に開催した代表者会議で、本日の人事院勧告等を踏まえ、@全職場での時間外職場集会を中心とした第4次全国統一行動を3日を中心に実施し、意思統一を図り、今後の取組みに結びつけていくこと、A政府に対し(ア)給与改定勧告を実施しないこと(イ)地方公務員の給与については各自治体の労使交渉を尊重すること(ウ)定年延長の実施に向け法案策定と国会提出を速やかに行うことなどを要求し、その実現を迫ること、B国家公務員制度改革関連四法案の成立と国に遅れることなく消防職員の団結権付与を含んだ地方公務員の自律的労使関係制度の確立に向け全力で取り組むこと、などを確認した。
なお、連合においても2011人事院勧告について、資料2の通り事務局長談話を発している。
資料1−公務員連絡会の声明
声 明
(1) 人事院は、本日、月例給を899円、0.23%引き下げるほか、給与構造改革の現給保障について来年度から2年間で廃止し、一時金については当然引上げになる調査結果であるにもかかわらず、恣意的な判断に基づき改定を見送るとの本年の給与勧告・報告と、雇用と年金を接続するための段階的定年延長の実施に向けた意見の申出を行った。
(2) 本年5月には、政府から国家公務員給与の引下げ提案があり、公務員連絡会は真摯に政府と向き合って交渉を積み重ね、財政事情や大震災などわが国を取り巻く極めて厳しい環境の下、「日本の再生のために被災者・被災地とともに歩む」決意を持って、2013年度末までの間、月例給与を5〜10%、一時金を10%それぞれ引き下げることで合意し、国会に法案が提出された。この労使交渉・合意に際し、政府は「人事院勧告制度は、本来労使交渉で給与額や勤務条件を決めるという原則が制約されていることに伴う代償措置である。今回、本来の姿を先取りした形で、交渉を行っており、そのことの意味は相当重い。労使交渉により給与改定が行われた場合には、それを踏まえて対応していきたい」と約束した。また、政府は、地方公務員の給与について、財政上の措置を含めて、国家公務員給与引下げの影響を遮断することを明確に確認した。
本年の取組みに当たって、われわれは、労使合意に基づく国家公務員給与の臨時特例法案が国会に提出されていることを踏まえ、人事院に対し、@民間給与実態調査結果等に基づく給与改定勧告を行わないこと、A超勤縮減やメンタルヘルス対策の強化など賃金以外の労働条件の改善を図ること、B段階的定年延長の意見の申出を行うこと、を重点要求課題に設定し、人事院交渉を強化し、公共サービスキャンペーン、公務員制度改革の取組みとも連携した闘いを進めてきた。
(3) 人事院が、本日、労使合意とその意義をも無視する形で、給与改定勧告を強行したことは、極めて遺憾である。人事院勧告制度を廃止し、公務の労使関係制度を抜本的に改める関連法案が国会に上程される一方、深刻な厳しい財政事情や東日本大震災及び福島第一原発事故という、わが国が未曾有の危機的状況にある中で、従来通り較差を埋める月例給与引下げを勧告しつつ、一時金については当然引上げとなる調査結果を恣意的に判断し改定を見送った人事院の姿勢は自己保身に他ならず、厳しく批判されなければならない。
いずれにしても国家公務員給与については、本来の労使関係を先取った政府との間で決着しており、政府に対し、労使合意における約束を踏まえ、この勧告を実施しないよう求めるものである。また、総人件費削減に関わる定員削減、退職手当・共済の検討、東日本大震災対応を含めた超勤予算の確保に対しても、取組みを強化していかなければならない。
(4) 段階的な定年延長を実施するための意見の申出について、人事院は昨年中に行うことを約束していたのであり、本年となったことについては遅きに失したと言わざるを得ないが、定年延長は当然のことであり、われわれの粘り強い取組みの成果である。本格的な高齢化社会に移行していく中で、公務員労働者がその能力を十分に発揮し、わが国が直面している困難な諸課題について国民の期待に応えられるよう取り組んで行くためには、雇用と年金を接続する方法としては定年延長が最も相応しい方法である。
60歳超の勤務に対しては、給与水準が大幅引下げとなるなど公務員にとって厳しい内容が含まれ不満が残るが、これを今回の取組みの到達点と受け止め、公務をめぐる極めて厳しい環境の下で、国、地方ともに年金の支給開始年齢の繰り延べに遅れることなく、定年延長を実現していかなければならない。
(5) 地方公務員の給与についての各人事委員会の勧告はこれからであり、あるべき地方公務員の賃金を勧告するよう取組みを強化するとともに、国の取扱いから切り離すことが政府との約束であり、予算編成における地方交付税・義務教育費国庫負担金等の取組みに備えていく必要がある。
また、これから本格化する独立行政法人、政府関係法人等の闘いにおいても統一闘争態勢を堅持した取組みを進めることとする。
さらに、地域主権改革と国の出先機関改革、独立行政法人改革、特別会計の見直し、そして来年度予算の編成など、公務員の雇用や労働条件を直接左右する重要な課題が山積している。
われわれは、民主党を中心とした政権との間において、引き続き緊張と信頼に基づく労使関係を追求するとともに、雇用と労働条件を確保する立場で積極的な取組みを推進する決意である。
(6) 民主党を中心とした政権の下で、労使合意に基づいて国家公務員給与を削減するための法案とともに、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を廃止して、自律的労使関係制度を確立するための国家公務員制度改革関連四法案が国会に上程されている。地方公務員についても、消防職員に対する団結権の付与を含めた自律的労使関係制度を国と同時に措置させるよう法案を提出させなければならない。政権は野田総理大臣に引き継がれたが、衆参ねじれ国会という極めて不安定な政治情勢に変わりはなく、予断を許さない情勢が継続することになる。
公務員連絡会としては、本来あるべき自律的労使関係を実現していくため、公務労協・連合に結集し、関連法案の成立に全力を挙げて行く。また、公共サービス基本法の活用と、公共サービス基本条例制定運動を中心に、国民生活の安心と安全を確保する公共サービスの再構築に向けた取組みを進めていくこととする。
2011年9月30日
公務員労働組合連絡会
資料2−連合事務局長談話
2011年09月30日
日本労働組合総連合会
事務局長 南雲 弘行
平成23年人事院勧告についての談話
1.人事院は30日、政府と国会に対し、@本年度の国家公務員の月例給0.23%、899円の引き下げ、一時金は0.05月引き上げるべきとの調査結果であったが被災3県のデータが得られなかったことを理由に現行通り3.95月に据え置くこと、給与構造改革に伴う現給保障を2年後に廃止するなどの給与勧告・報告、A雇用と年金を接続させるための段階的定年延長の実施にむけた意見の申出を行った。この人事院勧告は、客観的・科学的な調査結果に政策的・政治的判断が加わっており、遺憾である。
2.本年5月、「日本の再生のため被災地、被災者とともに歩む」との認識を労使が共有し、新たな労使関係制度を先取りする形で、2013年度末までの間、国家公務員の月例給与を5〜10%、一時金を10%引き下げることで労使合意した。その合意にもとづき国家公務員給与の臨時特例法案と人事院及び人事院勧告制度の廃止、公務員庁の設置などを規定した公務労使関係制度を改革する法案が国会に提出されている。それにもかかわらず、本年の勧告には、このような公務労使関係制度の動向や自立的労使関係制度への移行に係る重要な事実について一言も言及されていない。また、一時金の扱いについては、客観的・科学的な調査に基づいて得られたデータに人事院が政策的・政治的判断を加えていることは極めて異例である。
3.政府は、国家公務員給与の臨時特例に関する法律案には今次人事院勧告で示されたマイナス0.23%をはるかに上回る給与引き下げが織り込まれていることを踏まえ、6月10日に連合に対し官房長官と関係大臣から政府公式見解として表明された、@「国家公務員制度改革関連四法案と国家公務員の給与を減額する国家公務員給与の臨時特例に関する法律案等の扱いについては一体不可分であることが労使合意の前提であることから、政府与党一体となって、全力でその実現を図る」、A「消防職員に団結権を付与する」、B「人件費引き下げについては合意通り地方公務員には波及させない」ことを不退転の決意を持って履行すべきである。その際、政府は、地方公務員はもとより民間企業とりわけ中小・地場企業にその影響が及ばないよう特段の配慮を行うべきである。
また、段階的定年延長に係る意見の申し出については、給与水準の引き下げなど生活面からみれば厳しい内容となっているが、本格的な高齢化社会の中で雇用と年金との接続、公務員が国民の期待に応えその能力を発揮していくために、労使での交渉・協議を十分に行い、必要な法案を速やかに国会に提出すべきである。
4.連合は、民主的公務員制度の確立に向け、政府及び与野党に対し、国家公務員制度改革関連四法案と国家公務員の給与を減額する国家公務員給与の臨時特例に関する法律案の速やかな成立とともに、早急に消防職員への団結権付与を含む地方公務員制度改革法案をとりまとめ、その成立を図るよう求めていく。
以上