公務員連絡会は、24日、委員長クラス交渉委員が、川端総務大臣と会い、春季要求書を提出し、2012春季生活闘争の火蓋を切った。要求書では、連合全体の要求を踏まえ、公務員労働者の賃金の維持・改善、非常勤職員等の雇用と労働条件の改善、65歳までの段階的定年延長の実現、労働基本権を含む公務員制度改革などを強く求めている。今後、3月9日の幹事クラス交渉、3月19日の書記長クラス交渉などを節々で配置し、3月28日の回答指定日に向け、政府を追い上げることとしている。
総務大臣交渉の経過は次の通り。
<総務大臣交渉の経過>
24日14時5分から総務省内で行われた川端総務大臣との交渉には、棚村議長ほか委員長クラス交渉委員が出席し、春季要求書(資料1、2)を手交した。
要求提出に当たって棚村議長は、次の通り述べ、3月28日には春の段階の誠意ある回答を示すよう強く求めた。
(1) 未曾有の大震災、原発事故から、いま1年を迎えようとしているが、本格的な復興・再生がようやくその緒についたところである。一方日本経済は、依然としてデフレから抜け出せず、円高が継続する中、産業基盤の空洞化が一層進み、輸出が低迷し、昨年はついに経常収支が赤字となっている。さらに世界的金融不安が、危機的な財政状況にあるわが国の将来に大きな不安感を投げかけている。
(2) こうした中で連合は、東日本大震災からの復興・再生を成し遂げると同時に、格差是正、底上げ、底支えをめざし、すべての労働者の処遇改善に向けて、いま、まさに2012春季生活闘争を進めている。
(3) 公務員を巡っては、総人件費削減政策のもと、国家公務員給与の引下げや定員削減、公務員宿舎の縮小・廃止など、その勤務条件について、厳しい対応を迫られているところだが、大震災からの復興・再生に向けて、公務員労働者の一人ひとりが自らの仕事に全力を尽くしているところである。
独法や国の出先機関などの見直しに関わっても、組合員の雇用と労働条件に対する不安感が一層募っているが、これらの改革に当たっては、国民への安心・安全の公共サービスの提供を維持することが基本でなければならない。
貴職におかれては、これらのことを十分認識され、本年の賃金・労働条件改善にあたって、@連合全体の要求を踏まえ、非常勤を含めた公務員労働者の賃金を維持・改善すること、A人事院の意見の申出に基づき、65歳までの段階的定年延長を実現すること、B均等待遇の原則に基づき非常勤職員制度を抜本的に改善すること、C超過勤務を着実に縮減すること、などに最大限ご努力いただくよう、強く要求する。
本年こそ、公務員労働者をめぐる様々な課題について、痛みを伴うとしても明るい未来を切り開くための礎を確立し、公務員労働者が生きがいを持って、良質な公務公共サービスを提供し、国民の期待に応えていく節目となる年にしなければならない。
(4) 公務員連絡会は、1月24日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、2012年春季の要求を提出する。これから事務当局との交渉を積み重ね、3月には大臣から直接、春の段階の誠意ある回答を頂きたい。
続いて、地公部会を代表して岡崎地公部会議長が次の通り述べた。
(1) 地方公務員給与については、既に大半の自治体において独自の給与削減措置が実施されている。いま国会で審議されている国家公務員給与の改定・臨時特例法案の附則で地方公務員の給与について言及されているところだが、昨年5月の労使合意に基づき、総務大臣としては「国が財政措置を一方的に決定し、事実上、地方を追い込むことはない」ということを確信している。
(2) また、地方公務員の労働基本権については、消防職員への団結権の付与を含めた「地方公務員の労働関係に関する法律案」の早期国会提出と成立を強く求めておきたい。
(3) さらに定年延長について、国と同時に、2013年度から措置されることを強く求める。
これらに対して総務大臣は、「本日の両議長からの要求事項の趣旨を承った。いただきました意見はよく検討して、然るべき時期に回答したい」と答え、今後公務員連絡会と交渉・協議していく姿勢を示した。
最後に、公務員連絡会の棚村議長は、「3月に回答をよろしくお願いしたい」と求め、交渉を終えた。
(別紙1)
2012年2月24日
総務大臣
川 端 達 夫 殿
公務員労働組合連絡会
議 長 棚 村 博 美
要 求 書
未曾有の大震災、原発事故から、いま1年を迎えようとしていますが、本格的な復興・再生がようやくその緒についたところです。一方日本経済は、依然としてデフレから抜け出せず、円高が継続する中、産業基盤の空洞化が一層進み、輸出が低迷しています。さらに世界的金融不安が、危機的な財政状況にあるわが国の将来に不安感を投げかけています。
2012春季生活闘争は、東日本大震災からの復興・再生を成し遂げると同時に、格差是正、底上げ、底支えをめざし、すべての労働者の処遇改善を実現しなければなりません。
国家公務員の給与について、昨年5月、当時の菅政権との間において、政府自らが自律的労使関係制度(人事院勧告制度の廃止と協約締結権の回復)を先取ることを表明した交渉において、民主党及び政府との信頼関係のもと、東日本大震災の復旧・復興の財源に充当するため苦渋の判断と決断を持って対応した国家公務員の給与削減に係る労使合意を踏まえれば、今般の三党政調会長合意は、極めて残念です。
しかし、第180通常国会が、政権争いという政局に埋没した野党側の対応により、政府・与党の政権運営が過去に例のない難渋を極めているもとでの判断と考えます。民主党を中心とする政権が、国民が安心して暮らすことのできる社会を実現し国民から信頼される政権として機能するため、そして何より遅れている東日本大震災の復旧・復興の財源として一刻も早く措置することを最優先として、三党政調会長合意を受けとめるものです。
公務員連絡会は、1月24日に開いた第1回代表者会議の決定に基づき、下記の通り2012年春季の要求を提出いたします。貴職におかれては、その実現に向け最大限の努力をいただきますよう要求します。
記
1.総人件費削減政策について
(1) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件を確保することとし、総人件費削減政策を転換すること。
(2) 事務・事業の円滑な遂行とディーセントワークを保障するため必要な定員を確保すること。
独立行政法人・政府関係公益法人や国の出先機関の見直しに伴って雇用問題が生じる場合には、政府として統一的な体制を確立するなど、国が雇用の承継に責任を持つこと。
2.2012年度賃金について
(1) 公務員労働者の2012年度賃金については、維持し、改善すること。なお、非現業国家公務員の賃金については、2011年5月の労使合意に基づくこと。
また、使用者の責任において、東日本大震災への対応を含めた超過勤務手当の全額支給の実現、独立行政法人等を含めた公務員給与の支給に必要な財源の確保に努めること。
(2) 公務員給与のあり方に対する社会的合意を得るよう、使用者責任を果たすこと。
3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組みを推進すること。当面、非常勤職員制度について、法律上明確に位置づけることとし、勤務条件等について常勤職員との均等待遇の原則に基づき、常勤職員に適用している法令、規則を適用すること。
(2) 2012年度の非常勤職員の給与については、引き続き「非常勤給与ガイドライン」を遵守するよう各府省を指導するとともに、1時間当たり30円以上引き上げること。
(3) 期間業務職員制度については、引き続き当該職員の雇用の安定と処遇の改善となるよう、適切な運用に努めることとし、とくに、常勤職員と同等の勤務を行っている期間業務職員の給与を「均等待遇の原則」に基づき抜本的に改善すること。
4.労働時間、休暇及び休業等について
(1) 公務に雇用創出型・多様就業型のワークシェアリングを実現することとし、本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。
(2) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制、Aライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇制度の拡充、B総合的な休業制度、などを実現すること。
(3) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、超過勤務命令の徹底やIT等を活用した厳格な勤務時間管理と実効性のある超過勤務縮減策を取りまとめ、直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。
5.人事評価制度について
人事評価制度については、公正・公平性が確保され、円滑に運用されるよう、引き続き制度の周知や評価者訓練の徹底に努めるとともに、実施状況を検証し、必要に応じて指導、改善措置等を講じることとし、公務員連絡会と十分交渉・協議すること。
6.新たな高齢者雇用施策について
(1) 雇用と年金の接続方法については、人事院の意見の申出に基づき、65歳までの段階的定年延長を行うこととし、2013年度から実施できるよう、関係法案を国会に提出すること。
(2) 定年延長に関わって、給与体系・水準や退職手当のあり方等を検討する場合には、公務員連絡会と十分交渉・協議を行い、合意に基づいて進めること。
7.福利厚生施策の充実について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員福利厚生基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。とくに、メンタルヘルスに問題を抱える職員が増加していることから、その原因追究と管理職員の意識改革に努めることとし、必要な心の健康診断、カウンセリングや「試し勤務」など復職支援施策を着実に実施すること。
(3) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、予算及び事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
8.男女平等の公務職場実現、女性労働者の労働権確立について
(1) 公務職場における男女平等の実現を人事行政の重要課題として位置づけ、女性の労働権確立や環境整備に政府全体として取り組むこと。
(2) 新成長戦略に掲げられた男性の育児休業取得目標2020年13%の実現に向けて、条件整備や必要な指導を行うこと。
(3) 改定された「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」に基づく各府省の実施計画における目標実現に向け、使用者として必要な取組みを着実に実施すること。
(4) 次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の着実な推進に取り組むよう、各府省を指導すること。
9.労働基本権確立を含む公務員制度改革について
(1) 国家公務員制度改革関連四法案及び地方公務員の労働関係に関する法律案等の第180通常国会での成立に向け、政府全体として取り組むこと。
(2) 国際労働基準確立の観点からILO第151号条約を批准すること。
10.退職手当制度の見直しについて
民間企業の退職金等調査結果等を踏まえた支給水準見直し、希望退職制度の検討や定年延長に関わる制度見直しについては、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて作業を進めること。
11.その他の事項について
(1) 公務における外国人の採用、障がい者雇用を拡大すること。とくに、知的障がい者及び精神障がい者の雇用促進に関する具体的方策を明らかにすること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務・事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。
以上
(別紙2)
2012年2月24日
総務大臣
川 端 達 夫 殿
公務員連絡会地方公務員部会
議 長 岡 ア 徹
要 求 書
貴職の地方分権改革、地方財政の充実に向けたご努力に敬意を表します。
日本経済は、東日本大震災による復興需要は少しずつ出ているものの、歴史的な円高、欧州各国の債務危機よる世界経済への悪影響による輸出減など厳しい状況が続いていますが、大震災からの復興・復旧事業費及びその財源については、通常収支とは別枠で整理した上で、震災復興特別交付税が確保されました。また、地方交付税の総額は、自公政権下と比較し1.7兆円も増額がはかられています。
地方自治体においては厳しい定員純減政策や、約6割の自治体で独自の給与減額措置が続いています。しかし、それぞれの職場で働く地方公務員は、質の高い公共サービスの実現に向けて懸命な努力を続けています。3月11日に発生した東日本大震災においても、地元自治体の地方公務員だけでなく、全国の自治体から地方公務員が復興・復旧のために被災地に入っています。公務員である以上、高い使命感と責任のもと全力をあげるのは当然のことです。
また、低迷する経済情勢の影響で、雇用や生活への不安が深刻化しており、公共サービスを支える地方公務員の役割と責任はますます高まっています。地方公務員が住民の期待に応えていくためには、雇用の安定と公務員に相応しい労働条件の確保が必要です。
こうした情勢の下、本年の賃金・労働条件の改定にあたっては、非常勤職員等を含めた地方公務員の賃金を維持・改善することはもとより、自律的労使関係制度に関わる関連法案の本通常国会への提出と成立、2013年度からの65歳までの段階的定年延長を中心とする新たな高齢雇用施策を、国に遅れることなく実現することが重要課題となっています。
以上のことから、公務員連絡会地方公務員部会は2012年春季の要求を下記の通り提出いたします。貴職におかれては、下記事項の実現に最大限尽力されますよう要求します。
記
1.2012年度の賃金改善について
(1) 地方公務員の賃金の維持、改善のために尽力し、所要の財源を確保すること。
(2) 自治体における賃金・労働条件の決定にあたっては、地方自治の本旨に基づき、労使の自主的交渉を尊重すること。また、給与決定にあたって地方自治体に対して国と同様の取扱いをするよう求めないこと。
2.臨時・非常勤職員等の雇用安定・労働条件改善について
(1) 地方自治法第203条の2、第204条の改正を行い、非常勤職員にも諸手当が支給できるようにすること。
(2) パート労働法の趣旨が地方公務員の臨時・非常勤職員にも適用されるよう法整備を行うこと。
(3) 労働基準法が定める賃金・労働条件の改善・確保、法律にもとづく健康診断、社会保険や雇用保険の適用等がはかられるよう、各地方自治体に対して強く要請すること。
3.労働時間について
(1) 公務におけるワーク・ライフ・バランスを確保するため、@年間総労働時間1,800時間体制、A時間外労働の縮減と年休取得の促進、B「不払い残業」の解消を地方自治体に要請すること。
(2) 36協定締結義務職場での締結促進のための施策、労働基準法第33条3項の「公 務のために臨時の必要がある場合」について厳格に運用するよう地方自治体に要請すること。
4.人事評価について
自治体における人事・給与制度に係わる新たな評価制度の導入に当たっては、十分な労使協議を行うよう地方自治体に対して必要な対応を行うこと。
5.新たな高齢雇用施策の充実について
段階的定年延長に関わっては、地方自治体においても国に遅れないよう制度設計を進めること。それに当たっては、地方公務員部会との十分な交渉・協議を行うこと。
6.福利厚生施策の充実について
自治体職場の安全衛生体制を確立するとともに、メンタルヘルス対策に関わる自治体の実態の把握と、その問題点や課題についての改善策を整理し、各自治体に対して、最低限、法令に基づく労働安全衛生体制を直ちに整備するよう強く要請すること。特に、東日本大震災の被災地に勤務する職員の労働安全衛生体制の充実を早急にはかること。
7.男女平等の公務職場実現について
(1) 自治体職場での男女平等・共同参画を人事行政の重要課題として位置づけ、女性の労働権確立や環境整備が進むよう積極的な対応をはかること。
(2) 新成長戦略に掲げられた男性の育児休業取得目標2020年13%の実現に向けて、条件整備や必要な対策を講ずるよう地方自治体に要請すること。
8.労働基本権確立を含む地方公務員制度改革について
(1) 自律的労使関係制度を措置することを基本として、ILO勧告に基づき公務員の労働基本権、団体交渉制度による賃金・労働条件決定に関わる法案の早期閣議決定、本通常国会での成立に向けて、取り組むこと。
(2) 自律的労使関係制度等に係る法案の検討に当たっては、地方公務員部会との十分な交渉・協議を行うこと。
9.その他
(1) 刑事事件での起訴にともなう休職や禁錮以上の刑に処せられた場合の失職のうち、公務にかかわる事項については任命権者の判断で失職させない措置を行えるよう分限条例の改正を促進すること。
(2) 自治体財政健全化法の運用については、国の関与は最小限に止め、自治体の自主
的・主体的な財政健全化を基本とすること。また、公営企業の経営の健全化については、「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(2009年7月)による指導関与は最小限に止め、各自治体における自主的・主体的な取組みに委ねること。
(3) 公契約に際しては、公正労働基準の遵守を必要とすることを地方自治体に要請すること。
以上