公務員連絡会書記長クラス交渉委員は本日16時から、総務省人事・恩給局長と交渉し、2012春季要求に対する現段階における見解を引き出した。本日の交渉には、3月2日の企画調整・幹事合同会議で確認した交渉体制に基づき、森永国公連合書記長ほか国公連合構成組織の各書記長を中心にして臨んだ。
冒頭、森永書記長が2012春季要求に対する総務省の現段階の見解を求めたのに対し、田中局長は「本日は、先日受け取った要求事項について、現時点における状況等を回答させていただく」として、以下の通り回答した。
1.総人件費削減政策について
公務員の総人件費削減については、新たに政府に置かれた行革実行本部において、総人件費改革の推進について、省庁の垣根を越えた総合的見地からの議論を行い、改革を実行に移すこととされており、総務省としては、行政改革実行本部における取組みに協力してまいりたい。
なお、独立行政法人、国の出先機関の見直しに関する皆様の要求については、私から改めて担当部局にお伝えすることとしたい。
2.2012年度賃金について
国家公務員給与の臨時特例措置として、皆さんに合意をいただき、政府案を提出した立場から申し上げれば、政府案が国会で理解を得られなかったのは残念であるが、政府としては、未曾有の国難に対処するため、同措置の実施が必要であるとかねてより申し上げてきており、政府案の趣旨・内容を踏襲している給与改定・臨時特例法が成立したことを重く受け止めている。
法律の成立に当たり、改めて皆さんの御理解に感謝するとともに、今後とも皆さんとの相互の信頼関係の醸成に努めたいと考えている。
3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
非常勤職員の処遇改善については、平成22年10月から期間業務職員制度を導入した。また、育児休業等の取得も23年4月から可能となった。
総務省としては、制度導入の趣旨に沿った適切な運用実態が確保できるよう努めてまいりたい。
4.労働時間、休暇及び休業について
超過勤務の縮減は、職員の健康、士気の向上はもとより、自己研鑽や家族との時間の確保のために重要であると認識している。
このため、従来から全省庁一斉の超過勤務縮減キャンペーン等を行っているほか、@平成22年4月から、60時間を超える超過勤務手当の割増や、超勤代休時間制度の新設によりコスト意識を持った超過勤務抑制に努めるとともに、A超過勤務縮減を管理職員の人事評価の対象として明確化してきた。
今後とも、皆様の御意見も伺いながら、引き続き、超過勤務縮減のための取組みを進めてまいりたい。
5.人事評価制度について
人事評価制度が円滑に運用されるよう、制度の周知・徹底のため、平成21年夏から評価者の評価能力を高めるための評価者講座を開催してきたところであり、今後とも引き続き行うこととしている。
本制度については、引き続き、職員団体とも十分意見交換し、円滑に運用していきたいと考えているのでよろしくお願いしたい。
6.新たな高齢者雇用施策について
昨年9月の人事院の意見の申出は、公的年金の支給開始年齢が平成25 年度から段階的に引き上げられることを踏まえ、国家公務員の雇用と年金に空白期間を生じさせないための方策として示されたものと考えている。
一方で、本年1月には、民間における高年齢者雇用について、厚生労働省の労働政策審議会から「定年延長は困難であり、継続雇用制度に関する法制度の整備により対応することが適当」との建議がなされ、同建議の内容を反映した法案が国会に提出されている。
国家公務員の雇用と年金の接続に向けた措置については、このような民間の状況を踏まえつつ、国家公務員制度改革推進本部を中心に、関係機関との間で検討を進めてまいりたい。
7.福利厚生施策の充実について
メンタルヘルス対策については、昨年4月に見直しを行った「国家公務員福利厚生基本計画」において、これまでの職員一人ひとりの心の健康の保持増進、心が不健康な状態になった職員への早期対応、円滑な職場復帰の支援と再発防止等の施策に加え、「心が不健康になりつつある職員への配慮」、「職場復帰の際の受入方針のモデル作成」、「管理職員に対する教育の徹底」等の充実を図ることとしており、今年度からe−ラーニングによる新任管理者のためのメンタルヘルス講習を開始した。
いずれにせよ、メンタルヘルス対策に当たっては、当局としても十分に配慮してまいりたい。
8.男女平等の公務職場実現、女性労働者の労働権確立について
女性国家公務員の採用・登用の拡大については、各府省に対し、「採用昇任等基本方針」や「人事管理運営方針」において、その促進を要請している。
各府省における取組状況等については、第3次男女共同参画基本計画に基づき、フォローアップを実施し、昨年10月には、その結果を公表するとともに、各府省に対し更なる取組を要請した。
今後とも、国家公務員法に定める平等取扱と成績主義の原則に基づきながら、意欲と能力のある女性国家公務員の採用・登用の拡大を政府全体として進めてまいりたい。
9.労働基本権確立を含む公務員制度改革について
労働基本権の確立に向けては、政府としては、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を措置するための法案を昨年6月3日に国会に提出しているところであり、本法案をできるだけ早く成立させていただきたいと考えている。
10.退職手当制度の見直しについて
退職手当については、今回の人事院の調査結果及び見解を踏まえて検討を行っていくことと考えているが、検討に当たっては、被用者年金一元化の検討の動向を見極めることが必要と考えている。また、退職手当は皆様の重要な関心事項であり、皆様とも真摯に話し合ってまいりたい。
局長の回答を受け、森永書記長は、改めて重点事項に対する考えを、以下の通り述べた。
(1) 国家公務員の総人件費削減については、公共サービス基本法にも謳われているように、公共サービスを確実に実施することが基本であり、それを担う公務員の労働条件がきちんと確保されなければならない。総務省においては、国家公務員の人事行政に責任を持つ立場で対応してもらいたい。
独法等の見直しやアクションプランによる国の出先機関の見直しについては、国が雇用の承継に責任を持ち、職員の雇用確保に最大限努力してもらいたい。
定員については、この間の、定員削減等の影響で、職場も極めて厳しい体制の中で業務を遂行している現状である。現在、新規採用抑制に関して、各府省との協議が進められていると承知をしているが、今後の行政と業務のあり方の議論が置き去りにされ、極めて乱暴なやり方であり、問題がある。しっかりと各府省の事情等を十分に聞いた上で、対応してもらいたい。
(2) 2012年度賃金については、要求提出の際、大臣との間で一定の整理が行われていると認識をしている。その上で、改めて、昨年5月にわれわれがどのような思いで合意に至ったのかを受け止め、労使合意した内容を基本にしてもらいたい。
(3) 非常勤職員の賃金水準の問題や雇用不安という課題は解決されていない。処遇改善や雇用の安定に向け、さらに施策の検討を進め、実施してもらいたい。
また、期間業務職員制度が導入され2年目を迎えているが、運用状況の調査を行って問題点の把握と改善に向け努力してもらいたい。また、合わせて給与ガイドラインの遵守の徹底をお願いしたい。
(4) 超勤縮減については、この間、各府省庁の現場で様々な施策が講じられているが、実態は改善されていない。さらに、一歩踏み込んだ実効ある具体的な取組みを進めてもらいたい。
超勤縮減の具体的な取組みにあたっては、引き続き公務員連絡会との協議を行いながら取り組んでもらいたい。
(5) 人事評価制度については、実施中のアンケート結果等を踏まえ、各府省における課題の把握と改善に向け公務員連絡会と協議するとともに、制度官庁として、職員の評価制度に対する信頼、納得性を高め、円滑な運用に向けて必要な対策を講じてもらいたい。
(6) 雇用と年金の接続は、確実な採用が保障されない現行の再任用制度またはその延長上の制度ではなく、あくまで段階的定年延長の実施に向け対応してもらいたい。
(7) 福利厚生施策の充実については、見直し後の「国家公務員福利厚生基本計画」に基づいて、特にメンタルヘルス対策などに着実に取り組んでもらいたい。
(8) 男女平等の公務職場の実現や女性労働者の労働権確立については、改定後の「女性国家公務員の採用・登用拡大に関する指針」及び次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」の着実な実施に向け、政府として努力してもらいたい。
(9) 労働基本権の確立については、政府として、この通常国会で四法案を必ず成立させ、自律的労使関係制度の確立に向けて主体的かつ積極的に取り組んでもらいたい。
(10) 退職手当制度の見直しについては、人事院の退職手当調査結果等に基づいた措置の検討に当たり、公務員連絡会と十分に交渉・協議し、合意に基づいて進めてもらいたい。
これに対し田中局長は以下の通り答えた。
(1) 総人件費削減については、ご指摘のあった公共サービス基本法に謳われている趣旨、国家公務員の人事行政に責任を持つ立場にあることはよく心得ており、皆さんからの要望は受け止めている。
新規採用抑制については、政府の強い意思で各方面に意思統一が図られているところであり、皆さんの要望は関係府省に責任を持って伝えたい。
(2) 2012年度賃金については、皆さんのご指摘はしっかり受け止めている。国家公務員給与の臨時特例措置に対する皆さんの御理解に改めて感謝するとともに、今後とも皆さんとの相互の信頼関係の醸成に努めていきたい。
(3) 非常勤職員の処遇改善については、期間業務職員制度において制度導入の趣旨に沿った適切な運用実態の確保に努めるとともに、非常勤職員の給与に関する人事院の指針を踏まえ、適正な支給が図られるよう努めていきたい。
(4) 超勤縮減については、今後とも皆さんと協議しながら、引き続き取組みを進めていきたい。
(5) 人事評価制度については、実施中のアンケート調査の結果も踏まえ、また皆さんの意見も聞きながら、制度官庁として、その円滑な運用に努めていきたい。
(6) 雇用と年金の接続に向けた措置については、現在、国家公務員制度改革推進本部を中心に検討が進められているところであり、皆さんの主張も伝えながら議論を進めていきたい。
(7) 福利厚生施策の充実については、特にメンタルヘルス対策はご指摘の通り重要な課題だと認識しており、一生懸命努めていきたい。
(8) 男女平等の公務職場の実現や女性労働者の労働権確立については、ご要望は受け止めた。
(9) 労働基本権の確立については、四法案は、給与改定特例法と同様に、重要な法案であり、総務省は直接所管しているわけではないが、1日も早い審議入りと成立に向けて努力していきたい。
(10) 退職手当制度の見直しについては、皆さんにとって重大な関心事であることを十分認識した上で、皆さんの意見も聞きながら検討していきたい。
田中局長の回答を受け、各交渉委員から現場の厳しい実態を踏まえ、「賃金・労働条件に関わるさまざまな事項がいままさに重要な局面を迎えている。また、世間の公務員に対する厳しい指摘もある中、職員は震災対策をはじめ業務遂行に誠心誠意努力している。それに報いるような回答をいただきたい」「国の出先機関改革について、組合員は強い雇用不安を抱いている。雇用の確保を引き続きお願いする」などと強く訴えた。
また、森永書記長は「総務省として、国家公務員の人事行政に責任を持つ立場で、行革、定数、新規採用、独法等・出先機関見直し、震災対応など勤務条件に影響を与えるすべての問題について、今後、国の人事行政をどうしていくのかについて明確なビジョン、方向性を示しながら、きちんと目配りをして対応してもらわなければならない」とした上で、「政府とわれわれとの労使関係が相互の信頼関係の上に成り立つことは言うまでもないことだ。そうした労使関係の下、われわれもしっかり対応していくが、総務省においても、従前以上に努力願いたい」と強調した。
最後に、「3月28日の大臣からの最終回答に向けて、積極的な検討を重ねてもらいたい」と要請し、本日の交渉を終えた。
以上