公務労協は、本日17時30分から、段階的定年延長の実施を求めて、園田大臣政務官、笹島審議官らと交渉を行った。公務労協からは吉澤事務局長をはじめ各構成組織書記長が出席した。
冒頭、吉澤事務局長は「国家公務員の雇用と年金の接続については、昨年9月の人事院の意見の申出を踏まえ、段階的定年延長を実施するための法案を速やかに国会提出するよう要求してきた。しかし、公務員事務局は、2月28日の藤巻事務局長との交渉で、突如、人事院の意見の申出にない「再任用の義務化」を選択肢として示したほか、翌29日には有識者による意見交換会も実施し、3月下旬に政府としての基本方針を決定することを表明している。意見の申出から半年も経過し、政府の不作為については釈然としない。にもかかわらず、わずか1か月で基本方針を決定するというのは拙速という印象をぬぐえない。政務官からこれまでの経緯についての誠意ある説明と、基本方針に係る現状について報告をお願いしたい」と追及した。
これを受けて、園田大臣政務官は「2月28日の藤巻局長との交渉でも話があったと思うが、3月下旬の基本方針の決定に向け、人事院の意見の申出及び民間の状況を踏まえた上で検討を進めてきた。現段階において明確に段階的定年延長を行うと決定することは、難しい状況にある。雇用と年金をしっかり接続することが大事であり、希望者の再任用を任命権者に義務付けることにより接続を図るのが適当と判断している。その際、人事院の意見の申出にある本格的な職務の遂行ができるような環境をつくることは大切であり、職員が能力を発揮できるようにしていきたい。なお、能力・実績主義の下、係員レベルの標準職務遂行能力と適性がない場合、任命権者は再任用の義務を課されないこととしている。拙速との印象とのことだが、私どもとしては精一杯やっていきたいと考えており、今後も内容を含めて話合いながら進めていきたい。今この時点でできる判断をしようとするものであり、丁寧な議論が必要になると思うが、しっかりとやっていきたい」と説明した。
これに対し、吉澤事務局長らは、次のとおり質した。
(1) 拙速と言ったのは、時間をかけて協議することを指摘したのではなく、中身について十分な議論が必要ということだ。雇用と年金の接続の問題は、重大な勤務条件である。今の再任用制度そのものに課題があり、再任用希望者のうち9割弱が再任用されているものの、残りの十数%の者がなぜ再任用されていないのかという点について各府省ごと、霞ヶ関及び出先機関のそれぞれでの実態を丁寧に分析してほしい。今の再任用制度の欠点をどう捉えているのか。
(2) 現在は報酬比例部分の年金支給があるが、今後全く支給されなくなる中で希望者は増えていく。ポストの問題で、今でも希望者全員の再任用となっていないのに、義務付けを確保できるのか。
(3) 再任用の「義務」というと非常に重たい。報酬比例部分が支給される再任用職員と支給されない再任用職員の両方が出てくる。そうした場合にどちらに優先的にポストが確保されるのか。明確な基準もないなかでは釈然としない。また、メリットシステムが前提だが、能力の実証という問題はどう考えるのか。たとえば、病休者が再任用を希望した場合にはどのように対応するつもりか。
(4) 係員レベルの標準職務遂行能力と適性がない場合、任命権者は再任用の義務を課されないとのことであるが、希望者全員と掲げつつ、実際に再任用されるのは全員ではないということか。民間は雇用と年金を接続させるとする一方で、公務で空白期間が生じるようなことになれば、逆に公務員差別となるのではないか。再任用の義務化を掲げても、実際に再任用されない者が出るのでは全く意味がない。
(5) 人事院の意見の申出との関係について問うが、これまでを振り返っても意見の申出が出され、政府がそれを実施しないと判断したことは歴史上初めてのことではないか。
(6) 私たちが求めているのは雇用と年金の接続であって、定年延長か再任用かはあくまで手段の話だ。この問題が勤務条件である以上、われわれと交渉・協議、合意しないといけない。お互いの議論がまだ足りないと感じており、膝を詰めてしっかりと対応してほしい。労使共通の目標としては、雇用と年金の確実な接続ということでよいか。
園田大臣政務官らは、次の通り回答した。
(1) 希望しても再任用されない者が十数%いるとのことだが、退職・再任用までの過程でも人事評価がなされてきており、一律に全員再任用ということではないが、皆さんの意見を踏まえて希望者全員の再任用をめざしていくことにしている。
(2) 当然、希望者が増える状況も含めてポストについては考えていかなければならないと思っているが、再任用の場合、一旦退職してもらうのでその分ポストが空くことになるということはある。
(3) 具体的な話は今後の検討課題となるが、病休者の再任用希望については、そこに至るまでも人事評価はなされてきたのであり、それまでの評価の問題ではないか。再任用の義務化を行ったとしても、本人が希望しない場合や本人が希望しても評価が低い人については退職後、再任用しないということもある。
(4) 厚労省の労政審の建議においても、就業規則の解雇事由等に当たる人については、雇用継続とならないということを付加的に書いている。ただし、雇用と年金の接続が基本的な考え方であるから、理由もなく雇用が打ち切られないようにしないといけない。
(5) 技術的な話で言えば、意見の申出を実施しなかったということはあったけれども、大きな制度改革についての意見の申出を実施しないというのは初めてだ。しかし、今回の雇用と年金の接続については様々な判断をしており、性急に意見の申出を無視しているというものではない。意見の申出は大変重いものであり、今回私どもの提案は定年延長という形にはなっていないが、意見の申出や民間の状況を踏まえたものとなっていることをご理解いただきたい。
(6) 雇用と年金の接続が大事ということは同様の認識である。定数削減の問題や短時間ではやりにくいということも聞いており、決め打ちということではなく、接続方法としては現段階では再任用という形を取らせていただき、どういう形が相応しいか今後協議していくべきであると考えている。この交渉でもって、すべて決まるわけではないと考えており、まずは方向性を見ていただき、引き続き皆さんと話し合いをしていきたい。
最後に、吉澤事務局長は「政府は、今月末にも雇用と年金の接続に関する基本方針を決定するとのことであり、仮にこの内容で決定されれば問題とせざるを得ないが、重要な勤務条件であることを念頭に置いていただき、引き続きこの問題について丁寧な協議をしてほしい」と強く訴えた。
これに対し、園田大臣政務官は「要請については約束する。じっくりと議論をしていきたい」と回答し、本日の交渉を終えた。
以上