2012年度公務労協情報 24 2012年3月27日
公務公共サービス労働組合協議会

雇用と年金接続の基本方針で公務員事務局交渉−3/26

 政府の国家公務員制度改革推進本部及び行政改革実行本部は、23日、「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」を決定した。
 その内容は、@国家公務員の雇用と年金の接続方法について、定年退職する職員がフルタイム再任用を希望する場合、常勤官職に採用すること、A一定の時期に、人事院の意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の接続の在り方について改めて検討を行うこと、B給与の在り方は別途検討すること、などであり、この方針に基づき、具体的な制度改正案を検討するとしている。
 公務労協は、本決定を受けて、本日9時30分から、国家公務員制度改革推進本部事務局と交渉を行った。公務労協からは、大塚・花村・藤川の各副事務局長をはじめ各構成組織担当役員が出席し、公務員事務局からは笹島審議官、村山参事官が対応した。

 冒頭、笹島審議官が「3月19日の園田政務官と吉澤事務局長の交渉を踏まえ、今後、中身について議論をさせてもらいたい」と前置きした上で、村山参事官が基本方針の内容について説明した。

 これを受けて、大塚副事務局長は「19日、園田政務官と交渉をさせて頂いた際にも、@「再任用の義務化」と言っても実際に希望者全員が採用されなければ意味がないことから、そういう方針決定となった場合には問題とせざるを得ないこと、A労使共通の理解である雇用と年金の確実な接続に向けて、公務労協としては引き続き定年延長の実現を求めていくが、この問題が重要な勤務条件である以上、今後、交渉・協議、合意に基づいて進めていくことを要求し、政務官から「じっくりと議論していく」ことを確認した。制度改正案を検討していくと言うことなので、そういう立場で、今後とも十分な交渉・協議を行っていくことをこの場でも確認したい」と質した。
 これに対し、笹島審議官は「この枠組みに基づいてより具体的な話を皆さんと話し合っていく」ことを再確認した。

 続いて公務労協側は、「制度改正案、国家公務員法などの検討スケジュールを明らかにしてもらいたい。また、この間、地方はスケジュール的に厳しいということを何度も申し上げてきたが、公務員部とも緊密に連絡を取り合って進めてもらいたい」と質した。
 これに対し、笹島審議官は「平成25年度に60歳を迎える人から年金の空白期間が生じるわけで、民間の高年法の施行も平成25年4月と思うが、基本方針に基づく法改正というのは平成25年4月には施行されていないといけないと考えており、年内の臨時国会までに関係法案を出したいと考えている。23日の本部で、総務大臣から「地方公務員についても雇用と年金の接続に向けて、この国家公務員の基本方針を踏まえつつ、地方の実情にも留意し、地方自治体関係者のご意見を十分伺った上で、早期に検討してまいります」との発言があったところであり、公務員部とも十分な連携をとりながら進めていきたい」と答えた。
 また、教育公務員の取扱いについて、藤川副事務局長が「教育公務員は文部科学省が制度官庁であるが、公務員事務局と文部科学省はどのように連携していくのか」と質したのに対し、審議官は「われわれの検討のプロセスは総務省公務員部に伝えていくので、文科省とは公務員部を通じて連携を取っていくということだ」と答えた。

 続いて、公務労協側は基本方針の内容について以下のとおり質した。
(1) 民間企業の現状と高年法改正法案の内容を踏まえ、希望する場合にフルタイムの再任用を義務化するとしているが、定年延長がダメであって、再任用の義務化が適当と判断した理由について、どこがどう違っていて、定年延長のどの部分が難しいのか、他方再任用の義務化のどの部分が定年延長と比べて適当なのか、具体的に説明してもらいたい。
(2) 再任用の義務化をどのように担保するつもりか。定数に空きがなければ再任用できないのではないか。地方は定員も限られているので、ポストを回しようがない。実効性があるのかきちんと説明してほしい。
 @ 現在の再任用の実績を見ると府省別に大きな格差が生じている。府省間のアンバランスを調整することは検討しないのか。
 A 民間では年金2階部分が支給されている者の継続雇用については、基準制度を残すとしているが、公務の場合、2つの再任用について、どのようにして合理的に仕分けていく考えか。現行国公法では、第81条の4で常勤官職に、81条の5で短時間官職に再任用できるとしているが、今回設けられるフルタイム再任用の義務づけ、短時間再任用をどのように規定するつもりか。
 B 現在の再任用制度では、定年前5年以内に退職した者について再任用できることとしているが、今回の義務付けではどうするのか。
 C 行(二)労務職員等特例定年が適用されている職員はどうしていくのか。特例定年は維持されるべきと考えるがどうか。
 D 勤務延長制度との関係はどう整理していくのか。
(3) ただし書きで、係員等の標準職務遂行能力と適性がない場合、再任用する義務がないとわざわざ書いているが、退職の時点においても、当然に能力と適性に基づいた人事配置が行われているはずであり、どのような場合が当てはまるのか。
(4) 従前の勤務実績等に基づき、標準職務遂行能力及び適性を有すると認められる官職に任命するということで、補佐級でやめた人について補佐級に再任用されることも、係長級に再任用される場合があり得るとの例示があるが、補佐級の能力と適性がある職員は本人が下位の官職を希望しない限り、基本的には補佐級の官職に再任用されるということか。
(5) 「再任用制度の下、意欲と能力のある人材を本格的な職務で最大限活用できるよう、再任用職員が担う職務の在り方等について検討する」とあるが、「本格的な職務」とは少なくとも定年時の職務だと思うし、場合によってはさらに昇任、昇格することもあり得るということか。「職務の在り方等」について、具体的にどのようなことを検討するつもりか。
(6) 海保、刑務官、皇宮警察などいわゆる困難職種については、常勤官職で再任用できるよう条件整備を図るということか。
(7) 短時間再任用の活用については、どのような環境に整備するのか。短時間勤務の場合、現行制度では共済組合員とならないが、適用する方向で検討すべきだと考えるが、検討状況はどうか。 (8) 能力・実績に基づく人事管理の徹底等では、「意欲と能力のある人材の最大限の活用」ということが指摘されているが、それを実現する官職・定数を用意しなければならない。意向聴取や支援措置の予算もきちんとしていただきたいし、複線型人事管理もかけ声だけでなく進めるべき。人事交流機会の拡大も指摘されているが、天下り規制の下で民間への出向は限られているのが実態だ。どのようにして民間への人事交流を増やすつもりか。
(9) 民間企業で継続雇用しない場合には、使用者に再就職支援を義務づけており、公務の場合、あっせん禁止、求職活動の制限があり、民間への再就職を実現することが難しい。民間会社を活用するというのであれば、それが再就職に必ず結びつくよう、予算の確保を含めて具体的な議論、検討をお願いしたい。
(10) 3年に一度60歳を超える職員が公務部内に止まることは、これまでの定員管理の在り方では対応が困難な課題だ。「必要な措置を講じる」とのことだが、どのようなことを考えているのか。
(11) 給与については、総人件費改革の観点が入っており給与の水準を下げようとしているのは問題だ。いずれにしても、これから検討していくとのことであり、われわれとしては不満であるが、少なくとも意見の申出の水準を最低ラインとして、今後、十分に議論させてもらいたい。

 これらを受けて、笹島審議官らは次の通り回答した。
(1) 雇用と年金の接続が最も重要な課題であると考えており、定年延長がダメだという議論ではない。民間では現時点で多くの企業が継続雇用で対応していること、あるいは法定定年年齢の引上げについては審議会の建議で中長期的な課題とされていること、民間法案の内容は継続雇用対象者を限定するしくみを廃止することとしていること、また有識者の意見交換会における意見も勘案したうえで判断した。人事院が定年延長でめざしたものを再任用でめざすということだ。
(2) 基本的には、定年退職される方が常勤官職を希望されれば、どこかのポストに付けることを義務付けるということなので、どこかの官職に空きがあるという制度設計と考えている。
 @ 府省間のアンバランスについてだが、政府全体で調整してどこかのポストに付けるとすると、任命権者の責任が曖昧となる。詳細なシミュレーションはこれから行うが、基本的には府省毎に再任用の義務化を図っていくこととしている。
 A 現行の再任用と義務付けの再任用の同時併存については、給与や任用などの基本的な在り方は、現在の再任用制度をベースにこれから議論を深めていきたいと考えている。現行国公法の81条の4に相当する規定はおきながらも、義務付ける場合の年齢を段々と伸ばしていくことにしている。パートタイムの再任用については、81条の5相当の規定を置くこととする。
 B 定年前退職者については、現行制度で対応していく。
 C 医者や次官、外局の長官、行(二)などの特例定年については、存置する方向で考えている。
 D 勤務延長は、現在でも再任用制度とは切り分けて考えられているので、今後もその考え方は変わらない。
(3) ただし書きの考え方については、任用関係が継続していれば、係員級の職務遂行能力を達成できないということであれば、現行の分限等の対象となるという考え方であり、再任用の場合には一旦任用関係が終了するので、その趣旨を明確化したものだ。
(4) 能力、適性等に応じてとしたのは、任命権者の裁量やポストの制約もあって、個別の人事となるからだ。それが恣意にわたるものであれば、説明責任が問われることになるので、合理的な範囲内で任命権者が決めていくことになる。
(5) 再任用制度の下で昇任は否定はされていない。本格的な職務で活用ということについて言えば、フルタイムを希望する人はフルタイムが基本。専門スタッフ職的な働き方の活用も含めて、今後の検討課題と考えている。
(6) 困難職種については、交代勤務が職務遂行上のリスクにつながるような職種についてであり、フルタイムが厳しく選抜されているような職域について、各省と検討を進めていく。現時点で検討対象となる職務を限定していない。
(7) 短時間再任用を活用する環境については、短時間で責任あるポストの創設の要請が増えていることからそうした議論を進めていく。共済の件については、政府全体で関係府省間で意見交換の場を設けるとしているので、その過程で皆さんとも協議していきたい。
(8) 人材の活用については、公益法人等も含めて人事交流機関を広げていくことも検討している。併せて、新しい公共の観点から、NPO法人へも人材派遣をすすめることなども議論を進めていく。
(9) 定員管理の問題については、平準化を図っていく必要があり、今後シミュレーションを行っていきたい。
(10)給与については、60歳の給与に対して○掛けということに留まらず、賃金カーブの見直しも必要と考えている。具体的には行革実行本部で検討していくことになるのではないか。

 最後に、大塚副事務局長は「今日は一通りの議論をさせてもらったが、何れの課題についても今後検討するという話であり、再任用の義務化が文字通り実現し、年金が支給されない中で、生活を維持できるのかどうかという不安感はまったく払拭されていない。政務官と約束したように、まだまだ丁寧な議論が必要であり、きょう明らかにならなかった課題については引き続き議論させてもらいたい」と要請し、交渉を終えた。

 なお、公務労協は別紙の通り談話を公表した。


(別紙)
2012年3月26日
「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」に関する談話


公務公共サービス労働組合協議会
事務局長 吉澤伸夫


1.政府の国家公務員制度改革推進本部(以下「推進本部」という。)は、23日、「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針について」を決定した。その内容は、@国家公務員の雇用と年金の接続方法について、定年退職する職員がフルタイム再任用を希望する場合、常勤官職に採用すること(以下「再任用の義務化」という。)、A一定の時期に、人事院の意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の接続の在り方について改めて検討を行うこと、B給与の在り方は別途検討すること、などであり、この方針に基づき、具体的な制度改正案を検討するとしている。

2.公務労協は、昨年、人事院が行った「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」について、給与水準が大幅引下げとなり公務員にとって厳しい内容であり不満が残るが取組みの到達点として受け止めることとし、政府に対しては、2013年度から定年延長が実施できるよう、直ちに法案策定作業に着手し、速やかに必要な法案を国会に提出することを要求してきた。

3.意見の申出後、政府は推進本部事務局において検討作業を進めてきたが、本年2月になって、突如「国家公務員の雇用と年金の接続に関する意見交換会」を設置するとともに、われわれとの交渉の場で意見の申出にはない「再任用の義務化」という選択肢についても検討していることを明らかにした。そして、民間企業においては継続雇用が大多数であり、高年齢者雇用安定法改正法案の内容が再雇用に係る基準制度の廃止に止まったことなどを理由に、公務員についても定年延長ではなく再任用の義務化という接続方法とすることを決定したものである。

4.「再任用の義務化」は、係員等に係る標準職務遂行能力及び適性を有しない場合、任命権者は義務を課されないとしており、これは民間で廃止されることになっている「再雇用に係る基準」に類似したものであり、認められるものではない。また、公務の場合、「再任用の義務化」と言ってみても、定数に空きがなければ再任用することはできず、雇用と年金の確実な接続が保障されないことになる。

5.政府は、今後、「再任用の義務化」という基本方針に基づいて、制度改正案を検討していくことになるが、われわれは、地方公務員を含めて公務における雇用と年金の確実な接続と生活できる給与を確保することを最低限の目標として、引き続き定年延長の実現を求めていく。同時に、制度改正案の検討に対しては、政府に、公務労協との交渉・協議、合意に基づき対応することを強く求めるものである。

以上